ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち

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第173話忘れた頃にやって来る

「……し、死ぬかと思った。精霊どもめぇ……」

 月読さん達が去ってしばらくして、僕はダンジョンの床部分からボコリと脱出していた。

 あいつら……もうちょっとマシな隠し方はなかったものか?

 危うくダンジョンの壁になって、モンスターの礎になるところだった。

 胴体まで埋まった状態で顔を上げると、月読さん達を送り出した浦島先輩が待っていて、先輩は腰を落とした状態のまま半眼で僕を見下ろしていた。

 収穫前の大根になった気分の僕は、若干疲れた気分で挨拶した。

「……お疲れ様です先輩」

「……お疲れさん。良くやるね。迫真の死にっぷりだったじゃん」

 迫真と言えば、迫真だったのだろう。

 実際にあの閃光の中に消えかけた時、生きた心地はしなかったですとも。はい。

「でしょう? まぁ仕方ないです……いや毎度毎度申し訳ない」

 我ながら毎回しまらないオチですね。

 浦島先輩は良く巻き込まれているだけに申し訳なさもひとしおだった。

 僕は情けない顔になっているのを自覚すると、浦島先輩からグリグリ頭を撫でられていた。

「謝んなくていいって。まぁその辺持ちつ持たれつって奴さ。別に変な事頼んでるわけでもあるまいし」

「……残念ながら9割変なことのような気もしますが?」

「許容範囲だ、気にすんなって言ってるの。むしろ感謝してるよ。これ本当だから」

 そうですか? いや、そう言ってくれるのならありがたい。

 でも、単に言葉で納得するだけなのもなんなので僕はポケットからアイテムを取り出すと浦島先輩に差し出した。

「……ああそれと。浦島先輩、これ受け取ってください」

「んん? 報酬? 貰える物はもらっちゃうよ?」

「はい。これ指輪です」

「ふへ!?」

 変な声を上げる浦島先輩だが無理もない。差し出したのは先ほど泉で手に入れた散々外れと言っていたアイテムだった。

「外れの指輪で印象悪いですが……」

「……マジで?」

 なぜか盛大に狼狽えた浦島先輩に僕は当たり前だと頷いた。

「え? マジですよ。そもそも先輩に渡そうと思ってたんですから」

「んんっ……ほほー。良い心がけだね」

「当然ですとも。先輩と僕の仲じゃないですか」

「ふーん。……それで? そう言えばこの指輪ってなんか効果あるの?」

 何だか上ずった声の先輩に、僕はそう言えば説明していなかったかとにこやかに答えた。

「看破の指輪です。精霊の真名を知ることができるんで、ガチャの仕入れが僕以外にも可能になる優れものですよ。お礼としては最高なんじゃないかなって」

「……は?」

 だがそう言った途端、浦島先輩の表情が豹変した。

 とんでもない圧力に僕は気圧されたが、至近距離の浦島先輩はなんかおっかない笑顔のままズズイと顔を寄せてくる。

「それは……本当に必須アイテムじゃないかな?」

「ひえ!? そうですけど!?」

 今日一番不機嫌になってしまった浦島先輩に程よく詰められてしまったが、実はここでも今日最悪ではなかった。



「ううう……なぜあんなに怒るんだ。とっておきのアイテムなんだけどなぁ……」

『さて、なんでだろうね?』

 いや、怒って当然か? 今日一日を振り返ると、我ながらひどい物である。

 言葉攻めから解放されて浦島先輩が帰ってしまった後、地面から抜け出した僕はブルリと催してトイレを探すことにした。

 幸い一番近くのトイレはすぐ近くにあるようで、僕は急いでそこを目指した。

「なんというか今回僕は反省しなければならないな……」

『というと?』

「まぁ色々? 特に効率がいいからって本当にやりたいことを蔑ろにしてしまっていた気がする」

『……そうかな?』

「そうとも。浦島先輩も呆れるわけだよ。ひたすら授業時間にトイレを作り続けていた自分を改めて見せつけられたね、冷静に見るとやりすぎだわ」

『……だろうね』

「今後はもっと別の事にも挑戦してみようかな?」

『! ようやくわかってくれたのかい!」

「ああ! 今度はもっとおいしい物とか……いい奴を作るよ!」

『……』

 攻略君と他愛ない雑談をしながらトイレに飛び込んだ僕は、慌て気味に便座に座った。

 ただ―――ホッと一息ついた僕は完全に忘れていた。

 かつて、浦島先輩に頼んで一匹だけテイムしてもらったスライムの事を。

 そしてそのスライムを浄化に活用できないかと、試作品を作ったことを。

 攻略君が問題なしと言ったのも当然だった。

 それはあまりにも当然の帰結。

 やめとけと言われたのにやってみた、まあいわゆる自業自得というやつだった。

 ああ、怪談の元ネタが僕に迫る。

「――――」

 ペロンと舐められた尻は強酸性の一撃をもろに食らった。

 本日の最悪。

 過去一番情けない一日、更新の瞬間だった。
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