ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち

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第145話ワタシもフラグを立てたい

「いや……というような事があって」

 とある日、軽く東雲さんがらみの事をレイナさんに相談すると彼女はやれやれとため息交じりに肩をすくめていた。

「それはワタヌキが悪いですね。刀と女子の時点で予防線を張っておくくらいは当然の嗜みです」

「……単に歴史好きの可能性だってあるでしょ?」

「問題ありません。その場合は高確率で武将に脳を焼かれています。世の理です」

「……だいぶん偏ってない? その世」

「楽しければ多少斜めでも問題ありません。世界は誰の視点で見るかによって常に偏っているものです。考えても仕方がないのでマイウェイを突き進みましょう」

「なるほどなー」

 さすがレイナさんだ。そこにしびれる憧れる。

 本日、僕は部室でアニメを鑑賞していたレイナさんを発見。

 そのまままったりと鑑賞会に突入して、コーラ片手に談笑していた。

 ちょっとお高めの厚切りポテトチップスをディップする形式で各種トッピングの準備が整えられているあたり、かなりの計画的犯行だった。

 ディスプレイには怒りによって真の力が目覚め、戦う男の姿がドラマチックに描かれていて最高である。

「でもそうですか……モモヤマはパワーアップフラグが立ちましたか……」

 ただ盛り上がりも最高潮のシーンで、レイナさんの呟きが耳に入って、僕はピクリと震えた。

「まぁ……そうとも言えるねぇ」

「新武器とは驚きです。ところで―――ワタシもパワーアップしたいのですが?」

 おやおやそう来たか。もうすでに火力という意味では十分すぎると感じていたが、レイナさんのお眼鏡にはまだ叶っていなかったと見える。

「……と言うと?」

「ワタヌキとモモヤマ……二人とも、時々変身しますよね?」

「するね」

 できる限りあっさりと本当のことを言った瞬間、レイナさんは愕然とした顔でこちらを振り向いた。

「やっぱり! ずるいです! ワタシも変身したい! とても!」

 僕の肩を掴んだレイナさんの目がマジだ。

 しかしあれは……やってみたらわかるが、人に一押しできる習得方法はしていない。

 ただ、熱望する友人に隠しておくのも気が引ける。

 相手がレイナさんなら、身につけられればこの先武器になるのはあまりにも明らかだった。

 僕はガックンガックン揺さぶられながら、仕方がないかとため息を吐いた。

「じゃあ……見てみる?」

「はい! よろしくお願いします! マスターワタヌキ!」

「それじゃあ、やってみようか……」



 一旦アニメ視聴を中断した我々。

「……ふん!」

 僕は席を立ち、超化のスキルを披露した。

 これを使うと一時的にパラメーターが底上げされる僕の切り札の一つである。

 反動もキツイし力が有り余ってしょうがない感覚になって落ち着かないところではあるが、大抵の相手をパラメーターだけでごり押しできるとても使い勝手のいいスキルとも言える。

「これが、超化のスキルだよって……どうしたのレイナさん?」

「……」

 ただスキル使用後、楽しそうに見ていたレイナさんはだんだん表情が無くなり、ポカンと口を開けて僕を見ていた。

 そして小刻みに震えているレイナさんは僕を指差して叫んだ。

「ホントに変身してます!?」

「えーホントにー?」

 これをやった時、強くなった感じはしていたが見た目も変わってたか。

 頭の炎がちらちら青い事には気がついていたけど、ある意味で驚きだった。

「そのテンションおかしいです! もっと驚いて躍ってもいいくらいなのでは!?」

「いや、自分で見えないし……どんな感じ?」

「髪と目が青白く光ってます!」

「ああ、だから炎が青くなるのか……納得」

「だから反応薄いです!」

 レイナさんは僕の薄い反応にどうしても納得がいかない様子だったが、僕としても驚くほどドライな自分に驚いた。

 しかし考えてみると簡単なことだった。

「いやぁ、まぁ案外僕は見る方がテンション上がるらしくって……自分が変わってもそんなに……」

「そうなんですか!? パイルバンカーまで作った人が!?」

「それはそれだよ。そんなの絶対手が抜けない所じゃん」

「オー、これがショクニンカタギ……勉強になります」

 思わず即答すると感心されてしまった。

「いや止めてね? 広められても困るからね?」

 だが僕のは職人気質なんてもんじゃない。極めて特殊な拘りなのは間違いないが、帰国してからあんまり人に言わないでもらいたい。

 ただ、確かに目やら髪やらが光っているなんていうのは、言われてみると心躍る。

 後で鏡でじっくり見てみるとして、今は内容の紹介が先だった。

「まぁともかくだ。これが超化。一時的に全パラメーターが10倍になる。その代わりタイムリミットと反動が少しあるよ」

「10倍ですか! それは強力ですね……モモヤマの持っているのも同じものですか?」

「いや、あれは侍専用の特殊スキルで修羅化だよ。攻撃力と素早さに限定されるけどステータスが20倍になる。更におそらくはどんな怪我をしても即時再生する」

「めちゃくちゃアタッカー寄りのバフですね! ……傾向からいって、デメリットもきつそうですけど?」

「そうだよ。反動は超化の比じゃないし、持続時間が超化の半分くらいだ。あと角が生えるね」

「角が生えるのはクールです」

「そうだねぇ……。あれはいい」

 どっちもきつめの代償を伴うスキルだが、非常時には大変役に立つ性能の尖り方をしている。

 レイナさんはふむと唸り、唇をすぼめた。

「うーん。まさに侍のために存在するスキルじゃないですか……でもワタシには合ってないですね。超化はすごくそそられますが……ひょっとするとワタシに合った裏のスキルって存在しますか?」

 鋭いレイナさんはそう尋ねてきたので、僕は頷いた。

「ないことはないね。……ネクロマンサー専用スキルを紹介する?」

「もちろんですけど!?」

 すぐさまいい反応を返すレイナさんだが、それはある程度予想できた反応だった。

「というか魔法使いの上級職にはそれなりの隠しスキルが存在するよ。ネクロマンサーはどちらかと言えば攻撃的な魔法職だから、魔力攻撃力と精神力が20倍になるね」

「ほっほう……それは最高じゃないですか。では条件は?」

「例によって危ないよ?」

「やらない理由になりますか?」

「教えたら当然手を出すだろううから、渋っているのに」

「そいつは心配しすぎというものです。自己責任がダンジョンの鉄則。すべてはワタシに責任があるというものです!」

 まぁ彼女を知っているならば、そう答えるだろうと予想は着く。

 僕はこれ以上引っ張るのは止めて白状した。

「……精霊種100体討伐。これはもう実は達成してる」

「そうなんですか?」

「レイナさんは1階で石ころ倒してるでしょ? あれ精霊の一種なんだ」

 パラメーターのボーナス振り分けの時に狩ったアイツこそ、最弱の精霊なのです。

 ただ、レイナさんにその自覚はないはずだった。

「そうなんですか? でも変化はありませんけど?」

「それはそうだよ。だって肝心の条件をまだ達成してないし」

「それは?」

 そして次の条件こそが、この専用スキルの一番厄介なところなのだ。

「ジョブがネクロマンサーの状態で死霊の王キング・リッチのソロ討伐だ。まぁ要するにリッチって言うモンスターがキング化したモンスターなんだけど」

「そんなのいるんですか?」

「まぁレアエネミーってやつだね。ずっと探していればそのうち見つかるかもしれないけど……望み薄かもしれない」

「そういう難しさですか……最悪ですね」

 少なくとも、この間のアンデット層ではいなかった。

 こればかりはリアルラックに依存する。

 リッチ自体の出現率の低さを考えると、キング化個体は更に難しいだろう。

 しかしその難易度をぐっと下げる方法は、すでにこの手の中にある。

 僕はアイテムボックスから、おもむろに輝く王冠を取り出して、レイナさんにチラ見せした。

「でも……こんなこともあろうかと、ここにとあるアイテムがある」

「?」

 それはオリハルコンスライムをさらにおいしくするために作られた、モンスターを強制的にキング化するありがたい王冠だった。

 レイナさんは王冠と僕とを見比べて、まさかと冷や汗を拭った。

「何という事でしょう……さすがマスターワタヌキ。すべてはあなたの手のひらの上だったと?……」

「フッフッフッ……そういうことだよ」

「アメイジング……コウメイですね?」

 違います。

 でもそれっぽいことを言って、意味ありげにするのは楽しいものだね。

 しかしもちろん攻略君はどうかは知らないが、僕としては行き当たりばったりだった。
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