ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち

文字の大きさ
146 / 257

第146話魂の戦い

  ネクロマンサーの裏スキル解放はソロ討伐でなくてはならない。

 これがスキル解放の一要素だ。

 僕らは準備を整えると、ついこの間行ったばかりのアンデッド階層を目指した。



 僕らは道すがら簡単に打合せすると、レイナさんは厄介そうだと唸っていた。

「魔法を使ってくる敵とソロは大変そうですね。ワタシは後衛ですから魔法の撃ち合いになりそうです」

「まぁそういう側面もあるから精神力を回復するポーションは沢山持っておいた方がいいけど……それより、この間の掃除機。アレは有効活用した方がいい」

 正確に言うと必要なのはあの中身で、せめて優位に運んで欲しいとそう助言するとレイナさんは首を傾げた。

「アレ……ですか? 掃除機のアレというと……スケルトンからすっぽ抜けてたアレですよね……しかしどうやって活用するんですか?」

「ありゃ? 肌で感じない? ネクロマンサーなんだからアレが利用できる最高効率のエネルギーだよ」

 てっきり喜ぶかと思っていたレイナさんだったが、彼女の表情は大変微妙なものだった。

「…………なるほど。そういう感じですよね」

「あれ? テンション下がる感じ……まぁそうか複雑は複雑か」

「そうですねぇ。でも言ってることは分かりますよ?」

 ネクロマンサーとしては、実に絵に描いたような設定であると思う。

 しかし魂の様な物をエネルギーとして使うという発想そのものは、そこはやはり道徳観念的にライン越えの部分があるとそういうことなのだろう。

 しかしそこを割り切らないのは今回、実にまずかった。

「でもね……ネクロマンサーにとって死を忘れたモンスターの核は、自らのエネルギーであり、回復薬であり、弾丸に等しい。特に今日の戦いでは重要な考え方なので覚えておいて?」

「わ、分かりました」

 階層に到着した時点でリッチのポップは確認済みで、サーチ済み。

 真っすぐ行って解放条件を達成できれば、ミッションは終了という事になる。

 最短ルートで到着した墓場には予定通り、一体オーラの違うスケルトンが鎮座していた。

 眼下の瞳が紅く輝き、そいつはテリトリーに入る前からこちらを見ている様子すらある。

 リッチはその時点で、知能の高い厄介なモンスターだとわかった。

「あれがリッチですか……」

「そう。そしてあいつにこの王冠を投げると、王冠はあいつの存在を一段上に書き換える」

「それがキング化ですね」

「そうだよ。出来上がったそいつは真・ノーライフキングって感じ。無尽蔵の魔力に不死の肉体を持つ化け物だ……だけど階層から考えると、レイナさんの方がレベルは高い」

「そうですね。格上じゃなくても大丈夫ですか?」

「今回に関しては大丈夫。でも―――」

 僕は指を立てて、念を押すように言った。

「注意事項が一つ。……もしこれは勝てないと思ったら、すぐに戦闘を中断して助けを求める事」

 だがこの言いようには、レイナさんは若干眉をひそめた。

「……今日のワタヌキは、なんていうかやけに慎重ですね? 目力があります」

「それはそうだよ……桃山君の時も思ったけど、これ系の時は冗談抜きで死に掛けるか死ぬから、お勧めするのも気が抜けない」

「……そんなにですか?」

「そんなにだよ」

 冗談を言っていられるのも本当にここまでだ。

 僕が注意を前もってしている時点で、その危険度は察して欲しい。

 攻略君の恩恵があったとしてもサポートが難しい、とても危険なミッションである。

 僕の優先順位はスキルの習得よりも、レイナさんの生存の方に傾いている。

「それでもやるなら、これをどうぞ」

 前置きした上で僕はキング化の王冠を差し出す。

 そして当然特に悩む様子もなく、レイナさんは王冠を掴んで軽く口笛を吹いた。

「ワタシはホラーが好きですからね。ビビる要素がありません。結論が出たことを何度も確認するもんじゃないですよ?」

「それはゴメン……頑張って」

「おまかせです! 泥舟に乗ったつもりで見ていてください!」

「そこは大船って言って欲しかったなぁ!」

「アハハ! 間違えましたね! まぁでも―――期待には応えて見せましょう」

 レイナさんは王冠を持ったまま、大胆にリッチの領域に踏み込んだ。

 僕はその場に踏みとどまり、レイナさんの背中を見守った。

「さて……どうなるかなぁ」

 僕は緊張で自分の心臓がドクドクとうるさく動いているのを感じていた。

 聖属性の前衛がいれば討伐自体は難しくないから、判断は早めにお願いしたい。

 ネクロマンサーとリッチの能力はかなり近い。

 そしてこの近い能力がぶつかり合うのは……言ってしまえばタチが悪い。

 リッチに向かってレイナさんが王冠を投げると、王冠はリッチの頭に吸い込まれるようにすっぽりハマる。

 そしてリッチは自らの魔力で生成した、冷たい色の炎で燃え続けるマントを翻すと―――咆哮した。

 音はない。

 だが振動が魂に伝わる、寒気のする咆哮だった。

 王冠を戴き夜に浮かぶその姿は、まるでアンデッドに君臨する王である。

 そう、二人の死者を操る能力はよく似ている―――つまり同じ性質の魔法使いが戦うという事は、簡単な話。

「使役した軍勢によって勝負が決まるってことですか……なるほど!」

 地面から尋常ではない数のアンデッドの群れが飛び出してくるのを見ながら、レイナさんは不敵に笑って、ギターをかき鳴らした。
感想 3

あなたにおすすめの小説

さびれたレンタル道具屋の転生おっさん、道具の使い方を教えまくる。~客のS級冒険者が俺を歴戦の英雄と勘違いして弟子入りを求めてくるんだが~

遥風 かずら
ファンタジー
前世で過労死した久世織人が目を覚ますとそこは異世界の王都、しかも古道具屋の跡取り息子として転生していた。アクセル・リオットとして成長した彼は荷物持ちとして冒険者パーティーに同行、その道中に【無限収納】スキルを開花させる。 パーティー活動から離脱後、四十歳となったアクセルは前世の記憶を思い出し、儲かりそうという考えで道具レンタル屋を始めていた。客足もなく店がさびれる中、道具の使い方が出来てない冒険者によって治安の乱れや魔物討伐の失敗が続いているという話を常連客から聞かされる。あらゆる道具に精通するアクセルは客の冒険者に使い方を教えに行くことを思い立つ。 アクセルの教えにより、やがてS級冒険者や聖女、王女までも勘違いして彼の元には次々と弟子入りを求める者が現れていくのだった。

《カクヨム様で50000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う

なべぞう
ファンタジー
ダンジョンが生まれて百年。 スキルを持つ人々がダンジョンに挑む世界で、 ソラは非戦闘系スキル《アイテムボックス》しか持たない三流シーカーだった。 弱さゆえに仲間から切り捨てられ、三十五歳となった今では、 満身創痍で生きるだけで精一杯の日々を送っていた。 そんなソラをただ一匹だけ慕ってくれたのは―― 拾ってきた野良の黒猫“クロ”。 だが命の灯が消えかけた夜、 その黒猫は正体を現す。 クロは世界に十人しか存在しない“祝福”を与える存在―― しかも九つの祝福を生んだ天使と悪魔を封印した“第十の祝福者”だった。 力を失われ、語ることすら封じられたクロは、 復讐を果たすための契約者を探していた。 クロは瀕死のソラと契約し、 彼の魂を二十年前――十五歳の過去へと送り返す。 唯一のスキル《アイテムボックス》。 そして契約により初めて“成長”する力を与えられたソラは、 弱き自分を変えるため、再びダンジョンと向き合う。 だがその裏で、 クロは封印した九人の祝福者たちを狩り尽くすための、 復讐の道を静かに歩み始めていた。 これは―― “最弱”と“最凶”が手を取り合い、 未来をやり直す物語

俺の家に異世界ファンタジーガチャが来た結果→現実世界で最強に ~極大に増えていくスキルの数が膨大になったので現実世界で無双します~

仮実谷 望
ファンタジー
ガチャを廻したいからそんな理由で謎の異世界ガチャを買った主人公はガチャを廻して自分を鍛えて、最強に至る。現実世界で最強になった主人公は難事件やトラブルを解決する。敵の襲来から世界を守るたった一人の最強が誕生した。そしてガチャの真の仕組みに気付く主人公はさらに仲間と共に最強へと至る物語。ダンジョンに挑戦して仲間たちと共に最強へと至る道。 ガチャを廻しまくり次第に世界最強の人物になっていた。 ガチャ好きすぎて書いてしまった。

素材ガチャで【合成マスター】スキルを獲得したので、世界最強の探索者を目指します。

名無し
ファンタジー
学園『ホライズン』でいじめられっ子の生徒、G級探索者の白石優也。いつものように不良たちに虐げられていたが、勇気を出してやり返すことに成功する。その勢いで、近隣に出没したモンスター討伐に立候補した優也。その選択が彼の運命を大きく変えていくことになるのであった。

ダンジョンのある生活《スマホ片手にレベルアップ》

盾乃あに
ファンタジー
進藤タクマは25歳、彼女にフラれて同棲中の家を追い出され、新しい部屋を借りたがそこにはキッチンに見知らぬ扉が付いていた。床下収納だと思って開けたらそこは始まりのダンジョンだった。  ダンジョンを攻略する自衛隊、タクマは部屋を譲り新しい部屋に引っ越すが、そこにもダンジョンが……  始まりのダンジョンを攻略することになったタクマ。    さぁ、ダンジョン攻略のはじまりだ。

ダンジョントランスポーター ~ 現代に現れたダンジョンに潜ったらレベル999の天使に憑依されて運び屋になってしまった

海道一人
ファンタジー
二十年前、地球の各地に突然異世界とつながるダンジョンが出現した。 ダンジョンから持って出られるのは無機物のみだったが、それらは地球上には存在しない人類の科学や技術を数世代進ませるほどのものばかりだった。 そして現在、一獲千金を求めた探索者が世界中でダンジョンに潜るようになっていて、彼らは自らを冒険者と呼称していた。 主人公、天城 翔琉《あまぎ かける》はよんどころない事情からお金を稼ぐためにダンジョンに潜ることを決意する。 ダンジョン探索を続ける中で翔琉は羽の生えた不思議な生き物に出会い、憑依されてしまう。 それはダンジョンの最深部九九九層からやってきたという天使で、憑依された事で翔は新たなジョブ《運び屋》を手に入れる。 ダンジョンで最強の力を持つ天使に憑依された翔琉は様々な事件に巻き込まれていくのだった。

ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ

高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。 タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。 ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。 本編完結済み。 外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。