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第1章 黎明入学編
第2話 クソカス、ゴミカス
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「はい、出席とりまーす……」
気だるげな教師の声が、教室に響く。
「青山、安達、井上……」と、続々と名前を呼んでいく担任教師。
呼ばれては、違う生徒の応える声。
あ行からか行、さらにさ行、た行と続いていき、
「張本……。藤井……。星野……星野?」
「――おはようございまぁぁぁぁす!」
破れるほどの勢いで、引き戸を開けた少年、星野レイ。
水色の髪の毛が、すごい勢いで開いた引き戸によって起きた風になびく。
「……遅刻だ、星野」
「ええ!? 呼ばれる前に入ったじゃないですか!」
「お前は教室に足を踏み入れてすらないだろう。
それに、チャイムが鳴った時点で席に着いていなければ遅刻だ。
お前は何か月このクラスで生活しているんだ?」
「はい……。すみません……」
がっくりと肩を落とすレイの姿に、クラス内でどっと笑いが沸き起こった。
対照的にトボトボと席に向かうレイを見ながら、にんまりと笑う少年が一人。
「――オイオイ、また遅刻かよ、レイ」
「あはは……。ついテーピングヒーローに見とれちゃってさ」
「ハンッ! またヒーローかよ」
「いいじゃない、別に。君だってヒーローを目指してるんだから、羨ましいんじゃない?
――みっちゃん」
「ッるせェな。それで遅刻してたら本末なんとかだっつーの」
「村雲、お前も席に着いていなかったから遅刻だぞ~」
「なっ……! 俺ァ教室入ってたからセーフだろ、セーフ!」
担任教師は「決まりは決まりだ」と言って、遅刻の欄にチェックを入れた。
村雲ミナトはわかりやすく舌打ちをし、机の上に両足を乗せた。
その様子を、周りの生徒はまったくもって気にしていない。
これが、日常なのだ。
朝のホームルームは、淡々と進行していく。
「今週は百人一首大会がある」「寒さが厳しくなってきたから体調には気を付けるように」など、担任教師は表情一つ変えずに情報を羅列していった。
最後にあくびをしながら、
「んじゃ、今週も頑張っていきましょう。ほどほどにな。
あ、でも、受験を控えてるヤツがほとんどだろうから、そいつらは人一倍頑張るんだぞ」
そう言って、返事をする生徒たちを背に、担任教師は教室を出て行った。
「一限なに?」
「国語じゃないっけ?」
「時間割変更あったから、社会だよ」
「えー、今日社会二時間あるじゃんか。だりぃな」
そんなクラスメイトたちの言葉を聞きながら、レイは先ほどのことを思い出す。
『一歩踏み出すこと、かな』
その言葉の意味を、レイは咀嚼しようと考えているのだ。
しかし、どうもしっくりする意味が思いつかない。
物理的に?
それとも、精神的に?
それだけで、本当にいいヒーローになれるのか?
そう、ブツブツと独り言を呟いていると、
「おい、クソカス」
「でも、テーピングヒーローが言ってることなんだもんな……。
間違ったことを言うはずがないし……」
「聞いてんのか?」
「でも、なりふり構わず出て行って、それで助けられる保証とかあるのか……」
「――おい!」
「うわぁっ! な、なに?」
夢中になっているうちに、現実から遠ざかっていた。
レイは顔を上げると、そこにはひどく顔を歪ませたミナトが立っていた。
ミナトは机を強く叩き、
「まだヒーローなんかに憧れてやがんのか? テメェは」
「え? うん。何で――」
「――テメェみたいな無能が、ヒーローになんかなれるわけねェだろ」
「――」
沈黙する教室に、その言葉だけが響いた。
レイはその顔を見上げ、うつむいて目を伏せた。
「確かに、テメェの親は凄いヒーローだったぜ。
夫婦でヒーローランキングのトップ5に入るような、伝説と言っても過言じゃないヒーローだった」
「――」
「――――俺の親を殺しといて、よくもまああんなに明るい顔できたモンだよな」
レイは、瞳が揺らいだ。
目を伏せたまま、眉間にひどくしわを寄せた。
「ちょっと! 星野くんは何も悪くないでしょ――」
「自分の親が殺されても、同じこと言えるかよ!?」
「……っ。それは」
割って入ろうとしたクラスメイトの一人である女子生徒は、言葉に詰まる。
ミナトは再び机を叩き、
「いいか、覚えとけ、ゴミカス!
テメェみたいな無能な人間が、ヒーローなんて志すんじゃねェ!
テレビの前で指くわえてニュースでも見てろよ!」
「――」
「テメェの代わりに俺がヒーローになるんだ。
人殺しの息子が何かしでかさないように、見張っとかなくちゃだからな」
吐き捨てるようにそう言って、ミナトはレイの机を蹴った。
――雷をまとった、その脚で。
「ぐあっ!」
レイは、机と椅子ごと後ろに吹っ飛んだ。
幸い後ろには誰もいなかったが、レイは教室の壁に頭を強打した。
痛みと悔しさ、そしてどこか愁嘆の念がレイの心と体を蝕む。
心配して駆け寄ってきたクラスメイトを手で制し、膝をついてゆっくりと立ち上がった。
そして――、
「僕はそれでも、ヒーローになりたい」
「――アァ?」
「この手で、困ってる人間をたくさん救いたい!」
「人殺しの血を引く、その手でか?
寝言は寝て言えや――――!」
「――はーい、席着けよ……。
おい、大丈夫か、星野!?」
飛び掛かってくる寸前で、教師が教室に入ってきた。
ミナトはまた舌打ちをしながら、ため息をついて席に座った。
***
「まったく……。君はどうしていつもこうなのかな」
「チッ……」
「星野も、下手をしたら推薦が取り消されてしまうんだからな。
せっかくいい普通高校に進学できるんだから、気を付けるんだぞ」
「……はい」
昼休みに呼び出されたレイとミナトは、担任に厳しく叱られた。
気だるげな教師の声が、教室に響く。
「青山、安達、井上……」と、続々と名前を呼んでいく担任教師。
呼ばれては、違う生徒の応える声。
あ行からか行、さらにさ行、た行と続いていき、
「張本……。藤井……。星野……星野?」
「――おはようございまぁぁぁぁす!」
破れるほどの勢いで、引き戸を開けた少年、星野レイ。
水色の髪の毛が、すごい勢いで開いた引き戸によって起きた風になびく。
「……遅刻だ、星野」
「ええ!? 呼ばれる前に入ったじゃないですか!」
「お前は教室に足を踏み入れてすらないだろう。
それに、チャイムが鳴った時点で席に着いていなければ遅刻だ。
お前は何か月このクラスで生活しているんだ?」
「はい……。すみません……」
がっくりと肩を落とすレイの姿に、クラス内でどっと笑いが沸き起こった。
対照的にトボトボと席に向かうレイを見ながら、にんまりと笑う少年が一人。
「――オイオイ、また遅刻かよ、レイ」
「あはは……。ついテーピングヒーローに見とれちゃってさ」
「ハンッ! またヒーローかよ」
「いいじゃない、別に。君だってヒーローを目指してるんだから、羨ましいんじゃない?
――みっちゃん」
「ッるせェな。それで遅刻してたら本末なんとかだっつーの」
「村雲、お前も席に着いていなかったから遅刻だぞ~」
「なっ……! 俺ァ教室入ってたからセーフだろ、セーフ!」
担任教師は「決まりは決まりだ」と言って、遅刻の欄にチェックを入れた。
村雲ミナトはわかりやすく舌打ちをし、机の上に両足を乗せた。
その様子を、周りの生徒はまったくもって気にしていない。
これが、日常なのだ。
朝のホームルームは、淡々と進行していく。
「今週は百人一首大会がある」「寒さが厳しくなってきたから体調には気を付けるように」など、担任教師は表情一つ変えずに情報を羅列していった。
最後にあくびをしながら、
「んじゃ、今週も頑張っていきましょう。ほどほどにな。
あ、でも、受験を控えてるヤツがほとんどだろうから、そいつらは人一倍頑張るんだぞ」
そう言って、返事をする生徒たちを背に、担任教師は教室を出て行った。
「一限なに?」
「国語じゃないっけ?」
「時間割変更あったから、社会だよ」
「えー、今日社会二時間あるじゃんか。だりぃな」
そんなクラスメイトたちの言葉を聞きながら、レイは先ほどのことを思い出す。
『一歩踏み出すこと、かな』
その言葉の意味を、レイは咀嚼しようと考えているのだ。
しかし、どうもしっくりする意味が思いつかない。
物理的に?
それとも、精神的に?
それだけで、本当にいいヒーローになれるのか?
そう、ブツブツと独り言を呟いていると、
「おい、クソカス」
「でも、テーピングヒーローが言ってることなんだもんな……。
間違ったことを言うはずがないし……」
「聞いてんのか?」
「でも、なりふり構わず出て行って、それで助けられる保証とかあるのか……」
「――おい!」
「うわぁっ! な、なに?」
夢中になっているうちに、現実から遠ざかっていた。
レイは顔を上げると、そこにはひどく顔を歪ませたミナトが立っていた。
ミナトは机を強く叩き、
「まだヒーローなんかに憧れてやがんのか? テメェは」
「え? うん。何で――」
「――テメェみたいな無能が、ヒーローになんかなれるわけねェだろ」
「――」
沈黙する教室に、その言葉だけが響いた。
レイはその顔を見上げ、うつむいて目を伏せた。
「確かに、テメェの親は凄いヒーローだったぜ。
夫婦でヒーローランキングのトップ5に入るような、伝説と言っても過言じゃないヒーローだった」
「――」
「――――俺の親を殺しといて、よくもまああんなに明るい顔できたモンだよな」
レイは、瞳が揺らいだ。
目を伏せたまま、眉間にひどくしわを寄せた。
「ちょっと! 星野くんは何も悪くないでしょ――」
「自分の親が殺されても、同じこと言えるかよ!?」
「……っ。それは」
割って入ろうとしたクラスメイトの一人である女子生徒は、言葉に詰まる。
ミナトは再び机を叩き、
「いいか、覚えとけ、ゴミカス!
テメェみたいな無能な人間が、ヒーローなんて志すんじゃねェ!
テレビの前で指くわえてニュースでも見てろよ!」
「――」
「テメェの代わりに俺がヒーローになるんだ。
人殺しの息子が何かしでかさないように、見張っとかなくちゃだからな」
吐き捨てるようにそう言って、ミナトはレイの机を蹴った。
――雷をまとった、その脚で。
「ぐあっ!」
レイは、机と椅子ごと後ろに吹っ飛んだ。
幸い後ろには誰もいなかったが、レイは教室の壁に頭を強打した。
痛みと悔しさ、そしてどこか愁嘆の念がレイの心と体を蝕む。
心配して駆け寄ってきたクラスメイトを手で制し、膝をついてゆっくりと立ち上がった。
そして――、
「僕はそれでも、ヒーローになりたい」
「――アァ?」
「この手で、困ってる人間をたくさん救いたい!」
「人殺しの血を引く、その手でか?
寝言は寝て言えや――――!」
「――はーい、席着けよ……。
おい、大丈夫か、星野!?」
飛び掛かってくる寸前で、教師が教室に入ってきた。
ミナトはまた舌打ちをしながら、ため息をついて席に座った。
***
「まったく……。君はどうしていつもこうなのかな」
「チッ……」
「星野も、下手をしたら推薦が取り消されてしまうんだからな。
せっかくいい普通高校に進学できるんだから、気を付けるんだぞ」
「……はい」
昼休みに呼び出されたレイとミナトは、担任に厳しく叱られた。
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