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深夜に響く音
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小学六年生になったぼくの家は、神社のある山に東西を挟まれている。小さな小川には蛍も群れとんでいる。
つまりは田舎だ。
夜にはフクロウやドバトの鳴き声がぼくの部屋にもこだまする。
「暑くて寝られないや」
二段ベットの下を覗くと弟はお腹をほうり出してきもち良さそうに寝ている
ベッドの時計を見ると1時だ。
早く寝ないと、と思ったぼくは天井を見た。
天井には幾何学文様の壁紙がはってある。
その文様を見ているとアラビア人の王子様みたいな顔が浮かんで見えてきた。
不思議なもので、今の今まで幾何学文様にしか見えなかった壁紙が、アラビア王子の顔がたくさん描いてある模様にしか見えなくなってきた。
なんだか怖くなってきたぼくは暑いのにタオルケットをかぶって目をつむった。
外からは野鳥の鳴き声が聞こえてきている。
眠れない。
何分か我慢していたが、暑さに負けてタオルケットを蹴り飛ばした。
ベッドの時計は2時を回っていた。
「丑三つ時だ」
と、ぼくはなんとなく思った。
草木も眠る丑三つ時なのになんでぼくは眠れない。
そんな事を思っていると、部屋の東側の山から音が聞こえてきた。
「コーン、コーン」
金属を打ち付けるような音だ。
まさか丑の刻詣り?
窓から身を乗り出して音が聞こえてくる東側の山を見渡した。
緑の香りが夜に充満してきている。山の精霊が活発化してるのだろうか?
「コーン、コーン」
音はずっと続いた。怖くなってきたぼくはベッドにモグリこんだ。「コーン」という音が子守歌がわりになったのか、知らない間に寝てしまっていた。
気がつくと6時!ラジオ体操の時間だ。
慌てて用意して家の西側の山の広場に出かけた。
幼なじみのテツが声を掛けてきた。
「今日は何する?」
ぼくとテツは夏休みの宿題もせずに毎日のように近所の山や川て遊んでいる。
ぼくは東の山から深夜に丑の刻詣りの音がしたとテツに言った。
「おもろそうやん!」
「何が?」
「見に行こう!」
「夜中に?」
「それは怖いから昼間やな」
「弁当もって東の山に登るか?」
「そうやなあ」
「じゃあ昼前に呼びに来て」
と、ラジオ体操しながらその日の遊びが決まった。
帰宅したら父母はもう仕事に出かけている。
朝はテレビのアニメを見て時間を潰す。
昼前になると学校の家庭科の時間でならった焼き飯をつくり弁当がわりにしてテツを待った。
弟が声を掛けてきた。
「どっか行くん?」
「うん。東の山で丑の刻詣りの音がしたから」
「ぼくも行きたい!」
というので焼き飯を弟の分も作った。ぼくら玉ねぎが嫌いなので卵と塩しかいれない焼き飯だ。
そうこうしているとテツがやってきた。
「行こか?」
ぼくの家もテツの家も共働きなので勝手しったる他人の家だ。挨拶も無しに扉を開けて呼び出す。
「弟も行くって」
「おう」
3人で、東の山を目指す。
目指すと言っても道を挟んですぐだ。
山の入り口は公園になっている。
その公園で弁当をひろげ3人で食べる。
「で、どんな音やったん」
テツが興味津々といった風情でおにぎりを頬張りながら聞いてくる。
「だから釘を打つみたいな音やって!それが長い間、聞こえてた」
「ボクはきこえんかった」
弟は言う。
それはそうだろう熟睡してたから。
ぼくは少年雑誌の付録の怪奇本を取り出して広げる。
「丑の刻詣りいうたらこんなんやで」
と、丑の刻詣りの紹介をしているページを開いた。
それを見たテツと弟は一瞬、ビビってた。
頭に蝋燭付きの輪っかをつけた女が大木に五寸釘を打ち付ける場面の絵があった。
呪いを掛けているので、顔は鬼女だ。
口には五寸釘を数本、左手に釘を一本もち、それを右手にもった金槌で大木に打ち付けている。
藁人形だ。
「怖いなあ」
「うん」
「こんなん、夜中には見られんで」
「そやから藁人形があるかどうかだけ確かめよ」
と、ぼくは二人に言った。
二人はうなづく。
公園内で昼メシを済ませていよいよ、山へ登る。
獣道をかき分けて、山道を探しながら歩いているとアオダイショウを発見した。
「ヘビや!」
ぼくが叫ぶと、テツは怖がりもせずに
「アオダイショウやんけ」
と、いきなり素手で捕まえて尻尾をもって振り回して頭を木にぶつけた。即死だ。
かわいそうなアオダイショウ。
ヤンチャを絵に描いたようなガキ大将のテツに見つかるとはそれだけでご愁傷様である。
アオダイショウ対ガキダイショウの一戦はあっというまにけりがついた。
弟はそれを見て「やっぱり帰る」といって公園に降りて行った。
ぼくとテツはさらに山を登る。
公園の反対側には神社のある山だ。ちょうど神社の裏手あたりに差し掛かったときに、白い紙の紙垂が円型に大木に打ち付けられている大木の集まっているところを発見した。
サークル状に大木に巡らせるように紙垂がかけられていた。子供の背丈よりやや高い位置だった。
その真ん中にひときわ太い木があった。
その木には何もない。
ぼくはそれを見た。
「紙垂を打ち付ける音やったんかな?」
テツは無言で真ん中の大木を見上げた。そしてかなり高い位置を指差した。
ぼくはその指先に視線を回す。
「!」
「藁人形やろ、あれ」
と、テツは小さい声で呟いた。
マジマジと見上げると確かにかなり高い位置に藁人形が釘で打ちつけられていた。
テツは「登って打ちつけたんやろか?」とぼくの方を見た。
大人でも見逃すくらい高い位置だ。脚立でもないとあんなところには届かないだろう。
「無理やろ、あの階段みたいなヤツでももってこんと」
「そうやなあ」
「準備万端やんけ」
「怖いなあ」
「なんで?オレらが呪われてるわけちゃうやろ?」
「でも不気味やん」
「まあなあ」
「誰が誰を呪ってるかやな」
「うん」
「藁人形落としてみよか?」
「やめとき!呪いがこっちきたらエライこっちゃで!」
「そやな」
「今晩もやるやろか?」
「何を?」
「丑の刻詣り」
「うん、何日かせなあかんてさっきの本に書いてあったなあ」
テツはしばし考えてぼくに向かって言った。
「今晩も2時まで起きとけ!そしたら音が聞こえるかもしれん。」
「そうやなあ」
今日の探検はここまでだった。
さて、今夜も丑の刻詣りの音が聞こえてくるのだろうか?
つまりは田舎だ。
夜にはフクロウやドバトの鳴き声がぼくの部屋にもこだまする。
「暑くて寝られないや」
二段ベットの下を覗くと弟はお腹をほうり出してきもち良さそうに寝ている
ベッドの時計を見ると1時だ。
早く寝ないと、と思ったぼくは天井を見た。
天井には幾何学文様の壁紙がはってある。
その文様を見ているとアラビア人の王子様みたいな顔が浮かんで見えてきた。
不思議なもので、今の今まで幾何学文様にしか見えなかった壁紙が、アラビア王子の顔がたくさん描いてある模様にしか見えなくなってきた。
なんだか怖くなってきたぼくは暑いのにタオルケットをかぶって目をつむった。
外からは野鳥の鳴き声が聞こえてきている。
眠れない。
何分か我慢していたが、暑さに負けてタオルケットを蹴り飛ばした。
ベッドの時計は2時を回っていた。
「丑三つ時だ」
と、ぼくはなんとなく思った。
草木も眠る丑三つ時なのになんでぼくは眠れない。
そんな事を思っていると、部屋の東側の山から音が聞こえてきた。
「コーン、コーン」
金属を打ち付けるような音だ。
まさか丑の刻詣り?
窓から身を乗り出して音が聞こえてくる東側の山を見渡した。
緑の香りが夜に充満してきている。山の精霊が活発化してるのだろうか?
「コーン、コーン」
音はずっと続いた。怖くなってきたぼくはベッドにモグリこんだ。「コーン」という音が子守歌がわりになったのか、知らない間に寝てしまっていた。
気がつくと6時!ラジオ体操の時間だ。
慌てて用意して家の西側の山の広場に出かけた。
幼なじみのテツが声を掛けてきた。
「今日は何する?」
ぼくとテツは夏休みの宿題もせずに毎日のように近所の山や川て遊んでいる。
ぼくは東の山から深夜に丑の刻詣りの音がしたとテツに言った。
「おもろそうやん!」
「何が?」
「見に行こう!」
「夜中に?」
「それは怖いから昼間やな」
「弁当もって東の山に登るか?」
「そうやなあ」
「じゃあ昼前に呼びに来て」
と、ラジオ体操しながらその日の遊びが決まった。
帰宅したら父母はもう仕事に出かけている。
朝はテレビのアニメを見て時間を潰す。
昼前になると学校の家庭科の時間でならった焼き飯をつくり弁当がわりにしてテツを待った。
弟が声を掛けてきた。
「どっか行くん?」
「うん。東の山で丑の刻詣りの音がしたから」
「ぼくも行きたい!」
というので焼き飯を弟の分も作った。ぼくら玉ねぎが嫌いなので卵と塩しかいれない焼き飯だ。
そうこうしているとテツがやってきた。
「行こか?」
ぼくの家もテツの家も共働きなので勝手しったる他人の家だ。挨拶も無しに扉を開けて呼び出す。
「弟も行くって」
「おう」
3人で、東の山を目指す。
目指すと言っても道を挟んですぐだ。
山の入り口は公園になっている。
その公園で弁当をひろげ3人で食べる。
「で、どんな音やったん」
テツが興味津々といった風情でおにぎりを頬張りながら聞いてくる。
「だから釘を打つみたいな音やって!それが長い間、聞こえてた」
「ボクはきこえんかった」
弟は言う。
それはそうだろう熟睡してたから。
ぼくは少年雑誌の付録の怪奇本を取り出して広げる。
「丑の刻詣りいうたらこんなんやで」
と、丑の刻詣りの紹介をしているページを開いた。
それを見たテツと弟は一瞬、ビビってた。
頭に蝋燭付きの輪っかをつけた女が大木に五寸釘を打ち付ける場面の絵があった。
呪いを掛けているので、顔は鬼女だ。
口には五寸釘を数本、左手に釘を一本もち、それを右手にもった金槌で大木に打ち付けている。
藁人形だ。
「怖いなあ」
「うん」
「こんなん、夜中には見られんで」
「そやから藁人形があるかどうかだけ確かめよ」
と、ぼくは二人に言った。
二人はうなづく。
公園内で昼メシを済ませていよいよ、山へ登る。
獣道をかき分けて、山道を探しながら歩いているとアオダイショウを発見した。
「ヘビや!」
ぼくが叫ぶと、テツは怖がりもせずに
「アオダイショウやんけ」
と、いきなり素手で捕まえて尻尾をもって振り回して頭を木にぶつけた。即死だ。
かわいそうなアオダイショウ。
ヤンチャを絵に描いたようなガキ大将のテツに見つかるとはそれだけでご愁傷様である。
アオダイショウ対ガキダイショウの一戦はあっというまにけりがついた。
弟はそれを見て「やっぱり帰る」といって公園に降りて行った。
ぼくとテツはさらに山を登る。
公園の反対側には神社のある山だ。ちょうど神社の裏手あたりに差し掛かったときに、白い紙の紙垂が円型に大木に打ち付けられている大木の集まっているところを発見した。
サークル状に大木に巡らせるように紙垂がかけられていた。子供の背丈よりやや高い位置だった。
その真ん中にひときわ太い木があった。
その木には何もない。
ぼくはそれを見た。
「紙垂を打ち付ける音やったんかな?」
テツは無言で真ん中の大木を見上げた。そしてかなり高い位置を指差した。
ぼくはその指先に視線を回す。
「!」
「藁人形やろ、あれ」
と、テツは小さい声で呟いた。
マジマジと見上げると確かにかなり高い位置に藁人形が釘で打ちつけられていた。
テツは「登って打ちつけたんやろか?」とぼくの方を見た。
大人でも見逃すくらい高い位置だ。脚立でもないとあんなところには届かないだろう。
「無理やろ、あの階段みたいなヤツでももってこんと」
「そうやなあ」
「準備万端やんけ」
「怖いなあ」
「なんで?オレらが呪われてるわけちゃうやろ?」
「でも不気味やん」
「まあなあ」
「誰が誰を呪ってるかやな」
「うん」
「藁人形落としてみよか?」
「やめとき!呪いがこっちきたらエライこっちゃで!」
「そやな」
「今晩もやるやろか?」
「何を?」
「丑の刻詣り」
「うん、何日かせなあかんてさっきの本に書いてあったなあ」
テツはしばし考えてぼくに向かって言った。
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