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噂の騎士様のイベントが起きないように頑張るようです
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♢ ♢ ♢
「あの……?どうされましたか?」
もしかして、以前会ったことがあるのだろうか。そのときに、何か失礼なことをして何かやらかした!?心配になって恐る恐る問いただすと
「それは、無駄ではないでしょうか」
彼から返ってきた言葉がこれ。
「はい……?」
我ながら間の抜けた声が出たと思う。
今までと同じように微笑んでいるが、彼の声はどこか突き放すような響きがあるような気がした。おまけに、何が無駄なのかわからない。私は思わず首をかしげた。そんな私に『失礼ながら……』と続ける。
「アリア様は、魔力がない方とお聞きしています」
彼は口元は笑っているもののどこか張り付けたような笑顔を浮かべてそう言った。
「はい、残念ながら」
そうなのよね。『Magic Engage』のゲーム内のアリア・マーベルはしょぼいけれど魔法が使えた。しょぼくても魔法であることは間違いない。せっかく、魔法の世界に転生したのだから使ってみたい気持ちもあったのだけれども、いくら試しても私に魔力が発現することはなかった。幼子でも魔法を使えるのにかかわらずだ。
だからこそ、『アリア・マーベルが魔法が使えない』というのはある意味有名だった。それこそ、年を経ることにいろんな場所のお茶会や社交界に顔を出すようになってから、そのことを触れてくる人は絶えなかった。
けれどもここ最近は、昔のように怒鳴り散らすわけでもなく、『そうなんですよー』っていうのを丁寧な言葉に置き換えて、受け答えしていた。そうしていると、気がつけば出る先々で噂をされているようで、最近は確認されることのほうが少ない。久々に聞かれたなーなんて思っていると
「魔力がないのに、学んでどうするんですか?できないものを一生懸命やるなんて、無意味だと思いませんか」
静かに尋ねられた。彼の瞳が私を真っ直ぐに捉えた。何故だろう。彼の瞳が私を見ているのに、他の誰かを見ているような気がするのは。
確かに、魔力がないのは本当に残念。コレに関しては、事実だし、否定もしない。正直転生するなら、チート能力を持って転生したかったよ。で、この世界を救う勇者様……とかね!でもね、魔力がないのはもう仕方がない。だからこそ……。
「私は、できないものをできないから諦めるっていうことのほうが、よほど愚かしいと思います」
私は、きっとそういう自分を許せない。
もともと前世で、途中リタイアした生だ。現世では、最後まで全うするつもりだ。最後までというと、自分が一生懸命に生きるということだ。途中で投げやりになるなんて、そんな自分の方が愚かだ。
すんなりと出たこの言葉は私の本心だ。
「……なぜ、そんなことが言えるんですか?」
それに対して、何故だか苛立ったようにいう彼。何に苛立っているのかわからないけれど、私の気持ちは変わらない。
「私は、魔法が好きだけど魔力は確かにないわ。けれど、それが何だって言うの?好きなものを好きで何が悪いの?それを学ぶことがそんなに愚かなこと?」
私ははっきりと言い切った。
魔力はないけれども、素敵な魔法の力を知りたいと思う。
私は、男性同士の恋愛ものの漫画や小説を読むのが好きだ。前世でも好きだし、今でも好きだ。それを私は悪いとは思ったことはない。もし、ここで彼を肯定してしまえば今までの自分に対する否定になってしまう。
「……私は友人の方が早くに始めたことでも、私の方が先にできるようになってしまいます」
突然、彼はそうこぼした。まるで思わずこぼれてしまった本心のように聞こえた。それが、まるで罪だと言わんばかりに。けれども、それは……。
「それは、人よりも飲み込みが早いという素敵な才能だわ」
私はそう思う。
「でも、周りはそうは思いません」
私の言葉に即答する彼。その言葉は、どこか自嘲地味た響きを持っている。
「私のせいで、誰かが挫折して不幸になっていくんです。だったら、最初から、無意味なことなんてしなければいいんだ!!」
丁寧な物言いがだんだんと乱暴になっていく彼。一方で、彼の整った顔は悲しげにゆがめられている。
それは人よりも優れた才があるがゆえの孤独なのかもしれない。
私は前世でもアリア・マーベルとしての現世でも人よりも優れた才能なんて持っていない。だから、私にはこの人と同じ孤独を経験することはできない。だからこそ、私は彼に一言告げた。
「でも、私は、あなたの魔法、感動しましたわ」
そして、心からの笑みを浮かべて。
「あの……?どうされましたか?」
もしかして、以前会ったことがあるのだろうか。そのときに、何か失礼なことをして何かやらかした!?心配になって恐る恐る問いただすと
「それは、無駄ではないでしょうか」
彼から返ってきた言葉がこれ。
「はい……?」
我ながら間の抜けた声が出たと思う。
今までと同じように微笑んでいるが、彼の声はどこか突き放すような響きがあるような気がした。おまけに、何が無駄なのかわからない。私は思わず首をかしげた。そんな私に『失礼ながら……』と続ける。
「アリア様は、魔力がない方とお聞きしています」
彼は口元は笑っているもののどこか張り付けたような笑顔を浮かべてそう言った。
「はい、残念ながら」
そうなのよね。『Magic Engage』のゲーム内のアリア・マーベルはしょぼいけれど魔法が使えた。しょぼくても魔法であることは間違いない。せっかく、魔法の世界に転生したのだから使ってみたい気持ちもあったのだけれども、いくら試しても私に魔力が発現することはなかった。幼子でも魔法を使えるのにかかわらずだ。
だからこそ、『アリア・マーベルが魔法が使えない』というのはある意味有名だった。それこそ、年を経ることにいろんな場所のお茶会や社交界に顔を出すようになってから、そのことを触れてくる人は絶えなかった。
けれどもここ最近は、昔のように怒鳴り散らすわけでもなく、『そうなんですよー』っていうのを丁寧な言葉に置き換えて、受け答えしていた。そうしていると、気がつけば出る先々で噂をされているようで、最近は確認されることのほうが少ない。久々に聞かれたなーなんて思っていると
「魔力がないのに、学んでどうするんですか?できないものを一生懸命やるなんて、無意味だと思いませんか」
静かに尋ねられた。彼の瞳が私を真っ直ぐに捉えた。何故だろう。彼の瞳が私を見ているのに、他の誰かを見ているような気がするのは。
確かに、魔力がないのは本当に残念。コレに関しては、事実だし、否定もしない。正直転生するなら、チート能力を持って転生したかったよ。で、この世界を救う勇者様……とかね!でもね、魔力がないのはもう仕方がない。だからこそ……。
「私は、できないものをできないから諦めるっていうことのほうが、よほど愚かしいと思います」
私は、きっとそういう自分を許せない。
もともと前世で、途中リタイアした生だ。現世では、最後まで全うするつもりだ。最後までというと、自分が一生懸命に生きるということだ。途中で投げやりになるなんて、そんな自分の方が愚かだ。
すんなりと出たこの言葉は私の本心だ。
「……なぜ、そんなことが言えるんですか?」
それに対して、何故だか苛立ったようにいう彼。何に苛立っているのかわからないけれど、私の気持ちは変わらない。
「私は、魔法が好きだけど魔力は確かにないわ。けれど、それが何だって言うの?好きなものを好きで何が悪いの?それを学ぶことがそんなに愚かなこと?」
私ははっきりと言い切った。
魔力はないけれども、素敵な魔法の力を知りたいと思う。
私は、男性同士の恋愛ものの漫画や小説を読むのが好きだ。前世でも好きだし、今でも好きだ。それを私は悪いとは思ったことはない。もし、ここで彼を肯定してしまえば今までの自分に対する否定になってしまう。
「……私は友人の方が早くに始めたことでも、私の方が先にできるようになってしまいます」
突然、彼はそうこぼした。まるで思わずこぼれてしまった本心のように聞こえた。それが、まるで罪だと言わんばかりに。けれども、それは……。
「それは、人よりも飲み込みが早いという素敵な才能だわ」
私はそう思う。
「でも、周りはそうは思いません」
私の言葉に即答する彼。その言葉は、どこか自嘲地味た響きを持っている。
「私のせいで、誰かが挫折して不幸になっていくんです。だったら、最初から、無意味なことなんてしなければいいんだ!!」
丁寧な物言いがだんだんと乱暴になっていく彼。一方で、彼の整った顔は悲しげにゆがめられている。
それは人よりも優れた才があるがゆえの孤独なのかもしれない。
私は前世でもアリア・マーベルとしての現世でも人よりも優れた才能なんて持っていない。だから、私にはこの人と同じ孤独を経験することはできない。だからこそ、私は彼に一言告げた。
「でも、私は、あなたの魔法、感動しましたわ」
そして、心からの笑みを浮かべて。
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