ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち

文字の大きさ
7 / 257

第7話一度あることは二度ある

「ダンジョンの1階で授業中に先輩に会ったんですけど、そう言うことってあるんですか?」

 僕はそう部室で浦島先輩に聞いてみると、楽しそうに笑われた。

「あるある! 普通にいるよ。なんなら話しかけてみ? 楽しいかもよ?」

 なんて言われてしまった。

 いやいや今までそれなりの回数ダンジョンアタックしているけど、一階で先輩はあんまり見た記憶がない。

「まぁ、向こうから話しかけられたなら……二度三度あるかもね?」

「ありますかね?」

「さて、それは君の素行しだいかな?」

 素行か……問題はありまくりですね。ハイ。

 だが今後は話す機会はないかな?そう結論付けて、その後レースゲームで熱いバトルを繰り広げた僕だったが、思ったより再び早いタイミングでその機会はやって来た。



「いた」

「……」

 ある日、カニを大量に狩って鍋の準備をしていると、また声を掛けられた。

 そんなことある?っと振り返ってみると、そこには見覚えのある先輩ともう一人別の誰かがいて、あきれ顔でこちらを見ながら固まっていた。

「ホントにいたな……」

「信じてなかった?」

「いや、だってな……普通1階で串焼きはやらないだろう?」

「今日は鍋」

「……そのようだ」

 一人はショートカットの先輩でこの間会った魔法使いの人で間違いないが、一人は見知らない先輩その2だった。

 でもインパクトは正直こちらの方がすごい。

 かなり大柄の女生徒はまさに冒険者といった感じで、体中が鍛え上げられていることが服の上からでも分かった。

 太ももとかすごい太……いや太くない、まるで草食動物の様だ。

 そんな大柄の先輩から、見下ろされて質問されるのはちょっとした恐怖である。

「なぁ君……何をしてるんだ?」

「……お昼を食べようかなって。ダンジョンの中では火を使うことが禁止されていないので温かいご飯が食べられるかなと」

 僕が生まれたばかりの小鹿の様に震えて先日と同じように受け答えすると、ショートの先輩が目を見開き頷いた。

「なるほど、確かに焼き立てはおいしい」

「感心すんな? 変だからな? そのためにわざわざこいつ燃料と調理器具一式持ち込んでいるんだから」

「……それは大変」

 確かにちょっと重かった。でも、生で食べるよりはいいと思う。

「温かい飯が食べたいなら学食だってあるんだが……」

「いえ、せっかくダンジョンでモンスターを狩ってるからもったいないかなって、食費も浮きますし」

「……毒だぞそれ?」

「毒じゃなかったってば」

「ちゃんと手順を踏めばおいしくいただけますよ?」

 実際に体験している二人がそう説明すると、大柄の先輩はそれは結構な大発見なのでは?みたいなことを呟いていたが、まぁフグみたいなものだから、浸透すればワンチャンと言ったところだと僕は思った。

「ええっと、食べますか? カニ鍋」

「むっ……」

 一応勧めてはみる。

 昨日の先輩は当たり前のように座ったが、もう片方の先輩はものすごく嫌そうな顔だ。

 どう見ても動揺していたが、相方が座ったせいで逃げられずに、大人しく座った。

「……」

 ただ、鍋を見つめる視線には妙な緊張感があった。

 何だろうこれ? 疑問は湧いていたが無言で料理を用意して、振る舞う。

 何度も作っている料理はそれなりに自信もあった。

「では―――いただきます」

 前回と同じようにまずは僕が最初に食べてみる。

 驚くほどのカニの風味は、天然ものに勝るとも劣らない味……だと思うけれど、そんなに食べたことはないのでとってもおいしい感じだった。

 毒見の間も待てなかったのか、ものすごい勢いで食べるショートの先輩は……すごくおいしそうだ。

 一方で流れで食べることになった大柄の先輩はすごい表情を浮かべていたが意を決してカニ鍋を啜る。

「!」

 口に含んだ瞬間驚愕していたところを見ると、僕の味覚に間違いはなかったようで密かにホッとした。

「……体に異常はない。モンスターの毒は舌がしびれると言うが、それもなし。……これはやっぱり大発見なのでは?」

「お、おいしかったですか?」

「あ、ああ……意外にもうまかった。それで君は一年でいいんだよな?」

「はい。一年です。今実習中でして」

「それは分かっている。だが感心しないぞ。ダンジョンを潜る時はパーティを組むのが基本だ。ソロでは死ぬこともあるからな」

「ええまぁ……俺は最初出遅れてしまって。中々パーティが組みづらいんですよね。今のところは一階でボチボチやってます」

「ふむ……それでモンスター料理の研究か、毎年いろんな奴がいるなぁ」

 そう言うと僕が料理した後をジロジロ見た大柄の先輩は、深く頷く。

「頑張っていることはわかるよ。まぁ大変だと思うが頑張れ」

「うん。死なないでね」

「ど、どうも……」

「何かあったら言うといい。私達は生徒会の者だ。こいつが如月で、私が八坂だ。一年生の実習中は誰かが浅い層を回っているから。困ったことがあったら声をかけるといい」

「普段から……います?」

「ああいや……そうだな。一階にはあまりいないな。用事があるなら2階か3階辺りを探してみるといい。一応気配を消しているから、緊急事態は大声で呼ぶのがいいかもな」

 ええ、一階で緊急事態ってそんなにないですからね。

 道理で僕は会ったことがないわけだ。

「は、はい。ありがとうございます」

 しかし、なるほどそう言うことだったか。

 何かあった時助けられるように上級生の生徒会役員が、見回っている場合があると。

 きっと僕みたいな生徒が割といるからなんだろうけれども。先輩も中々大変の様だ。

 今後モンスター食をまた振舞う機会もあるかもしれないが、もう顔を合わせる事自体少ないかもしれない。

 もうすぐノルマも終わりそうなのだ。

 正直好評で自信もついてきたカニと豚料理は惜しいが、この調子なら下層にだっておいしい食材は沢山ありそうである。
感想 3

あなたにおすすめの小説

さびれたレンタル道具屋の転生おっさん、道具の使い方を教えまくる。~客のS級冒険者が俺を歴戦の英雄と勘違いして弟子入りを求めてくるんだが~

遥風 かずら
ファンタジー
前世で過労死した久世織人が目を覚ますとそこは異世界の王都、しかも古道具屋の跡取り息子として転生していた。アクセル・リオットとして成長した彼は荷物持ちとして冒険者パーティーに同行、その道中に【無限収納】スキルを開花させる。 パーティー活動から離脱後、四十歳となったアクセルは前世の記憶を思い出し、儲かりそうという考えで道具レンタル屋を始めていた。客足もなく店がさびれる中、道具の使い方が出来てない冒険者によって治安の乱れや魔物討伐の失敗が続いているという話を常連客から聞かされる。あらゆる道具に精通するアクセルは客の冒険者に使い方を教えに行くことを思い立つ。 アクセルの教えにより、やがてS級冒険者や聖女、王女までも勘違いして彼の元には次々と弟子入りを求める者が現れていくのだった。

《カクヨム様で50000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う

なべぞう
ファンタジー
ダンジョンが生まれて百年。 スキルを持つ人々がダンジョンに挑む世界で、 ソラは非戦闘系スキル《アイテムボックス》しか持たない三流シーカーだった。 弱さゆえに仲間から切り捨てられ、三十五歳となった今では、 満身創痍で生きるだけで精一杯の日々を送っていた。 そんなソラをただ一匹だけ慕ってくれたのは―― 拾ってきた野良の黒猫“クロ”。 だが命の灯が消えかけた夜、 その黒猫は正体を現す。 クロは世界に十人しか存在しない“祝福”を与える存在―― しかも九つの祝福を生んだ天使と悪魔を封印した“第十の祝福者”だった。 力を失われ、語ることすら封じられたクロは、 復讐を果たすための契約者を探していた。 クロは瀕死のソラと契約し、 彼の魂を二十年前――十五歳の過去へと送り返す。 唯一のスキル《アイテムボックス》。 そして契約により初めて“成長”する力を与えられたソラは、 弱き自分を変えるため、再びダンジョンと向き合う。 だがその裏で、 クロは封印した九人の祝福者たちを狩り尽くすための、 復讐の道を静かに歩み始めていた。 これは―― “最弱”と“最凶”が手を取り合い、 未来をやり直す物語

俺の家に異世界ファンタジーガチャが来た結果→現実世界で最強に ~極大に増えていくスキルの数が膨大になったので現実世界で無双します~

仮実谷 望
ファンタジー
ガチャを廻したいからそんな理由で謎の異世界ガチャを買った主人公はガチャを廻して自分を鍛えて、最強に至る。現実世界で最強になった主人公は難事件やトラブルを解決する。敵の襲来から世界を守るたった一人の最強が誕生した。そしてガチャの真の仕組みに気付く主人公はさらに仲間と共に最強へと至る物語。ダンジョンに挑戦して仲間たちと共に最強へと至る道。 ガチャを廻しまくり次第に世界最強の人物になっていた。 ガチャ好きすぎて書いてしまった。

素材ガチャで【合成マスター】スキルを獲得したので、世界最強の探索者を目指します。

名無し
ファンタジー
学園『ホライズン』でいじめられっ子の生徒、G級探索者の白石優也。いつものように不良たちに虐げられていたが、勇気を出してやり返すことに成功する。その勢いで、近隣に出没したモンスター討伐に立候補した優也。その選択が彼の運命を大きく変えていくことになるのであった。

ダンジョンのある生活《スマホ片手にレベルアップ》

盾乃あに
ファンタジー
進藤タクマは25歳、彼女にフラれて同棲中の家を追い出され、新しい部屋を借りたがそこにはキッチンに見知らぬ扉が付いていた。床下収納だと思って開けたらそこは始まりのダンジョンだった。  ダンジョンを攻略する自衛隊、タクマは部屋を譲り新しい部屋に引っ越すが、そこにもダンジョンが……  始まりのダンジョンを攻略することになったタクマ。    さぁ、ダンジョン攻略のはじまりだ。

ダンジョントランスポーター ~ 現代に現れたダンジョンに潜ったらレベル999の天使に憑依されて運び屋になってしまった

海道一人
ファンタジー
二十年前、地球の各地に突然異世界とつながるダンジョンが出現した。 ダンジョンから持って出られるのは無機物のみだったが、それらは地球上には存在しない人類の科学や技術を数世代進ませるほどのものばかりだった。 そして現在、一獲千金を求めた探索者が世界中でダンジョンに潜るようになっていて、彼らは自らを冒険者と呼称していた。 主人公、天城 翔琉《あまぎ かける》はよんどころない事情からお金を稼ぐためにダンジョンに潜ることを決意する。 ダンジョン探索を続ける中で翔琉は羽の生えた不思議な生き物に出会い、憑依されてしまう。 それはダンジョンの最深部九九九層からやってきたという天使で、憑依された事で翔は新たなジョブ《運び屋》を手に入れる。 ダンジョンで最強の力を持つ天使に憑依された翔琉は様々な事件に巻き込まれていくのだった。

ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ

高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。 タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。 ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。 本編完結済み。 外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。