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第105話思ったよりも
蒸気と火花の舞い上がる舞台の上で、我が鉄巨人アームの初お披露目は成った。
トップ探索者の一撃を受けてもこゆるぎもしないパワー。
あまりにもカッコイイ外装はまさしくプロの仕事で、本当に外注してよかった。
観客席もドヨドヨしていて、どうやら掴みには成功したようだった。
「……」
ありがとう攻略君。やはりアームを瞬間的に着脱できるようにしたのは大成功だったよ。
攻略君曰く、元々モンスターだったことを利用した、テイムモンスター召喚の応用とのことだが、時間がなかったので言われるがまま頑張った。
大変だったがその努力は無駄ではなかったに違いない。
思わぬ副産物としてアメリカ勢の男子二人の目が輝き。
出来上がったパイルバンカー搭載の腕を見て、味方もソワソワしているのを感じるが……今はそっとしておこう。
「……」
今の僕は絶賛ロールプレイ中のファイアーボールヘッドだ。
チーム名がサブカル同好会のくせに何言ってんだと思うだろうが、身バレを防ぐためにも一言もしゃべらないつもりなので。
あと、これはガ〇ダムじゃない。ロボット全部ガ〇ダムじゃないから。
どちらかと言えば、シルエットはバイ〇ランカスタムっぽいからそこは言っておきたいところだったが、そっとこの気持ちは心の奥にしまっておくことにした。
では、相手の攻撃もいったん終わったところだし、こちらも始めよう。
僕はレイナさんに目配せすると、彼女は頷いてギターケースから相棒達を取り出し、飛び乗る。
スピーカー2台はフワリと浮き上がり、同時に飛ぶホバーステージの上で弾かれた弦の音が大音量で轟いた。
「「「「?」」」」
誰も何も理解していない視線がこんなにも集まった瞬間を僕は人生で初めて目撃した気がする。
伴奏が始まり、レイナさんの周囲にはイベント用にデフォルメ調整されたゴーストが無数に沸き出して、彼女の音楽に合わせて踊り出した。
「ショータイムの始まりです! 最初から全開で行きますよ!」
ジャカジャン!とギター音と共に雷の光がレイナさんを中心に弾けた瞬間が、僕らの本当のスタートだ。
僕は走る。
「!」
まず狙いを定めた斧の男、コールは僕の突進を見て驚いていたが、すぐさま反応して迎撃に転じた切り替えは見事だった。
こちらが射程に入ったタイミングを外さずコールは斧を振りかぶり、振り下ろす。
炎の属性が付いている斧は、先ほど体感した限りでは中々の威力を秘めているように見えた。
僕はしかし斧の刃をギリギリまで観察して、再び盾で受け止めた。
爆発は確かに起こったが、僕の盾は砕けない。
そしてここで!
すかさずアームを振り回すと発生していた炎ごと巻き込み、吸い込み、コールの身体ごと一気に吹き飛ばして見せた。
「うおおおおおお!」
ド派手なダブルラリアット、成功である。
背後では僕に格闘家のブロックが襲い掛かって来るのを察知していたが、しかしそれは彼にとって良くない選択だろう。
僕に意識を割いていては、うちの最速には対応できない。
「!」
来るとわかっていた僕でもブロックの背後で霞むガスマスクと、閃く刀の峰打ちがかろうじて確認できたくらいだった。
そして僕はスレッジハンマーを落ちて来たコールの眼前に振り落とす。
ドカリと粉砕した石畳は思いのほか脆く、当ててもいないのに罅が入ってしまった。
「……っ」
ハンマーを突き付けられたコールはもう動けない。
そしてブロックもまた完全に意識を失い、その場に崩れ落ちた。
「……ウソでしょ!」
一瞬でほとんどの戦力を失って、さすがに動揺するミアさんの声が聞こえた。
だが彼女も素直に降参はしない。
ミアさんは杖を構え、魔法のターゲットがこっちに定まった瞬間、バキバキ彼女の周囲に巨大な氷の壁が現れた。
「光栄に思いなさい……少し早いけどとっておきを見せてあげるわ。対レイナ用に開発したとっておきをね!」
気がつけば完全にミアさんを見失うほど大規模な氷は美しい女神の姿を形成していた。
「骨まで氷漬けになりなさい!」
氷の女神は魔力を解放して吹雪が舞台の上を吹き荒れると、氷の壁が襲い掛かって来た。
本来ならもう少しタメが必要だったものを急遽、僕らに使ったようだが……僕らに使うには規模は大きいもののあまりにも展開が遅すぎた。
僕と桃山君は素早く飛びのいて魔法の攻撃圏内から離脱する。
そして僕はさっと手をかざして桃山君に合図した。
ここは任せて欲しい。
ハンドサインに桃山君が頷くのを確認して、僕は新兵器の撃鉄を上げる。
本日初公開。
土魔法でも使って来なかったら使う機会はないだろうと思っていたけど、氷とは実に素晴らしい。
「……!」
おあつらえ向きに聳え立つ氷の壁に向かって、アームを振りかぶった僕は力の限りぶん殴る。
インパクトの瞬間、全開にしたオーラを杭に集中―――トリガーを引いた。
ドン!と火薬の炸裂音が轟き、杭が氷に撃ち出される。
その威力は想定を大きく超えて氷の柱に穴を穿ち、貫通した。
「!」
勢いを殺しきれずにそのまま飛んで行った杭を、ミアさんは更なる氷の魔法で迎撃したが杭が止まったのはミアさんの眼前だった。
ああしかし、あまりにもそれは避雷針としてちょうどいい。
「イェイ!」
レイナさんの声と同時に空から落ちた雷は、のたうつ龍のように舞台を蹂躙して杭を中心にミアさんの氷をすべて砕いて―――終了である。
レイナさんは演奏が途中で止まってちょっと不満そうだが、対戦相手の戦意はすでに喪失していた。
「ハァ……ハァ……ハァ……ハァ……」
感電して動けず、荒い息をするミアさんの息遣いが妙にはっきりと聞こえるほどに静まり返った会場は、始まる前とは別物の様だ。
ああ。でもこれではっきりした。
僕らが考える以上に、レベルの差というやつは大きいらしい。
僕らがそう悟った頃、会場がようやく歓声で揺れた。
そして、実況することも忘れていた実況が再開する。
「い、いったい何が起こったのか分かりませんでしたが、勝者はチームダンジョン学園サブカルチャー同好会! まさかの一瞬! 一瞬での決着でした! 他の探索者達の戦い方とあまりにも違いすぎて何が何だかわかりませんでしたが……と、とにかくすごい戦いでした!」
でしょう?
始まる前には冷笑が混じっていた観客席からも混乱と驚愕交じりの熱い歓声が上がっているところを見ると僕の苦労も報われたようだ。
そしてスススッと空から降りてきたレイナさんは、僕らの前にピョンと飛び降りて、腕をガッチリ掴むと、歓声に応える様に振り上げた。
「ありがとうございます! ではダンジョン学園サブカル同好会をよろしく! 撤収です!」
そして逃げるように舞台を後にした。
「ちょっと……、ま、ひなさいよぉ!」
何やら呼び止めるような声が聞こえないでもなかったが何を言っているかはわかんかんない。
同じように桃山君と後に続いて退場しながら、僕はなんとなく無視していた問題に向き合い始める。
うむ―――どうやら、やりすぎちゃったかもしれないなって。
トップ探索者の一撃を受けてもこゆるぎもしないパワー。
あまりにもカッコイイ外装はまさしくプロの仕事で、本当に外注してよかった。
観客席もドヨドヨしていて、どうやら掴みには成功したようだった。
「……」
ありがとう攻略君。やはりアームを瞬間的に着脱できるようにしたのは大成功だったよ。
攻略君曰く、元々モンスターだったことを利用した、テイムモンスター召喚の応用とのことだが、時間がなかったので言われるがまま頑張った。
大変だったがその努力は無駄ではなかったに違いない。
思わぬ副産物としてアメリカ勢の男子二人の目が輝き。
出来上がったパイルバンカー搭載の腕を見て、味方もソワソワしているのを感じるが……今はそっとしておこう。
「……」
今の僕は絶賛ロールプレイ中のファイアーボールヘッドだ。
チーム名がサブカル同好会のくせに何言ってんだと思うだろうが、身バレを防ぐためにも一言もしゃべらないつもりなので。
あと、これはガ〇ダムじゃない。ロボット全部ガ〇ダムじゃないから。
どちらかと言えば、シルエットはバイ〇ランカスタムっぽいからそこは言っておきたいところだったが、そっとこの気持ちは心の奥にしまっておくことにした。
では、相手の攻撃もいったん終わったところだし、こちらも始めよう。
僕はレイナさんに目配せすると、彼女は頷いてギターケースから相棒達を取り出し、飛び乗る。
スピーカー2台はフワリと浮き上がり、同時に飛ぶホバーステージの上で弾かれた弦の音が大音量で轟いた。
「「「「?」」」」
誰も何も理解していない視線がこんなにも集まった瞬間を僕は人生で初めて目撃した気がする。
伴奏が始まり、レイナさんの周囲にはイベント用にデフォルメ調整されたゴーストが無数に沸き出して、彼女の音楽に合わせて踊り出した。
「ショータイムの始まりです! 最初から全開で行きますよ!」
ジャカジャン!とギター音と共に雷の光がレイナさんを中心に弾けた瞬間が、僕らの本当のスタートだ。
僕は走る。
「!」
まず狙いを定めた斧の男、コールは僕の突進を見て驚いていたが、すぐさま反応して迎撃に転じた切り替えは見事だった。
こちらが射程に入ったタイミングを外さずコールは斧を振りかぶり、振り下ろす。
炎の属性が付いている斧は、先ほど体感した限りでは中々の威力を秘めているように見えた。
僕はしかし斧の刃をギリギリまで観察して、再び盾で受け止めた。
爆発は確かに起こったが、僕の盾は砕けない。
そしてここで!
すかさずアームを振り回すと発生していた炎ごと巻き込み、吸い込み、コールの身体ごと一気に吹き飛ばして見せた。
「うおおおおおお!」
ド派手なダブルラリアット、成功である。
背後では僕に格闘家のブロックが襲い掛かって来るのを察知していたが、しかしそれは彼にとって良くない選択だろう。
僕に意識を割いていては、うちの最速には対応できない。
「!」
来るとわかっていた僕でもブロックの背後で霞むガスマスクと、閃く刀の峰打ちがかろうじて確認できたくらいだった。
そして僕はスレッジハンマーを落ちて来たコールの眼前に振り落とす。
ドカリと粉砕した石畳は思いのほか脆く、当ててもいないのに罅が入ってしまった。
「……っ」
ハンマーを突き付けられたコールはもう動けない。
そしてブロックもまた完全に意識を失い、その場に崩れ落ちた。
「……ウソでしょ!」
一瞬でほとんどの戦力を失って、さすがに動揺するミアさんの声が聞こえた。
だが彼女も素直に降参はしない。
ミアさんは杖を構え、魔法のターゲットがこっちに定まった瞬間、バキバキ彼女の周囲に巨大な氷の壁が現れた。
「光栄に思いなさい……少し早いけどとっておきを見せてあげるわ。対レイナ用に開発したとっておきをね!」
気がつけば完全にミアさんを見失うほど大規模な氷は美しい女神の姿を形成していた。
「骨まで氷漬けになりなさい!」
氷の女神は魔力を解放して吹雪が舞台の上を吹き荒れると、氷の壁が襲い掛かって来た。
本来ならもう少しタメが必要だったものを急遽、僕らに使ったようだが……僕らに使うには規模は大きいもののあまりにも展開が遅すぎた。
僕と桃山君は素早く飛びのいて魔法の攻撃圏内から離脱する。
そして僕はさっと手をかざして桃山君に合図した。
ここは任せて欲しい。
ハンドサインに桃山君が頷くのを確認して、僕は新兵器の撃鉄を上げる。
本日初公開。
土魔法でも使って来なかったら使う機会はないだろうと思っていたけど、氷とは実に素晴らしい。
「……!」
おあつらえ向きに聳え立つ氷の壁に向かって、アームを振りかぶった僕は力の限りぶん殴る。
インパクトの瞬間、全開にしたオーラを杭に集中―――トリガーを引いた。
ドン!と火薬の炸裂音が轟き、杭が氷に撃ち出される。
その威力は想定を大きく超えて氷の柱に穴を穿ち、貫通した。
「!」
勢いを殺しきれずにそのまま飛んで行った杭を、ミアさんは更なる氷の魔法で迎撃したが杭が止まったのはミアさんの眼前だった。
ああしかし、あまりにもそれは避雷針としてちょうどいい。
「イェイ!」
レイナさんの声と同時に空から落ちた雷は、のたうつ龍のように舞台を蹂躙して杭を中心にミアさんの氷をすべて砕いて―――終了である。
レイナさんは演奏が途中で止まってちょっと不満そうだが、対戦相手の戦意はすでに喪失していた。
「ハァ……ハァ……ハァ……ハァ……」
感電して動けず、荒い息をするミアさんの息遣いが妙にはっきりと聞こえるほどに静まり返った会場は、始まる前とは別物の様だ。
ああ。でもこれではっきりした。
僕らが考える以上に、レベルの差というやつは大きいらしい。
僕らがそう悟った頃、会場がようやく歓声で揺れた。
そして、実況することも忘れていた実況が再開する。
「い、いったい何が起こったのか分かりませんでしたが、勝者はチームダンジョン学園サブカルチャー同好会! まさかの一瞬! 一瞬での決着でした! 他の探索者達の戦い方とあまりにも違いすぎて何が何だかわかりませんでしたが……と、とにかくすごい戦いでした!」
でしょう?
始まる前には冷笑が混じっていた観客席からも混乱と驚愕交じりの熱い歓声が上がっているところを見ると僕の苦労も報われたようだ。
そしてスススッと空から降りてきたレイナさんは、僕らの前にピョンと飛び降りて、腕をガッチリ掴むと、歓声に応える様に振り上げた。
「ありがとうございます! ではダンジョン学園サブカル同好会をよろしく! 撤収です!」
そして逃げるように舞台を後にした。
「ちょっと……、ま、ひなさいよぉ!」
何やら呼び止めるような声が聞こえないでもなかったが何を言っているかはわかんかんない。
同じように桃山君と後に続いて退場しながら、僕はなんとなく無視していた問題に向き合い始める。
うむ―――どうやら、やりすぎちゃったかもしれないなって。
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