宇宙の果てで謎の種を拾いました

くずもち

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第19話シュウマツさんの秘密

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 一番気がかりだった部分をとりあえず説明できて本当によかった。

 F3も調子がいいようだし、荒唐無稽な話にも不快感無く理解を示してくれるいい娘である。

「それであなたは誰なの?」

「僕かい? 僕の名前はカノー。コロニー出身の技術者だね。ここで実験船に乗ってたんだけど船がぶっ壊れてしまってね。宇宙を漂流していたところをシュウマツさんに助けてもらったんだよ。いやー人生って何が起こるかわかんないよねー……」

 ついつい視線が遠くなる僕を見て、F3は口元が引きつっていた。

「えぇ……何で生きてるの?」

「それは僕もそう思う」

 自分でも何で生きているのか不思議なんだけど、それはお互いさまではないだろうか?

 それこそ言葉を当てはめるなら、一つしかないだろう。

「運がよかっただけとしか。ちなみに僕にはシュウマツさんみたいな力はない。普通の人だからね」

「そうなの? 骨董品みたいな宇宙服を着て顔を隠しているから、シュウマツさんの本体は実は貴方なんじゃないかと思ってた」

「いや……これは元の雇い主がケチだっただけだよ」

 そう言うF3は最新型のインナーで正直うらやましい。

 ボディラインが強調されるので、ちょっと抵抗ある人もいるというけれど、めちゃくちゃ丈夫な新素材をふんだんに使った、戦闘用である。

 元いた実験船は実験設備こそそれなりだったが、それ以外の部分ではコストカットが相当ひどかった。

 宇宙の果てで抗議出来ないからか、最低限の機能さえ備えていればそれでOKという感じで、スタッフに対する生活補助の熱意の無さが思い出される。

 僕が苦々しい思いで宇宙服の下の表情を歪ませていると、F3は今度は光るシュウマツさんを見てとてもあっさりこう言った。

「じゃあ……結局シュウマツさんって何なの?」

「!」

 おやおや、ずばりと踏み込むね。F3さん。

 いつかは聞こうと思っていたけど、だんだん言うのが怖くなってきていたからとても助かった。

 僕は素知らぬ顔でシュウマツさんがどう出るか様子を窺っていると、シュウマツさんは若干光量を下げて語り始めた。

「ふーむ。私は植物である。それは間違いない。そうだね……いい機会だ。私も君達からばかり情報を一方的に貰うのは心苦しかったところだしね」

 何ときちんと説明してくれるらしい。

 僕は意外に思いながらも、黙って耳を澄ませた。

「私は星と共にあるモノ。生命すべての基本にあるモノだ。星は植物に命の欠片を分け与え、植物はすべての生命にその命をまた分け与えている。なぜか? その星に生きる生命の記録を保存するためだ」

「「???」」

 F3は思い切り眉間に皺をよせていた。

 僕も内心は似たようなものだった。

 なんか壮大なことを語り始めたシュウマツさんはフワリと消える。

 そしてわざわざ本体の木をいっそう光らせて、僕らにその正体を告げた。

「私は命の集積装置。すべての植物と繋がり、生きとし生けるものすべての記録を綴るモノ。元居た世界で生まれた人類は、私の事を世界樹と呼んでいたよ」

 その瞬間、地面から一斉に光の粒が噴き出す。

 とても幻想的な光景にF3は息を飲んでいたが、こだわりの演出に僕は乾いた笑いが浮かんだ。

 こういうこだわり好きだものな、シュウマツさん。

 でもこの演出を見る限り、シュウマツさんの語りが重要なものだということはよくわかった。

「魔法はシュウマツさんがいた世界の人が使っていたの?」

「そうだとも。私のいた世界で最も栄えた種族の技だよ。彼らの記憶は私が記録しているからね」

 得意げだが、少し寂しそうにも見えたシュウマツさんに僕は尋ねていた。

「……その人たちはどうなったんだろう?」

「星ごと滅びてしまったよ。私も滅びるはずだったが……どういうわけか私はこの世界に迷い込んでしまったというわけさ」

 どこか皮肉っぽく言うシュウマツさんに、F3は即、同情した。

「シュウマツさんかわいそう!」

「いやいや。可哀そうなことはないさ。むしろ役割を全うしたことを誇りに思っているよ。私はすべての命を見守り、そして見送ったのだ」

 悲しそうな表情を浮かべるF3にシュウマツさん本体は宇宙空間の枝をわさわさ揺らして見せていた。

 なるほど、シュウマツさんってそう言う種だったんだ。

「コロニーや魔法の実演を見る限り、情報を集めるだけじゃなくて、それを再現することもできるというのはとんでもないなぁ。流石は異世界って感じだ」

「いやいや。コロニーの再現は記録があったから出来たことだよ。すまないね気を使って聞かないでいてくれたのだろう? いい切っ掛けを彼女がくれたからね。少し話しておきたかったんだ」

「いや、聞いてもちゃんとは理解できないと思っていただけだよ」

「ハハハ正直なことだね。でもそれでも感謝しているのは本当だ。私にも考える時間が必要だったからね。それに君のくれた情報はとても興味深い物ばかりだった。情報収集は本能レベルで好きなんだ」

「少しは役立てていたのならうれしいよ。さて、理解も得られたようだしどうしようか?」

僕は改めてF3を見た。

まぁそもそもの話、彼女を見捨てるなんて僕にはとてもできそうにない。

「放り出すわけにもいかないのなら、住人が増えるということだろうな」

「そうだなぁ。まずは新しい家でも作ろうか? 何せ土地は沢山余ってる」

 光の粒と戯れるF3は、まるで本当の妖精のように踊っている。

 彼女が来てくれたおかげで、また一つシュウマツさんの謎が解けた。

 これは礼を込めて、愛称の一つでも考えてみるとしよう。

「F3って呼び続けるのもどうかと思うから……よし! フーさんにしよう!」

「なにそれ!」

 おや、聞こえるようには言ったけど素早い反応ありがとうフーさん。

 まぁ安直だけど僕はとても呼びやすいニックネームである。

「やっぱり常に「さん」付け風に聞こえるのは距離があるように聞こえるかな?」

「「エフスリー」か「フーさん」ならまぁ、後者の方が親しみは感じるのかな?」

 駆け寄って来たフーさんは否定も肯定も出来ない複雑な表情だけど、こういうのに正解はない。

 大切なのは親しみが込められているかどうかだと思うのだが、定着するとは限らないので難しいなと僕は思った。
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