ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち

文字の大きさ
172 / 257

第172話さて受け取ってもらおうか

「君達! 突然ごめん! だけど助けて!」

 浦島先輩の助けを求める訴えは、全ては仕組まれたものだった。

「キシャアアアアア!」

 はっはっは! 小さき人間どもよ怖かろう!

 そしてそれを追う僕は……今は謎のモンスターとして炎の魔神へと姿を変えていた。

 仮初のボディは精霊達の集合体。精霊合体モンスターワタヌキ君の誕生の瞬間である。

 全身燃え盛るボディには様々な精霊がギッチリ詰まっていて、どこからどう見ても姿かたちはモンスターのそれだった。

 いえね? 僕は考えたのだ。

 女の子に指輪を手渡す? そんな意味深なこと本当にする必要あるの?と。

 そしてなおかつすぐに使ってもらわないといけない関係上、一定の説得力は大切だろう。

 この閃いた案を説明したら、浦島先輩からはガッカリだよ……とお言葉を頂戴してしまったが、先輩もなんだかんだ協力してくれたわけだ。

 わざわざ浦島先輩の協力を仰いだのにだって理由はあった。

 指輪をドロップするなら、相応のモンスターを演出しなければならない。

 しかし強そうなモンスター相手なら、逃亡は当然選択肢に入って来るだろう。

 そこで大事なのが浦島先輩である。

 月読さんの所のリーダーである草薙君は、僕が見たところ浦島先輩を憎からず思っている……と思う。

 恋愛感情ではなくとも、あの表情をしていて憧れがないことはないんじゃないだろうか?

 そんな彼女がモンスターに追われて助けを求めればどうか?

 少なくとも逃げると言う選択肢は削れるはずなのだ。

 我ながらひどい作戦だが……巻き込ませてもらおう。

 そして作戦通りに草薙君がまず食いついた。

「わかった! こっちだ! 任せてくれ!」

「ホント! ありがとう! 助かった! いやぁ……かっこ悪いところを見せちゃったなぁ」

 ただ照れてごまかす浦島先輩だったが、言葉を掛けたとたんに振り返ったクサナギ君は目が点になっていた。

「え? ええっと……どこかで会ったことがあったかな?」

「……いや、何でもないヨ」

 あ、草薙君ひょっとして本気で気がついてない?

 いやそう言えば、今浦島先輩増量期だったか。

 しかし声も骨格も同じなんだから気がついてもよさそうなもんだけど……どうにもそういうわけにはいかなかったようだった。

「……」

 ほら、背後の浦島先輩の目がまるで虫を見るような目をしていて……いや、見なかったことにしよう。

 ちょっと思っていたのとは違うが結果オーライ。目的の第一段階は達成した。

 戦闘態勢を整えたクサナギパーティは逃走する気配はなかった。

 ぐっと親指を立てた浦島先輩の献身的な活躍に感謝しつつ、僕は動き出した。

「ぐおおおおお!」

 今はモンスターとして、精一杯の負けっぷりを披露するだけだ。

 分かっているね? 精霊達……では行くぞ?

 僕が魔力の出力を急上昇させると、よっしゃやったる!と全身の精霊が応え、幻影の炎が燃え上がり、草薙君達前衛に襲い掛かった。

「なんだこいつ! 見たことないぞ! ハクジャ! 動きを止めろ!」

 まずはタンクのハバキリ君が白い蛇の精霊を展開すると、足元が猛烈な勢いで凍り付いて言った。

 おお! 水属性の精霊か!

 中々の出力の様で、数秒も経てば僕の体の動きがすっかり止められてしまった。

 そして動きが止まったところに、草薙君が現れるが―――僕はさすがにギョッとしてしまった。

 彼の身体には墨で描かれたような龍が絡みついていたからだ。

「食らえ!」

 振りかざした剣に宿るのは強烈な光の魔力。

 そして精霊の龍がそこに更に闇の魔力を注ぎ込む。

「……グルルルル」

 これは……! 光と闇が合わさって最強に見える!

 相反する属性の絡み合うその光景はいっそ神々しくさえ見えて、実際強力なスキルであることは間違いなく、脅威になりえる。

 だが―――それはゆくゆく成長したらの話だった。

「グハハハハハ!」

「「!」」

 僕は豪快に笑い、拳の一撃でスキルを正面から叩き潰した。

 炎の巨人の猛烈な拳の一撃は闇の龍ごとクサナギ君を粉砕した。

「……なに!」

「嘘だろ!」

 ハバキリ君とクサナギ君には申し訳ないけど、引きずり出すべきはただ一人なんだ。

 僕はこんなところで負けてはいられないのだよ。

 そうして見据えるのは最終目標の月読さんである。

 まず彼女が出て来て、戦利品を貰う権利を得てもらわないと始まらない。

 そんな僕を邪魔するように飛んできた超特大の炎の塊を受け止め、爆炎に飲みこまれたが何の痛みも感じはしない。

 僕は無造作に炎の壁を踏み越えると、驚愕した美少女がカタカタ震えているのが見えた。

「ウソ……こんなのが出て来るなんて」

 ふははは! 怖かろう!

 天音さんが先の結果を見て慄いていたが、精霊単品で相手出来るほど精霊合体ボディは甘くはなかった。

 というか、おそらくその炎の精霊もグルだ。

 頭の後ろに飛んでいる精霊は少女のようだったがそのヤレヤレって顔は今すぐやめて欲しかった。

 さてお膳立ては整った。

「スゥ……」

 僕は最後に残った、同じくカオスな魔力を纏った誰かさんに掛かってこいと手招きをする。

 現状、限界以上に力があふれている調子に乗ってる月読さんは、まるで悪の女幹部のように優雅に悪いセリフを言い放っていた。

「……いい度胸ね。でもいい気になっていられるのもここまでだわ!」

 いつになく勢いのある月読さんは明らかに様子が変だった。

 なんかハイ。

 とてもハイなテンションだ。

 しかしそうなってもおかしくないくらいに、精霊達が助力しているのは確定的に明らかだった。

 この茶番も最後のフィナーレである。

 敵も味方も精霊達が湧きたっているのが分かる。

 いや、僕の方はすでに撤退準備を整えている節はあるか。

「……すごい力が流れ込んでいる。これがあなたたちの力なのね!」

 月読さんが叫び、僕は目を細める。

 その魔力はあまりにも不安定でスキルとも魔法とも呼べるものではなかった。

 単純な数の暴力。しかし破壊力はまぁ、かなり暴力的になりそうだ。

 一体一体は大したことなくとも、数が集まれば恐ろしい力を発揮するのは当然の結果だった。

「……」

 予定通り―――確かにそのはずだ。

 しかし実際に攻撃力として目の前に出来上がりつつある魔力塊を見つめて、僕の頭には不安がよぎっていた。

 ……でもあれ、喰らって平気かな?

 ちょっと自信がなくなって来たわけだが、もう逃げることもできない。現実は非情である。

 精霊達は未だかつてない団結を見せた。

 正式にテイムモンスターとして組み込まれている者とそうでない者、その両者の利害が一致して混じり合い、凝縮される。

 目論見は間違いなく伝わっているはず。つまりあの巨大な力が向けられるのは……。

「……僕なんだよな」

 ちょっと涙目になりながら、僕はその時を待つ。

「さあ! 行って!」

「……!」

 あらゆる精霊が放つ欲望の一撃が閃光となって飛んできた。

「ぬおああああああああ!」

 それは容赦なく巨大モンスターは炸裂し火の玉ボディは、まばゆい魔力の渦に呑まれて消え去った。

「……やったわ!」

 そしてキンと音を立てて、転がり出る指輪が一つ。

 最大の戦果を挙げた月読さんは、ドロップアイテムだと思われるそれを拾い上げると使い方を精霊達が丁寧に囁いていた。
感想 3

あなたにおすすめの小説

さびれたレンタル道具屋の転生おっさん、道具の使い方を教えまくる。~客のS級冒険者が俺を歴戦の英雄と勘違いして弟子入りを求めてくるんだが~

遥風 かずら
ファンタジー
前世で過労死した久世織人が目を覚ますとそこは異世界の王都、しかも古道具屋の跡取り息子として転生していた。アクセル・リオットとして成長した彼は荷物持ちとして冒険者パーティーに同行、その道中に【無限収納】スキルを開花させる。 パーティー活動から離脱後、四十歳となったアクセルは前世の記憶を思い出し、儲かりそうという考えで道具レンタル屋を始めていた。客足もなく店がさびれる中、道具の使い方が出来てない冒険者によって治安の乱れや魔物討伐の失敗が続いているという話を常連客から聞かされる。あらゆる道具に精通するアクセルは客の冒険者に使い方を教えに行くことを思い立つ。 アクセルの教えにより、やがてS級冒険者や聖女、王女までも勘違いして彼の元には次々と弟子入りを求める者が現れていくのだった。

《カクヨム様で50000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う

なべぞう
ファンタジー
ダンジョンが生まれて百年。 スキルを持つ人々がダンジョンに挑む世界で、 ソラは非戦闘系スキル《アイテムボックス》しか持たない三流シーカーだった。 弱さゆえに仲間から切り捨てられ、三十五歳となった今では、 満身創痍で生きるだけで精一杯の日々を送っていた。 そんなソラをただ一匹だけ慕ってくれたのは―― 拾ってきた野良の黒猫“クロ”。 だが命の灯が消えかけた夜、 その黒猫は正体を現す。 クロは世界に十人しか存在しない“祝福”を与える存在―― しかも九つの祝福を生んだ天使と悪魔を封印した“第十の祝福者”だった。 力を失われ、語ることすら封じられたクロは、 復讐を果たすための契約者を探していた。 クロは瀕死のソラと契約し、 彼の魂を二十年前――十五歳の過去へと送り返す。 唯一のスキル《アイテムボックス》。 そして契約により初めて“成長”する力を与えられたソラは、 弱き自分を変えるため、再びダンジョンと向き合う。 だがその裏で、 クロは封印した九人の祝福者たちを狩り尽くすための、 復讐の道を静かに歩み始めていた。 これは―― “最弱”と“最凶”が手を取り合い、 未来をやり直す物語

俺の家に異世界ファンタジーガチャが来た結果→現実世界で最強に ~極大に増えていくスキルの数が膨大になったので現実世界で無双します~

仮実谷 望
ファンタジー
ガチャを廻したいからそんな理由で謎の異世界ガチャを買った主人公はガチャを廻して自分を鍛えて、最強に至る。現実世界で最強になった主人公は難事件やトラブルを解決する。敵の襲来から世界を守るたった一人の最強が誕生した。そしてガチャの真の仕組みに気付く主人公はさらに仲間と共に最強へと至る物語。ダンジョンに挑戦して仲間たちと共に最強へと至る道。 ガチャを廻しまくり次第に世界最強の人物になっていた。 ガチャ好きすぎて書いてしまった。

素材ガチャで【合成マスター】スキルを獲得したので、世界最強の探索者を目指します。

名無し
ファンタジー
学園『ホライズン』でいじめられっ子の生徒、G級探索者の白石優也。いつものように不良たちに虐げられていたが、勇気を出してやり返すことに成功する。その勢いで、近隣に出没したモンスター討伐に立候補した優也。その選択が彼の運命を大きく変えていくことになるのであった。

ダンジョンのある生活《スマホ片手にレベルアップ》

盾乃あに
ファンタジー
進藤タクマは25歳、彼女にフラれて同棲中の家を追い出され、新しい部屋を借りたがそこにはキッチンに見知らぬ扉が付いていた。床下収納だと思って開けたらそこは始まりのダンジョンだった。  ダンジョンを攻略する自衛隊、タクマは部屋を譲り新しい部屋に引っ越すが、そこにもダンジョンが……  始まりのダンジョンを攻略することになったタクマ。    さぁ、ダンジョン攻略のはじまりだ。

ダンジョントランスポーター ~ 現代に現れたダンジョンに潜ったらレベル999の天使に憑依されて運び屋になってしまった

海道一人
ファンタジー
二十年前、地球の各地に突然異世界とつながるダンジョンが出現した。 ダンジョンから持って出られるのは無機物のみだったが、それらは地球上には存在しない人類の科学や技術を数世代進ませるほどのものばかりだった。 そして現在、一獲千金を求めた探索者が世界中でダンジョンに潜るようになっていて、彼らは自らを冒険者と呼称していた。 主人公、天城 翔琉《あまぎ かける》はよんどころない事情からお金を稼ぐためにダンジョンに潜ることを決意する。 ダンジョン探索を続ける中で翔琉は羽の生えた不思議な生き物に出会い、憑依されてしまう。 それはダンジョンの最深部九九九層からやってきたという天使で、憑依された事で翔は新たなジョブ《運び屋》を手に入れる。 ダンジョンで最強の力を持つ天使に憑依された翔琉は様々な事件に巻き込まれていくのだった。

ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ

高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。 タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。 ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。 本編完結済み。 外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。