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9日目/三神優子【遠野の弱点】
しおりを挟む私達は待ち合い室で優輝君と山内親子との面会が終わるを待っていた。
たった1時間…正確にはあと残り12分!
先程面会室から何か揺れたような気がしたが、気のせいだろうか?
ふと隣にいる井川の様子を見ると顔が青ざめているように見える。
さすがに井川でも長すぎて辛いのだろう………何が辛いかと言うと私と井川は待ち時間の間、遠野からずっと指導を受けていた。
指導とは言ったが内容は、男性のメンタルはとてもとても繊細で仕草から言動・視線に至るまで細かな注意点を事細かに説明されていた。
井川も私も男性との交友関係など皆無な為反論など出来るはずもなく黙って聞いていた。いや普通に男性との交友関係がある方が稀だ!
それなのに遠野は、2人の男性と会っているらしい。
普通は羨ましいと思う所だが、今までの遠野の発言を聞く限りでは酷い扱いを受けているのは確実だろう。
それも普通の事だが………男性にも少なからず性欲があるらしく、お近づきになっていれば経験出来る可能性があるらしい。
まっ噂だが……
今回遠野がうるさく指導してくる理由はなぜか?
ふと考えた時理由がわかった。
「順番か?」
私が呟くと遠野は一瞬にして言葉を失い止まった。
今まで事細かに鬼気迫る感じで話していたのが、苦痛に顔を歪めた。
「くっ、気が付きましたか………」
「やはり申請の順番か?何をそんなに心配しているんだ?」
私は何番目でもかまわないのだが………あの申請書に書かれた名前の中では私が一番懐妊の可能性が低いのは明白だ。私だけ目的が違うかもしれない。少し後ろめたい……そんな思いもあって遠野に聞いたのだが、遠野は少し肩を震わせながら
「な、何が心配って………前に見た申請書のままなら私の番は最後の方じゃないですか!私の順番が回ってくる前に誰かが優輝君を襲って嫌な思いさせたりしたら「待て遠野ちょっと待て」」
私は遠野が最後まで話す前に遠野の心配事がよくわかった。
「不安なのはわかる。正直私も色々と不安だ………それで考えていたんだが、優輝君から申請書を貰ったら1度全員で相談しないか?遠野1人で抱えても無理だろ?」
遠野は計画を考えるのは得意なのだが、誰かに相談や頼むのは苦手だからな。
「………全員で?」
やはり遠野の頭には『全員で相談』という選択はなかったのだろう。キョトンとした顔をしていた。
「あぁ、言わば全員が仲間だ。1つの目的に向かってヤリ遂げよう。井川もいいよな?」
ちょうど今ここに三人がいる訳だしこれ以上遠野の指導を聞きたくなかった私は、話をまとめてお仕舞いにしようと井川の同意を求めた。勿論井川ならすぐに同意してくれると予想してだったのだが………話を聞いてなかったらしく、返事もなく何やら呟いていた。様子がおかしい。
「い、井川?」
やっと名前を呼ばれた事に気が付いた井川は興奮した様子で
「す、凄かったです。もういなくなりましたけど、さっき病院にとてつもない霊が………あ、悪霊では無いと思うんですけど………あんな霊圧が強いなんて………三神さんも気が付いきました?」
霊?さっき?悪霊?あっ!さっきの揺れた感じがしたやつか?
「い、いやハッキリとはわからなかったが………ん?さっき青ざめていたのはそのせいか?」
「はい。今までで一番怖かったです。」
一番怖かったと言われても何と答えればいいんだろ?
とりあえず私は曖昧に
「そ、そうか」
その会話を聞いていた遠野が顔色を変えて私に迫ってきた。
「三神さん!あ、悪霊とか何の話ですか?」
「ん?あぁ、実はな、井川は霊感が凄くてな本庁からも霊視とか捜査協力要請とか来るくらいなんだが知らなかったのか?」
「き、聞いてませんから!」
何をそんなに驚いているんだろう?井川にも特技の一つや二つあってもおかしくないだろうに………井川も井川でなぜ教えてなかったのだろう?そう思い井川に尋ねてみた。
「井川?教えてなかったのか?」
「え~と、その何て言えばいいか………教えないでくださいと頼まれたもので………」
「はぁ~?頼まれた?誰にだ?」
井川は困った様に遠野の方を向いて何やら首を横に振ってそれから頷くように縦に首を振った。
「実は遠野さんを守護している祖父母さんから『この子は怖がりだから教えないで欲しい』と頼まれていました。」
「………………ドサッ」
遠野がいきなり倒れた!なんでだ?
「あ~やっぱりダメでしたか。」
両手を上に少し上げて首を横に振りながら呟いた。
私はすぐに遠野を抱き抱え軽く顎を持ち上げ揺すってみたが、どうやら気絶しているらしい。恐怖でか?
「これ程怖がりなのか遠野は?」
「え~と昔遠野さんが子供の頃悪夢にうなされてたのを可哀相だと思い守護してる祖父母さんが頭を撫でようとした所目を覚まして祖父母さんを見えてしまったらしいです。それからトラウマになってしまったのだと祖父母さんが言ってました。」
「しかし子供の頃の話だろ?さすがに時間が経てば記憶も曖昧になって恐怖も薄まるだろ。」
「え~とその………祖父母さんも自分のせいでトラウマになったので治そうと色々したらしいんですが、全て逆効果になったらしく極度に霊を怖がる様になってしまったと………」
そうか………しかし井川よ………私と会話しているのにチラチラと私の横に目線が動いているのはなぜだ?
遠野を抱き抱えているから、私の横にもしかしているのか?
さすがに私でも怖いぞ。
「あっ!」
そう思っていると突然井川が私の後ろを見て声をあげた。
「ひゃっ」
恐る恐る振り返って見てみるとそこには山内彩芽さんが………
1人?お母さんは?
「面会終わりま………どうしたんですか?」
そりゃこの状態を見ればそう思いますよね。
「いや、ちょっと色々あって恐怖で気絶した………らしい?」
やっぱりらしいだよな?実際恐怖で気絶した人など見た事がないのだから
「そ、そうですか………気絶した人って今日まで見た事なかったんですけど、まさか今日だけで二人も気絶した人を見るとは思わなかったです。」
まぁ普通は見ないよな………ん?
「二人?」
「はい。多分なんですがお母さん、興奮し過ぎて壁に体当たりして気絶してしまいましたので………」
あぁ~何となく想像出来てしまった………だから彩芽さん1人なんだな。
その後気絶中の遠野を、同じく気絶中の山内さんのお母さんが寝かせられている部屋に連れていき寝かせた。
彩芽さんはお母さんが起きるまで傍で待っているそうだ。
私達は遠野を『待つ』という選択肢を捨て優輝君の病室へと向かった。
井川が言うには遠野が目を覚ましたとしても混乱して仕事にならないと思うと………ちなみに井川の意見だよな?それとも祖父母さん?
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