ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち

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第104話ライバル

 ハァイ! 私はミア=ローズ。世界で最も注目を集めているトップ探索者よ。

 当然、私にはその自覚がある。

 だから昔から魔法の練習は一回だって欠かさないし、今日まで最高の魔法使いと胸を張れるだけの自分でいたつもり。

 こんなに頑張って、かわいくて天才なんだから、自分こそが同世代でナンバーワンの魔法使いだって、胸を張って当然でしょう?

 ただ―――世界は広い。

 ある日突然、そいつは壁として突然現れた。

 それがレイナ=トーレスというこの女だ。

 同じ魔法使いで、雷という派手な魔法をバリバリ飛ばし。

 ミアの水属性とも相性最悪な、同世代の注目の的。

 私と同じ年齢のはずなのに、凄い背が高いのも最悪。

 まぁ私の方がかわいいけどね? 

 レイナとはいろんなところで出くわしたわ。

 雑誌の取材や、テレビの撮影。

 あとはもちろんダンジョンの中。

 直接戦ったことがあるわけじゃないけど、実力はたぶん互角。

 魔法の属性の分私がちょっと不利かもなんて思わなくもないけど……実際戦ったらたぶん私が上には違いない。

 でもそんな風に競っていた相手が、急に留学なんて言い出した時にはずいぶん拍子抜けしたっけ。

 だって国の手厚いバックアップも、広い国土に山ほどある強力なダンジョンも捨てて、最前線から遠ざかったら衰えるのなんて目に見えてるじゃない?

 これで私達のライバル関係も終わりかなって思ったわね。

 だから今回、お祭りにレイナが出るかもって聞いて、私がこんな所までやって来たのはただの確認作業でしかないってことだ。

 ライバルを吹っ切るためには必要なことで、ここを越えた時、私はもうレイナの手の届かないところに行っちゃうでしょうね。

 それって素晴らしい事でしょう? 私はそう思う。

 私、ミア=ローズはまぁ言っちゃうと、この戦いをすごく楽しみにしてたってわけ。



 今回のお祭りのために組んだ即席パーティのコール=サンダースとブロック=ロウウェルの二人は入場してきて早々のレイナの台詞を聞いて、真っ先に後ろにいる妙な二人組が気になったみたいだった。

「おいおい、あのひょろっとしたのとちっこいのが俺達より強いってことか? 冗談きついぜ。……というか何であいつ頭が燃えてんだ? どういう理屈だ?」

「いや分からんぞ? 東洋の神秘ってやつかもしれん。ダンジョンが現れて、とうとう正体現したんじゃないか? 頭燃えてるしな……」

「そうかもな……だから頭が燃えるのか? やべぇな。気合入ってる」

 本当になんで頭が燃えているのかわかんないけど、市販のジャージと赤いパーカーを着た炎頭とガスマスクなんて、まるでコミックに出てくるみたいな派手な装いの二人組をネタだと思わない方がどうかしてる。

 少しだけ妙な違和感があったが、それを差し引いてもたぶん数合わせだろうとミアは判断した。

 そして待ちに待った瞬間を告げるのは、聞きなれない言語のアナウンスだ。

『会場にお集まりの皆さんステージの準備が整いましたので、次の対戦に移りたいと思います! 今回の対戦カードは海外勢。若き新進気鋭のダンジョン探索者ミア=ローズさん率いるチーム”サンダーブレイク”! 対してダンジョン探索者専門学校から留学中の探索者レイナ=トーレスさん率いるチーム”ダンジョン高校サブカルチャー同好会”! どちらのチームを率いる探索者も、新進気鋭の若きホープ! 実力者同士の高度なバトルにご注目ください!』

 そして両チームが舞台に上がると試合は始まる。

 ビーっと会場に轟くブザー音が開始の合図だ。

 そして盛り上がる会場の歓声の中から聞こえるのは、歓声の他に失笑や落胆の声だった。

「うーん……同好会の方はあれコスプレか? なんかやる気ないなぁ」

「アメリカチームめちゃくちゃ強そう……やる前からなんか可哀そうになってくる」

「ミアちゃんかわいいよなぁ。レイラ様カッコイイし……アメリカは層が厚いな。ロリから美女までレベルが高いや!」

 よし、最後の奴はぶっ飛ばす。

 でも当然の評価過ぎて、反応するのもバカらしい。

 あの色物集団で警戒すべきはレイナただ一人。

 小癪にもメンバーの時点で陽動を掛けて来たみたいだけど、そんなのなんの意味もない。

 そして試合が始まったというのにグズグズしている素人にかまわず、私達はノータイムで敵に襲い掛かった。

「サブカルチャー同好会! まずは盾役から潰してやる! このレオアックスでな!」

「……遠慮なく砕くが、まぁ新技術とやらに期待しろ」

 コールのレオアックスは、攻撃に炎の属性を乗せるダンジョンアイテムで一撃で戦車を真っ二つにするところを見たことがある。

 そしてブロックの拳はトラックを暴発した拳銃みたいに破裂させる凶悪な奴だ。

 コールとブロックは紅い斧と拳を振りかぶって、一人前に出てきていた小柄な前衛のファイアーボールヘッドに狙いを付けた。

「……」

 ファイアーボールヘッドは反応すらできていないのか、大きなハンマーを肩に担いだまま棒立ちだ。

 私は魔力を練り上げたままレイナに意識を集中していたが、レイナにもまるで動く気配がなかったことで強烈な違和感に襲われた。

 ……なに? あまりに動きがなさすぎる。

 ここで初めてミアは眉を顰めた。

 レイナの実力は、誰より把握している。

 こんな素人みたいに一歩も動けないなんてことはブランクがあったとしてもあり得ない。

 爆発と打撃音が響き、まずは一人倒したと観客から歓声が上がるところで起こったのは、うねるようなどよめきだった。

「なんだあれ!」

「どこから出て来た!」

「でかい……腕?」

 私はここでようやくレイナから視線を外して、ファイアーボールヘッドを見た。

 そして炎の中で微動だにせず、背中に浮かんだ巨大な腕で、斧と拳を同時に受け止めたファイアーボールヘッドの姿を見つけて、思わず二度見してしまった。

「……は?」

 会場で一番の歓声を上げたのは、攻撃を受け止められたはずのコールとブロックだった。

「ワオ! ガ〇ダムだぞ! 日本が独自に開発してるって話は本当だったんだ!」

「……! ロボットの腕につけたでかいラウンドシールドだと? どう見たってアメリカ製じゃないかあれは?」

「何よあれ!」

 腕には巨大な盾と、巨大な杭がくっついている。

 そして本体のファイアーボールヘッドはかすり傷一つ負ってはいなかった。

 ……いや何アレ? ほんとに?
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