宇宙の果てで謎の種を拾いました

くずもち

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第74話悪あがき

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 コロニーのAIが操るアウターを、偏見なしで評価するならまず一番厄介なのはその機動性にあった。

 中に人間が入っていないゆえに、人体に全く考慮しない急加速に急停止。

 縦横無尽に動く関節部は、様々な角度からの気持ちの悪い攻撃を可能にする。

 そしてその予想しにくい軌道で、人間では難しいレベルの連携で攻め立てるわけだ。

 ただ、それでも情報量の多い宇宙空間での戦闘だ。従来であれば人が操るアウターは要所要所の判断力で優位に立てた部分はあった。

 しかし人の感情の機微すら読み取れるレベルのAIが導入されてからは少々事情が変わったと言っていい。

「動きが気持ち悪い!」

 フーさんは状況の悪さに歯噛みする。

 実際に相対して、余りにも手持ちのアドバンテージは心もとない物だったからだ。

 機体の性能は、まず装甲がない分防御力が貧弱というか……ない。

 カノーが頑張ってくれたし、使われている金属は謎の合金らしいので、その点では強化されているはずだが、未知数としか言えなかった。

 後は魔法だが、それがどこまで通用するかはこれもまたやってみるしかない。

 フーさんは少しでも勝率を上げるためにF2と意識を共有する。

「行くよ! 集中して!」

「くそ! 仕方がない!」

 フーさんが集中しF2を意識すると、目の前の映像がより鮮明化した。

 これで相手の考えることがある程度理解できる。

 もちろん、たった二人それをしたところで未来予知には届かないが、目と脳は多いに越したことはない。

 月の戦いの強みはまさにこれだ。

 ただ、相手の動きが直接読めないのは正直痛手だった。

 敵の武装は実体弾のマシンキャノン。

 そして熱で切り裂くヒートダガーにミサイルポット。

 対してこちらは高周波ソードと、閃光弾。

 メインウエポンは小型ビームガンという貧弱っぷりはいっそ笑えてくる。

 F2は大まかに装備は一緒だが、手持ちのレールガンには大いに期待したいところだ。

「でもやるしかないんだよね……」

「来るぞ!」

「わかってる!」

 敵は一切止まる気配がないのだからやるしかない。

 フーさんとF2は背中合わせに、そして上下逆に陣取って、死角を極力なくして挑んだ。

 大まかだがセオリー道りの動きに、AI達は無駄弾は撃たずに遠巻きに高速で動きつつ、徐々に距離を詰めてくる。

 こちらが疲れるのを待っているのは相手が疲れ知らずの機械ゆえだろう。

 こうなることは、フーさんもF2も何となく予想出来ていた。

「セオリー通りが一番危ない……AI人種相手に一番有効な戦術は……意表を突く!」

「うお!」

 フーさんは相手が最も近づくタイミングに合わせて、背中のF2を足場に加速した。

 そしてぶつかる直前に閃光弾。

 視界をふさぐ程度なら予測して対応してくるだろうが、こちらの武装を基に計算してくるなら、タイミングはずれるはずだった。

「はい……タッチ!」

 手のひらで、フーさんは敵機体の背面に触れると、敵アウターは内側から爆発した。

「なんだ!」

「まずは1!」

 フーさんは機体に触れたことで、ブースター周りを爆発させたのだ。

 大気を操作する魔法は気化した燃料すらも操れる。

 というかより速く動くために、そう調整したのはシュウマツさんの仕事だった。

 一体何が起こったのかわかるまい。

 考えを共有したはずのF2すら何が起こっているのかわかっていなかったから、当たりまえである。

 しかし敵はあと2機。チャンスは意表を突いたココしかない。

 炎の爆風を掴み、一気に加速したフーさんは3機のうち1機に狙いを絞って突撃した。

 真っすぐ突っ込んでくる相手を、AIは待ち構え、狙い撃つ。

「……!」

 銃弾を逸らす魔法の存在は割れているから、たぶん銃口を向けたのはけん制。

 すぐに銃を捨て、ダガーを構えた辺りは接近戦を誘っているんだとしたら小癪な話だ。

「こなくそ!」

 ソードを振りかぶり、胴体ごと真っ二つに切り裂こうとしたフーさんに合わせて、F2のレールガンの一射が敵機体に飛んで行った。

 弾は当然のように避けられるが、おかげでフーさんのソードはたやすく胴体を貫通する。

 しかし、その後すぐに半壊した敵の機体はフーさんのアウターにしがみついてきた。

「うわ! 捨て身! そういうことする!?」

 こちらが変な手を打ったから警戒されてしまったか。

 そして完全に動きを止めたフーさんに残りの一機が急接近してくるのを、フーさんは目で追った。

「へへっ……翻訳って便利だね」

 そして残りの一機が粉砕したのはフーさんではなく本来ならさっきまで彼らの仲間だった機体だった。

 フーさんの機体を綺麗に避けて、引きはがすそいつは、完全にフーさんのコントロール下にある。

 翻訳の魔法は、機械にすら思考を翻訳して叩き込むことが出来るらしい。

 そして大気を操る魔法は、電磁波のシールドすらかき乱して見せた。

 味方に背後から貫かれ、爆散するAIアウターを確認して、ようやくフーさんは肩から力を抜けていた。

「やるなお前……」

「どうも……でも結構ギリギリだったね」

 大金星ではある。

 しかし接近戦はやっぱりちょっと無謀だったようだ。

 よく見るとフーさんの機体“アーネラ”はすでに自己修復を始めていたりするが、それでもフレームの歪みは目に見えるほどだし、さっきから警告がうるさく鳴り響いていた。

「だが、すまん……お前と戦えたことを誇りに思う」

「どうしたの急に?」

 フーさんは、自然とあきらめきったF2の視線を目で追いかけ、見なきゃよかったと後悔した。

「あちゃぁ……」

 どうやらあの3機は時間を稼いでいたらしい。

 道理で後半、捨て身でこちらを弱らせに来ていたはずだ。

 私達を見下ろす真っ黒なアウターの群れがいる。

 こちらを見ているぼんやり光る赤いモノアイは、どうやら本格的に戦いの終わりを告げているように見えた。

「ハハハ……ダメか」

 冥界なら見たことあるのに、こっちの方がよほど絶望感があるのが笑える話である。

 考えてみれば当たり前だ。

 3機が目標と一緒に転移兵器に巻き込まれたということは、捨て駒にされたということなんだから、転移兵器を使った相手はそりゃあ別にいるだろう。

「はぁ……ここで終わりかぁ。残念だなぁ」

 諦めかけて、涙を浮かべたフーさんの頭の中には、ニライカナイコロニーでの出来事が走馬灯のようにグルグル回っていた。
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