ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち

文字の大きさ
89 / 257

第89話密かな悩み

「……さて祭りの時間の始まりだ。そして祭りで大切なのは前準備ではないかと、僕は思う」

 僕らは学校の部室で顔を突き合わせ会議中である。

 我々はサブカル同好会を部に昇格させるため、行動を迫られていた。

 今僕らがやるべきこと……それは誰もに僕らを印象付ける、インパクトのあるオシャレであった。

「いやいやいや、ただの装備の新調でござろう?」

「そうだよ? 桃山君の服もダメになってるから作り直さなきゃだろ?」

 そう言えばオーガとの戦いでずいぶん衣装が汚れていたことを思い出すと桃山君は大丈夫だと自分のパーカーを引っ張って見せた。

「……同じのがあと9着あるでござる」

「じゃあいらないかぁ……。僕も同じジャージ10着買った」

「こうなってくるとやるでござるよね」

「まぁ。ここまでくるとね」

「となると女子組は一点物だから大変でござる。予備の予備くらいまたみんなで作るでござるか?」

「必要かもねぇ」

「あれば助かりますけど。丈夫だし大丈夫ですよ?」

 レイナさんがそう言ってくれるのは嬉しいけれど、こちらに気を使われて、劣化した衣装で華々しい舞台に出るなんて、クリエイターとしての矜持が許さなかった。

 確かに市販品の延長っぽい僕らと違って女性陣の衣装は殆どオーダーメイドに近い。

 汚れたり破れたりすると、代わりを手に入れるのは難しいだろう。

 しかしそれで桃山君に過剰な負担がかかってしまっては、あまりよくない。

 僕は考え、その辺りあっさり解決する魔法を提案した。

「量産は時間がかかりすぎるから、桃山君さ、テイラーってサポートジョブとってみたら? 布製品作るならめちゃくちゃ便利なスキル覚えるみたいだけど?」

「……マジでござるか?」

「マジ。一度作った衣裳なら複製も楽々よ?」

 まるで、夜中に仕事をしてくれる妖精さんの様なジョブは布製品や糸を扱わせたら、右に出るものはなくなるだろう。

「……取るでござる。解放条件とかあるんでござるか?」

「ダンジョンの素材を使って服を作る。小物でもいいから手袋とかマフラーとかその辺おすすめかもね」

「……ダンジョンの素材でござるかぁ。あ、でもネタなら簡単そうでござるな。ジャングルのヤシで腰ミノなんてどうでござろう?」

「それで判定通るか気になるね……。まぁ試してみるならなるべく上の階層でやるといいよ。モンスターを気にしなくていいし」

 サポートジョブを得るコツは、あまりモンスターを意識しなくてもすむ浅い階層で作業をすることなのは間違いなかった。

「そうでござるなぁ……いやしかし皮やらなにやらはちょっと手間がかかりすぎるでござるから……なんかちょっと考えてみるでござるよ」

 すでに何か構想を考えている桃山君は乗り気だし、どうやら桃山君の今後の活動は本当にお洒落になりそうだ。

 そしてレイナさんの方は、戦闘技能よりむしろ音楽の腕の方に不安があるらしい。

「私は演奏の練習したいです。最近ちょっと試したくらいじゃさすがにさび付いてます」

「ならセーフエリアに防音室でも作ろうか? 練習はそこで思い切り練習してもらうとして……そろそろマーメイドのいるエリアを狙ってみるのも面白いかもしれない」

「マーメイドですか?」

 興味を引かれたレイナさんに、僕はざっくりマーメイドの生息域を地図で描いて見せた。

「そう、53階層に水辺があるから、そこにいるマーメイドと一緒に歌を歌って、最後まで眠らずにいられたら、サポートジョブシンガーが解放されるよ」

「……なんでそれを早く言わないんですか?」

 ……そんなに血相を変えて肩を掴まないで? 

 ああ、そうだろうと思ったけどレイナさんからすさまじい圧を感じた。

「いや……メインの前にサブもないかなって」

「……ふーむ。ボーカルより楽器の方が好きなんですけど、楽器じゃダメですか?」

「歌が間違いない。一度解放されるとシンガーは音に関するスキルを色々覚えるから、応用は後から試してみるといいよ」

「なるほど……こいつは面白そうです」

「やるなら状態異常対策のポーションを作ってあげよう。これで条件は達成されたも同然のはず」

「……気合じゃ無理です?」

「無理だねぇ。……絶対ポーションは飲んでね? 水中に引きずり込まれるから」

 根性でマーメイドの呪いの歌を防ぎきれるもんじゃない。

 チャレンジ企画は、ほどほどにした方がいいだろう。



 まずはいったん効果がありそうな課題を授けた二人が席を立ち、ダンジョンに向かう後ろ姿を見て、僕はこっそりとため息を吐いた。

「……華があるよな」

 さて、色々情報通ぶって新情報を渡してしまったが、本当に頑張らなくてはならないのは実は僕の方だった。

「……みんなキャラ濃くなってきたしなぁ。対して僕は薄すぎる」

 今僕は、オタクとして歩んできた人生を試されている気分である。

『シンプルだものね』

「そうなんだよ……どうしよう?」

 攻略君もそういう認識だったか。頭が燃えるアイディアだけで晴れの舞台にどこまで通用するかはあまりにも未知数過ぎた。

 このままいくととりあえずハンマーで相手をぶん殴る事しかできない。

 それは仕方がないにしても、だんだん特徴が出て来た二人と一緒にいて地味じゃないかと言われると……ちょっと自信がなかった。

『じゃあ私達もオシャレをしに行こうじゃないか』

「……そうだね。じゃあ、どんな風にしようか? 出来るだけインパクトがあるやつ考えよう」

 舞台映えするキャラとは何ぞや? それは我が人生に耳を澄ませば、自ずと好きがあふれ出すはずだと信じるしかない。

 ところが今回、ファッションは苦手だと言っていた攻略君が、案を出してきた。

『インパクトか。なら君……腕を増やすつもりはないかな?」

「……ないが?」

 しかしその提案は中々ぶっ飛んでいた。

感想 3

あなたにおすすめの小説

さびれたレンタル道具屋の転生おっさん、道具の使い方を教えまくる。~客のS級冒険者が俺を歴戦の英雄と勘違いして弟子入りを求めてくるんだが~

遥風 かずら
ファンタジー
前世で過労死した久世織人が目を覚ますとそこは異世界の王都、しかも古道具屋の跡取り息子として転生していた。アクセル・リオットとして成長した彼は荷物持ちとして冒険者パーティーに同行、その道中に【無限収納】スキルを開花させる。 パーティー活動から離脱後、四十歳となったアクセルは前世の記憶を思い出し、儲かりそうという考えで道具レンタル屋を始めていた。客足もなく店がさびれる中、道具の使い方が出来てない冒険者によって治安の乱れや魔物討伐の失敗が続いているという話を常連客から聞かされる。あらゆる道具に精通するアクセルは客の冒険者に使い方を教えに行くことを思い立つ。 アクセルの教えにより、やがてS級冒険者や聖女、王女までも勘違いして彼の元には次々と弟子入りを求める者が現れていくのだった。

《カクヨム様で50000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う

なべぞう
ファンタジー
ダンジョンが生まれて百年。 スキルを持つ人々がダンジョンに挑む世界で、 ソラは非戦闘系スキル《アイテムボックス》しか持たない三流シーカーだった。 弱さゆえに仲間から切り捨てられ、三十五歳となった今では、 満身創痍で生きるだけで精一杯の日々を送っていた。 そんなソラをただ一匹だけ慕ってくれたのは―― 拾ってきた野良の黒猫“クロ”。 だが命の灯が消えかけた夜、 その黒猫は正体を現す。 クロは世界に十人しか存在しない“祝福”を与える存在―― しかも九つの祝福を生んだ天使と悪魔を封印した“第十の祝福者”だった。 力を失われ、語ることすら封じられたクロは、 復讐を果たすための契約者を探していた。 クロは瀕死のソラと契約し、 彼の魂を二十年前――十五歳の過去へと送り返す。 唯一のスキル《アイテムボックス》。 そして契約により初めて“成長”する力を与えられたソラは、 弱き自分を変えるため、再びダンジョンと向き合う。 だがその裏で、 クロは封印した九人の祝福者たちを狩り尽くすための、 復讐の道を静かに歩み始めていた。 これは―― “最弱”と“最凶”が手を取り合い、 未来をやり直す物語

俺の家に異世界ファンタジーガチャが来た結果→現実世界で最強に ~極大に増えていくスキルの数が膨大になったので現実世界で無双します~

仮実谷 望
ファンタジー
ガチャを廻したいからそんな理由で謎の異世界ガチャを買った主人公はガチャを廻して自分を鍛えて、最強に至る。現実世界で最強になった主人公は難事件やトラブルを解決する。敵の襲来から世界を守るたった一人の最強が誕生した。そしてガチャの真の仕組みに気付く主人公はさらに仲間と共に最強へと至る物語。ダンジョンに挑戦して仲間たちと共に最強へと至る道。 ガチャを廻しまくり次第に世界最強の人物になっていた。 ガチャ好きすぎて書いてしまった。

素材ガチャで【合成マスター】スキルを獲得したので、世界最強の探索者を目指します。

名無し
ファンタジー
学園『ホライズン』でいじめられっ子の生徒、G級探索者の白石優也。いつものように不良たちに虐げられていたが、勇気を出してやり返すことに成功する。その勢いで、近隣に出没したモンスター討伐に立候補した優也。その選択が彼の運命を大きく変えていくことになるのであった。

ダンジョンのある生活《スマホ片手にレベルアップ》

盾乃あに
ファンタジー
進藤タクマは25歳、彼女にフラれて同棲中の家を追い出され、新しい部屋を借りたがそこにはキッチンに見知らぬ扉が付いていた。床下収納だと思って開けたらそこは始まりのダンジョンだった。  ダンジョンを攻略する自衛隊、タクマは部屋を譲り新しい部屋に引っ越すが、そこにもダンジョンが……  始まりのダンジョンを攻略することになったタクマ。    さぁ、ダンジョン攻略のはじまりだ。

ダンジョントランスポーター ~ 現代に現れたダンジョンに潜ったらレベル999の天使に憑依されて運び屋になってしまった

海道一人
ファンタジー
二十年前、地球の各地に突然異世界とつながるダンジョンが出現した。 ダンジョンから持って出られるのは無機物のみだったが、それらは地球上には存在しない人類の科学や技術を数世代進ませるほどのものばかりだった。 そして現在、一獲千金を求めた探索者が世界中でダンジョンに潜るようになっていて、彼らは自らを冒険者と呼称していた。 主人公、天城 翔琉《あまぎ かける》はよんどころない事情からお金を稼ぐためにダンジョンに潜ることを決意する。 ダンジョン探索を続ける中で翔琉は羽の生えた不思議な生き物に出会い、憑依されてしまう。 それはダンジョンの最深部九九九層からやってきたという天使で、憑依された事で翔は新たなジョブ《運び屋》を手に入れる。 ダンジョンで最強の力を持つ天使に憑依された翔琉は様々な事件に巻き込まれていくのだった。

ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ

高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。 タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。 ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。 本編完結済み。 外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。