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第96話あの時のあれってどうなっているだろう?
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「さて……ニライカナイコロニー緊急会議。始めようか?」
僕の家に、みんなはすぐに集まって来た。
庭に用意した大きなテーブルはいつもの和気藹々とした雰囲気はない。
さすがにピリついた空気に、僕も自然と背筋が伸びてしまう。
全員に行き渡ったタブレットには様々な資料が映し出されていた。
オペ子さんが作った子機。ミニオペ子さんが一際でっかいディスプレイを抱えて僕らの前で待機しているのは、ちょっと気の毒である。
ただ白熊さんはここのところどこにでもいるミニオペ子さんに興味がある様子だった。
「……この子、増えてるよね? なん機目?」
「さぁ? 10から先は数えてないなぁ」
「ワタクシは21号機です」
「うわ。思ったより多い」
増えるミニオペ子さんのディスプレイが点灯すると、そこにはフーさんが大人になったような顔が、目つきの悪さ5割増しで映し出されていた。
「では皆様方。先ほど接近中の艦隊から通信がありました。こちらをご覧ください」
まさにさっそくである。
僕らは気を引き締め、フーさんなんて静電気で髪をバチバチに荒ぶらせながら、画像の人物を睨んでいた。
「へぇ……さっそく何なんだろうね」
「丁寧な挨拶とかならいいんだけど」
白熊さんの言うように、僕もまずはその辺りで心臓を慣らしたい。
「最初だからきっと当たり障りのない、無難な感じ何じゃないかな?」
このニライカナイコロニー、自慢ではないが未知の要素が多すぎる謎のコロニーである。
そんな全く何もわからない何かに、いきなり殴りこむようなことはないに違いない。
僕らはなんと言ってくるのかある意味楽しみにしながら、メッセージを見た。
『告げる。我らは月のムーンキングダム所属の部隊である。このコロニーは人類連合、および地球国家のどの組織にも属さない非公式の巨大建築物であることは確認済みである。管理者は速やかにコロニーを明け渡し、投降せよ。一週間の猶予を与える。従わぬ場合、武力行使をもって制圧することも辞さない。賢明な判断を期待する』
「「「……」」」
何か致命的に間違ったものを見たのではないだろうか? 僕はそう思った。
「ねぇこれ……何か一本メッセージ飛ばしてない?」
僕は純粋な疑問を口にするが、ミニオペ子さんは違いますと首を横に振っていた。
「先ほど届いたばかりの送りたて、生絞りです」
「生絞りとは? いやいや何この圧倒的上からの命令。交渉の余地なし?」
「ないですね。この様子だと」
実に天的な報告に、僕らは皆一様に黙り込んだ。
「「「……」」」
……よし。まず初めに月人の主張を聞いてみよう。
フーさんはテーブルを殴り、血走った目で断固とした口調で唾を飛ばした。
「戦闘準備! 今すぐ戦闘準備をしないと!」
「……取り乱してるなぁ。もうちょっとくらいは時間があるから落ち着いて?」
「ないよ! F1を出してきたんだ! 真面目に制圧する気満々なんだよ!」
フーさんが指さしているのは、動きを止めた映像の人物で、彼女がF1というらしい。
「えーっとF1ってフェアリーシリーズの1番目ってことだよね?」
僕もその名称は聞き覚えがあった。
フェアリーシリーズは月人の能力を遺伝子操作で強化し、戦闘に特化させた兵士で、元はフーさんもその中の一人だったはずだ。
名称は確かフェアリー3とかF3とか呼ばれている、月で作られた強化兵である。
フーさんは力強く首を縦に振った。
「そうだよ……序列が女王の次で、戦場じゃ一番上位の個体なんだ。女王の命令に絶対服従で話し合いなんて期待できない! 私みたいなはぐれ者なんて真っ先に駆除対象だよ!」
「何それおっかない」
「本当におっかないんだってば! F1を出して武器を持っているなら真面目に潰しに来てるよ! 様子見程度じゃF1は出さない!」
「そんなにか……」
それはめちゃくちゃおっかない話である。
考えてみれば、こんなところに何回も来たくはないことだろう。早々に真偽を確かめ、あわよくば速攻で制圧してしまいたいのかもしれない。
その話を聞いて、近寄りがたい殺気を放ち始めたのは地球育ちの白熊さんだった。
ではちょっと怖いけど、次に白熊さんの意見を聞いてみるとしよう。
バキバキと手の関節を鳴らす白熊さんは眉間に深いしわを寄せていて、すでに戦闘態勢だった。
「でもこれでやることがはっきりしたよ」
「……そうだね。渡したくないなら戦うしかないと思う」
眉を顰めるフーさんもまた、このままでは奪い取られると感じているのなら、そうなるに違いなかった。
しかし、二人の意見を聞いた上で、僕は一番意見が欲しい彼に意見を求めた。
「と、いう感じなんだけど。シュウマツさんはどう思う?」
僕らの話を聞いていた、いつもの光るシュウマツさんはフワリと浮かび上がる。
そして彼は思ったより消極的な反応だった。
「そうだね……まぁこうなったら抗うか、もしくは差し出すかどちらかなのだろうね。君達の意見は間違っていないと思うよ」
「意外というか順当というか……シュウマツさんそんな感じなんだ」
切羽詰まった時には何でも思い通りに出来そうなシュウマツさんなのに、これを僕らの判断にゆだねるのは悪手だろう。
なのに特に反論するでもなく、思うようにやってみなさいというある意味暢気なスタンスに僕は心当たりがあった。
「おかしいだろうか?」
僕の表情を見て、そう尋ねたシュウマツさんをしばらく眺めて、僕はこの違和感を整理して口に出す。
「いいや。でも、なんだか、そう……僕はシュウマツさんも植物なんだなと初めて実感したかもしれない。基本的にシュウマツさんって受け身なんだ」
「もとより植物だが?」
なるほど。一貫して、自分が植物だとそう主張し続けて来たシュウマツさんの言葉にも一定の信憑性があったということか。
彼は僕らの事を知識として理解してコミュニケーションをしてくれるからわかりにくいが、その本質はすべて受け入れる、ともすれば命すら言われるがままに差し出す植物的な精神性なのかもしれない。
だとしたら彼がきちんと力を引き出すには、本当に僕らが必要だったのかも。
彼の力を正しく把握し、お願いをする。そのプロセスこそが、このコロニーを運営する上で必要な事だったのだと考えると、僕らがうまくやれていたことにも、説明がついた。
「……ならば君ならどうする?」
シュウマツさんがそう尋ねると言うのなら、僕にはまだできることがあるようだと、自分の言葉を語ることにした。
「そうだね……まず一度は戦う。これは賛成だ。僕らが何もできない訳じゃないと一度ガツンと示す必要があると思う」
「そうだよ! 新型の力見せつけてやる! あいつらなんて怖くない!」
終始徹底抗戦を主張するフーさんを、しかし僕はいったん止めておいた。
「まぁまぁ。でも、徹底抗戦は避けたい。徹底的にやりあって本格的に戦争を始めたら負けるでしょ? こっちは3人だし」
「いや、そんな中途半端に抵抗したって一目置かれたりはしないよ? それこそ月にしたら微々たる戦力なんだから、止まりもしない。今回退けたって押し潰されるよ?」
先行した部隊だからこそ、こちらに出来る最大戦力で、一気に決めてしまいたいというのがフーさんの考えのようだ。
僕は意見を聞いた上で考える。
「……だから力を示しつつ、話を聞いてもらえる状況を作んなきゃいけない。策は相談するとして……僕が最終的に目指したいのは……」
そしてシュウマツさんと、コロニーの仲間達に僕は唯一思いついた提案をした。
「いっそ、すんごく逃げたらどうかと思うんだよ」
「このコロニーを放り出すっていうの! ダメだよ!」
バンと机を叩いてフーさんは立ち上がる。
「まぁまぁ落ち着いて。ただ逃げ出すんじゃないさ」
そして僕に逃げ出すように提案していた白熊さんは、僕をかばうように立ち回っていた。
「……カノーが決めたことならボクは従うよ。防衛の戦力で足止めして、ゲートでコロニーに逃げるとか? 」
「ちょっと待って? いやそういうことでもなくだね」
「え? 違うの?」
僕は白熊さんに笑い掛けながら頷く。
「そうそう、僕はもっとちゃんと逃げたいんだ。それで一つだけシュウマツさんに確認しておきたいことがあるんだけれど……シュウマツさん、いいかい?」
「なんだい?」
尋ね返したシュウマツさんに僕は手を差し出して言った。
「君と『契約』するって、どういう事なんだろう?」
「……ほほぅ?」
そう尋ねた時、漏れ出るシュウマツさんの光は、僕を試すように怪しく揺らめいていた気がした。
僕の家に、みんなはすぐに集まって来た。
庭に用意した大きなテーブルはいつもの和気藹々とした雰囲気はない。
さすがにピリついた空気に、僕も自然と背筋が伸びてしまう。
全員に行き渡ったタブレットには様々な資料が映し出されていた。
オペ子さんが作った子機。ミニオペ子さんが一際でっかいディスプレイを抱えて僕らの前で待機しているのは、ちょっと気の毒である。
ただ白熊さんはここのところどこにでもいるミニオペ子さんに興味がある様子だった。
「……この子、増えてるよね? なん機目?」
「さぁ? 10から先は数えてないなぁ」
「ワタクシは21号機です」
「うわ。思ったより多い」
増えるミニオペ子さんのディスプレイが点灯すると、そこにはフーさんが大人になったような顔が、目つきの悪さ5割増しで映し出されていた。
「では皆様方。先ほど接近中の艦隊から通信がありました。こちらをご覧ください」
まさにさっそくである。
僕らは気を引き締め、フーさんなんて静電気で髪をバチバチに荒ぶらせながら、画像の人物を睨んでいた。
「へぇ……さっそく何なんだろうね」
「丁寧な挨拶とかならいいんだけど」
白熊さんの言うように、僕もまずはその辺りで心臓を慣らしたい。
「最初だからきっと当たり障りのない、無難な感じ何じゃないかな?」
このニライカナイコロニー、自慢ではないが未知の要素が多すぎる謎のコロニーである。
そんな全く何もわからない何かに、いきなり殴りこむようなことはないに違いない。
僕らはなんと言ってくるのかある意味楽しみにしながら、メッセージを見た。
『告げる。我らは月のムーンキングダム所属の部隊である。このコロニーは人類連合、および地球国家のどの組織にも属さない非公式の巨大建築物であることは確認済みである。管理者は速やかにコロニーを明け渡し、投降せよ。一週間の猶予を与える。従わぬ場合、武力行使をもって制圧することも辞さない。賢明な判断を期待する』
「「「……」」」
何か致命的に間違ったものを見たのではないだろうか? 僕はそう思った。
「ねぇこれ……何か一本メッセージ飛ばしてない?」
僕は純粋な疑問を口にするが、ミニオペ子さんは違いますと首を横に振っていた。
「先ほど届いたばかりの送りたて、生絞りです」
「生絞りとは? いやいや何この圧倒的上からの命令。交渉の余地なし?」
「ないですね。この様子だと」
実に天的な報告に、僕らは皆一様に黙り込んだ。
「「「……」」」
……よし。まず初めに月人の主張を聞いてみよう。
フーさんはテーブルを殴り、血走った目で断固とした口調で唾を飛ばした。
「戦闘準備! 今すぐ戦闘準備をしないと!」
「……取り乱してるなぁ。もうちょっとくらいは時間があるから落ち着いて?」
「ないよ! F1を出してきたんだ! 真面目に制圧する気満々なんだよ!」
フーさんが指さしているのは、動きを止めた映像の人物で、彼女がF1というらしい。
「えーっとF1ってフェアリーシリーズの1番目ってことだよね?」
僕もその名称は聞き覚えがあった。
フェアリーシリーズは月人の能力を遺伝子操作で強化し、戦闘に特化させた兵士で、元はフーさんもその中の一人だったはずだ。
名称は確かフェアリー3とかF3とか呼ばれている、月で作られた強化兵である。
フーさんは力強く首を縦に振った。
「そうだよ……序列が女王の次で、戦場じゃ一番上位の個体なんだ。女王の命令に絶対服従で話し合いなんて期待できない! 私みたいなはぐれ者なんて真っ先に駆除対象だよ!」
「何それおっかない」
「本当におっかないんだってば! F1を出して武器を持っているなら真面目に潰しに来てるよ! 様子見程度じゃF1は出さない!」
「そんなにか……」
それはめちゃくちゃおっかない話である。
考えてみれば、こんなところに何回も来たくはないことだろう。早々に真偽を確かめ、あわよくば速攻で制圧してしまいたいのかもしれない。
その話を聞いて、近寄りがたい殺気を放ち始めたのは地球育ちの白熊さんだった。
ではちょっと怖いけど、次に白熊さんの意見を聞いてみるとしよう。
バキバキと手の関節を鳴らす白熊さんは眉間に深いしわを寄せていて、すでに戦闘態勢だった。
「でもこれでやることがはっきりしたよ」
「……そうだね。渡したくないなら戦うしかないと思う」
眉を顰めるフーさんもまた、このままでは奪い取られると感じているのなら、そうなるに違いなかった。
しかし、二人の意見を聞いた上で、僕は一番意見が欲しい彼に意見を求めた。
「と、いう感じなんだけど。シュウマツさんはどう思う?」
僕らの話を聞いていた、いつもの光るシュウマツさんはフワリと浮かび上がる。
そして彼は思ったより消極的な反応だった。
「そうだね……まぁこうなったら抗うか、もしくは差し出すかどちらかなのだろうね。君達の意見は間違っていないと思うよ」
「意外というか順当というか……シュウマツさんそんな感じなんだ」
切羽詰まった時には何でも思い通りに出来そうなシュウマツさんなのに、これを僕らの判断にゆだねるのは悪手だろう。
なのに特に反論するでもなく、思うようにやってみなさいというある意味暢気なスタンスに僕は心当たりがあった。
「おかしいだろうか?」
僕の表情を見て、そう尋ねたシュウマツさんをしばらく眺めて、僕はこの違和感を整理して口に出す。
「いいや。でも、なんだか、そう……僕はシュウマツさんも植物なんだなと初めて実感したかもしれない。基本的にシュウマツさんって受け身なんだ」
「もとより植物だが?」
なるほど。一貫して、自分が植物だとそう主張し続けて来たシュウマツさんの言葉にも一定の信憑性があったということか。
彼は僕らの事を知識として理解してコミュニケーションをしてくれるからわかりにくいが、その本質はすべて受け入れる、ともすれば命すら言われるがままに差し出す植物的な精神性なのかもしれない。
だとしたら彼がきちんと力を引き出すには、本当に僕らが必要だったのかも。
彼の力を正しく把握し、お願いをする。そのプロセスこそが、このコロニーを運営する上で必要な事だったのだと考えると、僕らがうまくやれていたことにも、説明がついた。
「……ならば君ならどうする?」
シュウマツさんがそう尋ねると言うのなら、僕にはまだできることがあるようだと、自分の言葉を語ることにした。
「そうだね……まず一度は戦う。これは賛成だ。僕らが何もできない訳じゃないと一度ガツンと示す必要があると思う」
「そうだよ! 新型の力見せつけてやる! あいつらなんて怖くない!」
終始徹底抗戦を主張するフーさんを、しかし僕はいったん止めておいた。
「まぁまぁ。でも、徹底抗戦は避けたい。徹底的にやりあって本格的に戦争を始めたら負けるでしょ? こっちは3人だし」
「いや、そんな中途半端に抵抗したって一目置かれたりはしないよ? それこそ月にしたら微々たる戦力なんだから、止まりもしない。今回退けたって押し潰されるよ?」
先行した部隊だからこそ、こちらに出来る最大戦力で、一気に決めてしまいたいというのがフーさんの考えのようだ。
僕は意見を聞いた上で考える。
「……だから力を示しつつ、話を聞いてもらえる状況を作んなきゃいけない。策は相談するとして……僕が最終的に目指したいのは……」
そしてシュウマツさんと、コロニーの仲間達に僕は唯一思いついた提案をした。
「いっそ、すんごく逃げたらどうかと思うんだよ」
「このコロニーを放り出すっていうの! ダメだよ!」
バンと机を叩いてフーさんは立ち上がる。
「まぁまぁ落ち着いて。ただ逃げ出すんじゃないさ」
そして僕に逃げ出すように提案していた白熊さんは、僕をかばうように立ち回っていた。
「……カノーが決めたことならボクは従うよ。防衛の戦力で足止めして、ゲートでコロニーに逃げるとか? 」
「ちょっと待って? いやそういうことでもなくだね」
「え? 違うの?」
僕は白熊さんに笑い掛けながら頷く。
「そうそう、僕はもっとちゃんと逃げたいんだ。それで一つだけシュウマツさんに確認しておきたいことがあるんだけれど……シュウマツさん、いいかい?」
「なんだい?」
尋ね返したシュウマツさんに僕は手を差し出して言った。
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