ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち

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第5話大切な用があるんだ

 さてダンジョン探索者のための学校では、当然ダンジョンアタックの授業をそれなりの時間履修しなければならない。

 しかしまだ基本が終わっていない内に適当に戦うわけにはいかない僕は、毎回そっと気配を消していた。

 案外戦いたくない、危険は犯したくないという生徒は多いのでその辺りは適当な部分も多いのだが……今日はどうにも巡りが悪かったらしい。

「なぁ。君、一緒に行かないか?」

「え? なんで?」

「いや、君、苦戦してるんだろ? 俺達と一緒にダンジョンに行けば少しは捗るんじゃないかなと思って」

 おずおずと控えめにそう尋ねて来た男子には見覚えがあった。

 あ、主人公が来た。まさか向こうから来るとは。

 しかし嫌でも一緒にいる彼のパーティメンバーの嫌そうな顔が目に付く。

 だから僕はニッコリ笑ってキッパリ言った。

「申し訳ないけど僕に構わずお先に、実は今日の授業の後すぐ帰りたいんだよね」

「そうなのか? いったいどうして?」

 そこ聞いちゃう? 言う必要はなかったが、あえて僕はその理由を開示した。

「見たい番組があるんだ」

 非常にいい表情で僕は言う。

 するとたいそう微妙な反応が返って来た。

「え、えっと……録画とかすればいいんじゃ?」

「リアタイしないと意味がないんだ。誘ってくれてありがとね」

「……?」

 そこに迷いは一切ない。なんで?と思っていることは分かっていたが、個人的な趣味の問題である。

 僕の決意には、たとえそれが主人公であっても介在する余地などなかった。

「いや。でも……うん。わかった呼び止めて悪かったよ」

「いやごめんね! ホントに!」

 丁寧にお断りすると、ようやく引き下がった彼は頭を掻きながら、他のパーティメンバーに合流していた。

「なんであんな奴に声をかけたんだ……」

「いやレベル上げって最初が一番難しいだろ?」

「私達も余裕なんてないでしょ? 言っちゃ悪いけど、あいつたぶん一般組よ。強くなってランクを上げたいとかないんじゃないかな?」

「そんなことないと思うんだけど……」

 そう言う攻撃的なセリフは聞こえないように言ってほしいもんだ。泣いちゃうよ?

 しかし確かに僕は順位とかそう言う上昇志向が薄いのはおおむね事実として受け取っておこう。

 それもやむなしと表情を渋くしていると、何人かのクラスメイトが気の毒そうに話しかけて来た。

「あちゃあ、災難だったな。ガチ勢の勧誘とは」

「まぁあんまり気にするなよ。あいつら家の事情とかで意識高いから、結構無茶なアタックするし。命がいくつあっても足りないよ。正解正解」

「……あーなるほど。そうだよなぁ」

 この竜桜学園はダンジョンのアイテムを商っている業者の関係者や、軍関係の人、政治家さんなんかの思惑も複雑に関係した本気で戦闘力を上げに来ている学生がいると噂では聞いたことがあった。

 しかし学校全体に競争思考があるのは彼らのようなガチ勢の影響もあるだろうなって僕も密かに想像していたわけだ。

 ちなみに、僕も含めた一般入学の生徒の間でそう言う派閥持ちの生徒はガチ勢と呼ばれている。

「まぁ適当に授業時間にダンジョン回ってれば、それだけで卒業はできんだし。死なない程度にやるのが一番だよな」

「そういやお前、今何階回ってるの?」

「あー1階?」

「……そうか。じゃあ頑張ってな」

「……あ、アイテムやるよ」

「……」

 僕の手には2階で取れる毒消しが手渡された。

 まぁいい人だ……悔しくなんて全然ないやい。

 ではアデュー。綿貫君は同時視聴のために、素早いノルマ達成のため風の様に駆けた。
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