ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち

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第106話祭りの後

「僕らのお祭り終わっちゃった…………なんちゃって」

 でも少々燃え尽き症候群ではあるかもしれない僕、綿貫 鐘太郎は通学途中に人だかりを見つけて、いったん立ち止まった。

「……なにあれ?」

 人だかりの出来ている場所は学校で、思ったよりも騒ぎになっているらしい。

 記者さんがいっぱい来ていて生徒にもインタビューしているようで、誰かが輪の中心でマイクを向けられていた。

「はい。いやー驚きでしたね。私も映像は見ましたが普通の人間にあんな戦い方が出来るだなんて驚きでしたー。ダンジョンってすごいんですねー。え? レイナさんはもちろん知っていますよ。我が校期待のホープです! 残りの二人ですか? いやいやガスマスクしている奴も頭が燃えている知り合いもいないですねぇ。学校で見てみたいものですよ。え? あんなに強くなれるものかですか? ああ! 強くなれるかはわかりませんが、うちの実家で事業をやってまして……飲むと筋肉発達速度が二倍になったようだと話題のサプリがありまして……え? 宣伝は困る? いいじゃないですか。浦島スポーツジムをよろしくお願いしますー!」

「……」

 インタビュー受けてるのめちゃくちゃ知り合いだった。

 しかも火中のサブカル同好会の部長がインタビューを受けてるのに、見事なそ知らぬふりである。

 まぁ……案外堂々としてればわからないよな。特定する情報もないし。

 浦島先輩がインタビューを受け持っていてくれるおかげで、僕は悠々と学校に入れたから、大変感謝である。

 まぁもちろん顔を隠していた僕は普通に登校出来るわけだが、謎の集団、ダンジョン学園サブカル同好会の名はワールドクラスで知れ渡ってしまったようだった。



「うーむ……エキスポとはいえこんなに反響があるとは。ビックリだなぁ」

 だけどまぁ、やってしまったものは仕方がない。

 素知らぬ顔で自分の教室に入ってマッタリしていると、今日はさっそく突然いつもとは違うことが起った。

「ちょっといいかな? あー……ワタヌキ君?」

「…………はい。大丈夫ですよ?」

 僕はなじみのない声に名前を呼ばれて少し驚いた。

 そしてザワリと教室がどよめいた。

 ただ声の主を見て僕は納得する。

 あまりまだ実感はないが、うちの同好会の顧問になったらしい龍宮院先生が、わざわざ僕をクラスまで呼びに来たのだ。

 しかしこっそり呼ぶには、龍宮院先生は人選ミスだなと僕は思った。


 そしてなぜか連行された生徒会室に待っていたのは二人。

 八坂生徒会長と如月副会長は一端情報を遮断してくれるようである。

 ただ、全員集められた僕らに言いたいことがあるのか、八坂生徒会長の赤みがかった前髪の奥から見える鋭い眼光はいつも以上に鋭い。

 そして一般生徒に向けるには少々大げさなプレッシャーが圧し掛かる。

「やってくれたな……お前達」

 低い声でそう言った八坂生徒会長に、レイナさんはあくまで軽い口調で答えた。

「どうです? サブカル部になれそうですか?」

 まぁでもやれと言われたからやっただけで文句を言われる筋合いはない。

 それは会長もわかっているのか大げさにため息を吐いていた。

 わかっていても言わずにはいられない事ってあると思いますけどね。

「……社会的知名度は上がっただろうさ。昨日からやれいつ空を飛ぶ魔法が発見されたのか? だの、あのロボットアームを売ってくれだの、学校に山のように連絡が来ているらしいぞ? 後どうやって頭を燃やしてるんだ? マジシャンが知りたがっているらしい」

 ジロリと向いた視線は主に僕に向けられていた。

 そういえば……

 謎のロボットアームでダブルラリアットを決めたのも。

 氷の壁にパイルバンカー喰らわして粉砕したのも。

 頭を燃やしているのも僕だけれども……そこは別にどうでもよくないですか?

 というか思ったよりも学校に来る問い合わせがファンキー。そこはかとなく同志の香りもした。

「反応速いですね。たかが学生の模擬試合くらいで。ああいうのってニュースにだって中々ならないでしょう? 精々なんかプチコーナーみたいなので紹介されて、未来のために頑張ってます! みたいなもんだと思ってましたよ」

「プロ顔負けの不思議な現象が山ほど確認されなければな! 君達が何者なのか、世の中は興味津々だよ!」

「……ひょっとしてなにかまずいことになっちゃったりします? 自宅謹慎とか?」

 無茶して悪目立ちしたせいで、なにかメンバーに不利益が出るなら勘弁してほしいところだが、そういうことはないようだった。

「ん? いやそれはないな。別に犯罪でもないんだ。多少世間を騒がせたところで、こういった事からはきちんと守られるさ。ここはかなりセキュリティが厳重な教育機関だからね」

 おお、すごい。流石はダンジョン学校だ。

 いや、ダンジョン探索者は元より世間からの注目を浴びている存在でもある。

 多少の騒ぎくらいなら想定内という事なのかもしれない。

「そうなんですか……それは本当に良かった。チョット張り切りすぎたかなとは思っていたんですが」

 思わず気が抜けて半笑いで言うと、生徒会長からはしっかり釘を刺されてしまった。

「張り切りすぎは張り切りすぎだ。いったいどう張り切ったら、どでかいロボットアームでパイルバンカーを振り回すことになるんだと言いたい。だがまぁけしかけたのは私だ。それにまぁ……こう言ってはなんだが、あの日、見せられたものが何らかのペテンでないのなら騒ぎにくらいなるだろうとも思っていたさ。部には何としても昇格させよう。トーレスさんもそれでいいんだろう?」

「もちろんです! 思ったより大変でした!」

「もっと大変じゃない奴で大丈夫だったんだがな? 君達をけしかける時はもっと考えてから今後は頼むとするよ」

 苦笑する生徒会長は、どうやら最初の予定通りにことを進めてくれる用意があるようだ。

 張りつめていたプレッシャーが霧散して、生徒会室に穏やかな空気が戻ってくると胸を撫でおろした桃山君も、ようやく笑顔を取り戻したようだった。

「いやでも、無茶を通してもらっていることはとてもありがたいでござるよ?」

 ただ、その笑顔を向けられた八坂生徒会長は心中穏やかではないようで、盛大に目が泳いでいたけど。

「……いや? う、うん、これくらいなら大したことではないんだがな? うん……君も困ったことがあればどんどん頼ってくれ?」

「うん。エキスポとても面白かった。あと私も空飛ぶボード欲しい」

「こら、やめておけ如月? 私だって欲しいんだから」

 八坂生徒会長が様子がおかしくなってしまったし、如月副会長は相変わらずだが、僕としては今後も仲よくしてもらいたいと本当にそう思っていた。

「まぁなんにせよ何事にも限度はあるが、今後も期待していることに変わりはない。火の玉怪人ファイアーボールヘッドの今後の活躍にもね?」

「……何ですそれ?」

「君の事だよ。新聞にも出ているし、何ならネットじゃお祭りだ。後で見てみるといい」

「えぇ~……?」

 生徒会長に意地の悪い笑顔で言われて、僕は頬をひきつらせた。

 僕の火の玉ヘッドは、思った以上にインパクトがあったってことか。

 ある意味ビジュアルがすべてじゃない証明をしてしまったかもしれない。こいつは面白いことになったものだった。

 なんにせよ僕らの戦いの宣伝効果は抜群だったようである。
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