拾った彼はイケメンでした

まるり

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いつもと違う夜

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愛ちゃんが、約束があるからといなくなった後、私はその子とちゃんと話をしようと思った。


「君、名前は?」

「…れお」

「れお君っていうんだね。私は真衣。うち、来る?」

「…」

そりゃそっか。

知らない人にはついて行かないって小さい頃に教わる事だもんね。

「家に行ったら、何かもっと作ってあげる事出来るよ!お腹空いてそうだし、ご飯だけでもどう?」

そういうと、コクリと首を縦に振った。

「じゃあ、お姉さんが何か美味しいものを作ってあげる!行こっか!」

ゆっくりと立ち上がり、私の後ろを何も話さずに付いてくる。

その間どこを見るわけでもなく、ずっと俯いていて、私の足元だけを見ているようだった。

「れお君、お家はどこ?」

無言に耐えられず私が声を掛けると、少しだけ顔をあげた。

れ「家…無い。」

「何があったか、話してくれる??」

そういうと、れお君は再び口を閉ざした。

「…じゃあさ、話したくなったら、話してくれる?それまで私待つから。」

家が無いと知ったからには、ご飯を食べさせて、さよならって訳にはいかない。

「とりあえず何日でもいいからさ、気持ちが落ち着くまで家にいたらいいよ。」

こんな事言ったら、愛ちゃんに怒られるんだろうな。

でも、こんな小さな男の子、ほっとけない。

偽善者なのかもしれないけど、それでもいい。

このまま知らないふりをしていた方が後悔すると思ったから。








ほとんど何の会話もなく家に着いた。

「まず、ご飯炊くから、その間お風呂に入ってもらおうかな!」

れ「え!!」

「さすがに自分で入れるでしょ?こっち来て!」

れお君の手を引きお風呂場に連れて行くと、

「これがシャンプーで、コンディショナー。これが体洗うやつね!もし、何か分からないことがあったら呼んでね?」

そう伝えて、私は脱衣場から出てきた。


さて。何を作ろうか。


見た感じ、すごくお腹空いていそうな感じだったし、カレーライスにでもしよう。

材料を切り終わった頃、シャワーの音が聞こえてきたから、洗濯機の上に着替えを置いた。


「まさかこれが役に立つなんてなー…。」


置いた着替えは、元カレのものだった。


ずっと捨てようと思っていたが、捨てられなかったもの。

思い出さないようにしていたのに、こんな時に思い出すなんて。

「ここに着替え置いておくから、これ着てね!」

出来るだけ明るい声でお風呂場のれお君に声を掛けた。







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