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2章

美濃へ

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1546年(天文15年)10月中旬 尾張国 那古野城 織田信長

 田植えの収穫のこの季節。俺は迅雷隊と護衛の忍達など百五十名ほどを引き連れ、稲葉山城へと出発した。

 俺の神通力の公開は、予想以上の反響を呼んだ。
 良くも悪くも。

 良いこととしては、民衆の反応が予想以上に良かったことか。
 病気やけがに苦しむ不安が減ったんだ。そりゃ嬉しいか。
 ただ、青ポイントは思ったほどは上がらなかった。
 これは俺に対する信仰というか信頼の指標みたいなもんだから、俺と関わったことのない人間は早々上がることは無い。
 まぁ一桁台がほとんどいなくなっただけでも良しとしよう。

 次は周りの家臣の反応だ。これは賛否両論と言ったところ。
 大体の奴は肯定派で安心したんだけど、中には胡散臭い物を見る様にして俺から離れる奴もいた。
 そういう奴らは大概他の宗教に信心深い奴か、俺のことを是が非でも認めたくない奴がほとんどだ。
 まぁこれはもう放っておくことにしよう。

 あとは、常備軍の人員を気兼ねなく増やせるようになったことだ。
 親父に許可ももらったから、先ずは那古野周辺で常備軍の募集を行っている。
 闇雲に集めるのではなく、ちゃんと試験をして採用しているから、水準はある程度保てるだろう。
 建物や管理する人員の事もあるから、先ずは五百を目標に、少しずつ集めていく予定だ。
 迅雷隊は、その中でも選りすぐりのメンバーになっていくことだろう。

 悪かったこととしては、やはり自社勢力の反応。
 親父が色々根回しをしてくれたおかげで思っていたよりはマシだったが、中にはうるさい奴らもいる。
 特に寺関係はうるさいな。アレはやっぱり神とかを認めない人が多いみたい。
 元々この世は自然発生したって考え方だから、理大御神に対する拒否感が大きいみたいだ。
 沢彦和尚は沈黙を守っている。俺を傍で見極めようとしている節があるな。
 
 熱田とはある程度いい関係が築けているみたいで安心したよ。
 親父に感謝だな。

 あとうるさいのは、尾張守護職である斯波家と、織田弾正忠家の上役である織田大和守家の奴らだ。
 俺の家って、一応はこいつらの部下って位置づけなんだよ。
 形勢はほとんど逆転しているけどね。

 こいつらは、ただでさえ勢いのある弾正忠家がこれ以上大きくなるのを嫌っているのだろう。
 特に俺と道三の娘が結婚することに対しては反発が激しい。
 弾正忠家と実質上美濃国主である斎藤家が繋がってしまえば、手が付けられなくなってしまうからな。

 あとは土岐氏だな。前回の道三との戦で、親父は土岐氏に味方している。
 しかし今回はその逆だからな。こいつらも何か行動を起こすかもしれない。

 今回のこの美濃への道中でも、こいつらの妨害が十分に考えられる。
 半蔵達には十分気を付けるよう言い含めておこう。


 

1546年(天文15年) 10月中旬 美濃国 織田信長

「ここが美濃か。……尾張と然程変わらないな」

「それはそうにござりましょう。美濃に海があったら驚きまする」

 俺のつぶやきに、長秀が返してくる。
 分かっとるわ。そういう意味で言ったんじゃないよ。

 日本の食糧庫と呼ばれる美濃。
 とは言っても、この辺りだけ見たらただの田舎だ。そりゃそうか。
 
「結局、特に何事もなくここまで来たな」

 てっきり斯波や大和守あたりがちょっかいだしてくると思ったんだけど、杞憂だったかな?
 しかし、横についている半蔵が釘をさしてくる。

「はい。しかしまだ稲葉山城までは距離がありまする。ご油断為さりませぬよう」

「うむ、そうじゃな。半蔵も物見、しっかりと頼むぞ」

「はっ」

 半蔵が頭をさげる。物見は忍達が交代でしている。《支援》付きだ。早々抜かれる事は無いだろう。

「でもわかー。尾張じゃなくて、わざわざ美濃に入って襲うなんてことあるのかな?」

 俺が気まずい思いをしていると、後ろから犬千代ののんびりした声が聞こえてくる。
 今回こいつと勝三郎も同行している。
 ワシもついて行くと駄々をこねられ、俺たちが折れた。
 まぁこいつらは将来俺の馬廻りとして付くことになるだろうから、社会勉強と思えばいいか。

「ん? そうじゃなあ。道三の手勢の振りをして襲ってくる、と言う事も考えられるかもしれんの。土岐氏も今の所は動きが無いが、油断はせぬ方が良いであろう」

「なるほどー」

 俺の答えに納得したように返す犬千代。
 あいつらは俺たちと道三の仲を引き裂きたくて仕方が無いはずだからな。
 それくらいしてきてもおかしくない。

 俺がそんなことを考えながら馬を進めていると、隣にいた兄貴がくつくつと笑い出す。

「ん、どうした兄上。なんぞ面白い事でもあったのか?」

「あぁいや、大したことではない。ただ、もし儂らを襲う奴らがおっても、そ奴らが可哀そうじゃと思うての」

 あぁなるほど。確かにその通りかもしれない。
 兄貴の言葉に、平手親子も苦笑しながら頷いている。

「確かにな。儂なら絶対に手は出したくない」

 俺の言葉に、皆が笑う。なんとも緊張感のない集団だ。
 まぁそれも仕方が無いか。

 今この二百の集団で外縁に位置しているメンバーには、俺が常に≪支援≫を掛けている。
 一段階強化でも一人五十ポイントは消費してしまい、それを百人で約五千ポイント。
 それが毎時間だから、ポイント消費が酷いことになっている。

 しかし現在、一日の収入は10万を超えた。
 これは親父の指示で、熱田や津島、そして親父の本拠地である古渡城にも社を建てた結果だ。
 とくに熱田と津島の人の流れがすごい。流石は交易都市だ。

 熱田神宮とは、昔ヤマトタケルを理大御神が助けたことがあるという逸話を作り、民衆に流したおかげで関係は良好だ。草薙御剣はその時奇跡を起こした神器だって感じに話が出来上がって、今では熱田神社への参拝者も増えているみたい。

 社の管理は、お道ちゃんが巫女集団の様な物をいつの間にか作って行ってくれている。
 作ったと言うより、勝手に出来上がったという感じか。
 お道ちゃんの行動に感化された人たちが、自分も力になりたいと自然と寄り集まったらしい。
 今は社の管理を主に任せているけど、いつかちゃんとした形を作らないといけないな。


 そんなバブリーなポイント増加のおかげで、少々贅沢な使い方をしても問題なくなってきている。
 因みにステータスの表示にも変化が起きた。
 起きたんだけど……



スキル
【神聖魔法】
 ≪発光≫≪浄化≫≪回復≫≪支援≫
【信仰度確認】
【眷属化】
 ≪眷属・獣(100,000P/日)≫
 ≪眷属・人(規定信仰ポイント不足)≫
【社作成】
 ≪社・小(100,000P)≫ 発光(小)・回復(白ポイント1割使用)・浄化(白ポイント1割使用)・信仰ポイント回収
 ≪社・中(規定信仰ポイント不足)≫
 ≪社・大(規定信仰ポイント不足)≫

信仰ポイント:2,871,381P



 ちょっと消費ポイントもバブリーになってきた。
 社と違い、眷属は一日ごとにかかるそうです。一日十万ポイントてなんぞ。
 一日十万ポイントの収入があるけど、支出もそれなりになってきている現状、ちょっとおいそれとは手を出せない。解除出来なかったらやばいしな。
とりあえず、この道三との一件を終えるまでは様子見だ。

 
 俺がそんなことを考えていると、唐突に半蔵から声が掛かる。

「若、来たようです」

「……そうか。皆にも警戒させよ」

「はっ」

 さてさて、敵さんのお出ましだ。
 何処のどいつかは知らないが、俺たちが今まで訓練してきた成果、しっかりと味わってもらうとしようか。 
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