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第140話軽く考えすぎるとひどい目に合う
葛藤はあった。
しかしロマンが上回るのならばそれに越したことはない。
東雲さんの話は十分にロマンがあって、こちらにはそれを叶える知識がある。
そして形に出来るのは現状縁を手繰り寄せた、彼女のみに違いない。
「分かりました……いいですよ? 希望に応える情報を出しましょう」
「ほ、本当ですか!」
食い気味に腰を浮かす東雲さんには、しかし喜んでばかりいてもらうわけにはいかないだろう。
今回はあくまでビジネス。そして取引材料は金銭ではなく、現物である。
「ええ、でも条件があります。一つは材料と作り方を提供する代わりに、こちらの依頼の品を作って欲しいんです。もちろん品物は刀ですよ」
「……そんなことでいいんですか?」
僕は頷いた。
「かなりの労力だと思いますから。ちなみに自信のほどは?」
一応確認すると、返事は即答だった。
「え? ええ。大丈夫だと思います。刀匠のおじいちゃんの所に弟子入りして、合格を貰っていますから!」
「技巧派家族ぅ……。あらゆる水準が、思ったより上だなぁ」
「えへへ……そうですかねぇ」
謙遜しながら照れ笑いしているが、この職人しかいない家族は、はっきり言って今までの話の裏付けには頼もしいことこの上ない。
ダンジョンで力に目覚めた彼女なら、きっと魂を持った刀くらい鍛えて見せてくれると思わせてくれた。
「じゃあ、突然の話なので三日後! 材料を一揃え用意しておきます。大丈夫ですか?」
ただ、こちらの大盤振る舞いに東雲さんもさすがに眉間に皺を作っていた。
しかしこの話をふいにするつもりなどないようで、唇を噛んだ東雲さんは決意を込めるように大きく首を縦に振った。
「……は、はい! 怪しいですが……毒食わば皿までです! 私の覚悟お見せいたします!」
「……やっぱり怪しいかなぁ。単に依頼の話ですからね? では三日後に」
ちょっと気になっちゃうけど、僕らは一端がっちり握手。
次に会う約束を取り付けて、プロジェクトは動き出した。
「ふぅ……。あー緊張した」
東雲さんが去り、僕と桃山君は一息ついた。
いやはや中々面白い訪問者だったと言わざるを得ない。
しかし桃山君は困った人を見るように僕を見ていた。
「いいんでござるか? あんなこと言っちゃって?」
しかしかなり強引に話を進めたのは他でもない、今回は桃山君をメインにした計画の為なのだ。
「桃山君……僕、いいことを思いついたんだけど?」
「何でござるか?」
「彼女にメイン装備打ってもらおう」
「……マジで言ってるでござるか?」
困惑する桃山君に、僕は頷く。これは至って大真面目な提案だった。
「マジだよ。もう設備も整ってて作れるって言うなら作ってもらおうよ。東雲さんうちの学校の生徒みたいだし」
ダンジョンに潜る資格がある刀鍛冶なんてスペシャルな人、ここで逃す手はない。
そこは桃山君だって同じ意見のはずだった。
「それにだ―――彼女の刀作りに協力して、パーフェクト桃山君なんていうのもロマンがあるんじゃないかな?」
「何てアホな事考えてるんでござるか」
「アホはないじゃろ? まぁ僕が桃山君の刀壊しちゃったわけだし……こういうのもいいんじゃないかなって」
それに階層がどんどん深くなってきている今、戦力はあるに越したことはない。
より質のいい装備を揃えることは、必ずプラスになる。
少なくても簡単に壊れてもらっては困るわけで、その辺り一番実感しているのは刀を使っている桃山君のはずだった。
「なんというか……そそる話のような、嫌な予感がするような……どちらの直感を信じたものか?」
「そんなに悩まなくても、好き勝手やって、最終的に刀はプレゼントだよ? 貰える物はもらっておきなよ」
「……タダより高い物はないというでござるよ? それとまぁ、それはともかくワタヌキ氏、怪しい勧誘みたいだったでござるな」
だけど急にニヤリと笑ってそんなことを言って来た桃山君に、僕はヒクリと表情筋を引きつらせた。
「……やっぱり? 上手なトーク覚えなきゃかなぁ」
「ハードル高いでござるよ……我々には」
「それは本当にそう」
でも最近は先輩方と話す機会も多くて、少しはマシになったんですよ?
ただ、怪しい交渉だって成果をもぎ取れたのなら無駄ではない。そして本当の成果にするには、もう少しの頑張りが必要だった。
「でもまぁ刀をきちんと作ってくれる人は見つけても、今まで以上を目指すならおそらくこの計画の実行にはまだ見ぬアイテムが沢山必要になる」
今後のルートは攻略君しだいではあるけれども、猿の島を攻略した僕らがそうそう恐れるようなことなんてあるわけないって! なんて思っていたのは攻略君ユーザーとして僕が甘かった。
『ならせっかくだ。96階層と98階層も行ってみようか?』
「え?」
『今回は強いモンスターと戦う必要がある。なら深い方がいいだろう?』
「……」
攻略君……オチが早すぎると思うんだけど、どうだろう?
しかしロマンが上回るのならばそれに越したことはない。
東雲さんの話は十分にロマンがあって、こちらにはそれを叶える知識がある。
そして形に出来るのは現状縁を手繰り寄せた、彼女のみに違いない。
「分かりました……いいですよ? 希望に応える情報を出しましょう」
「ほ、本当ですか!」
食い気味に腰を浮かす東雲さんには、しかし喜んでばかりいてもらうわけにはいかないだろう。
今回はあくまでビジネス。そして取引材料は金銭ではなく、現物である。
「ええ、でも条件があります。一つは材料と作り方を提供する代わりに、こちらの依頼の品を作って欲しいんです。もちろん品物は刀ですよ」
「……そんなことでいいんですか?」
僕は頷いた。
「かなりの労力だと思いますから。ちなみに自信のほどは?」
一応確認すると、返事は即答だった。
「え? ええ。大丈夫だと思います。刀匠のおじいちゃんの所に弟子入りして、合格を貰っていますから!」
「技巧派家族ぅ……。あらゆる水準が、思ったより上だなぁ」
「えへへ……そうですかねぇ」
謙遜しながら照れ笑いしているが、この職人しかいない家族は、はっきり言って今までの話の裏付けには頼もしいことこの上ない。
ダンジョンで力に目覚めた彼女なら、きっと魂を持った刀くらい鍛えて見せてくれると思わせてくれた。
「じゃあ、突然の話なので三日後! 材料を一揃え用意しておきます。大丈夫ですか?」
ただ、こちらの大盤振る舞いに東雲さんもさすがに眉間に皺を作っていた。
しかしこの話をふいにするつもりなどないようで、唇を噛んだ東雲さんは決意を込めるように大きく首を縦に振った。
「……は、はい! 怪しいですが……毒食わば皿までです! 私の覚悟お見せいたします!」
「……やっぱり怪しいかなぁ。単に依頼の話ですからね? では三日後に」
ちょっと気になっちゃうけど、僕らは一端がっちり握手。
次に会う約束を取り付けて、プロジェクトは動き出した。
「ふぅ……。あー緊張した」
東雲さんが去り、僕と桃山君は一息ついた。
いやはや中々面白い訪問者だったと言わざるを得ない。
しかし桃山君は困った人を見るように僕を見ていた。
「いいんでござるか? あんなこと言っちゃって?」
しかしかなり強引に話を進めたのは他でもない、今回は桃山君をメインにした計画の為なのだ。
「桃山君……僕、いいことを思いついたんだけど?」
「何でござるか?」
「彼女にメイン装備打ってもらおう」
「……マジで言ってるでござるか?」
困惑する桃山君に、僕は頷く。これは至って大真面目な提案だった。
「マジだよ。もう設備も整ってて作れるって言うなら作ってもらおうよ。東雲さんうちの学校の生徒みたいだし」
ダンジョンに潜る資格がある刀鍛冶なんてスペシャルな人、ここで逃す手はない。
そこは桃山君だって同じ意見のはずだった。
「それにだ―――彼女の刀作りに協力して、パーフェクト桃山君なんていうのもロマンがあるんじゃないかな?」
「何てアホな事考えてるんでござるか」
「アホはないじゃろ? まぁ僕が桃山君の刀壊しちゃったわけだし……こういうのもいいんじゃないかなって」
それに階層がどんどん深くなってきている今、戦力はあるに越したことはない。
より質のいい装備を揃えることは、必ずプラスになる。
少なくても簡単に壊れてもらっては困るわけで、その辺り一番実感しているのは刀を使っている桃山君のはずだった。
「なんというか……そそる話のような、嫌な予感がするような……どちらの直感を信じたものか?」
「そんなに悩まなくても、好き勝手やって、最終的に刀はプレゼントだよ? 貰える物はもらっておきなよ」
「……タダより高い物はないというでござるよ? それとまぁ、それはともかくワタヌキ氏、怪しい勧誘みたいだったでござるな」
だけど急にニヤリと笑ってそんなことを言って来た桃山君に、僕はヒクリと表情筋を引きつらせた。
「……やっぱり? 上手なトーク覚えなきゃかなぁ」
「ハードル高いでござるよ……我々には」
「それは本当にそう」
でも最近は先輩方と話す機会も多くて、少しはマシになったんですよ?
ただ、怪しい交渉だって成果をもぎ取れたのなら無駄ではない。そして本当の成果にするには、もう少しの頑張りが必要だった。
「でもまぁ刀をきちんと作ってくれる人は見つけても、今まで以上を目指すならおそらくこの計画の実行にはまだ見ぬアイテムが沢山必要になる」
今後のルートは攻略君しだいではあるけれども、猿の島を攻略した僕らがそうそう恐れるようなことなんてあるわけないって! なんて思っていたのは攻略君ユーザーとして僕が甘かった。
『ならせっかくだ。96階層と98階層も行ってみようか?』
「え?」
『今回は強いモンスターと戦う必要がある。なら深い方がいいだろう?』
「……」
攻略君……オチが早すぎると思うんだけど、どうだろう?
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