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序章・タケル篇

冒険の前に?

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 異世界召喚or生活 3日目。『いつもの』ように朝日が自然の至るところに光の手を伸ばし、森林の葉っぱが新緑の色に輝いてる。
 しかし、森林に囲まれた村、マルラカで一人の珍入者のお陰で違った『いつもの』になった。

 その珍入者・タケルは昨晩、村長宅で妄想を拡げていた異世界料理に喜んで舌鼓を打ち、そのまま村長と村長の子供達と寝るという形で過ごしたのだった。

「くかー、くかー、」
 村長宅の一室、タケルの世界の日本家屋、とは違う柔らかい雰囲気の部屋の布団に身を埋めたタケルは「…おばあちゃん…」と寝言を呟いている。
 そこに、
「タケルー!あさだぞー!」
「だぞー!」
 扉が開く前に子供の元気な声が聞こえる。扉から出てきたのは、村長の孫のロッヂとノーラだ。
 二人はまだ夢の中のタケルを起こして来るよう村長に頼まれたらしい。だが、睡魔に連敗中のタケルは二人の「朝だぞー!」の声に返って来たのは、
「…おばあちゃん……ちょっと…食べ切れないよ…」であった。
 今、タケルが見ているのは両親の後に死に別れた祖母と夢の再会(そのままの意味)をし、空想の味のしない味(夢だから)の料理に夢の中でも舌鼓を打っていた。
  そんな事を知る訳もない孫二人は声を出しても、揺すっても起きないタケルに二人は誰かに呼ばれ、一旦いったん部屋の外に出る。タケルは「…あ……まだ食べ…れそう…」と夢の時間を垂れ流している。
 数十秒たったのち、二人の行動を分かりやすく、面白く、音で表現しよう。

 トコトコトコトコトコトコ…
 くかー、
 ドス!
 ゲハ!ゲホゲヒゴホゴハ……

 異世界の朝食
 その朝食はタケルの世界と変わりが無い、炊き込みご飯やパンではなかった。
 からっと揚げたトゲトゲの足、焼き焦げが付いた丸く白い物体、青い野菜の上に白とは対なる黒い目のブツ
 …そう、ゲテモノ料理であった。
「い~ぱい食べて下さいね~」
「……」
 ロッヂとノーラの母、ロミエールがテーブルにまだ料理を並べる。
 散々料理を妄想していたタケルは愕然としたが、かろうじて膝を付くのは押し留まって、
(…アレだ、民族の習性だと思えばいい。異世界の朝食が必ずしもゲテモノとは限らないはずだ、…絶対!)
 そうしてタケルは料理に目を逸らす。
「で、なんで指で刺した、喉を。」
 朝食を見ようとしないタケルの喉がほんのり赤くなっている。
「…揺すっても起きない寝坊助 ねぼすけを起こすため、だ」
 ご飯の前に正座をされている少年と少女に指令を出した、リュゼが答える。
「だけど二人揃って喉刺しはないだろう!」
「だが、それはちゃんと起きないタケルが悪いぞ、起きれば、タケルの充実した起床が送れるのだ」
「だからって、」
「“郷に入れば郷に従え”」
「うぐ…」
 それは昨日、祖父の事を話した時に祖父がよく言っていた言葉を教えたのだ。言うと思ってないタケルは少しひるむ。
 すると、朝食を食べている村長が二人をたしなめた。
「二人とも、その辺にしなさい。ほら、ロッヂ、ノーラ。こっちにおいで」
 わーい!と子供達がご飯に飛びつく、リュゼも朝食の席に着こうと歩む。
「リュゼ、」
「もう一回言うか?」
 タケルを完封したのが嬉しいのか、頬がわずかに緩んでいた。
「…それはいい」
「じゃあ、なんだ?」
 リュゼが眉をひそめる。
「それはな…この世界のことと、戦い方を教えてくれ!」
 タケルには二つの思いがあった。
 一つは期待。自分の知らない異世界の知識、魔法、人達。それらが自分にどんな影響を与えるか、それがどんなに楽しいものか、言ってみれば「オラ、ワクワクすっぞ‼」である。
 もう一つは不安。普通に見てもエルフと人間、どの世界でも異種族差別がある。それがどれだけ深い溝になっているのか、別種族の自分に歴史の長いエルフの知識を簡単に教えてくれるのか…
「いいぞ」
 返事は驚くほど軽かった。
「軽っ!早っ!えっいいの?」
「そのくらいいいぞ」
「本当にいいの?その、ダメな物とかない?」
「別に無い」
 村長にも異義はなかった。
「そうか、じゃあ…」
 さっそく教えてくれと言う前に言葉が入る。
「でも教えるのはご飯を済ましてからだな」



 その一言で、
 私やリュゼ含め、その場の全員が、





 綺麗な床にタケルの膝が崩れ落ちるのをはっきりと見た。





 そうして、何事もなく(?)朝食を食べたタケルとリュゼはこの世界に詳しい知り合いに会うことになった。
「そうか、そちらの世界は虫を食べないとは、知らなかった」
「いや、食べる人は居るには居るぞ。ただ俺の国にはそうゆうのがなかったんだ。…そういえば、」
「?」
「昨日と今日のご飯のランク差が激し過ぎない?なんで?」
 昨日は檻の時はお粥と夕食では普通の肉と野菜の料理達。しかし、今朝のゲテ…ゴフン、…料理。確かに激しい。
「あれはタイミング良く肉が採れたのだ、毎日採れる訳あるか」
 市場の無いこの村に肉を毎日生み出せというのは、まぁ無理な話だ。
「おっと、ここだ」
 リュゼが一軒家で唐突に止まる。タケルも止まる。
「ここに居るのか」
「ああ、マルラカで一番の知者、ノイエルが居る」
 リュゼが木製の扉を開けた。
 ノイエルという者の家は一言で言うと『本ばっかり』である。
 新旧の本達が扉のそばから奥のリビングまで積まれて、奥も凄いことになってそうだ。
「まーた、本をこんなに…」
 と、リュゼが乱雑に置かれた本に手を伸ばす。
「待ってくれ、リュゼ!」
「タケル、手伝ってくれ」
「いや、聞いてた?待って!俺、この本達をもう少し見たい!」
 む?
「なに?」
「だって、そうだろう!異世界の知識!『視たことの無い』知識の本!それがこんなにある!ハァハァ、あーー文字が分かれば‼そもそもねー…」
 …何かがタケルの読書好きのスイッチが入った様だ。前のめりになりそうになるほど説教臭い説明に聞いてるリュゼが気の毒になってくる。
「…しよ…」
 か細い声が聞こえた。だが小さ過ぎて喋るタケルに聞こえてない。
「…だから俺はね、」
「同士よ!」
「ん、誰?」
 声が聞こえて後ろを振り向くが、誰も居ない。「下だ」とリュゼに言われて下を見ると、小学生くらいの寝間着を着ている女の子が目を光らせている。
「君も読んでるの?いいな~羨ましい!ところで君何歳?あとノイエルさん、居ない?」
 女の子の頭を撫でながら、見向きせず目線で探す。すると、リュゼからまた声が掛かる。
「あのな、タケル。お前が撫でているのが…ノイエルだ」
「…え」
 目の焦点を女の子もといノイエルに戻す。そして当の本人は光っていた目が暗く沈み、肩を震わせていた。
「えーと、ノイエルちゃん。ご、ごめんね」
 タケルが子供をあやす様に謝った。だが、それでも怒りが収まらず、いつの間にか持っていた杖をタケルに向けて言い放った。
「私は子供ではない!お主よりも年上だ!お主!もう、お主は同士ではない!敵だ!敵!この…【衝撃インパクト】ォォォ‼」
「うごふ!?………どへ…」
 見えない力にタケルの体は宙を舞い、そのまま半開の扉に激突し、家の外にふっ飛ばされる。
 開かれたドアの先で打っ伏するタケルにノイエルの嫌悪とその他の同情の視線が注がれていた。


 ノイエルの家は本が多いせいで踏み場はあるものの椅子が二つあると窮屈な家だった。
「…ごめんなさい」
 その窮屈な部屋に土下座のタケル、黙って本読むノイエル、ただ茶を飲むリュゼ。外とは冷たい温度にタケルは汗をかく。
「本当にごめんなさい…」
「……」
 膨れっ面でページをめくるノイエルにタケルは埒があかないと思ったのか、リュゼに目を向ける。
 リュゼは一息つくと、ノイエルのとがった耳に何かをささいた。
「…すれ…、…だか…」 
「…!、わかった」
 リュゼの囁きに肯定をすると、タケルの前に立った。
「おい」
「へい!なんでこざいましょう!」 
 タケルは時代劇のセリフよろしく返事をした。
「お主、自分の世界の事を知っているか?」
「あ、全部は知らないけど…」
「それでもいい、代わりにこちらも教える」
 そう言うとノイエルは本棚から二冊の本を手に取った。
 リュゼの囁きは、情報交換だったらしい。
「基本的常識かこの世界の歴史、どっちが知りたい?」
 タケルに二つの本が差し出された。
「…どっちも」
「さすが同士だ」
 読書好きのタケルと知者のノイエルがニィと笑い、手を結ぶ。
 知識欲の二人はやはり通じるところがある。
「なんだこれ」リュゼが言っているが気にしない二人であった。




 新年のご挨拶とお詫び

 どーも、こんにちは、リングです!
 新年、明けましておめでとうございます!そして、2ヶ月配信せずにすみませんでしたぁぁぁぁぁぁぁぁぁーー!
 いやー、どうも時間が無かったとか、怪我していたとかそういうが全然ありませんでして(ニッコリ)、はい、そうです。
 サボってました、堂々むさぼってました、ポケモンやってました。四天王倒してました。待っていた人、心配した人(いるのか?)すいませんでした。

 ですが、新年!2017!今年も真面目に健康に居られるよう配信していきますので、
 『ゲーム初心者が異世界召喚されちゃたら』、略して『ゲ初喚』!(流行らなそう)。今後とも宜しくお願い致します!
        幸福とみかんに愛を込めて。リングより。
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