ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち

文字の大きさ
118 / 257

第118話これは悪い例

 戦闘が終わって、月読さん達はいったん休憩していたようだが、その表情は心地よい疲れと、達成感で全員が笑顔を浮かべていた。

 ……いや、正確には月読さんだけは、笑顔というより無表情で様子がおかしかった。

「今のは良かったな! 綺麗に連携がハマった!」

「ああ……苦労したがようやく形になって来たってことだろう」

「楽勝じゃない! もっとどんどん進んでいいんじゃない? 今の私達ならもっと深く行けるって!」

 彼らの戦闘は、彼らの納得のいくものだったらしい。

 ただ一人黙り込んでいる月読さんは自分の杖をじっと眺めて、そして他のパーティメンバーを見回して困惑しているようだった。

「……」

「どうしたんだ?」

 草薙君は月読さんに話しかけたが、浮かない表情は変わらず彼女は首を横に振った。

「い、いえ。別になんでもないわ。……でも、急ぎすぎじゃないかしら? 少しずつ慣らしていかないと危険だわ」

 消極的なセリフが、彼女の不安を物語っている。

 一方で他のメンバーは、なぜそんなセリフが出るのかまるで理解出来ないと言う感じである。

 同じ魔法使いの天音さんも、訳が分からないと肩をすくめた。
 
「そう? 今のモンスターも楽勝だったじゃない。この感じだと、もっと深く潜っても全然大丈夫そうだけど?」

「ボクもそう思う。カナタ……お前はどう思う?」

「俺も行けると思うけど。今までの苦労が報われてる感じがするよ」

 満場一致で意見が合うことに、月読さんは益々表情を曇らせた。

「でも……」

「何がそんなに心配なのかわからないけど。どんなモンスターが来ても俺が絶対守るよ。だから信頼してくれないか? な!」

 おかしな空気になっていることをどうにかしようとしたのか、草薙君は月読さんを宥めようとしたようだが、これが逆効果だった。

「……やっぱりダメ、だと思うわ。このまま先に進むべきじゃない」

「……それは俺が信用できないってことか?」

「そうね……信用できない。だって―――」

「何かあるのか?」

「―――今、楽に倒せているのが、私の魔法の威力が上がったからだって、気がついていないんでしょう?」

 迷っていた月読さんは意を決してそう口にした。

 懸念はあったのだろう。

 ただ、実力が上がったと喜んでいるパーティメンバーにしたらその言葉は気分がいいわけがなかった。

「なにそれ? 自分の手柄だって言いたいの?」

 まず嚙みついたのは天音さんだった。

 気の強い彼女は月読さんの言葉を飲み込めなかったようだが、月読さんは意見を変えなかった。

「……事実よ」

 空気がピリつく。だからこそ月読さんは説明しようと口を開いた。

「私の魔力が上がったのはレベルが上がったからだけじゃない。もっと不確定なものよ、だから不確実なことは言えないけど……」

「話にならないな」

 だが要領を得ない月読さんの言葉をハバキリ君がメガネを光らせバッサリと切り捨てる。

「待ってくれ」

 そして草薙君は間に入ったが、どちらかと言えば月読さんを逆に諭すように言った。

「……確かに、君の魔法は成長していると思う。だけどそれだけってことはないだろう? 俺達はここまで努力してきたし、ようやく壁を突破したとは考えられないか?」

「残念だけど……そうは思えないわ」

「そうか……だが多数決だ。ここから先には進む。様子を見ながら慎重に、それでいいかな?」

「……わかったわ」


******


「うーむ……」

 そこで険悪なまま、会話が終わってしまう。

 腰を上げた彼らはそこから一言も言葉を発することなく、探索を続行するようだった。

 僕はこりゃまずいと唸った。

「やばーい……きまずい!」

「あらら……大丈夫かな?」

 水筒に持ってきていたらしいティーを啜る浦島先輩の感想からも、たぶんダメだろうなってニュアンスを感じた。

「……やっぱまずいですかね?」

 答えは分かっていたが聞いてみると、浦島先輩は即答した。

「まずいね。これ崩壊する感じのやつだわ。ただ今回の場合、あの月読って子の勘違いだったらいいんだけど……たぶんあの子の見立て、正しいんでしょ?」

「……おそらく」

「それで、ワタヌキ君はその原因を知っていると」

「うちの売店で精霊ガチャが大当たり……」

 白状した僕のセリフを聞いた浦島先輩は、苦笑いだった。

「ああー……なるほど。で、彼女はパーティメンバーにも言わずに精霊パワーを検証中と。わけわかんないもんね精霊」

 仲間にするだけで様々なことができる精霊は、触れれば触れるだけよくわからなさが増している。

 頼りになる仲間の様であり、杖に入れば魔法の威力を上げ、絆を結べばパワーアップ。

 機械の中に入れば、現代の精密機器ですら動かせる、凄い奴だ。

 だがそんな事実はまだ世の中には広まっていない。

 精霊を目撃していてもモンスターの一種というのが、探索者の常識だった。

 僕は苦い表情で、月読さんを目で追った。

「……そうですね。でも、強くなること自体は問題ないはずなんですけど……よりにもよって悪い方の例を引いてる感じがありますね」

「なー。そんな感じだねぇ」

 一人だけいきなり急激に実力が上がるなんて、現実的ではないという意見はよくわかる。
 
 手札を積極的に見せ合わないのはお互いに切磋琢磨するライバルであるが故だろうか?

 いや、まぁ精霊が不確定要素過ぎて、十分に確証を得られるまでは戦闘で頼りにしすぎることは出来ないという可能性もある。

 僕としては積極的に使って、バンバン戦闘に組み込んでいってほしいところだったが、それは僕の都合である。

 僕がはらはらしながら彼女達を見ていると、浦島先輩は言う。

「うーん。じゃあもう少し様子見てようか?」

「……いいですか?」

「もちろん。どうせ、ブラブラテイム出来そうなモンスター探すだけなんだから。ちょうどいいでしょ?」

「ありがとうございます!」

 思わず僕が頭を下げると浦島先輩は軽く笑い飛ばした。

 そして持ってきていたらしいクッキーをパキリと齧って、休憩終了と立ち上がった。

「よいよい。まぁでも精霊がくっついてるんなら逆立ちしてもこんな所じゃ負けないと思うけどね……その精霊って例の守護者階層のやつでしょ?」

「そのはずなんですけどね……」

 あまり他所のパーティ事情に首を突っ込むのはタブーに近い。

 だが原因が原因だけに、気が気じゃないのは確かだった。

「とりあえずカメラ君には尾行を継続指示! よろしく!」

「御意!」

 しかし、これもストーキングというやつになるのかな?

 なんだかすごく悪いことをしている気がして来たが、僕らは十分に距離をとって、草薙パーティの追跡を開始した。
感想 3

あなたにおすすめの小説

さびれたレンタル道具屋の転生おっさん、道具の使い方を教えまくる。~客のS級冒険者が俺を歴戦の英雄と勘違いして弟子入りを求めてくるんだが~

遥風 かずら
ファンタジー
前世で過労死した久世織人が目を覚ますとそこは異世界の王都、しかも古道具屋の跡取り息子として転生していた。アクセル・リオットとして成長した彼は荷物持ちとして冒険者パーティーに同行、その道中に【無限収納】スキルを開花させる。 パーティー活動から離脱後、四十歳となったアクセルは前世の記憶を思い出し、儲かりそうという考えで道具レンタル屋を始めていた。客足もなく店がさびれる中、道具の使い方が出来てない冒険者によって治安の乱れや魔物討伐の失敗が続いているという話を常連客から聞かされる。あらゆる道具に精通するアクセルは客の冒険者に使い方を教えに行くことを思い立つ。 アクセルの教えにより、やがてS級冒険者や聖女、王女までも勘違いして彼の元には次々と弟子入りを求める者が現れていくのだった。

《カクヨム様で50000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う

なべぞう
ファンタジー
ダンジョンが生まれて百年。 スキルを持つ人々がダンジョンに挑む世界で、 ソラは非戦闘系スキル《アイテムボックス》しか持たない三流シーカーだった。 弱さゆえに仲間から切り捨てられ、三十五歳となった今では、 満身創痍で生きるだけで精一杯の日々を送っていた。 そんなソラをただ一匹だけ慕ってくれたのは―― 拾ってきた野良の黒猫“クロ”。 だが命の灯が消えかけた夜、 その黒猫は正体を現す。 クロは世界に十人しか存在しない“祝福”を与える存在―― しかも九つの祝福を生んだ天使と悪魔を封印した“第十の祝福者”だった。 力を失われ、語ることすら封じられたクロは、 復讐を果たすための契約者を探していた。 クロは瀕死のソラと契約し、 彼の魂を二十年前――十五歳の過去へと送り返す。 唯一のスキル《アイテムボックス》。 そして契約により初めて“成長”する力を与えられたソラは、 弱き自分を変えるため、再びダンジョンと向き合う。 だがその裏で、 クロは封印した九人の祝福者たちを狩り尽くすための、 復讐の道を静かに歩み始めていた。 これは―― “最弱”と“最凶”が手を取り合い、 未来をやり直す物語

俺の家に異世界ファンタジーガチャが来た結果→現実世界で最強に ~極大に増えていくスキルの数が膨大になったので現実世界で無双します~

仮実谷 望
ファンタジー
ガチャを廻したいからそんな理由で謎の異世界ガチャを買った主人公はガチャを廻して自分を鍛えて、最強に至る。現実世界で最強になった主人公は難事件やトラブルを解決する。敵の襲来から世界を守るたった一人の最強が誕生した。そしてガチャの真の仕組みに気付く主人公はさらに仲間と共に最強へと至る物語。ダンジョンに挑戦して仲間たちと共に最強へと至る道。 ガチャを廻しまくり次第に世界最強の人物になっていた。 ガチャ好きすぎて書いてしまった。

素材ガチャで【合成マスター】スキルを獲得したので、世界最強の探索者を目指します。

名無し
ファンタジー
学園『ホライズン』でいじめられっ子の生徒、G級探索者の白石優也。いつものように不良たちに虐げられていたが、勇気を出してやり返すことに成功する。その勢いで、近隣に出没したモンスター討伐に立候補した優也。その選択が彼の運命を大きく変えていくことになるのであった。

ダンジョンのある生活《スマホ片手にレベルアップ》

盾乃あに
ファンタジー
進藤タクマは25歳、彼女にフラれて同棲中の家を追い出され、新しい部屋を借りたがそこにはキッチンに見知らぬ扉が付いていた。床下収納だと思って開けたらそこは始まりのダンジョンだった。  ダンジョンを攻略する自衛隊、タクマは部屋を譲り新しい部屋に引っ越すが、そこにもダンジョンが……  始まりのダンジョンを攻略することになったタクマ。    さぁ、ダンジョン攻略のはじまりだ。

ダンジョントランスポーター ~ 現代に現れたダンジョンに潜ったらレベル999の天使に憑依されて運び屋になってしまった

海道一人
ファンタジー
二十年前、地球の各地に突然異世界とつながるダンジョンが出現した。 ダンジョンから持って出られるのは無機物のみだったが、それらは地球上には存在しない人類の科学や技術を数世代進ませるほどのものばかりだった。 そして現在、一獲千金を求めた探索者が世界中でダンジョンに潜るようになっていて、彼らは自らを冒険者と呼称していた。 主人公、天城 翔琉《あまぎ かける》はよんどころない事情からお金を稼ぐためにダンジョンに潜ることを決意する。 ダンジョン探索を続ける中で翔琉は羽の生えた不思議な生き物に出会い、憑依されてしまう。 それはダンジョンの最深部九九九層からやってきたという天使で、憑依された事で翔は新たなジョブ《運び屋》を手に入れる。 ダンジョンで最強の力を持つ天使に憑依された翔琉は様々な事件に巻き込まれていくのだった。

ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ

高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。 タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。 ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。 本編完結済み。 外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。