宇宙の果てで謎の種を拾いました

くずもち

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第68話不老についての考察

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「ごめんねシュウマツさん。これから忙しくなるって時に、余計なことを言っちゃったね」

「いや……むしろ助かったよ。実が生るとやはり気になってしまってね。収穫は正直助かる」

「そんなものなんだ。というかシュウマツさんって実の生る木だったんだね」

「そうとも。まぁ果実というのは本来落ちてなんぼだからね。別に地面に落ちたからって、増えるわけではないんだが……」

「増えるわけじゃないんだ」

「そうなんだよ。どういうわけか。まぁ大した問題ではないがね」

「ふーん」

  シュウマツさんのなんとも不思議な生態は今に始まったことではないが、フーさん辺りが聞いたら喜びそうだなと僕は思った。

 僕らはたまにこうして語り合う。

 今日の話し合いの場は、僕のコンテナハウスだ。

 住み慣れると落ち着くもので、今やすっかり我が家と言う感じである。

 テーブルに紅茶と、ろ過した水を用意してその時間は始まる。

 コップに注いだ水はシュウマツさんがテーブルに近づくとドンドン水の量が減っていた。

 改めて考えるとおかしな景色だけれども、今ではすっかり慣れたティータイムの常識だった。

「しかし君も頑固なものだ。もう少し広い家だって建てようと思えば建てられるだろう?」

「広すぎても持て余してしまうよ。自分の家なんだから自分で好きなようにするのも浪漫ってんものじゃないかな? まぁ、あんまり理解はされないかもしれないけれどね」

「そんなことはないさ。私も自分で鉢を作ったが、これ以上ないほどに気に入っているし、スケールが大きかったからか、地上にいた時より幹が立派な気がするんだよね」

「ひょっとして……鉢ってこのコロニーのこと言ってる? ……アレをシュウマツさん以外の別の誰かが作るって無茶が過ぎるとは思うけれどね」

 間違いなく唯一無二ではあるに違いないとは思うけれど、鉢のつもりで作っているとは思わなかった。

 樹木ならではの視点は、なるほど僕には全然ないものである。

 ただあれほど無茶ではないが、僕のコンテナハウスだって僕のこだわりで日々強化拡張されていた。

「でも僕の家だって、日々進化しているのは、自前だからだと思うよ。最近はセキュリティのシステムも新しくしてね。ここで管理してるんだ」

「ほほう。例えばどんなかんじなのかね?」

 興味を持ったシュウマツさんに僕は簡単にその仕組みを説明した。

「僕が把握している建物にはセンサーをつけて、警報が鳴る仕組みを作っているね。動物避けってことになるんだけれど、侵入者がいるとアラームが……」

 タブレットをシュウマツさんに見せながら、動かしていたわけだが―――

 ビーッビーッビーッといきなりアラームが鳴り響いて、僕の表情は強張った。

「おおっと!」

「へぇ。なるほど、こんな風になるんだね」

「いや! そんなこと言ってる場合じゃないって……ええっと、場所は……うわ! シュウマツの実貯蔵庫じゃないか!」

「シュウマツの実という名前で決定なのかな?」

 不満そうなシュウマツさんは放っておいて、僕は大慌てで倉庫へ向かった。



 ライトを持ち、恐る恐る倉庫に近づく。

 何か大きな動物がいたらどうしようと、僕は内心ビクついていたわけだが、すでに侵入者の捕獲は完了していた。

 僕はモゾモゾ動く何かにそっと近づき、ライトを当てた―――のだが。

「……」

「…こんばんは。いい夜だね」

 そこにはトラップの“ぶつけると固まる薬剤”でガチガチに固められたフーさんが捕獲されていた。

「何やってんのフーさん?」

 僕が不思議に思って尋ねると、フーさんは非常に気まずそうに目を泳がせる。

 しかし状況が状況だけに逃げられないと観念したのか、虫の鳴くような声で彼女は言った。

「あ、味が……気になって」

「味って……あの実の味?」

 フーさんはコクリと頷いて、開き直り気味に白状し始めた。

「そう! だって気になるじゃない! すごくおいしいって言うし! 不老っていうのも正直気にしないでいいかなって!」

「いや、待とう。きっと真面目に不老だよ? シュウマツさんはお気楽にああ言ってたけど、きっと限りなく不死にも近くなるよたぶん」

 今までの経験上、シュウマツさんの言うことは『言葉よりよく効く』くらいに思っておいた方がいいに決まっている。

 今回の実だって多少の怪我くらいすぐ治るくらいは不死性が強くなってもおかしくはない。

 まぁおそらくは人体改造以上の劇薬である。

 そんなものを飲む動機が『おいしそうだから』で本当にいいのかって話だった。

 するとフーさんは動きを止められたままハハハと渇いた笑いを浮かべた。

「いやぁ、まぁどうせ私の死因なんて、宇宙の藻屑がいいとこなんだから、多少の不死なんて意味ないかなって」

「なんでそんな重たいこと言うのさ。大丈夫だよ? ホント人生何があるかわかんないんだからね?」

 こう、軽い口調で、重たい現実をちょいちょい匂わせるフーさんにはもっと強く生きてもらいたい。

 ならばと僕は一つ、未来について語ることで説得を試みてみることにした。

「まぁどの程度効くかは、使った人がいないんだからわかんないけれど……不老ってワードだけで言えば気になることはあるんじゃないかな?」

「な、何?」

 首だけ器用にかしげるフーさんだが、まぁ僕のちょっとした疑問の話だった。

「いや不老ってことは……成長も止まるんじゃないのそこで? フーさん今成長期みたいだけれど……ずっとそのままで大丈夫?」

 少なくとも僕は、成長期にはもう少し色々伸びないものかと常々思っていた物である。

 驚愕に見開かれるフーさんの表情を見れば、おのずと答えは分かった気がした。

「うぅ……もうちょっと、頑張ってみる」

 項垂れてて断腸の思いって感じだったが、そこでようやくフーさんはあきらめたようだった。
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