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11日目・・・ 退院の日の出来事①
しおりを挟む岡崎優輝の退院の日の出来事①
ーーーーー三神優子ーーーーー
「なんで!なんで優輝君の退院の日に嵐が来るのよ!」
まさかレベル3の嵐が来るなんて………勿論、昨日の予報で言ってたけど今日だけは信じたくなかった。
正直今日は無理にでも理由を作って病院に行くつもりでいたのだ。しかし…………嵐が来てしまった。
嵐や台風がくると私達男性保護官は非常召集となる。それは何故か………それは部屋に引き込もっていた男性達が地下のシェルターに移動するから。
中には避難指示も無視し部屋から出ない男性もいるが、国から保護の名目で強制連行される。その連行するのも私達男性保護官の仕事だ。
地下シェルター………通称STS。
地上の保護区の面積の1/3もの広さがある地下シェルター。
1000人が半年間なら生きていける為の設備に物資が準備されている。もし地上が洪水や津波などに襲われたとしても浸水しない作りになっている。
最新設備が設置され、シェルター内の温度や酸素濃度など様々な管理がされている。
もし半年間に地上の状態が改善されなかったとしても運動場を農地として活用すれば継続的に生活が出来ると言われている。
そのシェルターに男性を誘導するのだが、男性保護官は事前に決められた地区、それと担当として1人10前後の男性を責任をもって誘導しなければいけない。
私の担当する男性は11人。
そのうち10人は個人で雇っている警護員に電話で連絡すればSTSに素直に移動してくれる。
ただひとりだけ警護員も雇わず母親と暮らしている阿久津健太君だけは毎回誘導指示に従わない。
多分今回もそうなんだろうと思いながらも健太君のお母様の端末に電話してみた。
「やはり今回も部屋から出てきませんか?」
「はい。毎回すみません。」
健太君のお母様は今時珍しく引き込もっている息子にも力で負けるぐらいか弱い方だ。健太君を出産する時も医者に命に係わるから止めた方がいいと言われたらしいが命懸けで産んだ。
無理な出産のせいか今だに何回も体調を崩して入院を繰返している。
命懸けで産んだ男の子………他の男性達と同じく過保護に甘やかして育てた。中学に入る頃には体重は100キロ………極度の運動嫌い。
必然的に面白くない学校に歩いて行く事が嫌になり不登校………そして家に引き込もってしまった。
ただ健太君は普通の男の子と違う所がある。
思春期になれば周りの女性からの影響などで、女性に嫌悪感を抱く。その嫌悪感は同じ女性だからと母親にも抱くのが普通なのだが、健太君は違った。
母親の言う事に基本素直に従う。従うがそれが運動に近いものになれば反抗する。
反抗と言っても暴れたりはしない。何故なら暴れるのも運動に入るから。だから言葉だけの反抗と意地でも動かないと頑なにしがみつく。
だから毎回強制連行するしかないのだ。
強制連行とは文字通りに強制。この時ばかりは個人の意思を無視して触る事が許される。この時を狙って触りまくる男性保護官が多数………いやほぼ全員が役得とばかりおさわりする。
私も遠野の様にあからさまには触らないが、腕を掴んだりはしている。
健太君を最初に強制連行した時は触る事に躊躇してしまい、最終的には回転イスに座った状態のままSTSまで押したり引っ張って移動させた。
その方法で何度か移動させたがやはりキャスターに無理が掛かったせいで壊れた。
次に考えて出した方法は車イス。
初回は「俺は怪我人でも病人でもねぇ!乗る訳ないだろ!」と騒ぎまくった。しかし私は触る事に躊躇しながらも無理やり前から抱き付き上半身を持ち上げて車イスに移動させた。
さすがに100キロあるだけあって上半身だけでもキツかった。
健太君は車イスには素直に座った。座った事が恥ずかしかったのか顔を紅くして無口でSTSまで誘導されてくれた。あの時はてっきり罵声が到着するまで飛んでくると思っていたのだが………
今では車イスでの移動が定番となったが自分で歩いて向かって欲しい。
健太君のお母様に車イスに移動させて押させるのも考えたが、あのか弱さでは無理だろう。
今回も私が行くしかないか………以前部下の一人が担当の男性を強制連行出来ずに手伝いに向かった。かわりに他の体格が良い男性保護官に健太君の事を頼んだ事があったが頑なに私が来ないと行かないと騒ぎまくった。
やはり男性は難しい。慣れた女性でなければダメなのか………
そう思いながら健太君のマンションに着いた。
何回も来ているので健太君のお母様もすんなり室内に入れてくれる。
初めて訪れた時は警戒され男性保護官だと確認するまで家には入れてもらえなかった。
「本当に毎回すみません。」
本当に申し訳なさそうに頭を下げるお母様。普通は男性保護官に頭を下げる様な母親はいない。嫌われているからだ。
「いえお気になさらずに、仕事ですから。」
私も馴れたもので気軽に返したが、今日はいつもと様子が違った。
「実は貴女が来るのを楽しみに待っていたみたいで………」
少し困ってはいるが嬉しそう?………しかし私が来るのが楽しみに、とはどんな意味だ?
「え?私が来るのをですか?」
「はい。嵐が来ると予報が出てから嬉しそうで。」
嬉しそう?
「いや、そんなはずは………私は嫌われてるはずでは?強制連行として許可もなく触っていますし………」
女性との接触を極端に嫌う男性に強制的に触れる男性保護官は嫌われ者。男性の母親達も「うちの息子に勝手に触りやがって!半径10㍍以内に近づくんじゃねえよ。」と内心と言うか面と向かって言われる事は多々ある。
「もし………もし、うちの子が何かをを貴女に望んだら個人として願いを聞いてくれませんか?私は一切反対しないので。」
「…………何かを個人として?」
何やら意味ありげな話だな。
遠野なら間違いなく飛び付く話なのかも知れないが、個人としてはやはりダメだ。
ましてや担当区の男性。特に強制連行した事がある男性には普段近づく行為は禁止されている。
「すみません。個人としての接触は職務上許されないので。」
「…………そうですか………では、仕事を辞めるご予定は?」
「え?」
まさか………さすがにここまで言われたら私でも気がつく。あり得ないとは言えないが、男性が特定の女性を気に入り性的行為有り無しでのパートナや伴侶として迎える。
鈴鳴家では結婚するのが当たり前らしいが、一般での日本国内での結婚数は年間10組ぐらい。
しかし………いやいやありえない。健太君には特別気に入られる様な事をした覚えもないし、優しい言葉も掛けた覚えもない。
お母様の勘違いなのでは?
「ぐ、具体的に健太君から直接聞いたのですか?」
「いいえ………でも、そうとしか思えなくて。今はする子はいないと聞きますが、もしかして初恋なのかと……」
「わ、わ、私に初恋!」
なんなんだ?ここ2週間の間に、こんなにモテるって…………もしかして私は近いうちに死ぬのか?
いや優輝君との約束を実戦するまでは絶対死ねない。
それに健太君の事は予想であって直接何も言われていない。
優輝君に子作り申請書を提出してもらった今、他の男性と親しくするのは問題だ。審査が通らないかもしれない。
審査は3つあるがどれも厳しい。
一次審査は肉体的に男性に害になる様な病気を持っていないかなどを調べる。
二次審査では精神的に男性に害になる様な考えを持っていないか調べる。
三次審査では男性に害を及ぼすような人間と交遊してないか、他の男性とも関係をもっていないかなどを調べる。
本当は申請書に記入された者は自分が名前を書かれた事も申請書を出した男性の事も一次審査前までわからないのが普通だ。
この子作り申請書が法案で決まった当時は多数の申請書が提出された。
当初、申請書は市役所に提出するとしか決まりがなかった。
そして男性はもう家から外出をしないようになっていた為、代理の者が提出しに来ていた。
しかし、書かれた名前の者を審査し許可が降りた事を申請者に報告すると決まって『何の事ですか?書いた覚えもない。』と………
大半が女性が申請書を偽造して提出していた。どうしてそんな偽造をしたのかと一時騒ぎになったが、調べると偽造した申請書を提出して許可が降りた事も代理として受け、男性に国からこの女性と子作りせよと強制命令を偽造して性交した者がいたのだった。
男性もまさかと思ったらしいが、その後に国から指定した日付に施設の場所などの書類で信じてしまった。
その女性もその男性の警護員として長年勤めていて信頼もされていた為、男性も素直に行為を行ったらしい。
その事が噂として広まった。その噂に便乗して沢山の申請書が提出されたが、結果として警護員との数件の性交で済んだ。
なぜか?
それは申請書に書かれた名前のほとんどが警護員と母親だった。中には姉や妹などもあったがさすがに国から近親相姦をしろ!など強制するはずがない。
審査するまでもなく肉親の名前が書かれた申請書は却下。
その後すぐに法案は改正され市役所に本人が提出するか、最寄りの警察署に連絡してもらい男性保護官が自宅に伺い本人から直接渡して貰う決まりになった。
勿論、男性保護官の不正を防ぐ対策もとられた。
その後も何度か細かい修正を入れ、現在はかなり厳しい審査となっている。
私が健太君の何かしらのお願いを聞いたら、複数の男性との関係を持っていると思われ申請も却下され社会的に妬みの対象になり生きてはいけないだろう。
少しドキドキしながら健太君の部屋に入った。
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はじめまして。
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今後の更新は難しいのかな、と思いつつもとても面白く大好きな作品なのでいつの日かの更新を夢見て、…せめて読み返せるようにひっそりと残り続けてくれることを祈っております。
はじめまして。
読ませていただきました!
とても面白いいい作品です、投稿待ってました
頑張ってください!