ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち

文字の大きさ
112 / 257

第112話驚きの完全封殺

「金細工の台座に、このでっかい球はアイテム……それも転移系ですね。触ると守護者のいる空間に転移するタイプみたいです」

 今回の守護者階層のギミックは、なかなか手が込んでいた。

 台座の上に置いてある水晶玉のような宝玉に手を置くと、守護者のいる空間に直行できる仕組みは、空間系統の高等魔法とのことだ。

 ただしそれは一般的な感覚で言うと、絶望的なギミックという事になるらしい。

 龍宮院先生は、冷汗を浮かべてそれを前に喉を鳴らしていた。

「……つまり逃げ場がないってことか。一応確認しておくけど……撤退する気はないんだね?」

「ないです。では行きます」

「ううう……なんでこんなところに来ちゃったんだろう」

 挑む前から弱音が飛び出したが、挑む相手と自分の実力を天秤にかけて方針を決めたのなら、圧倒的に先生が正しい。

 中の敵にはまず勝てない。

 絶体絶命。

 それが現状の戦力分析の、正確な結果だろうと思う。

 しかも先生視点で言えばまるでデータの無い謎の存在が待ち受けていて、勝たなければ逃げ出すことも出来ないかもしれないと。

 うん。バカだ。ここに入ろうという奴はバカである。

 そんなバカになっても目的地を目指そうという僕は、おそらく思考停止の大馬鹿野郎に違いなかった。

 


 転移装置のアイテムに触れると僕らの身体はすぐさま守護者にいる場所に転移する。

 なんでこんなまどろっこしい真似をしなければならないのか? その理由は転移後すぐに理解した。

「ごぼ!」

 いきなり水中に放り出され、僕はもがいた。

 流石に動揺したが、すぐに攻略君の声が聞こえて来た。

『落ち着け。呼吸は出来るはずだ。ここは閉ざされた空間でダンジョンともまたルールが違う。海を丸ごと閉じ込めるためにさっきの転移アイテムは存在するんだ。そして―――見ろ、あれが今回のおすすめ物件だね』

「……今その話する?」

 攻略君の余りにも緊張感のない話題に僕は逆に冷静になった。

 そして同じく水中に放り出されていた龍宮院先生を回収して、定位置に戻すと、僕も攻略君に習って穏やかに話しかけた。

「大丈夫ですか? 落ち着いて深呼吸深呼吸」

「水中なのにかい!?」

「そうそう。その調子ですよ。息が出来るでしょう? 落ち着いてください」

 龍宮院先生が暴れなくなり、そこでようやくおすすめ物件とやらを確認すると、建物は水中にドカンと聳え立ち、驚くほどの存在感を放っていた。

「……城じゃーん」

「何だこれ?……」

 それは僕にも分かんない。

 金銀宝石で飾り付けられた絢爛豪華な中華風の城が、今回のボス部屋らしい。

 そして城を守る様に立ちふさがるのは―――背丈が4メートル近い龍と人が混ざったような姿のモンスターだった。

 端的に表現するなら龍人とでもいうべきか? 彼は立派な朱色の鎧姿で薙刀のような大刀を持っていて、こちらをすごい形相で睨んでいる。

 それなりのレベルがある僕ですらすさまじい圧迫感を感じていたが、レベル30ほどの龍宮院先生は、身体の震えが止まらないようだった。

「あ、あれは……ヤバすぎる……絶対に勝てない」

「……大丈夫ですよ。備えは万全です」

「万全? そうだ旅行に行こう! みたいなノリで来ておいて?」

「道中苦労して色々集めたでしょう? 効率のいい攻略に無駄は少ない物ですよ」

 そもそも相手がいかに強かろうと、こっちは戦闘を始める間も与えるつもりはない。

 僕はさっそく用意してきた切り札を切って行く。

 切り札その一。

 僕は荷物から真っ赤な宝玉を取り出すと、龍人に向かって投げつけた。

 これは別にぶつけなくてもいい。だってそのアイテムは竜の生命力が欲しくてたまらないのだから近くに寄っただけでも効力を発揮する。

 水中を漂い、龍人の側に流れ着いたとたん、宝玉はゾッとするような輝きを発して、龍人に襲い掛かった。

「……ギャオオオオオ!」

「な、なんだ!」

 水中に響く苦し気な咆哮で、龍宮院先生は慌てて自分の耳を押さえた。

 宝玉から出る赤黒い光は触手のように龍人の体に巻きついて行く。

 実体のないその光に大慌てで龍人は長刀を振り回して抵抗していたが、僕は光が触れた瞬間、龍人の纏うとんでもない圧力が消え失せていくのを感じていた。

「うっ……アレは。力を吸収している?」

 混沌すぎる魔力の流れに気持ち悪さを感じているのか、龍宮院先生は青い顔で呟くが、正直僕もちょっと吐きそうだった。

「……そうですよ。ドラゴンの墓場で手に入れた、竜玉の力です。ドラゴン属性の生命力を吸収する特別なアイテムだと思ってください。あれに捕まったら、まともに動けるようなもんじゃない……はずなんですけど。結構動けてますね」

「ど、どうするんだい?」

「……もちろん。ここからが本番です。じゃあ行きますよ!」

 十分に力を失ったのを確認して、僕は一息に龍人に襲い掛かった。

 両腕をサブアームで捕まえ、僕自身もオーラでその動きを全力で抑えつける。

 ついでに掴んだ竜玉をゴリゴリ体に押し付けてやれば、その効果はテキメンである。

「……っ!」

 それでも恐ろしい力でもがいていたが、何とか抑えきれないほどじゃない。

 普通ならここで更に一手ひねり出すのに一工夫するところだったが、今回はもう一人動ける人手があるので造作もないことだった。

「……今です! 先生!」

「えぇ! ここなの!?」

 先生は死にそうな顔で驚いていたが、すぐさま意図を組んで動いてくれるのはさすがだった。

 僕のリュックサックを踏み台にして、先生は加速。

 さすが有名な探索者だけあって、でっかい金属の塊を持っていても水泳の選手のように鮮やかに龍人に飛びつくと、その腕にガッチリと渡した特別製の腕輪を装着して見せた。

「はい! お疲れさまでした! 攻略完了です!」

 僕は分かりやすく終了を宣言する。

 龍人につけられた腕輪からは禍々しい力が解き放たれて、装飾としてダイヤモンドで作られた瞳が魔力を帯びた輝きを宿していた。

 宝石はとても強固な魔力的器だ。溜めておけば魔力の貯蔵庫となり、封印と合わせると魔力を吸収して奪い取るタンクにだってなる。

 今回はテイムの為だけに作られた腕輪に組み込んで調整し、確実にテイムしていく。

 元より厄介なアイテムで力を放出されていた龍人は気がつけば目から完全に光を無くして抵抗を止めていた。

「よし! これで守護者テイム完了です! お疲れさまでした!」

 ただ実行役だった龍宮院先生は、未だに半信半疑のようで、ものすごく恐々と龍人の顔を覗き込んでいた。

「これでだいじょうぶなのかい? 本当に?」

「はい。もう大丈夫ですよ」

「突然襲い掛かってきたり……しない?」

「しないです」

 腕輪を付けた体勢のまま、ピクリとも動かない龍人をつついている龍宮院先生は心配そうだ。

 だがそう言えば僕としては事後になってしまって恐縮だが、一つだけ伝えておくことはあった。

「ああ、でも先生が命令すれば動きますよ。今こいつ、先生のテイムモンスターなので」

「………………え?」

 さて現状テイムモンスター込みなら最強戦力が誕生した瞬間だった。
感想 3

あなたにおすすめの小説

さびれたレンタル道具屋の転生おっさん、道具の使い方を教えまくる。~客のS級冒険者が俺を歴戦の英雄と勘違いして弟子入りを求めてくるんだが~

遥風 かずら
ファンタジー
前世で過労死した久世織人が目を覚ますとそこは異世界の王都、しかも古道具屋の跡取り息子として転生していた。アクセル・リオットとして成長した彼は荷物持ちとして冒険者パーティーに同行、その道中に【無限収納】スキルを開花させる。 パーティー活動から離脱後、四十歳となったアクセルは前世の記憶を思い出し、儲かりそうという考えで道具レンタル屋を始めていた。客足もなく店がさびれる中、道具の使い方が出来てない冒険者によって治安の乱れや魔物討伐の失敗が続いているという話を常連客から聞かされる。あらゆる道具に精通するアクセルは客の冒険者に使い方を教えに行くことを思い立つ。 アクセルの教えにより、やがてS級冒険者や聖女、王女までも勘違いして彼の元には次々と弟子入りを求める者が現れていくのだった。

《カクヨム様で50000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う

なべぞう
ファンタジー
ダンジョンが生まれて百年。 スキルを持つ人々がダンジョンに挑む世界で、 ソラは非戦闘系スキル《アイテムボックス》しか持たない三流シーカーだった。 弱さゆえに仲間から切り捨てられ、三十五歳となった今では、 満身創痍で生きるだけで精一杯の日々を送っていた。 そんなソラをただ一匹だけ慕ってくれたのは―― 拾ってきた野良の黒猫“クロ”。 だが命の灯が消えかけた夜、 その黒猫は正体を現す。 クロは世界に十人しか存在しない“祝福”を与える存在―― しかも九つの祝福を生んだ天使と悪魔を封印した“第十の祝福者”だった。 力を失われ、語ることすら封じられたクロは、 復讐を果たすための契約者を探していた。 クロは瀕死のソラと契約し、 彼の魂を二十年前――十五歳の過去へと送り返す。 唯一のスキル《アイテムボックス》。 そして契約により初めて“成長”する力を与えられたソラは、 弱き自分を変えるため、再びダンジョンと向き合う。 だがその裏で、 クロは封印した九人の祝福者たちを狩り尽くすための、 復讐の道を静かに歩み始めていた。 これは―― “最弱”と“最凶”が手を取り合い、 未来をやり直す物語

俺の家に異世界ファンタジーガチャが来た結果→現実世界で最強に ~極大に増えていくスキルの数が膨大になったので現実世界で無双します~

仮実谷 望
ファンタジー
ガチャを廻したいからそんな理由で謎の異世界ガチャを買った主人公はガチャを廻して自分を鍛えて、最強に至る。現実世界で最強になった主人公は難事件やトラブルを解決する。敵の襲来から世界を守るたった一人の最強が誕生した。そしてガチャの真の仕組みに気付く主人公はさらに仲間と共に最強へと至る物語。ダンジョンに挑戦して仲間たちと共に最強へと至る道。 ガチャを廻しまくり次第に世界最強の人物になっていた。 ガチャ好きすぎて書いてしまった。

素材ガチャで【合成マスター】スキルを獲得したので、世界最強の探索者を目指します。

名無し
ファンタジー
学園『ホライズン』でいじめられっ子の生徒、G級探索者の白石優也。いつものように不良たちに虐げられていたが、勇気を出してやり返すことに成功する。その勢いで、近隣に出没したモンスター討伐に立候補した優也。その選択が彼の運命を大きく変えていくことになるのであった。

ダンジョンのある生活《スマホ片手にレベルアップ》

盾乃あに
ファンタジー
進藤タクマは25歳、彼女にフラれて同棲中の家を追い出され、新しい部屋を借りたがそこにはキッチンに見知らぬ扉が付いていた。床下収納だと思って開けたらそこは始まりのダンジョンだった。  ダンジョンを攻略する自衛隊、タクマは部屋を譲り新しい部屋に引っ越すが、そこにもダンジョンが……  始まりのダンジョンを攻略することになったタクマ。    さぁ、ダンジョン攻略のはじまりだ。

ダンジョントランスポーター ~ 現代に現れたダンジョンに潜ったらレベル999の天使に憑依されて運び屋になってしまった

海道一人
ファンタジー
二十年前、地球の各地に突然異世界とつながるダンジョンが出現した。 ダンジョンから持って出られるのは無機物のみだったが、それらは地球上には存在しない人類の科学や技術を数世代進ませるほどのものばかりだった。 そして現在、一獲千金を求めた探索者が世界中でダンジョンに潜るようになっていて、彼らは自らを冒険者と呼称していた。 主人公、天城 翔琉《あまぎ かける》はよんどころない事情からお金を稼ぐためにダンジョンに潜ることを決意する。 ダンジョン探索を続ける中で翔琉は羽の生えた不思議な生き物に出会い、憑依されてしまう。 それはダンジョンの最深部九九九層からやってきたという天使で、憑依された事で翔は新たなジョブ《運び屋》を手に入れる。 ダンジョンで最強の力を持つ天使に憑依された翔琉は様々な事件に巻き込まれていくのだった。

ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ

高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。 タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。 ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。 本編完結済み。 外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。