ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち

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第78話まぁこうなる

「……で、まぁこうなるよね。薄々そうは思っていたよ」

 というわけで、まぁ協力するのなら準備は万全にしておかないと未練が残る。

 今回一人でやって来たのは、速度的な効率を最優先した結果だった。

『友達思いで素晴らしい事じゃないか。私はそんな君を応援しているよ。まぁ死ぬことだけはないようにしよう。今からの準備が成功すればの話だが』

「毎度の事じゃないか。協力するって約束しちゃったからがんばるけど、作らされたアクセサリーは本当に身に着けなくていいんだね?」

『ああ、君のじゃないからね』

 そう言う事なら身に着ける必要はないのだろう。

 正直いつものコレが始まる時は、崖に飛び込むような心境だった。

 最近、初めて来る階層でも結構戦えることに気がついてからは恐怖が少しだけ和らいだが、結局ダッシュで通り過ぎるんだから意味のない話である。

 ただ、今回のダッシュの性質は少しだけ違っていた。

 それというのも攻略君がこんなことを言い始めたからだ。

『よし。まずはこの階層で出来るかぎり速そうな悪魔を捕まえよう』

「僕、テイマーじゃないけど?」

『テイマーじゃなくてもテイムは出来るさ。そもそもモンスターのテイムがテイマーの習得条件だっただろう?』

 だがこういうお使いミッションが追加されると、危険度が跳ね上がることを僕もよくわかっていた。

「まぁ……頑張ろうか」

 悪魔のいる階層は、基本的に薄暗くやはり様々なフィールドが用意されている。

 捕獲の為に向かった階層には鬱蒼とした森があったのだが、ここには奇襲が得意ですばしっこい悪魔系モンスターが山ほどいるらしい。

 僕は足が遅いというのにあの手この手と攻略君を最大限駆使して、階層を駆けずり回りながら、インプという小さな悪魔を大学ノートに封じ込めることに成功した。

「ギギー!」

 だが言われた通り捕まえられたのは良かったが、テイムしたインプを見ていて思った。

「……ホントにこれで正解? 絶対守護者に勝てないでしょ?」

 真ん丸な目をした小柄な悪魔型モンスターはほとんどハンディーサイズのぬいぐるみみたいでまったく強そうじゃない。

 だというのに攻略君はこのインプ君こそが今後の鍵だと言った。

『大丈夫。まぁ最適解とは言わないが及第点だと思うよ。そして彼が今回のキーキャラだ』

「そうか……本当に?」

『ホントホント』

 いや不安だ。

 そしてそのまま階層を下り、視界もろくに利かないような吹雪と氷の極寒の階層を最後に突破した僕はそれなりに疲弊して70階にやって来た。

 待ち構えるのは当然守護者なんだけど、今度のフロアはずいぶん明るく、そして妙な空気に包まれていた。

「神々しい……そんな風に感じる」

 そして一面広く白い床の階層にそいつは精緻な鎧を纏った姿で僕を待ち構えていた。

「うわぁ……なにあれ?」

『この階層の守護者だよ。まぁパワータイプだね』

 特徴的な光の輪に純白の翼はあまりにも美しい。

 しかし全然厳かとかではないモーニングスターを杖のように地面に立て、佇んでいる。

 ああ。これと今から戦わないといけないのかと思うと単純に躊躇ってしまった。

「めっちゃくちゃバチ当たりそう」

『見た目に騙され過ぎだ。もっと内面を見る目を養いたまえよ?』

「目で見えないものをわかった気になるのを、人は気のせいって言うんだよ攻略君」

『わかっているじゃないか。あれはモンスター。すべて気のせいだ。さぁ張り切って行こう』

「うひぃ」

 流れるように始まる攻略に、僕はきゅっと唇をかんだ。

『この階層を守っているのは天使属性の守護者だ。聖騎士のジョブをメインに据える君と同じ聖なる属性のモンスターだね』

「そうか、僕ってば聖騎士だったわ。しかし……同じって言われると違和感半端ないな。モンスターでいいんだよね?」

『もちろん。ダンジョンに現れるのはすべてそうだ。では構える前に、例の悪魔契約の書を取り出そう』

 悪魔よりもなんなら威圧感がすさまじい天使を前にして、僕は慌て気味にノートを開く。

 そこからポンと現れたインプ君は、天使を目の前にしてビビビと尻尾を縮めていた。

 だがそれ以上に変化も起る。

 それは守護者の天使がインプをその目にしたとたん、明らかにキレたのだ。

「キエエエエエエエエエエ!」

「えええええ! そんなキレることある!」

『まぁ……曲がりなりにも天使としての宿命だよね』

 さっきまでは、寡黙でガッツリ規律に従う軍人さんの様だったのに、モーニングスターを肩に担ぎ、今にも飛び掛かりそうな天使は奇声を上げて、その辺のヤンキーでももう少し自制していそうなほど、凶暴性剥き出しだった。

 ああ、やっぱりインプじゃ絶対勝てない。

 この時点で僕もそう思うが、しかし攻略君に従って僕は素早さを増強するイヤリングをインプに渡すとこう指示した。

「絶対に掴まらないように逃げろ」

 インプ君はコクコク何度も頷いて一目散に逃げ出すと、守護者の天使も走り出す。

 しかしなんだろう……この守護者、天使の羽根も使わないし、普通に走って追いかけている。

 それにそんなに速くもなかった。

 いや、重装甲の鎧のせいかむしろ遅くさえあって、インプに追いつくことはできそうにない。

 それでも天使は追いかけるのを止めない。

 たまにモーニングスターをぶん回しているが、全て空振りで終わっていた。

『ああして、天使は目の前の悪魔を決して無視できない。悪魔への大きすぎるヘイトは同時に彼らの弱点だ。いけないね。やはり執着というやつは目を曇らせる』

「……そうみたいだね」

『さぁ追いかけて後ろから殴り給え。今なら後頭部を全力で一撃できるよ?』

「……」

 ああ、絶対そういうこと言うと思った。だって背中が隙だらけだし。

 だから僕はすでにハンマーを構えていて、追走準備も万端だった。

「ああ。なんだろう……。たぶん僕は天国には行けないな」

『では極楽でもヘブンでも好きに目指すといいさ。そんなことよりインプがやられたらそこで試合終了だ。急ごうか』

「言われなくてももう追ってますよ」

 何度でも言おう。ダンジョンで攻略君の言う事は絶対である。

 そしてこう言っては何だがすごい楽!

 おかしなことを言い出さない攻略君の攻略は、本当に容赦がなかった。



 そして聖なる飛沫をざっくり拭い、作戦は終了した。

 光の粒子となって消える天使型モンスターはやはり美しかった。

「ふぅ……よし。討伐完了」

 生還したインプ君が小ネズミのように震えていたが、君もよく頑張ってくれたと褒めてあげたい。

 天使は強かった……というか硬かった。

 スレッジハンマーの直撃を3度も叩き込んだのに、まだ悪魔を追う姿は真面目に仕留められないんじゃないかと目を疑ったものだ。

 それでも、目標達成できたのはやはり彼が逃げ切ったおかげだと言えるだろう。

 インプ君をノートに戻していつもならすぐに帰るところだが、今日は守護者ではなくこの先の階層に用事がある。

『では行こう。次からは天使の階層だ』

「うん、行こう。もう何が出たって驚かないさ」

 僕は次の階層に向かう。

 だが辿り着いた光あふれる美しい花園を見て、僕はやはり足を止めて見入ってしまった。

「うわぁ……天国みたいだ」

『やれやれ、急がないとモンスターに囲まれても知らないよ?』

「……ですよね。急ぎますよ」

 まぁわかっちゃいたが、見渡す限り花畑の明るすぎる階層を僕はずかずかと標的目指して突き進んだ。
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