ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち

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第165話リピーターとか

 合同探索はなんだかんだ大変だったが、無事終わったと……そう言ってもらえたら嬉しいなと思う今日この頃。

 この綿貫 鐘太郎、やれるだけのことはやったつもりなので、過去は振り返らないことにして、さっそく日課の低階層巡りに励んでいた。

「最近は先生やら生徒会の皆様方に偉そうなことも言っちゃってるからなぁ……。まぁこういう活動は小さなことからコツコツとだな」

 というわけで、精霊を大量ゲットして補充しに売店に顔を出してみたわけだが、そこには鼻眼鏡とアメリカンなシルクハットをかぶった店員さんが待ち構えていた。

「らっしゃいやせー」

「なにやってんの、松林君……」

「いやなにって……店のイメージアップキャンペーン?」

「……すごく協力していただいて大変申し訳ない?」

 思ったよりも頑張ってくれているみたいだけど、たぶんそれ逆効果だと思います。

「謝るなよぉ!? いやーでもこういうのやってみると結構上がるぜ? それに思わぬ効果もある」

「思わぬ効果?」

 すごく自信ありそうな松林君は鼻眼鏡をクイッと上げていた。

「うんむ! 何かって言うとだね……先輩先輩」

「なんでち?」

 話しかけたのはまさかの天使で、松林君はその顔を真剣な表情で覗き込み。

「ほい!」

 手元のスイッチを操作するとシルクハットの上部がパカリと開いて、鳩のおもちゃがバネで飛び出した。

 安っぽさの割にけっこう凝ったギミックだ。どこで買ったんだろう?

 ミョンミョン左右に動く鳩のおもちゃを見つめる天使はさぞご立腹かと思いきや……次の瞬間、天使は思い切り吹き出した。

「ボヒュ! キャハハハハハ!」

「えー……」

 ていうかまさかの爆笑である。大喜びにもほどがあった。

 会心の成果に松林君は、非常に満足そうだった。

「なー? 大好評なんだよ。これで先輩方の当たりも若干マシになる」

「はー……知らなかった」

 まさかこういうネタが好みとは意外だ。

 案外浅いツボなのは見た目に引っ張られているからなのか?

 今度僕も試してみよう。

「それで今日はどうした?」

 鼻眼鏡を外しつつ切り替えて聞いてくる松林君に、僕はそうだったとリュックから大量のカプセル入りの大袋を取り出して見せた。

「商品の補充」

「おお! いいね大量じゃん!」

 何気に精霊大好きな松林君は喜んでくれたので、僕としては満足だった。

「ちょっと多めに仕入れて来たよ。それで精霊ガチャの方はバッチリだけど、他の商品の補充っている?」

「全然売れてないからなぁ。ちょこーっと売れてはいるけどまだストックで十分だな」

「そうかぁ。売れているだけ前進だけどねぇ」

 そろそろ宣伝効果が出始めている頃なんじゃないかなーと思ったが甘かったみたいである。

「ああ。でもオレも宣伝はしてるぞ? 面白いもんあるからお金持って来てみ? ってさ。その甲斐あってさいきんぼちぼちと……お? 来たぞ?」

「………客が!?」

 ハッと振り返る。

 いやしかし、今一クラスの中でイメージの良くない僕は、このまま客の前に居続けて良い物か?

 咄嗟に迷っていたら声を掛けてくれた松林君はいい奴だった。

「せっかくだから見てけよ」

「わかった。……こっそり見てる」

「別にこっそりする必要はない。……まあ、落ち着くならいいか。じゃあ売店の中に入ってみ?」

 うんと頷き、僕は売店の中へ。

 どんな人達だろうとワクワクしていたら、お客さんは妙にバタバタしている4人組のようだった。

 彼らというよりもリーダーと思われる男子生徒が一人、声を荒げて松林君の名を叫んでいた。

「おいいいいい! マッシー! いるか!」

「らっしゃいやせー」

「いたな! ほんとについたぞなんだこの石っころみたいな奴!」

「どんぐり君ですけどー? 大地の精霊舐めんじゃねぇよ敬え」

「ま、まぁそんなことはどうでもいいんだ! それよりも俺のウォルフ2世がすごすぎるんだが!?」

「……ウォルフ2世? なにそれ?」

「俺の精霊だよ! イカした半透明のお馬さんだ!」 

「ああ、あのロバみたいな精霊か……」

「ロバじゃねぇ! 訂正しろ! 馬だ! 風の精霊さんだよぉ!」

「……それで? その2世がどうしたって?」

「だから強すぎるってんだよ! おかしいだろ!」

 その話を聞いた松林君は渾身のどや顔で納得の頷きだった。

「精霊の仕様でーす。気に行ってくれたのか? よかったよかった」

「そうだよ気に入ったよ! それでだよ! あのガチャってまだ引けるか!? こいつらにも精霊つけてやりたいんだけどよ!」

 なるほど……要するに、このお客さんは精霊を気に入ってくれて、売店を探してくれていたリピーターってことか。ありがとうございます。

 自分の精霊を渡してナビをさせ、再びの来店を促すとは松林君もやるものだ。

 そしてタイミングバッチリの来店はビジネスチャンスだった。

「はい。つい先ほど入荷したばかりっすよ? 500円ポッキリです」

「安すぎんぞふざけるな!」

「……こないだオマエ500円でも高いっつってございましたが?」

「わざわざ訂正しに来たんだよ! 言わせんなよ恥ずかしい!」

「でも間違いじゃございませんぜ? うちのお店は探索者のサポートを売りにしてますからね。地上じゃ考えられない破格の値段で回復薬や、サポートアイテムを販売してるよ?」

「……」

 なるほど。このお客さん、騒がしいけどいい人だな?

 そして自信満々で売店の商品を売り出す松林君には感心してしまった。

 ただ、向こうは高くすべきという主張なところが普通の商談と違うところだった。

「……人数分頼む。というかちょっと他の商品ちゃんと見せてくれん?」

「あいよ! まいどあり!」

 ワイワイと売店の商品を見ている生徒達は見覚えのないところを見ると、他のクラスの一年生のようだった。

 ただすでに精霊を実感しているリーダーとは違って他のメンバーはだいぶん世代的に古い型落ちのガチャをじっと眺めて、ずいぶん警戒していた。

「……あまりにも胡散臭い」

「……このガチャを見ると途端に不安になる」

「何かペテンに掛けられてるんじゃ?」

「お前ら! いいからだまされたと思って引いてみろって! 損しても500円だ!」

 ああ、ガチャガチャが回転していくよ。

 そして、またまた全員無事に自分の属性を引くことができたようだった。

「……やっぱりあいつら、相性いい人間選んで飛び出してるだろ?」

 つい呟いてしまうほど当選率が高すぎる。

 精霊も案外強かに、自らが活躍できる舞台をあのガチャの中から狙っているのかもしれなかった。

 お客様がカプセルから出てきた不思議な生命体を半信半疑で連れて行ったのを見計らって僕は出ていく。

 そして思わず唸りながら頷いた。

 うん。これは思ったよりも順調なんじゃないか?

 そして松林君は思った以上に必要な人材だったようだ。

 順調に精霊の良さは、学園の生徒内に浸透しているみたいである。

「これは……嵐が来るかもしれない。もっと商品を仕入れてこようか?」

「ひっひっひっ……だろう? やっぱこの売店絶対可能性あるって! だから店長、うまくいったらバイト代弾んでくれよ?」

 ニカッと笑って催促してくる松林君。

 やってることはすごい無謀っぽいのに最初に飛び込んで来た松林君は先見の明があるっぽい?

 いや、それを僕が言うのは、それこそ少しばかり傲慢が過ぎるのかもしれないか。

 そんな松林君は、去り際に妙な噂話を教えてくれた。

「ところで……店長。今流行ってるこんな噂は知ってるか?」

「噂?」

「ああ!……ダンジョンにさ迷う亡霊の噂さ」

「……へっ。亡霊ねぇ」

「お? 笑ったな? だが本当らしいぞ?」

「……たとえ本当でもねぇ。モンスターなんて珍しくなくない?」

「いや珍しいだろ。ゴースト系なんて」

 そうは言うけど、ついこの間ゾンビとゴーストひしめく階層を散歩してきたというのに、一匹亡霊が出たくらいで怖がれという方が無理な話だ。

 怪談話をする要領で、不気味さを演出しながら松林君は語り出す。

「例の動くトイレのうちの一つにやべぇ亡霊が住み着いていて、知らずに用を足すと尻を舐められるんだとさ。笑えるだろ?」

「……!」

 だけど続く話を聞いた僕は、容易く顔色を蒼白にしてしまった。
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