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第七話 何も知らなかった
scene17 熱
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ー朔也ー
『…ピンポーン……』
「……?」
予期しないインターホンの音で、目を覚ました。
気がつけば外はすっかり暗くなって、開けっ放しのカーテンからは月明かりが差し込んでいる。朝から一度も電気をつけてないから、部屋の中は暗いままだ。
再びインターホンが鳴る。仕方なくベッドから体を起こすと、頭を乗せていた所のシーツが、寝汗でぐっしょりと濡れていた。
「……っ」
目眩がして額を抑えた。
……熱い。
全然熱が下がらない。こんな風に高熱を出して寝込むのは、久しぶりだった。
ふらつく足取りで、どうにかインターホンのモニターの側へ行く。スイッチを押すと、画面が明るくなった。
カメラの前に立っている人物を認識して、目を疑った。
「……名木ちゃん?何で……」
通話ボタンを押しかけた手が止まる。
だめだ。こんな姿を、名木ちゃんに見せるわけには……。
頭が、ふわりと揺れる。
壁に手をつき、その場に崩れ落ちた。
「……っ、はぁ……はぁ……っ」
誰もいない部屋に、自分の荒い呼吸音だけが響く。
『ピンポーン……』
「……っ」
震える手を伸ばした。『切』ボタンを、手探りで押す。
ピコン、と音が鳴った。……しまった、解錠ボタンを押した。
壁に背中を預け、項垂れる。
呼吸が苦しい。頬を冷や汗が伝っていく。いい加減な羽織り方をしていた部屋着のパイルパーカーが、肩からずり落ちた。
『ピンポン』
部屋の戸の横についているインターホンが鳴った。
このまま無視していようかとも思ったけれど、あまりに何度も鳴るので仕方なく立ち上がる。
桃瀬さん、と扉の向こうから名木ちゃんの焦った声が聞こえてきた。
俺は、揺れる視界の中でどうにか錠に手をかけ、開けて、そして―。
『…ピンポーン……』
「……?」
予期しないインターホンの音で、目を覚ました。
気がつけば外はすっかり暗くなって、開けっ放しのカーテンからは月明かりが差し込んでいる。朝から一度も電気をつけてないから、部屋の中は暗いままだ。
再びインターホンが鳴る。仕方なくベッドから体を起こすと、頭を乗せていた所のシーツが、寝汗でぐっしょりと濡れていた。
「……っ」
目眩がして額を抑えた。
……熱い。
全然熱が下がらない。こんな風に高熱を出して寝込むのは、久しぶりだった。
ふらつく足取りで、どうにかインターホンのモニターの側へ行く。スイッチを押すと、画面が明るくなった。
カメラの前に立っている人物を認識して、目を疑った。
「……名木ちゃん?何で……」
通話ボタンを押しかけた手が止まる。
だめだ。こんな姿を、名木ちゃんに見せるわけには……。
頭が、ふわりと揺れる。
壁に手をつき、その場に崩れ落ちた。
「……っ、はぁ……はぁ……っ」
誰もいない部屋に、自分の荒い呼吸音だけが響く。
『ピンポーン……』
「……っ」
震える手を伸ばした。『切』ボタンを、手探りで押す。
ピコン、と音が鳴った。……しまった、解錠ボタンを押した。
壁に背中を預け、項垂れる。
呼吸が苦しい。頬を冷や汗が伝っていく。いい加減な羽織り方をしていた部屋着のパイルパーカーが、肩からずり落ちた。
『ピンポン』
部屋の戸の横についているインターホンが鳴った。
このまま無視していようかとも思ったけれど、あまりに何度も鳴るので仕方なく立ち上がる。
桃瀬さん、と扉の向こうから名木ちゃんの焦った声が聞こえてきた。
俺は、揺れる視界の中でどうにか錠に手をかけ、開けて、そして―。
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