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第151話生徒会再び
八坂生徒会長が困り顔で座るのはサブカル研究部の部室のソファーである。
そして彼女の背後には、生徒会の腕章を付けた生徒がなぜか数人並んでいた。
「……すまないな、急に。実は少し相談したいことがあってな」
対して我がサブカル研究部メンバーは全メンバーで接客中である。
扉を作っておいて本当によかった。
でなければこんな緊張感のある状態で、僕だけでは接客すらまともにできなかったことだろう。
生徒会長にまともに渡り合えるのは、サブカル研究部ではただ一人。
我らが部長、浦島先輩その人だった。
先輩は余裕の態度で生徒会長の言葉に頷いてにこやかに対応していた。
「いえいえ。ビックリはしましたけど構いませんよ? でも生徒会の方々が頼み事なんて一体何事です?」
「ああ、実は……この動画に心当たりはないか?」
そう言って生徒会長が見せたスマホの画面に映っていたのは、華麗に鉄巨人を倒す浦島先輩(コスプレバージョン)の姿だった。
浦島先輩は一端動画を見終えて、ニコリといい笑顔を浮かべていた。
「面白い動画ですね。これが何か?」
「今、一年の間で噂になっている動画だ。鉄巨人討伐方法を解説した動画なんだが……まぁ最初は冗談の類だと思ったんだよ」
「でしょうね」
「だが、生徒が鵜呑みにして死人が出ては事だ。だから私はメンバーを集めて動画を検証してみたわけなんだが……」
「それはまた……思い切りましたね」
おお、視聴者の方でしたか八坂生徒会長!
僕は内心喜んだ。
だが考えてみれば裏をそれとなく知っている八坂生徒会長なら、サブカル研究部のチャンネルにたどり着き、攻略に信憑性を持ってもおかしくはなかった。
「ああ、ヒヤヒヤしたが我々なら鉄巨人を倒せない訳でもない。ハードルは低いさ」
「そりゃそうですね。攻略済みの階層ですからいくらか気は楽でしょうけど……」
「それで……まぁ。事実だったんだよ動画の内容が」
スマホをひらひらと動かしながら八坂生徒会長は悩まし気に眉を顰める。
試してみたのなら、まぁ、鉄巨人はさぞ楽に倒せたはずだった。
ただそんな話を聞いても、浦島先輩は穏やかに微笑んだままなのはさすがだった。
「へー。素晴らしい事じゃないですか」
「……そうも言っていられん。あの方法は簡単すぎる。低レベル者でも文字を削り取ることができれば守護者を突破してしまう」
「いいことなんじゃ……ないですかね? 鉄巨人を倒せばレベルも上がりますし」
少なくともそれだけのことができる生徒が増えるというのは歓迎すべきことだ。
ダンジョン探索者の学校としてはさらに深い階層に挑戦権が生まれるのは、間違ったことではないはず。
八坂生徒会長もそこは頷いていた。
「もちろん学園としては、優秀な探索者が多くなることは喜ばしいさ。だが問題は実力を伴わずに10階を突破する生徒が増えることが予想できるという事だ。そして我々でも10階を越えた階層に挑むにはそれなりの覚悟がいる。そうなると万が一の時、救助に向かえない可能性がある」
「確かに……困りますね」
それはまさに想定できる危険だった。僕らも心配はしていたが、生徒会の危機感は当然僕ら以上だった。
「ああ。だからこその相談だ。我々のレベリングに協力してくれる気はないかな?」
ただその提案は中々思い切りすぎていて、浦島先輩も困惑していた。
「えぇ? いや、我々でお役に立てるかどうかはちょっと分かりかねると言いますかですね?」
「……そこを曲げてお願いしたい。トーレスさんが絶賛した君達の鍛錬方法にも興味があってな。是非試したいと思っていたんだ」
「そんな。私達のやる事なんて、ただの素人の思い付きですよ。いくつかうまくいった試みはありますけど、とても実用に足るものではないですって」
それはある意味では事実でもある。
真似をして僕のサポートなしに適当なレベリングをしたら、あっという間にあの世行きなのは間違いない。
しかしこの八坂生徒会長の提案が無謀だと思っている賢明な生徒は、何も僕らだけではなかったらしい。
反発の声は、僕らサブカル研究部ではなく生徒会の方から上がった。
「会長……やめましょう。こいつらにそんなことができるわけがありませんよ」
「いや待て。今は私が話しているんだ……」
「待てませんよ。何で生徒会が、サブカル研究部に頭を下げてレべリングをしてくれなんて頼むんです? どう考えてもおかしいですよ」
メガネをした生徒会の先輩が、鋭い視線を僕らに向けていた。
彼の名前は何だったか?
確か心の中で生徒会先輩と呼んでいた事はかろうじて覚えていた。
「トーレスさんの件だって、不審な事ばかりではないですか? なんで生徒会に連れて帰らないんです?」
「烽火会計。それは説明しただろう? 彼女の意思だからだ。拒絶されればそれ以上何か言う権利はない」
おおそうそう。ノロシ先輩だ。彼は僕らから部室を没収しようとした先輩その人だった。
「いい加減にしてください。そんなわけないでしょう? トーレスさんは騙されているんですよ! 多少無理やりにでも生徒会に連れ戻す方が、彼女のためになるはずだ! それなのに部にまで昇格させて……なぜなんですか会長!」
うーむ、彼も鬱憤が溜まっていたのか、言いたいことを言ってくれるものだった。
失礼しちゃうね。
だが僕は彼の言う事は客観的に見たら当然の疑惑だなってすごく納得してしまったわけだがそれは僕だけのことで、全員そうではなかった。
「……黙って聞いていれば、言いたいことを言ってくれるものです。十分譲歩はしました。まだ―――ワタシの邪魔をしますか? 」
レイナさんの身体がぼんやり光り、バリバリとスパークしていた。
「……そうでござる。いい加減言いがかりが過ぎるでござるよ」
桃山氏もなんか角生えて来てない?
レベルが上がりすぎた弊害か、レベル100オーバーの圧は漏れ出すだけでも半端ではない。
怒りの波動は、容易く建前の態度を引っぺがすくらいの力はあった。
「ト、トーレスさん! 落ち着いてください! 邪魔をするとかそういう話ではなくてですね!」
「も、桃山君も落ち着いて欲しい! 彼にも悪気はないんだよ! 今黙らせるからね!」
「えぇ? 会長ぉ?」
そして一番大いに慌てた八坂生徒会長が、すぐさま本気の実力行使に移ろうとして生徒会全員から全力で止められたりと、事態は混乱し始めていた。
そして彼女の背後には、生徒会の腕章を付けた生徒がなぜか数人並んでいた。
「……すまないな、急に。実は少し相談したいことがあってな」
対して我がサブカル研究部メンバーは全メンバーで接客中である。
扉を作っておいて本当によかった。
でなければこんな緊張感のある状態で、僕だけでは接客すらまともにできなかったことだろう。
生徒会長にまともに渡り合えるのは、サブカル研究部ではただ一人。
我らが部長、浦島先輩その人だった。
先輩は余裕の態度で生徒会長の言葉に頷いてにこやかに対応していた。
「いえいえ。ビックリはしましたけど構いませんよ? でも生徒会の方々が頼み事なんて一体何事です?」
「ああ、実は……この動画に心当たりはないか?」
そう言って生徒会長が見せたスマホの画面に映っていたのは、華麗に鉄巨人を倒す浦島先輩(コスプレバージョン)の姿だった。
浦島先輩は一端動画を見終えて、ニコリといい笑顔を浮かべていた。
「面白い動画ですね。これが何か?」
「今、一年の間で噂になっている動画だ。鉄巨人討伐方法を解説した動画なんだが……まぁ最初は冗談の類だと思ったんだよ」
「でしょうね」
「だが、生徒が鵜呑みにして死人が出ては事だ。だから私はメンバーを集めて動画を検証してみたわけなんだが……」
「それはまた……思い切りましたね」
おお、視聴者の方でしたか八坂生徒会長!
僕は内心喜んだ。
だが考えてみれば裏をそれとなく知っている八坂生徒会長なら、サブカル研究部のチャンネルにたどり着き、攻略に信憑性を持ってもおかしくはなかった。
「ああ、ヒヤヒヤしたが我々なら鉄巨人を倒せない訳でもない。ハードルは低いさ」
「そりゃそうですね。攻略済みの階層ですからいくらか気は楽でしょうけど……」
「それで……まぁ。事実だったんだよ動画の内容が」
スマホをひらひらと動かしながら八坂生徒会長は悩まし気に眉を顰める。
試してみたのなら、まぁ、鉄巨人はさぞ楽に倒せたはずだった。
ただそんな話を聞いても、浦島先輩は穏やかに微笑んだままなのはさすがだった。
「へー。素晴らしい事じゃないですか」
「……そうも言っていられん。あの方法は簡単すぎる。低レベル者でも文字を削り取ることができれば守護者を突破してしまう」
「いいことなんじゃ……ないですかね? 鉄巨人を倒せばレベルも上がりますし」
少なくともそれだけのことができる生徒が増えるというのは歓迎すべきことだ。
ダンジョン探索者の学校としてはさらに深い階層に挑戦権が生まれるのは、間違ったことではないはず。
八坂生徒会長もそこは頷いていた。
「もちろん学園としては、優秀な探索者が多くなることは喜ばしいさ。だが問題は実力を伴わずに10階を突破する生徒が増えることが予想できるという事だ。そして我々でも10階を越えた階層に挑むにはそれなりの覚悟がいる。そうなると万が一の時、救助に向かえない可能性がある」
「確かに……困りますね」
それはまさに想定できる危険だった。僕らも心配はしていたが、生徒会の危機感は当然僕ら以上だった。
「ああ。だからこその相談だ。我々のレベリングに協力してくれる気はないかな?」
ただその提案は中々思い切りすぎていて、浦島先輩も困惑していた。
「えぇ? いや、我々でお役に立てるかどうかはちょっと分かりかねると言いますかですね?」
「……そこを曲げてお願いしたい。トーレスさんが絶賛した君達の鍛錬方法にも興味があってな。是非試したいと思っていたんだ」
「そんな。私達のやる事なんて、ただの素人の思い付きですよ。いくつかうまくいった試みはありますけど、とても実用に足るものではないですって」
それはある意味では事実でもある。
真似をして僕のサポートなしに適当なレベリングをしたら、あっという間にあの世行きなのは間違いない。
しかしこの八坂生徒会長の提案が無謀だと思っている賢明な生徒は、何も僕らだけではなかったらしい。
反発の声は、僕らサブカル研究部ではなく生徒会の方から上がった。
「会長……やめましょう。こいつらにそんなことができるわけがありませんよ」
「いや待て。今は私が話しているんだ……」
「待てませんよ。何で生徒会が、サブカル研究部に頭を下げてレべリングをしてくれなんて頼むんです? どう考えてもおかしいですよ」
メガネをした生徒会の先輩が、鋭い視線を僕らに向けていた。
彼の名前は何だったか?
確か心の中で生徒会先輩と呼んでいた事はかろうじて覚えていた。
「トーレスさんの件だって、不審な事ばかりではないですか? なんで生徒会に連れて帰らないんです?」
「烽火会計。それは説明しただろう? 彼女の意思だからだ。拒絶されればそれ以上何か言う権利はない」
おおそうそう。ノロシ先輩だ。彼は僕らから部室を没収しようとした先輩その人だった。
「いい加減にしてください。そんなわけないでしょう? トーレスさんは騙されているんですよ! 多少無理やりにでも生徒会に連れ戻す方が、彼女のためになるはずだ! それなのに部にまで昇格させて……なぜなんですか会長!」
うーむ、彼も鬱憤が溜まっていたのか、言いたいことを言ってくれるものだった。
失礼しちゃうね。
だが僕は彼の言う事は客観的に見たら当然の疑惑だなってすごく納得してしまったわけだがそれは僕だけのことで、全員そうではなかった。
「……黙って聞いていれば、言いたいことを言ってくれるものです。十分譲歩はしました。まだ―――ワタシの邪魔をしますか? 」
レイナさんの身体がぼんやり光り、バリバリとスパークしていた。
「……そうでござる。いい加減言いがかりが過ぎるでござるよ」
桃山氏もなんか角生えて来てない?
レベルが上がりすぎた弊害か、レベル100オーバーの圧は漏れ出すだけでも半端ではない。
怒りの波動は、容易く建前の態度を引っぺがすくらいの力はあった。
「ト、トーレスさん! 落ち着いてください! 邪魔をするとかそういう話ではなくてですね!」
「も、桃山君も落ち着いて欲しい! 彼にも悪気はないんだよ! 今黙らせるからね!」
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