ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち

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第159話納得するかしないかは紙一重

 それは濃密な戦いの時間だった。

 立て続けにレベルは上がっているようだし、彼らがいつも潜っている階層よりもはるかにレベル上げが効率的であることは間違いないらしい。

「いいじゃないか、モンスターハウスレベリング」

『蛇口に集中しないと。魔力が乱れてるよ』

「……了解」

 しかし実はこっちはこっちで大変だった。

 僕はモンスターハウスとこの何の変哲もない急ごしらえの洞穴を空間魔法でつなぎ続けている。

 モンスターハウスは無限供給だけど、穴を維持する魔力は僕の自前である。

 レベルが高いからどうにかなっているが、それでも結構キツい辺り、これも立派なパワーレベリングだと僕はそう思った。

 しかし今回の形を作り上げるのに僕が必要ではあるけれど、見るべきところがないという事はないだろう。

 生命力を削り切らない呪いの毒はもちろん、モンスターハウスの活用法。格上のモンスターに対してもダメージが通るクリティカルの概念なんて、活用法としてはお勧めである。

 そしてまたモンスターの一撃を喰らってぶっ飛ばされてきた庶務さんだが、レベルが上がってきて余裕が出て来たのか今度はまだ意識がはっきりしていた。

 僕はとりあえずポーションを差し出す。

 庶務さんは唖然とした顔で僕を眺めていたが、ポーションを手に取ってくれた。

「ああ、ありがとう……そしてすまない」

「いえいえいいんですよ。でももうちょっと回避に比重を置いた方がいいです」

「ああいや……違うんだ。今の謝罪は……君達を疑っていたことに対してだ。生徒会長は騙されているんじゃないかと疑っていてな……」

 ポーションが効くまでの間項垂れてそういう庶務さんだが、それは仕方のない事なんじゃないだろうか?

「ああうん、無理もないですよそれ。僕らダンジョン探索の部活でもなければ学術的な集まりってわけでもないですし。むしろ良く目を掛けてくれているもんだと思います」

 いや本当に。

 こちらが無茶をやったということもあるのだろうが、未だにほとんどの情報を秘匿している僕らのような怪しい奴らに、目を掛けてくれていることを不思議に思っているくらいだ。

「正直怪しいから、保護観察されてるとさえ思っている節はありますよ」

「はははっ。いや……だがここに来て確信した。君達がただ者ではないと会長は見抜いておられたのだろう。我がことながら恥ずかしい話だ。自分達の長を信じることもできなかったとは」

「まあ……あの会長さんが僕ら程度に騙されたりとかはなさそうですけどね」

「フっ……そうだな。もしかしたら色仕掛けでもされたのではないかとか下世話なことまで考えてしまったよ。完全に杞憂だったがね。よし……そろそろ行く」

 ニヒルに笑った庶務さんは再び、最前線へと戻っていった。

 ぶっ飛ばされる頻度が一番多い辺り、僕と同じ盾役のタンクなのだろう。

 僕もあの勇ましさは見習いたいところだ。

 ははは。しかし色仕掛けってその担当桃山くんかな? なにそれオモロイ。

 人は混乱するといろんなことを考えるものだなとちょっと楽しくなってしまったが、庶務さんの迷いはこの熾烈なレベリングでようやく吹っ切ることができたみたいだ。

 彼にそう確信させたのは、まさに強くなっていっているその実感なのだろう。

「……戦ってる感か。はぁータフだなぁ」

「ワタヌキ氏? そろそろお昼でござるよ?」

 手巻き式の腕時計を眺めて呟いた桃山君に、しまったなと僕は頭を掻いた。

「あ、そう? じゃあそろそろ一回休憩にしようか?」

 僕は大きく手を振ってレイナさんに合図する。

 すると頷いたレイナさんは雷を一つゴロンと鳴らして大きな声で叫んだ。

「休憩です! いったん下がって!」

 しかしモンスターと戦っている当人達にしてみたらそれどころではない。

 言い返したのは八坂生徒会長だった。

「そう言われてもな!……こいつら本当に強いぞ!」

「タイミングを見計らって、後ろに走って!……今です!」

 レイナさんの合図に合わせて、生徒会のメンバーは一斉に僕らに向かって走り出す。

「じゃあ―――行くでござる」

「はいはい」

 そして同時に、桃山君が駆け出した。

 まだレベリングを始めて間もないし、生徒会のメンバーよりもモンスターの方が強い。

 追いつくまでに三秒といったところだったが、まぁ桃山君が斬りかかるまでに一秒もかからなかった。

 生徒会メンバーと入れ替わり、鞘から閃いた刃はそれこそ空間の糸を引っ張り抜いたみたいに一直線を切り裂いていた。

「お見事!」

 一薙ぎでぶった斬られたモンスターの群れを確認して、僕が時空の穴をきゅっと閉じれば小休止である。

 ハァとようやく気を抜いた生徒会の中で、一人八坂生徒会長は興奮したようにぽつりと呟いていた。

「……カッコイイ」

「「「!!!!」」」

 だけど生徒会長? その呟き、あらぬ疑惑が再燃するかもしれないので、やめてもらっていいですか?

 ……これって、考えてみればハニトラと言えばハニトラとも言えるのだろうか?

 刀を鞘に納めている魅惑の男、桃山氏の背中は確かにカッコよくはあった。
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