秋色の虹

原 愛衣

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再会

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その日の朝は驚くほど目覚めが爽やかだった。


朝のシャワーを浴びて、いつもよりも念入りにメイクをする。


眉毛の形やまつげの角度。
口紅の色まで完璧だ。


セミロングの髪の毛は穏やかにカールを作り、リボンのついたお気に入りの香水を軽くかける。




なんだかいつもと違う。
仕事に向かう足取りも軽やかだ。


職場につくと、同僚の結衣がニヤニヤしながら恵実に近寄って来た。


「どうしたのかなー。今日なにかあるのかしらっ」


ドキッとしながらも、平然を装う。

「今日はA社と商談なんだよね。気合入れていかないとっ」

「へぇー、珍しい!オンナで攻めるとか、気合い入ってるねっ」


同じ営業職の結衣はもうすぐ寿退社の予定だ。


ロングの黒髪が似合う清楚系の美人。

頭もキレていかにもキャリアウーマンの彼女が選んだのは、同じ年の大手商社マン。


合コンも積極的で、そんな中で射止めた彼は申し分ない結婚相手だ。なんて、言ってたっけ。




時計の針が今日は遅い。


ランチを食べて、たんたんと仕事をこなす。


やっと就業時間だ。


「お先に失礼しまーす」


急ぎ足で駅へ向かう。


でも、これではまだ時間が早い。

少し、駅前の百貨店にでもよってみようか。


コスメを販売しているフロアをウロついて、新作をチェックする。


落ち着いた色のアイシャドウに、潤いのあるファンデーション。


鏡に写る自分をチェックし、さりげなく横顔も見てみる。


少し甘い香りのリップグロスを見つけた。


店員さんにさっとつけてもらうと、こじんまりとした自分の唇が、少しだけ、ふっくら色っぽくみえた。


薄く色づくピンクのグロスを購入した。


なにを期待しているのだろう。


ちがう。
新しい季節にはいり、気分をあげたいためだ。


冬になると、新しいコートやブーツが欲しくなる。


そんなかんじ。
ただ、それだけ。



”members”
扉を開くと、笑顔のマスターが迎えてくれた。


「まってたぞー!今日は奥に座れ」


時間を伝えていたので、席をちゃんと用意してくれていた。


お店には男女の二人組。


他には…


店内を見渡すが、まだお客さんは少ない。


金曜日だから、これからきっとどんどん増える。



私はメガネを取りに来て、軽く飲んで帰る予定だ。

そう。軽く飲むだけ。


マスターと話す合間、気づかれないように腕時計をチェックする。


10時…


11時…


店内はどんどん賑やかになり、お客さんも増えていく。


なにを期待していたのか。
約束もなく、ただ仕事帰りに飲んで帰る。

よくあることだ。


12時になったら、帰ろう。
あと、一杯だけ飲んで。


そういって、コップを口につけた瞬間、ドアが開く音が響いた。


「遅かったな藍流!恵実の隣に座れよ」


鼓動が高鳴った。


その瞬間はスローモーションのように見えて、薄暗く綺麗なしょうめの中をゆっくりとこちらへ向かって来た。


「ごめんごめん。もっと早く来ようと思ったんだけど、急用が入ってさ。良かったよ。お姉さんがまだ居てくれてて」


心臓が早くなった。
コップを置かないと、手が震える。


「先日はご馳走さまでした。
    お礼が言えて、良かったです。」


隣に座る藍流の顔は、今日も優しく微笑んで居た。


「マスターから、今日来いって連絡もらってさ。もう一度、会えたらいいなって思ってたんだ」


思春期の女の子のような気分を久しぶりに味わった。


話すのは苦手じゃないのに、中々うまく言葉が出てこない。


「私も実は思ってました。また会えるかなって。お礼が言いたくて」


彼の目は人を惹きつける魔力がある。


なぜこんなに人の心に入り込むような話方ができるのだろう。








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