ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち

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第144話職人気質の真実

 本日は座学のリモート授業を終えると僕は外から女生徒がピョコリと顔を出しているのを発見した。

(おや彼女は……東雲さんか)

 あまりにも早いが、東雲さんは何事かやり遂げた顔をしている気がするのは気のせいではないだろう。

 そして彼女は僕を見つけると、こっちに来てと必死に手招きをしている。

 これは……何かしら進展があったか。

 僕は席を立ち、頷くと東雲さんが使っている工房に大人しく連行された。



「とりあえずナイフができましたよ!」

「は、早いね……? で? どうだった? いつもとだいぶん勝手が違ったと思うんだけど」

 勢い込んで自らの仕事を披露する東雲さんだが、僕は今回仕事そのものよりもその所感の方が気になった。

 実際妙な感覚があったと思う東雲さんは、急に神妙な顔になっていた。

「それがですね……何やら感じたこともない魔力のナイフが完成しまして」

 そう言って渡された一本のナイフは、僕から見ても禍々しい気配が立ち上っているようだった。

 よく観察する振りをして、攻略君に質問するとバッチリ注文通りの物が完成しているみたいだった。

「おお……バッチリっぽい」

「……本当ですか! よかったぁ!」

 ナイフの抜き身の輝きはどこか魂が吸い込まれてしまいそうな感じがするが、それは仕様に他ならない。

 ホッとしたのか、東雲さんは会心の笑みを浮かべた。

「間違いなく今までで最高傑作ですよ。本当に面白い……でもあの、これで終わりじゃないんですよね?」

「そうですよ? これで完成じゃない。今は、これ空っぽだから」

「空っぽですか?」

 好奇心に突き動かされて聞いてくる東雲さんに、僕はそうだよとナイフを握ってかざして見せた。

 綺麗に磨かれた美しいナイフである。

 きっと今の時点でもかなりの切れ味を保証されているだろうことは伺い知れる。

 だが真に魂を宿したら、きっとこんなものじゃないはずだった。

「こいつは倒したモンスターを吸収するんですよ」

「…………モンスターを吸収」

「そうです。そうすることで、モンスターの力を持った武器になる。最初のリクエスト通りまさに魂を宿す刀でしょう?」

 少々先走った拡大解釈かもしれないが、間違いなく性能の方も刃物としてもダンジョン産の武器としても超一級になる可能性を秘めている。

 これは、武器職人からしても魂が宿ると言って差しさわりないのではないだろうか?

 と、色々と言ってみたが、それは僕の考えだ。

 大事なのは東雲 蘭という職人さんがどう思うかという事だった。

「…………」

「……それで、何か参考にはなりましたか?」

「いえ……そのぉ……」

 ただ……なんか東雲さんの様子がおかしい。

 そして語る台詞は歯切れが悪かった。

「……あれ? あんまり納得いっていらっしゃらない?」

 僕は東雲さんの視線が逸れたのを見逃さなかった。

 やはり何か不満があるかな?

 そもそも話の核心をあまり語りたがっていない空気は感じていたのだ。

 だからこそ情報も気を使ったのだが、ひょっとしてそれが裏目に出てしまったのかもしれない。

「ええっと……そ、そうですね……すごい、とってもすごい秘密を教えてもらったんだと思います。お約束通り、同じ方法で刀も作ってみますので……」

 明らかに気を使っている東雲さんに、僕は蒼白になって取り繕う言葉を探していた。

 何がどうなっているのかわからないが、僕はどうやら対応を間違えたらしい。

「いや、待って? できれば僕もこんな面倒な依頼を頼んだんだし、何か力になりたいんです。不満なら何が足りないのか……もう少しだけ話を聞かせてもらえませんか?」

「え? いや、えっと……そのですね? ……ですから魂をですね? モンスターはなんかイメージと、ちょっと違うかなーって」

「というと……やはりこういう外道な感じではなく、性能ですか? 職人の魂が込められてる的な?」

「いえその……違うくて、こちらサブカルチャー同好会さん……なんですよね?」

「ええ。エキスポで大暴れした、サブカルチャー同好会です。あ、最近部に昇格してサブカルチャー研究部になりましたけど」

「それは……おめでとうございます」

 問い詰めれば問い詰めるほど、東雲さんの視線はさ迷い、なぜか顔が赤面してゆく。

 そしてとうとう両手で顔を覆ってしまった東雲さんは蚊の鳴くような声で、ポツリと言った。

「私の言う……魂が宿るっていうのは、そのー……刀の擬人化? みたいな? 美少年……ですかね? になってくれたら嬉しいなーみたいな……」

「…………なるほど」

 それを聞いた僕は一端佇まいを直す。

 ついついガチの職人さん家庭のサラブレット!だとか。

 この年齢で日本刀を!?とか。

 そんな思い込みに思考を支配され過ぎていたようだ。

  この方、あの流れで刀剣愛してる勢か!?

 ちょっと! 誰か女の人呼んできて! あっ! でも浦島先輩はダメだあの人最近ギャルゲー沼にどっぷりだ!

「あかん! 顔から火が出そう! サブカルチャー同好会さんなら、察してくれると勝手に思ってすみません!?」

「ちゃんと説明させてごめんね! 察しが悪くて申し訳ない!」

 なんだろう……こう、一人のオタクとして敗北した気分である。

 いやあれでわかるわけないじゃん! とか言いたいことがないわけではなかったけれども、でもこれは間違いなくサブカルチャーを愛する僕の敗北だ。

 ちなみにもう少しソフトな手順で、刀の擬人化は可能なようなのでその辺りは刀の報酬でお渡しするという事にしておいた。

 もう一つ、余談としては、無事東雲さんは鍛冶系のサポートジョブも発生した様子で、今回の目的はコンプリートってことになるのかもしれないが……拭いきれない敗北の味がした。
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