ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち

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第158話モンスタートラップ

「ヒィィ! 会長! 先手を打たれました! こいつら私達を殺すつもりです!」

「狼狽えるな! これはあくまで訓練の一環! ……たぶんな!」

「……これはマズイ。みんな強い……! でもたぶんダイジョウブ!」

「さっきからたぶんって何ですか!」

「会長! お下がりください! 我らが必ず血路を開いて見せますぅぅぅ」

 悲鳴が聞こえたけど、手を貸すのは本当に危なくなった時だけの予定だ。

 怒涛の勢いですさまじい数ツッコんでくるモンスターの群れは、確実に生徒会メンバーより格上で、そいつらは容赦なく生徒会の面々に襲い掛かっていた。

 だが詰め込み過ぎているから、お互いが邪魔をして動きはすさまじく悪い。

 そこにレイナさんは念を押して叫んだ。

「棒! 棒を忘れないで! キーアイテムです!」

「ぐぅ……く、くそおおおおお!」

 だがさすがは生徒会。慌てはしていたがすぐに攻撃に転じた彼らは手渡していた棒を振り回したが、棒が当たった瞬間―――モンスターは一撃で消滅した。

「…………は?」

 余りにも脆すぎるモンスターに、倒した本人の庶務さんが呆けた声を出して動きを止めると監視役のレイナさんはさらに慌てて叫んだ。

「しっかり! 次々倒す! 止まったら死にます!」

「いいいい!」

 大声にハッとして庶務さんは殴り続ける、だが隙を突いて攻撃をかいくぐった一体は猛烈な一撃を庶務さんに食らわせた。

「ごほぉあ!」

 格上モンスターからの一撃に、吹き飛んだ庶務さんはほとんど瀕死だったのだが……もちろん備えは万全だった。

「ポーション行きます!」

「了解でござる!」

 声を掛け、すかさずポーションを使い一気に回復。

 庶務さんは意識は失っていなかったらしく、ビクリと体を震わせて飛び起きた。

「は! 私は!」

 そして僕らは一度死に掛けた庶務さんには小声で内容を説明した。

「いいですか? あいつらは強いですが、呪われています。全員体力が1の状態なんです」

「は? な、なんでそんなモンスターが……」

「そういう場所なんですよ。だがこのチャンス活かしてください。レベル大幅上昇のチャンスです」

「う、うむ……」

 なんでそんな都合のいい話がと思うだろうが、呪いを駆使すればできなくはないことはこの僕自身がすでにこの身で体験済みなので堂々とお出しできる情報である。

 では今回の特別装置を説明しよう。

 僕はこいつを『天空ダイブ式レベル上げ部屋』と名付けた。

 無限湧きモンスターハウスを利用したかなり極悪なトラップである。

 とある階層に存在するモンスターハウスに空間魔法にて転移陣を設置。

 モンスターがポップした端から空中に飛ばして、死ぬギリギリのラインから地面に叩き落してゆく。

 さらに落下地点の周囲には呪いの液体を注ぎ入れたプールを用意して、最短でHPを1に。

 そうするとあら不思議、でたらめに強い一撃で倒れてくれる、最高のレベルアップモンスターの完成である。

 浦島先輩とレイナさんにモンスターをタメる作業をお願いした結果、すさまじい量のモンスターが溜まってしまったが、効率はかなりいいトラップになった。

 ただ本来であれば、モンスターをいったん何かで足止めして、隙間からチクチク刺すのが安全でいいのだが……今回そういうのはなく普通にモンスターと戦ってもらうことになったのは話し合いの結果だった。



「ダメージを喰らったら確実に致命傷です。だけどこれが大事」

 とはレイナさんの言い分なのだが、しかし言っていることが言っていることだけに、僕は首を傾げた。

「な、何が大事なの?」

「戦った感です。努力した感でもいいですけど……つまりはレベルが上がるのならそれなりの過程が欲しい。そういう事です」

「えぇぇ? それ僕らが言う?」

「ノンノン。私達は同じではありません。目的が違います。言ってしまえば彼らは私達にいちゃもんを付けるために戦いに来たんですよ?」

 ピッと人差し指を立てて言われて、僕はむぐっと唸った。

「そう……思います?」

「見ればわかります。サブカルチャー同好会との合同探索でレベルが上がる事なんて期待していません。むしろ上がらない方が、今後関わりが無くなってせいせいするくらいに思っていてもおかしくないのです。しかし骨のあるトレーニング法を提案して実際にレベルが上がれば問題はありません」

「それで戦ってる感……」

「そうです。レベル上げって本来そういうものでしょう? いつも通りにちょっとしたアイディアで挑んで、効率よくレベルアップする……ダメージがあれど納得というすんぽうです! これを丁度いい感といいます!」




 僕は自信満々のレイナさんの表情がやけに印象に残っていた。

「ちょうどいい感……本当かな?」

「どうでござろうな……まぁやってみなければなんともでござる」

「そうだねぇ」

 そういうわけで僕らは当初の予定通りにポーション係と蘇生薬係に徹し、後ろで結果を待つだけだった。

 一方で、驚きから立ち直って生徒会の面々は必死に応戦し続けていた。

 そしてたまに攻撃が命中して生徒会員が飛んで来る。

 今回目を回しているのは、風紀さんだった。

「うぅ! 倒しても倒しても湧いて出て……」

「それでも殴れば死にますから。気は抜かないで」

「……くそぅ! わけがわからない!」

 それでもまたモンスターに突撃していく辺り彼女は勇敢である。

 罪悪感は浮かんだが、頑張って欲しい。

 まだまだ回復薬の貯蔵は十分だし、モンスターのおかわりは次々来る予定だった。
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