68 / 177
第68話それぞれの戦い
しおりを挟む
火付け班は奮戦していた。
ただ選択肢の無い人選とはいえ、あまり火起こしの経験はなかったらしい浦島先輩とレイナさんは、授業用のサバイバルキットを引っ張り出して大慌てでかまどの設営中だった。
「かまどを組んで薪を組んで……マッチで紙に火をつける……」
「風が入る様に木を組まないとダメ……だったはずです! あ……マッチの火が」
「あああイライラする! せめてガス式はないの!? あ! ガス管ぶち込んで爆破させたらどうかな!?」
「たぶんダメです! 一個着火したらあっという間ですよ! あ! メタルマッチあります!」
「それはマッチより逆にめんどくさい奴ぅー。思い出した! 授業でやったら全く付けられなくてマッチ買ったんだったよ!」
超不安。
だが僕の方も十分不安なんだから、人の事をどうこう言えるわけではない。
願わくば、僕が死なない内に目標を達成してくれたら、死ぬほど嬉しいので頑張って欲しい。
「……」
敵はこちらを見ていた。
異形だが、人型であるとそれだけで様々な恐怖が沸き起こって来る。
特徴的な山羊のような角に真っ赤な瞳、そこに翼と尻尾までついているそいつを悪魔と呼ばずしてなんと言えばいいのかわからない。
だが、あふれ出るおぞ気がするような魔力と金属のような光沢を持つイカれた筋肉はいかにも戦闘力が高そうだった。
ただ残念ながら相手がいくら強そうでも、僕の役目はあいつの目を引き付ける事だ。
まずは、こっちを向いてもらわないと始まらない。
僕はハンマーを握り締め全身にオーラをみなぎらせると全力で吼え、ウォークライを叩きつける。
「うおおおお!」
無事注意を引くことには成功したが、繰り出された剣は文字通り人間離れした勢いで飛んできた。
肉弾戦を得意としているのか剣で猛攻を仕掛けてくる悪魔の斬撃を僕はオーラで弾く。
一撃食らうだけですべて剥がれ落ちそうな圧力に何とか耐えて隙を突くとハンマーの一撃で地面だけが派手に弾け飛んだ。
「……すばしっこい! のあ!」
舌打ちする暇もなく、首が持っていかれるところだった。
更に悪魔は無造作に手をかざし闇色のエネルギーの塊を無数に空から降らして来るのだからひどい話だ。
避けたいところだが、後ろに火起こし組がいる時が一層つらいところだった。
「障壁を前に……!」
僕は正面にオーラを集め盾を形成すると、腰を入れて踏ん張った。
聖騎士のオーラは聖属性。悪魔相手に相性がいい。
だが相性がいいにもかかわらずキツイ時点で相手のレベルの高さが伺える。
「もういっちょ!」
守りからハンマーにオーラを流し、魔法の撃ち終わりを叩き潰す。
だが僕の攻撃は残像を打ち据えただけで、また避けられた。
悪魔に飛びのいて躱されると空中に逃げられて、いったんリセットされるのもいちいち攻めきれずに厄介だった。
「……速い」
ああ、一瞬で方を付けられれば楽なのに、やっぱりこいつは今までの様に楽には勝てそうになかった。
かまど組は頑張っていた。
入り口近くでどんどん並べられるかまどは、確実に煙を上げ始めていた。
「「ふーふーふー!」」
浦島先輩とレイナさんは必死に炎に息を吹きかけている。
焚火は3つ目。
中々火力が上がらず苦戦していたが、鍋のお湯はまだ沸いてはいないようだ。
僕のハンマーは十分に悪魔にダメージを与える威力はある。
しかし小回りが利かないのはどうにかしないと本当にマズイ。
だが今回はパーティ戦だ。
頼りになる前衛はもう一人いた。
恐ろしく鋭い踏み込みで斬りかかる桃山君は、普段の穏やかな様子とはかけ離れた勇猛果敢なアタックで悪魔と切り結ぶ。
「クロハナサクヤ―――合わせるでござる!」
更にひょうたんから飛び出して赤いパーカーの表面に乱れ咲く影の桜も彼の猛攻の手助けをしていた。
黒く散る花弁は、時折悪魔の身を裂き、神速の居合には黒い魔力が乗る。
ブオンと背筋が凍るような音を立てて、無数の影の刃が悪魔に飛んだ。
悪魔は持っていた大剣で刃を受け、斬撃を黒い粒子に霧散させる。
「……! 効かないなら何度でも!」
立て続けに放たれた影の斬撃と大剣のぶつかり合いは、残念ながら悪魔が優勢に見えた。
桃山君の赤いパーカーが悪魔の振るう剣に裂かれた。
だがその瞬間、桃山君の身体はスゥっと幽霊のようにかき消えて、悪魔の背後に現れた。
「分身……二連影断ち!」
今度は二刀による斬撃は悪魔の羽根を傷つけて、悪魔の表情が歪む。
「ギ!」
いい一撃が命中したことでヘイトがいよいよ桃山君に完全に向かうが、それはさすがにまずいだろう。
空中で三回転半。
僕の十分に加速を加えたハンマーの大振りは、悪魔の脇腹に深くめり込んだ。
「良し! クリティカル!」
「まだでござる!」
だが体勢を崩しながらも今度は影の槍が無数に飛び出して、僕らを貫こうとする。
「桃山君! 僕を盾に!」
「!」
咄嗟に叫び、身体を悪魔と桃山君の間に滑り込ませるとすさまじい衝撃が体を襲って桃山君ごと僕を弾き飛ばした。
槍で貫かれるのだけは阻止したが、衝撃で肺の空気を持っていかれる。
「……ゴェ!」
危うく意識まで失いかけたのは、相当にヤバかった。
「ゴホッ! ゴホッ!……はぁ、やってくれるわ」
「だ、大丈夫でござるか!」
「当然……でもいいのが一発入った。必殺ワタヌキクラッシュと名付けよう」
「ハハハ。内臓ぶちまけそうな名前でござるな。でも、そこまでは無理だったみたいでござるよ?」
「……ああ、本当だ」
ハンマーが当たった所を押さえていた悪魔だったが、あっという間にダメージ痕らしきものは修復され、装甲はツルリと元通り。
そして結構いいのが決まったと思ったが、そいつはフワリと浮き上がるとズドンと黒い炎を全身から噴出させ目が四つに増える。
それを見た僕らの表情はヒクリと引きつって、同時に叫んでいた。
「「やばい! 第二形態だ!!」」
一方その頃、火起こし組は成し遂げていた。
汲んで来た水すべてをかまどに置いて、派手に沸騰する音がボコボコと部屋中に聞こえ始めた。
「よし! よーし! 沸騰してる沸騰してる! この後どうする!?」
「火力上げましょう! 薪をありったけぶち込みます!」
「バーベキュー用の炭も全部入れよう!」
「……なんか火力落ちてませんか?」
「……なんか、勢いが」
「あ、さっき入れたばっかりの薪が炎を遮ってるんじゃないですか?」
「……そんなことある?」
ちょっと勘弁して!
ビュンビュンと飛んで来るのは影で形作られた無数の鞭で、もはや目で追えないような乱打が僕らをオーラごと打ち据える。
剣の時でもヤバかったのに鞭は更に速度が増していて、バチバチ僕のオーラは命中のたびに削れていくのが分かった。
しかし目で追えない回避不能の攻撃だからこそ、僕はこの攻撃を受けるしかなかった。
パーティメンバーの誰もが急所に受けたら、まず死ぬ。
それを肌で感じるからだ。
だが僕も精神の集中が崩れたら一巻の終わりだった。
「ふぅー……」
僕は深く息を吐いて気分をいったん落ち着かせると、桃山君に語り掛けた。
「……今からちょっと攻めよう。このままじゃ削り殺される」
「……そうでござるな」
「一瞬でいい……あいつの動きを止められないか?」
そう尋ねると桃山君は、渋い表情だが確かに肯定した。
「分かったでござる……一瞬でござるな」
僕らは頷きあって、悪魔を見据える。
そして桃山君は僕の背中で地面に刀を突き立てると、叫んだ。
「今!」
「……っ!」
叫びが耳に届いた瞬間、僕は走る。
悪魔の足元から無数の枝が突き出て、悪魔の体に絡みつくのが僕にも見えた。
意識の外からの攻撃に悪魔が一瞬怯む。
そして僕はインパクトの瞬間、切り札を切った。
「食らえぇぇ!」
頭の炎が、赤から青へと変わって燃え上がる。
僕の魔力の性質が変わったことに反応するこの変化は超化の証だ。
10倍に跳ね上がった攻撃力でハンマー先に全オーラを集中させると、まるで爆弾のような衝撃が悪魔の頭に直撃した。
「どうだ!」
「やったでござる!」
桃山君の歓声が衝撃波でキーンと耳鳴りのする耳に届いたが、僕は同時に見てしまった。
吹き飛んだ頭の肉片が元に戻って行く。
それが再生しているのだと気がつくと、さすがに呼吸が浅くなった。
「ヒュッ」
あ、やばいこれ。ダメかも。
いいとこ見せられたのかは知らないが、攻略君の攻略は妙なノイズのせいで失敗パターンを引いたかもしれない。
まぁダンジョンの攻略って、そもそもこういうものだよなって、そんな感想が頭に浮かんだ僕は案外潔いのかもしれなかった。
悪魔が再起動する。
「早すぎじゃない!? ……くそ!」
だがせっかく超化したんだ、死ぬまでぶん殴ってやると自分でも意外な闘志を燃やしていると、悪魔は蘇生の瞬間口を大きく開けて呼吸をして、目を見開いた。
「が、ガガゲゴ!」
そして全身に血管を浮き出させると―――苦し気に表情を歪めて爆散したのだ。
「へ?」
「な、何事でござる?」
僕は困惑し、警戒していたが、すぐに今回の作戦を思い出す。
そして悪魔を警戒しつつ、焚火係に視線を向けると、大量に湯気を吐き出す寸胴鍋が見えて、思わず僕はその場にへたり込んでいた。
「はぁぁぁぁ……ようやく効いたぁ」
『あっぶなかったなぁ。お疲れ様!』
「……攻略君にはあとで話があるから」
死ぬかと思ったが、とりあえずは攻略成功という事のようだった。
ただ選択肢の無い人選とはいえ、あまり火起こしの経験はなかったらしい浦島先輩とレイナさんは、授業用のサバイバルキットを引っ張り出して大慌てでかまどの設営中だった。
「かまどを組んで薪を組んで……マッチで紙に火をつける……」
「風が入る様に木を組まないとダメ……だったはずです! あ……マッチの火が」
「あああイライラする! せめてガス式はないの!? あ! ガス管ぶち込んで爆破させたらどうかな!?」
「たぶんダメです! 一個着火したらあっという間ですよ! あ! メタルマッチあります!」
「それはマッチより逆にめんどくさい奴ぅー。思い出した! 授業でやったら全く付けられなくてマッチ買ったんだったよ!」
超不安。
だが僕の方も十分不安なんだから、人の事をどうこう言えるわけではない。
願わくば、僕が死なない内に目標を達成してくれたら、死ぬほど嬉しいので頑張って欲しい。
「……」
敵はこちらを見ていた。
異形だが、人型であるとそれだけで様々な恐怖が沸き起こって来る。
特徴的な山羊のような角に真っ赤な瞳、そこに翼と尻尾までついているそいつを悪魔と呼ばずしてなんと言えばいいのかわからない。
だが、あふれ出るおぞ気がするような魔力と金属のような光沢を持つイカれた筋肉はいかにも戦闘力が高そうだった。
ただ残念ながら相手がいくら強そうでも、僕の役目はあいつの目を引き付ける事だ。
まずは、こっちを向いてもらわないと始まらない。
僕はハンマーを握り締め全身にオーラをみなぎらせると全力で吼え、ウォークライを叩きつける。
「うおおおお!」
無事注意を引くことには成功したが、繰り出された剣は文字通り人間離れした勢いで飛んできた。
肉弾戦を得意としているのか剣で猛攻を仕掛けてくる悪魔の斬撃を僕はオーラで弾く。
一撃食らうだけですべて剥がれ落ちそうな圧力に何とか耐えて隙を突くとハンマーの一撃で地面だけが派手に弾け飛んだ。
「……すばしっこい! のあ!」
舌打ちする暇もなく、首が持っていかれるところだった。
更に悪魔は無造作に手をかざし闇色のエネルギーの塊を無数に空から降らして来るのだからひどい話だ。
避けたいところだが、後ろに火起こし組がいる時が一層つらいところだった。
「障壁を前に……!」
僕は正面にオーラを集め盾を形成すると、腰を入れて踏ん張った。
聖騎士のオーラは聖属性。悪魔相手に相性がいい。
だが相性がいいにもかかわらずキツイ時点で相手のレベルの高さが伺える。
「もういっちょ!」
守りからハンマーにオーラを流し、魔法の撃ち終わりを叩き潰す。
だが僕の攻撃は残像を打ち据えただけで、また避けられた。
悪魔に飛びのいて躱されると空中に逃げられて、いったんリセットされるのもいちいち攻めきれずに厄介だった。
「……速い」
ああ、一瞬で方を付けられれば楽なのに、やっぱりこいつは今までの様に楽には勝てそうになかった。
かまど組は頑張っていた。
入り口近くでどんどん並べられるかまどは、確実に煙を上げ始めていた。
「「ふーふーふー!」」
浦島先輩とレイナさんは必死に炎に息を吹きかけている。
焚火は3つ目。
中々火力が上がらず苦戦していたが、鍋のお湯はまだ沸いてはいないようだ。
僕のハンマーは十分に悪魔にダメージを与える威力はある。
しかし小回りが利かないのはどうにかしないと本当にマズイ。
だが今回はパーティ戦だ。
頼りになる前衛はもう一人いた。
恐ろしく鋭い踏み込みで斬りかかる桃山君は、普段の穏やかな様子とはかけ離れた勇猛果敢なアタックで悪魔と切り結ぶ。
「クロハナサクヤ―――合わせるでござる!」
更にひょうたんから飛び出して赤いパーカーの表面に乱れ咲く影の桜も彼の猛攻の手助けをしていた。
黒く散る花弁は、時折悪魔の身を裂き、神速の居合には黒い魔力が乗る。
ブオンと背筋が凍るような音を立てて、無数の影の刃が悪魔に飛んだ。
悪魔は持っていた大剣で刃を受け、斬撃を黒い粒子に霧散させる。
「……! 効かないなら何度でも!」
立て続けに放たれた影の斬撃と大剣のぶつかり合いは、残念ながら悪魔が優勢に見えた。
桃山君の赤いパーカーが悪魔の振るう剣に裂かれた。
だがその瞬間、桃山君の身体はスゥっと幽霊のようにかき消えて、悪魔の背後に現れた。
「分身……二連影断ち!」
今度は二刀による斬撃は悪魔の羽根を傷つけて、悪魔の表情が歪む。
「ギ!」
いい一撃が命中したことでヘイトがいよいよ桃山君に完全に向かうが、それはさすがにまずいだろう。
空中で三回転半。
僕の十分に加速を加えたハンマーの大振りは、悪魔の脇腹に深くめり込んだ。
「良し! クリティカル!」
「まだでござる!」
だが体勢を崩しながらも今度は影の槍が無数に飛び出して、僕らを貫こうとする。
「桃山君! 僕を盾に!」
「!」
咄嗟に叫び、身体を悪魔と桃山君の間に滑り込ませるとすさまじい衝撃が体を襲って桃山君ごと僕を弾き飛ばした。
槍で貫かれるのだけは阻止したが、衝撃で肺の空気を持っていかれる。
「……ゴェ!」
危うく意識まで失いかけたのは、相当にヤバかった。
「ゴホッ! ゴホッ!……はぁ、やってくれるわ」
「だ、大丈夫でござるか!」
「当然……でもいいのが一発入った。必殺ワタヌキクラッシュと名付けよう」
「ハハハ。内臓ぶちまけそうな名前でござるな。でも、そこまでは無理だったみたいでござるよ?」
「……ああ、本当だ」
ハンマーが当たった所を押さえていた悪魔だったが、あっという間にダメージ痕らしきものは修復され、装甲はツルリと元通り。
そして結構いいのが決まったと思ったが、そいつはフワリと浮き上がるとズドンと黒い炎を全身から噴出させ目が四つに増える。
それを見た僕らの表情はヒクリと引きつって、同時に叫んでいた。
「「やばい! 第二形態だ!!」」
一方その頃、火起こし組は成し遂げていた。
汲んで来た水すべてをかまどに置いて、派手に沸騰する音がボコボコと部屋中に聞こえ始めた。
「よし! よーし! 沸騰してる沸騰してる! この後どうする!?」
「火力上げましょう! 薪をありったけぶち込みます!」
「バーベキュー用の炭も全部入れよう!」
「……なんか火力落ちてませんか?」
「……なんか、勢いが」
「あ、さっき入れたばっかりの薪が炎を遮ってるんじゃないですか?」
「……そんなことある?」
ちょっと勘弁して!
ビュンビュンと飛んで来るのは影で形作られた無数の鞭で、もはや目で追えないような乱打が僕らをオーラごと打ち据える。
剣の時でもヤバかったのに鞭は更に速度が増していて、バチバチ僕のオーラは命中のたびに削れていくのが分かった。
しかし目で追えない回避不能の攻撃だからこそ、僕はこの攻撃を受けるしかなかった。
パーティメンバーの誰もが急所に受けたら、まず死ぬ。
それを肌で感じるからだ。
だが僕も精神の集中が崩れたら一巻の終わりだった。
「ふぅー……」
僕は深く息を吐いて気分をいったん落ち着かせると、桃山君に語り掛けた。
「……今からちょっと攻めよう。このままじゃ削り殺される」
「……そうでござるな」
「一瞬でいい……あいつの動きを止められないか?」
そう尋ねると桃山君は、渋い表情だが確かに肯定した。
「分かったでござる……一瞬でござるな」
僕らは頷きあって、悪魔を見据える。
そして桃山君は僕の背中で地面に刀を突き立てると、叫んだ。
「今!」
「……っ!」
叫びが耳に届いた瞬間、僕は走る。
悪魔の足元から無数の枝が突き出て、悪魔の体に絡みつくのが僕にも見えた。
意識の外からの攻撃に悪魔が一瞬怯む。
そして僕はインパクトの瞬間、切り札を切った。
「食らえぇぇ!」
頭の炎が、赤から青へと変わって燃え上がる。
僕の魔力の性質が変わったことに反応するこの変化は超化の証だ。
10倍に跳ね上がった攻撃力でハンマー先に全オーラを集中させると、まるで爆弾のような衝撃が悪魔の頭に直撃した。
「どうだ!」
「やったでござる!」
桃山君の歓声が衝撃波でキーンと耳鳴りのする耳に届いたが、僕は同時に見てしまった。
吹き飛んだ頭の肉片が元に戻って行く。
それが再生しているのだと気がつくと、さすがに呼吸が浅くなった。
「ヒュッ」
あ、やばいこれ。ダメかも。
いいとこ見せられたのかは知らないが、攻略君の攻略は妙なノイズのせいで失敗パターンを引いたかもしれない。
まぁダンジョンの攻略って、そもそもこういうものだよなって、そんな感想が頭に浮かんだ僕は案外潔いのかもしれなかった。
悪魔が再起動する。
「早すぎじゃない!? ……くそ!」
だがせっかく超化したんだ、死ぬまでぶん殴ってやると自分でも意外な闘志を燃やしていると、悪魔は蘇生の瞬間口を大きく開けて呼吸をして、目を見開いた。
「が、ガガゲゴ!」
そして全身に血管を浮き出させると―――苦し気に表情を歪めて爆散したのだ。
「へ?」
「な、何事でござる?」
僕は困惑し、警戒していたが、すぐに今回の作戦を思い出す。
そして悪魔を警戒しつつ、焚火係に視線を向けると、大量に湯気を吐き出す寸胴鍋が見えて、思わず僕はその場にへたり込んでいた。
「はぁぁぁぁ……ようやく効いたぁ」
『あっぶなかったなぁ。お疲れ様!』
「……攻略君にはあとで話があるから」
死ぬかと思ったが、とりあえずは攻略成功という事のようだった。
32
あなたにおすすめの小説
【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜
KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。
~あらすじ~
世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。
そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。
しかし、その恩恵は平等ではなかった。
富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。
そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。
彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。
あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。
妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。
希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。
英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。
これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。
彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。
テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。
SF味が増してくるのは結構先の予定です。
スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。
良かったら読んでください!
異世界帰りの英雄は理不尽な現代でそこそこ無双する〜やりすぎはいかんよ、やりすぎは〜
mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
<これからは「週一投稿(できれば毎週土曜日9:00)」または「不定期投稿」となります>
「異世界から元の世界に戻るとレベルはリセットされる」⋯⋯そう女神に告げられるも「それでも元の世界で自分の人生を取り戻したい」と言って一から出直すつもりで元の世界に戻った結城タケル。
死ぬ前の時間軸——5年前の高校2年生の、あの事故現場に戻ったタケル。そこはダンジョンのある現代。タケルはダンジョン探索者《シーカー》になるべくダンジョン養成講座を受け、初心者養成ダンジョンに入る。
レベル1ではスライム1匹にさえ苦戦するという貧弱さであるにも関わらず、最悪なことに2匹のゴブリンに遭遇するタケル。
絶望の中、タケルは「どうにかしなければ⋯⋯」と必死の中、ステータスをおもむろに開く。それはただの悪あがきのようなものだったが、
「え?、何だ⋯⋯これ?」
これは、異世界に転移し魔王を倒した勇者が、ダンジョンのある現代に戻っていろいろとやらかしていく物語である。
修復術師は物理で殴る ~配信に乱入したら大バズりしたので公式配信者やります~
樋川カイト
ファンタジー
ソロでありながら最高ランクであるSランク探索者として活動する女子高生、不知火穂花。
いつも通り探索を終えた彼女は、迷宮管理局のお姉さんから『公式配信者』にならないかと誘われる。
その誘いをすげなく断る穂花だったが、ひょんなことから自身の素性がネット中に知れ渡ってしまう。
その現実に開き直った彼女は、偶然知り合ったダンジョン配信者の少女とともに公式配信者としての人生を歩み始めるのだった。
日本国 召喚獣管理省 関東庁 召喚獣総合事案即応科。
wakaba1890
ファンタジー
召喚獣。
それは向こう側とされる所から、10歳を迎えた日本人の子供の下に召喚されるモンスターのことである。
初代天皇・神武天皇が日本を建国した際に書かれた絵画には彼は金鵄と呼ばれる金色に輝く鵄(とび)と契約したのが原初となっている。
そして、縄文、弥生、古墳、飛鳥、平安、戦国時代から近代から今に至るまで、時代を動かしてきた人物の側には確かに召喚獣は介在していた。
また、奇妙な事に、日本国に限り、齢10歳を迎えた日本在住の日本人にのみ体のどこかから多種多様な紋章が発現し、当人が念じると任意の場所から召喚陣が現れ、人ならざるモンスターを召喚される。
そして、彼らモンスターは主人である当人や心を許した者に対して忠実であった。
そのため、古来の日本から、彼ら召喚獣は農耕、治水、土木、科学技術、エネルギー、政治、経済、金融、戦争など国家の基盤となる柱から、ありとあらゆる分野において、今日に至るまで日本国とアジアの繁栄に寄与してきた。
そして、建国から今まで、国益の基盤たる彼ら数万種類以上をも及ぶ召喚獣を取り締まり管理し、2600年以上と脈々と受け継がれてきた名誉ある国家職がーーーーー国家召喚獣管理官である。
現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!
おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。
ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。
過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。
ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。
世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。
やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。
至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!
オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】
山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。
失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。
そんな彼が交通事故にあった。
ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。
「どうしたものかな」
入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。
今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。
たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。
そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。
『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』
である。
50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。
ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。
俺もそちら側の人間だった。
年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。
「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」
これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。
注意事項
50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。
あらかじめご了承の上読み進めてください。
注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。
注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。
ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ
高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。
タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。
ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。
本編完結済み。
外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる