ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち

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第66話お勧めできない理由

 おすすめできない理由を並べるといくつかあるが、しかし一番に口から出たのは実体験から来る純粋な心配だった。

「危ないよ?」

「ダンジョンに潜るのは危険なものでしょう?」

「そういう事じゃなくって。危険の種類が違うんだ。普段の危険が未知と冒険の危険なら……僕のは……ビルを綱渡りで渡るような危険? 助かる道は一本しかないけど後戻りもミスも許されない的な」

「言い得て妙でござる」

 一回経験済みの桃山君はわかるわかると相槌を打っていた。

 だがそれを聞いて、黙っていた浦島先輩までが動いた。

「いや、でも一回何をしているのか、そこのところ確認しておきたくはあるよね」

「浦島先輩まで」

 僕は困り顔で先輩を見るが、浦島先輩も引くつもりはないようだった。

「実際、凄いことを色々教えてもらったのもあるし、信頼はしているよ? でもやっぱりダンジョンは危険なんだよね。隠したい気持ちもわかるけど、守られているばかりじゃパーティとして成立しないってのもあるわけだよ」

「そうですよ。どこまで背中を預けられるかって、ギリギリの場面になるほど重要です。これから深く潜るなら浅いところで試すべきですよ? ……もう全然浅くないですけど」

 二人の言は何にも間違っちゃいなかった。

 僕もそれは分かっているからこそ、根拠をキチンと説明しても伝わらないというのは中々に苦しいものがある。

「……そうは言うけど。僕がネクロマンサーの魔導書を持ってきて、今後の活動は50階から上に上がっていくだけっていうのも十分ありなんですよ?」

 今までの学校生活を思い出すと十分どころか、やりすぎですらあるだろう。

 安全と得られる報酬を考えても、それで十分ではあるはずだった。

 彼女達もそれだけの危険はすでに冒しているし、ここからは趣味の領域に突入してくるところでもある。

 しかし女子メンバー二人は全く納得していなかった。

 特にレイナさんはちょっと不愉快そうに腕を組む。

「取りに行ってくれて、与えてくれるつもりだったのなら舐められたものです。ワタシは探索者ですよ?」

「提案としては魅力的だけど……面白い事聞かせてくれちゃったよね? そんなこと聞かされて悶々としたまま卒業して、余生を送れと? ちょっとそれはあまりにもツレないんじゃないかね? ワタヌキ後輩?」

 笑顔なのに二人の圧が強い。

 僕は思わず目を逸らして、結局ガクリと肩を落とした。

「うぅ……前からちょっと思ってたけど、先輩とレイナさんは……押しが強すぎないかな?」

「そりゃあ君も何気に押しが強いからだよ。自分の巻き込み体質を反省したまえワタヌキ後輩」

「そこは全く同感でござるな」

「そうですね。まさかまさかで、あっという間に深みにはまりました」

「えぇー? まぁそうかぁ……そうかなぁ?」

 自分の胸に手を当てて思い返せば……頼み事の呈でここまで連れて来てしまったのは他でもないこの僕か。

 僕は探索者を目指しているという人間をまだ軽く見ていたのかもしれない。

「まぁそういうことだよ。君が提案して、深くダンジョンに潜るたび、私らも覚悟は決まってる。深みにはまる覚悟をね」

 浦島先輩は僕の頭に手を当ててくしゃくしゃと撫でると、やたら男前な笑みを浮かべていた。

 僕はそれを見て、フッと笑みが零れた。

「そうですか……」

 そこまで言われたら、じゃあ僕も言わせてもらおう。

 かつて桃山君に言った言葉を彼女達に言うのは実に心苦しいが、そこまで望むのなら仕方がない。

 僕はニッコリ笑って、女子二人の肩をガッチリ掴んでいた。

「……なら。言っておきます。付いて来るって言うのなら背中を預ける程度じゃ生ぬるいです」

「「え?」」

「ここから僕の指示は絶対服従でお願いします。いいですか? 疑問を持ったら即死ぬと思ってください」

「おおぅ……これはまたSっ気の強い発言だなワタヌキ後輩」

「オゥ。実は肉食系でしたかマスターワタヌキ」

「そういうんじゃないです。真面目に疑ったら死ぬので、全力でついてきてくださいよ?」

 僕は冗談なしに、とんでも発言を念押しする羽目になった。
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