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2章
初陣
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1546年(天文15年) 10月中旬 美濃国 織田信長
斥候から敵と思わしき集団を発見したとの報告があった。
「数は」
「五百程と」
「五百か……なんとも微妙な数だな」
敵が本気で潰してくるなら、もう少し数を揃えてくると思ったんだが……
「若、こちらは百五十。戦えるものは百と少ししかおりませぬ。四倍以上であれば、普通であれば十分かと」
半蔵が苦笑気味に言ってくる。
「確かにそうか」
確かに十分な数だな。というか、よく考えたらこれ俺の初陣じゃねぇか。五百と言われても、今一しっくりこない。
俺は後ろの覆面の男を睨む。男は楽しそうにこちらを見ている。
こいつは俺たちが出発する際、急に参加を申し出てきた。本人は飽くまで正体を隠しているつもりらしいが、周りからしたらバレバレだ。道三を驚かせようとでも考えているのだろう。
迅雷隊の訓練では接近戦もさせてはいるが、基本は遠距離戦を主眼に置いている。≪支援≫を掛け自分たちよりも多い敵を想定して訓練をしてはいるが……さて、どうなるか。
「敵との距離は」
「約半里(約二キロメートル)と」
マジか。随分と遠くで発見できたんだな。半蔵達は草笛で特定と合図を出しているらしいが、それでもそこまで遠くまで届くものか? あぁ、半蔵は今三段階強化を掛けているから特別か。
そうこうしていると、味方の忍が俺たちのところまでやってきて半蔵に何やら報告をしている。
「若、敵は山城守(斎藤道三)の旗印である『二頭波紋』を掲げておるようです」
あぁなるほど、斥候の報告か。というか、他の忍も大概だな。半蔵の報告からまだ然程経っていないぞ。元々の身体能力に、視力強化と身体強化がプラスされて忍び達のチートっぷりがやばい。
俺が感心していると、半蔵が追加で報告してくる。
「敵はこの先の谷のあたりで陣地を構えておるようですな」
「なるほど。他に迂回路は……」
「あるにはありますが、かなりの遅れになるかと」
なるほど。道三の旗を掲げ、俺が勘違いをして引き返すのが狙いか。はたまた迂回路を進ませ、道三との会見に遅れてしまうことを狙っているのか。ぶつかってくるならそれはそれで潰せばいい。そんな所か。
まぁ潰すんだけどね。万が一本物の道三軍だとしても、ここで力を見せつけておけば和睦を有利に進めるだろう。ただもし道三なら、五百何て中途半端な数よこしてこないと思うんだけどな。
「ふむ、わざわざ数の利を潰してくれたか。敵に感謝せねばなるまいな」
「確かにそうですなぁ。囲まれておれば、爺めは死を覚悟しておったところですぞ」
俺の言葉に、平手の爺が笑って答える。
皆もそれに釣られて一緒に笑っている。
皆に気負いは無い。
「さて、敵が折角固まってくれておるのだ。実地訓練といくとしようかの。久秀、武器の準備は問題ないか?」
「はっ。数は十分にございます」
「うむ。長秀、敵と五町(約五百五十メートル)ほどに接近したのち、迅雷隊に≪支援≫を掛け直す。隊ごとに集めておけ」
「はい」
いよいよ初陣か。緊張するな。
敵の姿が見え始め、接敵の前に迅雷隊へ順に≪支援≫掛け直していく。一度に三人で一回5秒ほど。それが三十回以上必要だから、百人に掛けるのに最低でも三分近くかかる。これでは奇襲には中々対応出来ない。斥候の力は必須だな。
皆にかけ終え、一同の顔を見渡す。
各々気合の入った顔をしているが、悲壮感は全くない。これから何倍もの相手と戦うと言うのに、太い奴らだ。
俺は息を思いっきり吸い込み、腹から声を出す。
「皆の者! 敵は陣を組み、こちらを迎撃するつもりだ。が、敵に合わせる必要など無い。我らはこちらのやり方で、その力、見せてやろうぞ!」
「「おうっ!」」
皆が低い声で答える。うん、皆ギラギラと良い顔をしてるな。
よし、では初陣を勝利で華々しく飾るとしよう。
斥候から敵と思わしき集団を発見したとの報告があった。
「数は」
「五百程と」
「五百か……なんとも微妙な数だな」
敵が本気で潰してくるなら、もう少し数を揃えてくると思ったんだが……
「若、こちらは百五十。戦えるものは百と少ししかおりませぬ。四倍以上であれば、普通であれば十分かと」
半蔵が苦笑気味に言ってくる。
「確かにそうか」
確かに十分な数だな。というか、よく考えたらこれ俺の初陣じゃねぇか。五百と言われても、今一しっくりこない。
俺は後ろの覆面の男を睨む。男は楽しそうにこちらを見ている。
こいつは俺たちが出発する際、急に参加を申し出てきた。本人は飽くまで正体を隠しているつもりらしいが、周りからしたらバレバレだ。道三を驚かせようとでも考えているのだろう。
迅雷隊の訓練では接近戦もさせてはいるが、基本は遠距離戦を主眼に置いている。≪支援≫を掛け自分たちよりも多い敵を想定して訓練をしてはいるが……さて、どうなるか。
「敵との距離は」
「約半里(約二キロメートル)と」
マジか。随分と遠くで発見できたんだな。半蔵達は草笛で特定と合図を出しているらしいが、それでもそこまで遠くまで届くものか? あぁ、半蔵は今三段階強化を掛けているから特別か。
そうこうしていると、味方の忍が俺たちのところまでやってきて半蔵に何やら報告をしている。
「若、敵は山城守(斎藤道三)の旗印である『二頭波紋』を掲げておるようです」
あぁなるほど、斥候の報告か。というか、他の忍も大概だな。半蔵の報告からまだ然程経っていないぞ。元々の身体能力に、視力強化と身体強化がプラスされて忍び達のチートっぷりがやばい。
俺が感心していると、半蔵が追加で報告してくる。
「敵はこの先の谷のあたりで陣地を構えておるようですな」
「なるほど。他に迂回路は……」
「あるにはありますが、かなりの遅れになるかと」
なるほど。道三の旗を掲げ、俺が勘違いをして引き返すのが狙いか。はたまた迂回路を進ませ、道三との会見に遅れてしまうことを狙っているのか。ぶつかってくるならそれはそれで潰せばいい。そんな所か。
まぁ潰すんだけどね。万が一本物の道三軍だとしても、ここで力を見せつけておけば和睦を有利に進めるだろう。ただもし道三なら、五百何て中途半端な数よこしてこないと思うんだけどな。
「ふむ、わざわざ数の利を潰してくれたか。敵に感謝せねばなるまいな」
「確かにそうですなぁ。囲まれておれば、爺めは死を覚悟しておったところですぞ」
俺の言葉に、平手の爺が笑って答える。
皆もそれに釣られて一緒に笑っている。
皆に気負いは無い。
「さて、敵が折角固まってくれておるのだ。実地訓練といくとしようかの。久秀、武器の準備は問題ないか?」
「はっ。数は十分にございます」
「うむ。長秀、敵と五町(約五百五十メートル)ほどに接近したのち、迅雷隊に≪支援≫を掛け直す。隊ごとに集めておけ」
「はい」
いよいよ初陣か。緊張するな。
敵の姿が見え始め、接敵の前に迅雷隊へ順に≪支援≫掛け直していく。一度に三人で一回5秒ほど。それが三十回以上必要だから、百人に掛けるのに最低でも三分近くかかる。これでは奇襲には中々対応出来ない。斥候の力は必須だな。
皆にかけ終え、一同の顔を見渡す。
各々気合の入った顔をしているが、悲壮感は全くない。これから何倍もの相手と戦うと言うのに、太い奴らだ。
俺は息を思いっきり吸い込み、腹から声を出す。
「皆の者! 敵は陣を組み、こちらを迎撃するつもりだ。が、敵に合わせる必要など無い。我らはこちらのやり方で、その力、見せてやろうぞ!」
「「おうっ!」」
皆が低い声で答える。うん、皆ギラギラと良い顔をしてるな。
よし、では初陣を勝利で華々しく飾るとしよう。
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