ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち

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第164話心変わり

 生徒会長、八坂 凛音は今回の自分の不甲斐なさに、忸怩たる思いを抱えていた。

「……なんというか、段取りが甘すぎて逆に申し訳なかった」

「それはそう。まぁ雰囲気的にはいちゃもんを付けに来たようなものだったし」

「……やっぱりそんな感じに見えたか?」

「まさに」

 頷いてはいるものの、副会長の如月 静流はどこか他人事だった……と言うよりもでっかい皿に見たこともないほどでっかい夢のステーキを乗せて、ウキウキしていて楽しそうだ。

 一時的なマイブームは度々あるが、如月はずいぶんモンスター飯に惚れ込んでいるようだった。

「だけど……さすがにこれは気持ちがわかるな。見た目からインパクトがすごい……それに……うまい」

「うまい……これは本格的に情報を引き出すべき」

「それは本人に直接交渉しろ」

「そうする。でもまだ一年生。色々と慣れていなくて忙しいはず。私は是非とも仲良くしたい」

「……そうだな」

 本当に信じられないが、その通りだと凛音は頷く。

 しかしだとすれば、この数々の工夫はどこから来ているのか? 興味は尽きなかった。

 難しい顔でステーキを齧る凛音の頭をポンと叩いたのは如月だった。

「リンネは色々考えすぎ。今回だってわざわざ合同探索になんてしないで、焼き肉パーティに招待でもすればよかった」

「……それだと、彼らを呼びづらくないか?」

「まぁ何とでもなる。探索じゃ色気がなさすぎる。桃山君とも話にくいでしょ?」

「それは関係ないだろう……」

 余計な一言を付け加える如月の頭を軽くはたいて、凜音はみんなの様子を見て回ることにした。

 ただざっと見た感じ、如月の言う事も間違ってはいないのかもしれない。

 レベル上げをやった時よりも明らかに朗らかに生徒会のメンバーはサブカルチャー研究部の面々とも打ち解けているように見えた。

 だが当然問題もあるはず。

 それは会計の烽火である。

 一番不満を持っていた一派の中心人物が死に掛けたというのも甘い段取りの結果だと思うと、会長を辞すべきかと考えてしまうほどの失態だった。

 彼はサブカルチャー研究部の面々とは部室の事でやりあってからあまりいい感情を持っておらず、それ以降も目の敵にしている節があった。

 今回感情的にはともかく、ある程度融通を利かせることに利があると、それとなく察してくれることを願っていたが―――失敗という事になるだろう。

 だがその前に少々烽火は今回、勝手が過ぎる。

 これは仲たがいの問題とは別だ。

 例え益々溝が開いたとしても、締めるべきところは引き締めなければ示しがつかないと言うものだった。

「ちょっといいか。烽火……話がある」

「はい、会長。……此度はまことに申し訳ありませんでした」

「うわぁ……」

「……なにか?」

「いや! ウオッホン……わかっているならいいんだが」

 なんか薄汚れているが、妙に烽火の表情が生き生きしててビックリした。

 というかなんか綺麗な烽火だった。

 自分でも何言ってるんだとは思うが、なんとなくいつもはもっと世の中を斜に構えて見ているような感じが透けて見える烽火とは明らかに違う。

 ……なんて言えるわけないが、大事なことの方は言っておかねばならなかった。

「あー今回の単独行動はさすがに看過できない。サブカルチャー研究部が気に入らないとしても今はダンジョン探索中だ。一人の単独行動が全体の危機に繋がることもあるなんてことは基本中の基本だ」

「……その通りです。サブカルチャー研究部の方々には大変なご迷惑をおかけしました。誠心誠意謝罪してお詫びしたいと思います。生徒会の方々にも大変なご迷惑をおかけしました、重ね重ね申し訳ありませんでした」

「……どうした? 別人みたいだぞ?」

 しまったつい口をついて本音が。

 凛音がそう言うとキョトンとした烽火は、ひたすら澄んだ目で答えた。

「そうですね……生まれ変わったような心地なのは間違いありません。曇っていたメガネが磨き上げられた気分です」

「そ、そうなのか?」

「はい。……今回の探索、私にとって大変実りあるものになりました。今後は何らかの形でサブカルチャー研究部の皆様方にもサポートが出来ればと考えているくらいです」

「そ、そうなのか……」

「何かおかしなことでも?」

「いや……そうなってくれればいいなとは思っていたが」

「ええ、会長の先見の明には驚かされます」

「……ありがとう?」

 何があった? 本当に……。

 心当たりがあるとすれば行方不明だった間になにかあったということだろう。

 そして彼を連れて来た燃える頭を思い出して、嫌な予感がした。

「……ファイアーボールヘッドに何かされたのか?」

「いえそんな! あの御方は、愚かな私を助けてくれたのです! あの鮮やかな戦いを皆さんにも見せたかった! あの動きはまさに神が乗り移っていたかのような動きでしたとも!」

「……」

 あの御方とか言い出したぞこいつ。そして目がやばい。

 どうやら何か悪質な洗脳を施されてしまったようだ。

 その辺りは後でワタヌキ君を問いただすとして……これだけ好感度が爆上がりしているのなら、少しくらい説明しておいてちょっと冷静になってもらった方が話しが早いかもしれない。

「えっと実は、あのファイアーボールヘッドの正体はな……」

 ところが凛音が言いかけたところで、バシッと言葉は不要と制止のジェスチャーが飛んできた。

「あー! いいんです! 会長! 正体なんてどうでも!」

「そ、そうなのか?」

「ええ。そもそも正体を知ろうなどという考えがおこがましかった。生徒だろうが助っ人外国人だろうが、彼が存在し、サブカルチャー研究部と繋がっていることは間違いないのです! それを羨ましいなどという卑しい目で見てしまったことが私の間違いだった。私は彼の意思を尊重します。ええ」

「羨ましかったんだな……」

「ええ! しかし問題ありません! 心の迷いは晴れました! サインだって貰ったんですよ!」

「…………よかったな」

 凜音はなんだか狐に化かされような心地で、その場を離れて相変わらず燃え盛っている頭の後輩を見た。

「…………何をしたワタヌキ君」

 そんな呟きは、本人が聞いたら別に何もしてないと全力で主張しそうなセリフだったが、幸い受け取り手は巨大ステーキと骨付き肉に夢中のようだった。
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