120 / 257
第120話炎と背中
「なんというか……本当に面倒ごとに巻き込まれるな月読さんは」
しかもよく死にかけている。
今回はしかし、上位精霊がいる限り20階までで死ぬようなことはないと思うが、全て精霊頼りでは心もとなくもあった。
よほど連携が取れてないと、バッチリ守れないのは人間も精霊も同じことだ。
それがレベルが全く違うのなら取り残される可能性は大いにある。
アレは強力だが自我の薄い存在でもある。慣れていなければ完璧な連携は難しいという話だった。
その時、攻略君が驚きを口にした。
『彼女は11階にいるようだが……少しまずいよこれ』
「……どうまずい?」
『モンスターハウスだ。モンスターが無限湧きする部屋だね。そこにいる』
「……! どんだけ運が悪いの!?」
罠から罠にダイブしていて猛烈にヤバい。
攻略君はしかしすでに何とかなると踏んでいるようで、ややお気楽な雰囲気だ。
『まぁ人生、そういうものだよ。だが最悪でもないだろう?』
「そうかなぁ?」
『そうとも。なにせ君が見ていたんだ。急ごう。なに壁とか適当にぶち抜いてしまえば、すぐだよすぐ』
「それは結構大変なんじゃないかな!?」
こいつはもたもたしている暇はなくなってきたようだ。
パラメーター的に急ぐのは苦手だというのに、日々のマラソンの成果を全力で発揮しなければいけないようだった。
いや……活かすべきは大工の方かな?
「……」
ユラリとハンマーを構え、僕は眼前の壁をなんということはないが見つめた。
*****
「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……あなたって、こんなに強かったのね」
月読カノンは、今まさに大ピンチの真っただ中にいた。
そんな中でもまだ生きていられているのは、自分を守るために頑張ってくれている一匹の兎の活躍に他ならなかった。
強いことは分かっていたが、まさかここまでとは思わなかった。
トラップで飛ばされた未知の階層は、夥しい数のモンスターが次々に現れる地獄のような部屋だったのだ。
出てくるモンスターを片っ端からウサギキックで粉砕していく白玉の戦いっぷりはすさまじく、カノンでは全く歯が立たないモンスターを歯牙にもかけない。
カノンはしかしついて行くのがやっとで、自分がまだ生きていることが不思議な状況だった。
だが全方位を埋め尽くす、レベルの違うモンスター達は途切れる気配がまるでない。
あまりにも湧き出して、討伐を手伝うだけでレベルが上がってしまったほどだったがそれでも勝てる気はしなかった。
結局、まだまだこの階層は早かったのだと強く再確認している真っ最中である。
白玉もいくら強いとはいえ、何度もこのまま戦い続けたら消耗は避けられないだろう。
だが脱出する目途は立たず、カノンには物量に押し潰されるのは時間の問題に思えた。
「……本当についてない」
そもそもなんでこんなことをしているのか、カノンも自分でもよくわかってはいない。
カノンが探索者の学園に入学したことすら、自分の意思であったのかも定かではなかった。
月読の家は古くから続く名家で、神々との間を取り次ぐ巫女の家系が源流だと言われる不思議な力が元々あったらしい。
それがダンジョンが生まれ、世に出始めてからその力が強くなり始めたのだという。
カノンも例にもれずに特殊なスキルに目覚め、その力を制御するために家の勧めに従ってダンジョン学園の門を叩くことになった。
理屈はわかる。
実際月読の家の能力の知識は、ダンジョン探索者に現れるスキルや魔法と通じるものがあったらしい。
元々占い師のようなことをやっていた家系はだいぶん落ちぶれていたみたいだったが、ダンジョンの発生により近年存在感を増したという事もあって、その手の力への理解を深めるためにダンジョンとより深く関わるのは、一族の総意とも言えた。
ただカノン自身は、そんな難しいことは考えてはいなかったと思う。
誰かの力になりたいだとか、誰かに恥じない生き方をしたいだとか。
ただ一番は結局のところ、力に振りまわされているばかりの自分をいったん家を出て冷静に見たかっただけなのかも知れない。
だが、結局どうにも……そんなことを気にする必要がないくらいカノン自身には力なんてなかったし、なにもできなかったらしい。
その結果として、カノンの目の前には絶望が迫っている。
「―――ここまでか」
白玉の攻撃を抜けてカノンに襲い掛かって来たモンスターを今度こそとても避けられそうにない。
走馬灯というのか、その攻撃は妙にゆっくり見えて、カノンはやけに長くその時を待つことになった。
瞬きもしないで、迫る牙とモンスターの口の中を見ている。
しかし、死の瞬間は結局最後までやってこなかった。
代わりにカノンの視界に割り込んできたのはハンマーの頭と、激しく燃え上がる炎の火花だった。
「……えぇ?」
カノンは声を漏らす。
モンスターは粉々に砕け散り、彼はメラメラ燃えながらいつかと同じようにカノンに背中を向けていた。
「おお……ぎりぎりセーフ」
僕は小声で呟く。
まったく僕がダンジョンの壁を粉砕しなれていなかったら、ひどいことになるところだった。
だが―――間に合った。
流石僕だとこの時ばかりは自画自賛させていただこう。
そして今回のMVPはもちろん光の精霊白玉君だ。
ウサギの姿で頑張っているようだが、これだけグルリと囲まれたら守りながら戦うのはさぞ難しかっただろう。
しかし安心しなさい―――私が来た。
最近言ってみたいセリフ上位を口の中で呟いて、数だけ多いモンスター共を前に僕は頭を燃え上がらせた。
「これがモンスターハウスか……随分と趣味の悪い罠じゃないか」
『まぁ。便利ではあるんだよ? そのうちモンスターハウスを使ったレベル上げプランがあったんだがね?』
「……そんな予定があったかー」
この攻略君。また恐ろしい攻略を考え付くものだった。
モンスターハウスの有効活用法はともかく……今はただのトラップだから、意識を切り替えて遠慮なくぶっ壊すとしよう。
山ほどいるモンスターは、脅威じゃなくても心臓に悪い。
こいつはさっさと脱出を急いで、浦島先輩と合流した方が良さそうである。
ただ救助しに来た月読さんはさっきからこちらをじっと見ていて落ち着かない。
そしてどういうわけか月読さんは彼女にしては珍しくずいぶん呆けた顔をしていた。
「エキスポの怪人……」
……なるほど?
そのいかにも怪しげな名を呼ぶのはやめて欲しい。
だけど今は訂正している場合じゃないのが困りどころだった。
しかもよく死にかけている。
今回はしかし、上位精霊がいる限り20階までで死ぬようなことはないと思うが、全て精霊頼りでは心もとなくもあった。
よほど連携が取れてないと、バッチリ守れないのは人間も精霊も同じことだ。
それがレベルが全く違うのなら取り残される可能性は大いにある。
アレは強力だが自我の薄い存在でもある。慣れていなければ完璧な連携は難しいという話だった。
その時、攻略君が驚きを口にした。
『彼女は11階にいるようだが……少しまずいよこれ』
「……どうまずい?」
『モンスターハウスだ。モンスターが無限湧きする部屋だね。そこにいる』
「……! どんだけ運が悪いの!?」
罠から罠にダイブしていて猛烈にヤバい。
攻略君はしかしすでに何とかなると踏んでいるようで、ややお気楽な雰囲気だ。
『まぁ人生、そういうものだよ。だが最悪でもないだろう?』
「そうかなぁ?」
『そうとも。なにせ君が見ていたんだ。急ごう。なに壁とか適当にぶち抜いてしまえば、すぐだよすぐ』
「それは結構大変なんじゃないかな!?」
こいつはもたもたしている暇はなくなってきたようだ。
パラメーター的に急ぐのは苦手だというのに、日々のマラソンの成果を全力で発揮しなければいけないようだった。
いや……活かすべきは大工の方かな?
「……」
ユラリとハンマーを構え、僕は眼前の壁をなんということはないが見つめた。
*****
「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……あなたって、こんなに強かったのね」
月読カノンは、今まさに大ピンチの真っただ中にいた。
そんな中でもまだ生きていられているのは、自分を守るために頑張ってくれている一匹の兎の活躍に他ならなかった。
強いことは分かっていたが、まさかここまでとは思わなかった。
トラップで飛ばされた未知の階層は、夥しい数のモンスターが次々に現れる地獄のような部屋だったのだ。
出てくるモンスターを片っ端からウサギキックで粉砕していく白玉の戦いっぷりはすさまじく、カノンでは全く歯が立たないモンスターを歯牙にもかけない。
カノンはしかしついて行くのがやっとで、自分がまだ生きていることが不思議な状況だった。
だが全方位を埋め尽くす、レベルの違うモンスター達は途切れる気配がまるでない。
あまりにも湧き出して、討伐を手伝うだけでレベルが上がってしまったほどだったがそれでも勝てる気はしなかった。
結局、まだまだこの階層は早かったのだと強く再確認している真っ最中である。
白玉もいくら強いとはいえ、何度もこのまま戦い続けたら消耗は避けられないだろう。
だが脱出する目途は立たず、カノンには物量に押し潰されるのは時間の問題に思えた。
「……本当についてない」
そもそもなんでこんなことをしているのか、カノンも自分でもよくわかってはいない。
カノンが探索者の学園に入学したことすら、自分の意思であったのかも定かではなかった。
月読の家は古くから続く名家で、神々との間を取り次ぐ巫女の家系が源流だと言われる不思議な力が元々あったらしい。
それがダンジョンが生まれ、世に出始めてからその力が強くなり始めたのだという。
カノンも例にもれずに特殊なスキルに目覚め、その力を制御するために家の勧めに従ってダンジョン学園の門を叩くことになった。
理屈はわかる。
実際月読の家の能力の知識は、ダンジョン探索者に現れるスキルや魔法と通じるものがあったらしい。
元々占い師のようなことをやっていた家系はだいぶん落ちぶれていたみたいだったが、ダンジョンの発生により近年存在感を増したという事もあって、その手の力への理解を深めるためにダンジョンとより深く関わるのは、一族の総意とも言えた。
ただカノン自身は、そんな難しいことは考えてはいなかったと思う。
誰かの力になりたいだとか、誰かに恥じない生き方をしたいだとか。
ただ一番は結局のところ、力に振りまわされているばかりの自分をいったん家を出て冷静に見たかっただけなのかも知れない。
だが、結局どうにも……そんなことを気にする必要がないくらいカノン自身には力なんてなかったし、なにもできなかったらしい。
その結果として、カノンの目の前には絶望が迫っている。
「―――ここまでか」
白玉の攻撃を抜けてカノンに襲い掛かって来たモンスターを今度こそとても避けられそうにない。
走馬灯というのか、その攻撃は妙にゆっくり見えて、カノンはやけに長くその時を待つことになった。
瞬きもしないで、迫る牙とモンスターの口の中を見ている。
しかし、死の瞬間は結局最後までやってこなかった。
代わりにカノンの視界に割り込んできたのはハンマーの頭と、激しく燃え上がる炎の火花だった。
「……えぇ?」
カノンは声を漏らす。
モンスターは粉々に砕け散り、彼はメラメラ燃えながらいつかと同じようにカノンに背中を向けていた。
「おお……ぎりぎりセーフ」
僕は小声で呟く。
まったく僕がダンジョンの壁を粉砕しなれていなかったら、ひどいことになるところだった。
だが―――間に合った。
流石僕だとこの時ばかりは自画自賛させていただこう。
そして今回のMVPはもちろん光の精霊白玉君だ。
ウサギの姿で頑張っているようだが、これだけグルリと囲まれたら守りながら戦うのはさぞ難しかっただろう。
しかし安心しなさい―――私が来た。
最近言ってみたいセリフ上位を口の中で呟いて、数だけ多いモンスター共を前に僕は頭を燃え上がらせた。
「これがモンスターハウスか……随分と趣味の悪い罠じゃないか」
『まぁ。便利ではあるんだよ? そのうちモンスターハウスを使ったレベル上げプランがあったんだがね?』
「……そんな予定があったかー」
この攻略君。また恐ろしい攻略を考え付くものだった。
モンスターハウスの有効活用法はともかく……今はただのトラップだから、意識を切り替えて遠慮なくぶっ壊すとしよう。
山ほどいるモンスターは、脅威じゃなくても心臓に悪い。
こいつはさっさと脱出を急いで、浦島先輩と合流した方が良さそうである。
ただ救助しに来た月読さんはさっきからこちらをじっと見ていて落ち着かない。
そしてどういうわけか月読さんは彼女にしては珍しくずいぶん呆けた顔をしていた。
「エキスポの怪人……」
……なるほど?
そのいかにも怪しげな名を呼ぶのはやめて欲しい。
だけど今は訂正している場合じゃないのが困りどころだった。
あなたにおすすめの小説
さびれたレンタル道具屋の転生おっさん、道具の使い方を教えまくる。~客のS級冒険者が俺を歴戦の英雄と勘違いして弟子入りを求めてくるんだが~
遥風 かずら
ファンタジー
前世で過労死した久世織人が目を覚ますとそこは異世界の王都、しかも古道具屋の跡取り息子として転生していた。アクセル・リオットとして成長した彼は荷物持ちとして冒険者パーティーに同行、その道中に【無限収納】スキルを開花させる。
パーティー活動から離脱後、四十歳となったアクセルは前世の記憶を思い出し、儲かりそうという考えで道具レンタル屋を始めていた。客足もなく店がさびれる中、道具の使い方が出来てない冒険者によって治安の乱れや魔物討伐の失敗が続いているという話を常連客から聞かされる。あらゆる道具に精通するアクセルは客の冒険者に使い方を教えに行くことを思い立つ。
アクセルの教えにより、やがてS級冒険者や聖女、王女までも勘違いして彼の元には次々と弟子入りを求める者が現れていくのだった。
《カクヨム様で50000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う
なべぞう
ファンタジー
ダンジョンが生まれて百年。
スキルを持つ人々がダンジョンに挑む世界で、
ソラは非戦闘系スキル《アイテムボックス》しか持たない三流シーカーだった。
弱さゆえに仲間から切り捨てられ、三十五歳となった今では、
満身創痍で生きるだけで精一杯の日々を送っていた。
そんなソラをただ一匹だけ慕ってくれたのは――
拾ってきた野良の黒猫“クロ”。
だが命の灯が消えかけた夜、
その黒猫は正体を現す。
クロは世界に十人しか存在しない“祝福”を与える存在――
しかも九つの祝福を生んだ天使と悪魔を封印した“第十の祝福者”だった。
力を失われ、語ることすら封じられたクロは、
復讐を果たすための契約者を探していた。
クロは瀕死のソラと契約し、
彼の魂を二十年前――十五歳の過去へと送り返す。
唯一のスキル《アイテムボックス》。
そして契約により初めて“成長”する力を与えられたソラは、
弱き自分を変えるため、再びダンジョンと向き合う。
だがその裏で、
クロは封印した九人の祝福者たちを狩り尽くすための、
復讐の道を静かに歩み始めていた。
これは――
“最弱”と“最凶”が手を取り合い、
未来をやり直す物語
俺の家に異世界ファンタジーガチャが来た結果→現実世界で最強に ~極大に増えていくスキルの数が膨大になったので現実世界で無双します~
仮実谷 望
ファンタジー
ガチャを廻したいからそんな理由で謎の異世界ガチャを買った主人公はガチャを廻して自分を鍛えて、最強に至る。現実世界で最強になった主人公は難事件やトラブルを解決する。敵の襲来から世界を守るたった一人の最強が誕生した。そしてガチャの真の仕組みに気付く主人公はさらに仲間と共に最強へと至る物語。ダンジョンに挑戦して仲間たちと共に最強へと至る道。
ガチャを廻しまくり次第に世界最強の人物になっていた。
ガチャ好きすぎて書いてしまった。
素材ガチャで【合成マスター】スキルを獲得したので、世界最強の探索者を目指します。
名無し
ファンタジー
学園『ホライズン』でいじめられっ子の生徒、G級探索者の白石優也。いつものように不良たちに虐げられていたが、勇気を出してやり返すことに成功する。その勢いで、近隣に出没したモンスター討伐に立候補した優也。その選択が彼の運命を大きく変えていくことになるのであった。
ダンジョンのある生活《スマホ片手にレベルアップ》
盾乃あに
ファンタジー
進藤タクマは25歳、彼女にフラれて同棲中の家を追い出され、新しい部屋を借りたがそこにはキッチンに見知らぬ扉が付いていた。床下収納だと思って開けたらそこは始まりのダンジョンだった。
ダンジョンを攻略する自衛隊、タクマは部屋を譲り新しい部屋に引っ越すが、そこにもダンジョンが……
始まりのダンジョンを攻略することになったタクマ。
さぁ、ダンジョン攻略のはじまりだ。
ダンジョントランスポーター ~ 現代に現れたダンジョンに潜ったらレベル999の天使に憑依されて運び屋になってしまった
海道一人
ファンタジー
二十年前、地球の各地に突然異世界とつながるダンジョンが出現した。
ダンジョンから持って出られるのは無機物のみだったが、それらは地球上には存在しない人類の科学や技術を数世代進ませるほどのものばかりだった。
そして現在、一獲千金を求めた探索者が世界中でダンジョンに潜るようになっていて、彼らは自らを冒険者と呼称していた。
主人公、天城 翔琉《あまぎ かける》はよんどころない事情からお金を稼ぐためにダンジョンに潜ることを決意する。
ダンジョン探索を続ける中で翔琉は羽の生えた不思議な生き物に出会い、憑依されてしまう。
それはダンジョンの最深部九九九層からやってきたという天使で、憑依された事で翔は新たなジョブ《運び屋》を手に入れる。
ダンジョンで最強の力を持つ天使に憑依された翔琉は様々な事件に巻き込まれていくのだった。
ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ
高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。
タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。
ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。
本編完結済み。
外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。
オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】
山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。
失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。
そんな彼が交通事故にあった。
ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。
「どうしたものかな」
入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。
今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。
たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。
そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。
『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』
である。
50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。
ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。
俺もそちら側の人間だった。
年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。
「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」
これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。
注意事項
50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。
あらかじめご了承の上読み進めてください。
注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。
注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。