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第139話東雲さんが来た
「どうしたんでござるか?」
「お客さんだよ。ホラ、僕のパイルバンカー外注した会社の社長さんの娘さんらしくて」
僕の無茶ぶりに快く答えてくれた、あの東雲鉄工さんには大変お世話になった。
すでに現物を見ている桃山君も、当然のようにテンションを上げていた。
「ほぉ! ではあのパイルバンカーを作った会社の!」
桃山君のセリフを聞いて、アハハと頭を掻いた東雲 蘭さんは恥ずかしそうに笑って頷いた。
「……父も年甲斐もなくはしゃいでしもうて、お恥ずかしい」
「いやいや。おかげでいい買い物ができたと思いますよ。それで今日は?」
「ええ、一先ずご挨拶にと思いまして。……それと、私の方から少しお聞きしたいことがあるんです」
「聞きたいことですか?」
「ええ。ワタヌキさん……あのアームを自作なされたって本当ですか?」
おおっとこれはいきなりストレートに来たもんだ。
まぁ無理もない。
相手は東雲さんの所のお嬢さんだ。謎技術で製作されたバックパックアームなんてを見たら、詳細を知りたくなるのも仕方がないだろう。
普通は企業秘密として隠すのだろうけど、残念僕はそうしない。
「ええそうですよ。僕が作りました」
「……! そうですか……父は、あのアームは、機械技術じゃないダンジョンの技術を使ったものだと言っていました。つまり貴方は……ダンジョンの技術を解き明かしたという事なんですか?」
いやそんなことはないけどね。疑問になら応えられるくらいの能力ではありますが。
だけど残念。そこは素直に答えられないラインだった。
「そうですね……だとしたらどうします?」
何となくもったいぶってそう言うと、息を呑んだ東雲さんは一旦呼吸を整えていた。
「!……そうですね、あまりにも不躾過ぎました。実は私、武器についてすごく興味があるんです!」
なるほど? どうやら蘭さんはずいぶんとお父さん思いのお嬢さんのようだ。
なんとしてもダンジョン由来の技術を手に入れるために、探りを入れに来たというわけだ。
いつか来るだろうとは思っていたが、こんなに早いとは。
ではこちらもますます気を引き締めねばならない。
こちらとて隠さないとは言っても安売りするのは少し違うだろう。
相手はすでに事業をやっている大人が背後にいるのなら、こちらも慣れない交渉を考えなければならない。
東雲さんは内心相当に身構えた僕を前にして、自分の話を語り始めた。
「ええ、とても個人的な話なんですけど……私はいつか自分の刀を自作したいと考えていまして」
「ん? 刀?」
「ええ、刀です。それもただの刀ではなくて、特殊な刀を作るのが夢なんです」
なんか、ちょっと方向性が変わって来たな。
東雲さん、そういうのもお家の為なんだろうか? 鉄鋼業ならおかしくはないか?
刀っていうのはかなり特殊な技術の様な気がするんだけど……あれかな? 包丁なんかも日本刀の技術を流用して作った一品なんてそんな謳い文句もあったはずだ。
まあ最近はダンジョン産武器の制作も、スタンダードではないが行われているはずで、挑戦する価値は十分にあるだろう。
「私は理想の刀の可能性をダンジョンに見ました。いつかダンジョンの素材を使って、最高の刀を打つことが私の夢なんです!」
「そ、そうなんですか……」
「はい! そうなんです! そ、それでですね? そのヒントをワタヌキさんのお話から得られないかと考えているんです。……どうかお話を聞かせてもらうことはできないでしょうか?」
なんだろう? 僕もちょっと混乱してきた。
志が高くはあるが……これってひょっとしなくても結構趣味的な話?
全力でガードしに行ったら、全くパンチが飛んでこなかったような拍子抜け感はあったが、いったん僕は話に乗ることにした。
「ええっと……話をするのは構わないんですけど。刀を作るのって大変じゃないですか?」
「ええ。それはもう! 何本か実際に打ってみましたが、中々理想通りにはいかないので奥が深いです」
「打ったの!? すでにですか!?」
「はい。もちろん。道具も一式そろえてます。自動で叩いてくれるハンマーとかありますよ?」
「……道具まで」
これは思った以上に東雲さんは、ガチな情熱を持っているようだ。
これは面白い。流石はパイルバンカーを作った東雲さんの娘さんだ。
ならば僕は趣味人にやさしい男、綿貫 鐘太郎である。
刀と言えば、おあつらえ向きの人物が今日ちょうどいて、彼女は運がよかった。
僕はあっけにとられている桃山君の身体を叩いた。
「桃山君……そういう事なんだけど、ちょっと君の刀貸してくれる?」
「もちろん……構わないでござるよ」
桃山君に確認を取ってみると、彼は快く刀を貸してくれた。
そして桃山君が持って来た刀を見て、東雲さんの目が輝いた。
「はいこれ。ダンジョン加工してある刀だよ」
「わぁ! 刀ですか! しかもダンジョン産の!? は、初めて見ました!」
「ええ。見てみますよね?」
「いいんですか! はい! 是非お願いします!」
喜んだ東雲さんは手渡した刀を恐る恐る眺めて、さやから刃を少しだけ抜くと、うっとりとしていた。
「……ああ……魔力を感じますね。それもすごい力」
「ええ。お眼鏡に適いましたか?」
たぶん気に入ってもらえるんじゃないかと僕は思っていたんだけど、どういうわけか東雲さんはすぐに刃を鞘に戻して、静かに首を振っていた。
しかも表情に若干がっかりした感があるのが気にかかる。
「……すみません。すごくいい刀だと思うんですけど、私の目指している感じではないんです」
「そ、そうなんですか? じゃあ一体どんな刀を?」
魔力を帯びた刀なんて言うのは現状超激レア品である。
ダンジョンで実用に足りる刀で満足できないなら一体何を追い求めているんだろうと僕は首をかしげた。
質問を聞いた東雲さんは少しだけ困り顔を浮かべたが、彼女はポツリと呟いた。
「魂のある刀……私の目指すのはそんな刀なんですよ」
「「魂っ……!」」
僕と桃山君の声が揃ってしまった。
なんというか……ハードル高いなぁ!?
ちょっと予想の斜め上だったが、僕はとても面白いとそう感じてしまっていた。
だから、好奇心で攻略君に訊ねてしまった。
魂のある刀……そんなものを作る方法に心当たりはある?と。
もちろん、可能だ。
攻略君は、そう答えた。
「お客さんだよ。ホラ、僕のパイルバンカー外注した会社の社長さんの娘さんらしくて」
僕の無茶ぶりに快く答えてくれた、あの東雲鉄工さんには大変お世話になった。
すでに現物を見ている桃山君も、当然のようにテンションを上げていた。
「ほぉ! ではあのパイルバンカーを作った会社の!」
桃山君のセリフを聞いて、アハハと頭を掻いた東雲 蘭さんは恥ずかしそうに笑って頷いた。
「……父も年甲斐もなくはしゃいでしもうて、お恥ずかしい」
「いやいや。おかげでいい買い物ができたと思いますよ。それで今日は?」
「ええ、一先ずご挨拶にと思いまして。……それと、私の方から少しお聞きしたいことがあるんです」
「聞きたいことですか?」
「ええ。ワタヌキさん……あのアームを自作なされたって本当ですか?」
おおっとこれはいきなりストレートに来たもんだ。
まぁ無理もない。
相手は東雲さんの所のお嬢さんだ。謎技術で製作されたバックパックアームなんてを見たら、詳細を知りたくなるのも仕方がないだろう。
普通は企業秘密として隠すのだろうけど、残念僕はそうしない。
「ええそうですよ。僕が作りました」
「……! そうですか……父は、あのアームは、機械技術じゃないダンジョンの技術を使ったものだと言っていました。つまり貴方は……ダンジョンの技術を解き明かしたという事なんですか?」
いやそんなことはないけどね。疑問になら応えられるくらいの能力ではありますが。
だけど残念。そこは素直に答えられないラインだった。
「そうですね……だとしたらどうします?」
何となくもったいぶってそう言うと、息を呑んだ東雲さんは一旦呼吸を整えていた。
「!……そうですね、あまりにも不躾過ぎました。実は私、武器についてすごく興味があるんです!」
なるほど? どうやら蘭さんはずいぶんとお父さん思いのお嬢さんのようだ。
なんとしてもダンジョン由来の技術を手に入れるために、探りを入れに来たというわけだ。
いつか来るだろうとは思っていたが、こんなに早いとは。
ではこちらもますます気を引き締めねばならない。
こちらとて隠さないとは言っても安売りするのは少し違うだろう。
相手はすでに事業をやっている大人が背後にいるのなら、こちらも慣れない交渉を考えなければならない。
東雲さんは内心相当に身構えた僕を前にして、自分の話を語り始めた。
「ええ、とても個人的な話なんですけど……私はいつか自分の刀を自作したいと考えていまして」
「ん? 刀?」
「ええ、刀です。それもただの刀ではなくて、特殊な刀を作るのが夢なんです」
なんか、ちょっと方向性が変わって来たな。
東雲さん、そういうのもお家の為なんだろうか? 鉄鋼業ならおかしくはないか?
刀っていうのはかなり特殊な技術の様な気がするんだけど……あれかな? 包丁なんかも日本刀の技術を流用して作った一品なんてそんな謳い文句もあったはずだ。
まあ最近はダンジョン産武器の制作も、スタンダードではないが行われているはずで、挑戦する価値は十分にあるだろう。
「私は理想の刀の可能性をダンジョンに見ました。いつかダンジョンの素材を使って、最高の刀を打つことが私の夢なんです!」
「そ、そうなんですか……」
「はい! そうなんです! そ、それでですね? そのヒントをワタヌキさんのお話から得られないかと考えているんです。……どうかお話を聞かせてもらうことはできないでしょうか?」
なんだろう? 僕もちょっと混乱してきた。
志が高くはあるが……これってひょっとしなくても結構趣味的な話?
全力でガードしに行ったら、全くパンチが飛んでこなかったような拍子抜け感はあったが、いったん僕は話に乗ることにした。
「ええっと……話をするのは構わないんですけど。刀を作るのって大変じゃないですか?」
「ええ。それはもう! 何本か実際に打ってみましたが、中々理想通りにはいかないので奥が深いです」
「打ったの!? すでにですか!?」
「はい。もちろん。道具も一式そろえてます。自動で叩いてくれるハンマーとかありますよ?」
「……道具まで」
これは思った以上に東雲さんは、ガチな情熱を持っているようだ。
これは面白い。流石はパイルバンカーを作った東雲さんの娘さんだ。
ならば僕は趣味人にやさしい男、綿貫 鐘太郎である。
刀と言えば、おあつらえ向きの人物が今日ちょうどいて、彼女は運がよかった。
僕はあっけにとられている桃山君の身体を叩いた。
「桃山君……そういう事なんだけど、ちょっと君の刀貸してくれる?」
「もちろん……構わないでござるよ」
桃山君に確認を取ってみると、彼は快く刀を貸してくれた。
そして桃山君が持って来た刀を見て、東雲さんの目が輝いた。
「はいこれ。ダンジョン加工してある刀だよ」
「わぁ! 刀ですか! しかもダンジョン産の!? は、初めて見ました!」
「ええ。見てみますよね?」
「いいんですか! はい! 是非お願いします!」
喜んだ東雲さんは手渡した刀を恐る恐る眺めて、さやから刃を少しだけ抜くと、うっとりとしていた。
「……ああ……魔力を感じますね。それもすごい力」
「ええ。お眼鏡に適いましたか?」
たぶん気に入ってもらえるんじゃないかと僕は思っていたんだけど、どういうわけか東雲さんはすぐに刃を鞘に戻して、静かに首を振っていた。
しかも表情に若干がっかりした感があるのが気にかかる。
「……すみません。すごくいい刀だと思うんですけど、私の目指している感じではないんです」
「そ、そうなんですか? じゃあ一体どんな刀を?」
魔力を帯びた刀なんて言うのは現状超激レア品である。
ダンジョンで実用に足りる刀で満足できないなら一体何を追い求めているんだろうと僕は首をかしげた。
質問を聞いた東雲さんは少しだけ困り顔を浮かべたが、彼女はポツリと呟いた。
「魂のある刀……私の目指すのはそんな刀なんですよ」
「「魂っ……!」」
僕と桃山君の声が揃ってしまった。
なんというか……ハードル高いなぁ!?
ちょっと予想の斜め上だったが、僕はとても面白いとそう感じてしまっていた。
だから、好奇心で攻略君に訊ねてしまった。
魂のある刀……そんなものを作る方法に心当たりはある?と。
もちろん、可能だ。
攻略君は、そう答えた。
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