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第176話部室の利用者
部室をよく利用している人間と言うのは実は割とまだ存在している。
まずは僕。
まぁこれは一番は部室が好きという単純な理由なのだが、だからこそよく出くわす人はいた。
そして最近最多の頻度を誇る人物は今日もコソコソと部室にやって来た。
「あ、お疲れ様です、龍宮院先生」
「お。お疲れ様。……よく会うね」
「今日は待ち合わせをしてまして。先生はダンジョンですか?」
わかっていて訊ねると、龍宮院先生は素直に頷いていた。
「そのつもりだね。いやこの教室便利なんだよ……こっそりダンジョンの中に入れるのがいい」
「……大変そうですね。先生人気あるから、指導依頼も多いでしょう?」
指導依頼というのは、生徒が冒険者の先生に戦闘やダンジョン攻略についてのレクチャーを受けることができる、そういう仕組みだった。
個人の実力がモノを言うダンジョン探索で必須な戦闘技能をプロのやり方で教えてもらえる貴重な機会なのだが、指名制なのが災いして人気のある先生は過度な労働を強いられることになると聞いている。
龍宮院先生は最たる例で、決められた枠はいつも予約でいっぱいらしい。
しかしフリーの枠は直接受け付けるもので、生徒との誰とも顔を合わせなければ依頼もされないと言うわけだった。
「そうなんだよ……。そりゃあそれが仕事だからやるけれども身が持たない。休息時間にだって声を掛けられたら無視するわけにもいかないし……まぁいい隠れ家を手に入れてしまったというわけだね」
「あははは……」
「それで? お客っていうのは、生徒会の誰かかな?」
僕の待ち人に興味を持ったらしい龍宮院先生はそんな話を振って来たが、今日の話はいってみればビジネスだった。
「違いますよ。東雲さんっていう女の子なんですけど」
「ホゥ……君も隅に置けないじゃないか」
「そういうのじゃないです。実は桃山君用の刀を頼んでいて、ついに出来上がったみたいなんですよね」
一応名目上は我校初の学生によるハンドメイドのダンジョン武器。その正式依頼第一作目である刀だ。
ようやく出来上がったのでかなり期待しているわけだが、龍宮院先生はあきれ顔になった。
「……君は本当に手広くやっているなぁ。生徒に刀を打たせてるのかい?」
「いや、そういうのが好きな女子なんですよ……刀剣がね」
「…………ああなるほど。で、技術を大安売りってわけだ。行動原理が分かりやすい」
「そこはサブカル部ですからね!」
そして僕とは違って早々に東雲さんの趣味を特定してきた先生に僕は堂々と胸を張ってみせた。
「胸を張るなぁ。まぁそういうの嫌いではない。んん? ……いや待って。君が噛んでるってことは、それって魔力に適応した武器ってこと?」
「そうなりますね」
「……普通の武器と違って、魔力を込めても壊れない?」
「相応に。発掘品と同程には持つかと」
「……私は何も聞かなかった? いいね?」
「……まだ試作品ですからね。うまくいくようだったら、東雲さんに聞いてみてください」
「……相変わらず情報の扱い雑だなぁ」
「それで助かってるところ、先生だってあるでしょ? 先生はその後新ジョブはどうです?」
そして今度は僕のターンだ。
ジョブについては僕のおすすめだから気になって聞いてみると、龍宮院先生は順調だと得意顔だった。
「正直、本気でダンジョンに籠って特訓したい衝動に度々駆られて仕方がないね」
「まぁ無理もないですね。あの”波”は、僕も魂が震えました」
「だよなぁ……他の格闘系の上級職だって気になっているし……特に気になるのは聖闘士だね」
「それはそうですな……」
「というか、今試してる」
やはりあれから先生も格闘家としての血が騒いでいるという事か。
そして上級職のつまみ食いとは、中々楽しそうなことをしているものだった。
「へぇどんな感じです?」
「面白いよー? ちょっと見せてあげようか?」
龍宮院先生はそう言いながら僕の側にやってくると、僕の胸に手を当てて呼吸を整える。
すると、先生の手のひらがボワッと温かくなって体が軽くなった。
体の細胞が一気に活性化して癒されていく感覚は回復魔法に似ているが、扱っているのが生命力により近いのかこちらの方が力強く、よく体に馴染んだ。
「おお! 回復系ですか!」
「そう。自前でガードと回復まで使える。聖闘士の継戦能力は相当なものだよ」
「はぁ……確かに戦い続けられるのは強そうですね」
ただでさえ体力のある先生が自前で回復して戦い続けられると考えると、もう半永久的に動き続けるんじゃないだろうか?
次に模擬戦する時、ずっと終わらないんじゃないかと思うとサンドバックとしてはおっかなくてたまらないけど、先生がより強くなって生存率が上がるのは素直に喜ばしい。
「まぁそういう事。他にも攻撃力も弱くはない。気になるのは自分自身の耐久力かな?」
「耐久力全振りってわけでもないですからね先生のビルド。気になるなら防具でも新調してみては?」
「防具か……」
ふむと唸りながら考え事をしていた龍宮院先生だったが、だけどさすがは格闘家。
すぐに視線の気配の気がついて顔を上げる。
僕もそれで自分達に向けられている視線に気がついて部室の扉を見ると、教室のドアの隙間から爛々と見開かれた目玉がこちらを見ていた。
「……」
そこには東雲さんがいて、扉の隙間からこっそり様子を窺っているつもりらしい。
何やってんだろ?っと思った僕は不意に今の状況に気がついて、ヒヤッと血の気が引てゆく。
ちなみに龍宮院先生は僕の胸に手を当てて、超至近距離にいた。
「「いや! 違うんだ!!」」
「!……あっ、うちのことはお気になさらずに! いいんです! ……わかっていますから! わかっていますから!」
「絶対何にもわかっていない!」
「一旦ちゃんと話をしよう!」
東雲さんとの押し問答はしばらく続いた。
まずは僕。
まぁこれは一番は部室が好きという単純な理由なのだが、だからこそよく出くわす人はいた。
そして最近最多の頻度を誇る人物は今日もコソコソと部室にやって来た。
「あ、お疲れ様です、龍宮院先生」
「お。お疲れ様。……よく会うね」
「今日は待ち合わせをしてまして。先生はダンジョンですか?」
わかっていて訊ねると、龍宮院先生は素直に頷いていた。
「そのつもりだね。いやこの教室便利なんだよ……こっそりダンジョンの中に入れるのがいい」
「……大変そうですね。先生人気あるから、指導依頼も多いでしょう?」
指導依頼というのは、生徒が冒険者の先生に戦闘やダンジョン攻略についてのレクチャーを受けることができる、そういう仕組みだった。
個人の実力がモノを言うダンジョン探索で必須な戦闘技能をプロのやり方で教えてもらえる貴重な機会なのだが、指名制なのが災いして人気のある先生は過度な労働を強いられることになると聞いている。
龍宮院先生は最たる例で、決められた枠はいつも予約でいっぱいらしい。
しかしフリーの枠は直接受け付けるもので、生徒との誰とも顔を合わせなければ依頼もされないと言うわけだった。
「そうなんだよ……。そりゃあそれが仕事だからやるけれども身が持たない。休息時間にだって声を掛けられたら無視するわけにもいかないし……まぁいい隠れ家を手に入れてしまったというわけだね」
「あははは……」
「それで? お客っていうのは、生徒会の誰かかな?」
僕の待ち人に興味を持ったらしい龍宮院先生はそんな話を振って来たが、今日の話はいってみればビジネスだった。
「違いますよ。東雲さんっていう女の子なんですけど」
「ホゥ……君も隅に置けないじゃないか」
「そういうのじゃないです。実は桃山君用の刀を頼んでいて、ついに出来上がったみたいなんですよね」
一応名目上は我校初の学生によるハンドメイドのダンジョン武器。その正式依頼第一作目である刀だ。
ようやく出来上がったのでかなり期待しているわけだが、龍宮院先生はあきれ顔になった。
「……君は本当に手広くやっているなぁ。生徒に刀を打たせてるのかい?」
「いや、そういうのが好きな女子なんですよ……刀剣がね」
「…………ああなるほど。で、技術を大安売りってわけだ。行動原理が分かりやすい」
「そこはサブカル部ですからね!」
そして僕とは違って早々に東雲さんの趣味を特定してきた先生に僕は堂々と胸を張ってみせた。
「胸を張るなぁ。まぁそういうの嫌いではない。んん? ……いや待って。君が噛んでるってことは、それって魔力に適応した武器ってこと?」
「そうなりますね」
「……普通の武器と違って、魔力を込めても壊れない?」
「相応に。発掘品と同程には持つかと」
「……私は何も聞かなかった? いいね?」
「……まだ試作品ですからね。うまくいくようだったら、東雲さんに聞いてみてください」
「……相変わらず情報の扱い雑だなぁ」
「それで助かってるところ、先生だってあるでしょ? 先生はその後新ジョブはどうです?」
そして今度は僕のターンだ。
ジョブについては僕のおすすめだから気になって聞いてみると、龍宮院先生は順調だと得意顔だった。
「正直、本気でダンジョンに籠って特訓したい衝動に度々駆られて仕方がないね」
「まぁ無理もないですね。あの”波”は、僕も魂が震えました」
「だよなぁ……他の格闘系の上級職だって気になっているし……特に気になるのは聖闘士だね」
「それはそうですな……」
「というか、今試してる」
やはりあれから先生も格闘家としての血が騒いでいるという事か。
そして上級職のつまみ食いとは、中々楽しそうなことをしているものだった。
「へぇどんな感じです?」
「面白いよー? ちょっと見せてあげようか?」
龍宮院先生はそう言いながら僕の側にやってくると、僕の胸に手を当てて呼吸を整える。
すると、先生の手のひらがボワッと温かくなって体が軽くなった。
体の細胞が一気に活性化して癒されていく感覚は回復魔法に似ているが、扱っているのが生命力により近いのかこちらの方が力強く、よく体に馴染んだ。
「おお! 回復系ですか!」
「そう。自前でガードと回復まで使える。聖闘士の継戦能力は相当なものだよ」
「はぁ……確かに戦い続けられるのは強そうですね」
ただでさえ体力のある先生が自前で回復して戦い続けられると考えると、もう半永久的に動き続けるんじゃないだろうか?
次に模擬戦する時、ずっと終わらないんじゃないかと思うとサンドバックとしてはおっかなくてたまらないけど、先生がより強くなって生存率が上がるのは素直に喜ばしい。
「まぁそういう事。他にも攻撃力も弱くはない。気になるのは自分自身の耐久力かな?」
「耐久力全振りってわけでもないですからね先生のビルド。気になるなら防具でも新調してみては?」
「防具か……」
ふむと唸りながら考え事をしていた龍宮院先生だったが、だけどさすがは格闘家。
すぐに視線の気配の気がついて顔を上げる。
僕もそれで自分達に向けられている視線に気がついて部室の扉を見ると、教室のドアの隙間から爛々と見開かれた目玉がこちらを見ていた。
「……」
そこには東雲さんがいて、扉の隙間からこっそり様子を窺っているつもりらしい。
何やってんだろ?っと思った僕は不意に今の状況に気がついて、ヒヤッと血の気が引てゆく。
ちなみに龍宮院先生は僕の胸に手を当てて、超至近距離にいた。
「「いや! 違うんだ!!」」
「!……あっ、うちのことはお気になさらずに! いいんです! ……わかっていますから! わかっていますから!」
「絶対何にもわかっていない!」
「一旦ちゃんと話をしよう!」
東雲さんとの押し問答はしばらく続いた。
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