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本能寺の変は何故起こったか?5 室町と戦国
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波子「いや、『ぽっと出』だよ。織田信長が天下に覇を唱えてからまだ10年も経っていない。織田勢力下ならともかく、織田勢力と関係の無い地域はまだまだ室町時代いやこれは言い過ぎが、まだまだ戦国時代なわけだ。織田政権下、もしくは織田政権支配地域と隣接してない地域から見ると織田信長なんて何時こけるかはわからない。彼らからみれば三好長慶や松永久秀に取って代わっただけなんだよ。安国寺だけが信長政権が揺らいでくるのを予見してたわけじゃないんだ。寧ろ当時の常識からみて急成長していきなり天下人のように振舞うようなものが転ばない方が珍しいわけだ。」
堂田「そんな馬鹿な。なんといっても天下統一の土台を固めたんですよ?」
波子「だから君はだめなんだ。それはね、豊臣秀吉が織田信長の臣下で、徳川家康が織田信長の弟分だったという認識があるからそう見えるだけなんだよ。当時の人々はね、まだ太閤検地も経験してなければ、日光東照宮も建立も見聞きしてないんだよ。」
堂田「そりゃそうですが・・・・。」
波子「ここまで言ってまだ解らないのかい?つまりだ。この後、織田政権を継ぐものが日本列島全域を支配下に治めるなんてまだこの段階じゃ夢物語なんだよ。信長の死一つで一気に瓦解する可能性もまだまだ高かったんだ。そういう認識が君の歴史認識からはひどく欠落しているよ。」
堂田「そんなモノですかね。当時の織田政権は。「ポット出の織田政権」うーんどうもイメージがわかない。」
波子「例えば、中国大返しに入った秀吉を小早川が和議の約定を反故にして追撃して、姫路あたりで合戦になり秀吉を討ち取り、姫路城に居座ったとしよう。元々播州は毛利圏内だった。秀吉が進駐してきたからこそ小勢力独立状態が顕著になっただけだ。」
堂田「はぁ。バーチャル史論ですか。いいでしょう。お付き合いしましょう。播州といえば一向宗の強いところですね。」
波子「そうだね。よく気がついた。瀬戸内の温暖な気候。収穫力の多い平地に盆地、これらは安芸の国に似ている。その播州は黒田官兵衛の手引きがあったとはいえ、毛利圏内だった播磨が秀吉軍が入った途端、散り散りバラバラの弱小勢力の集合体になってしまったわけだ。そしてあっという間に織田圏内に入ってしまう。」
波子「そういえばそうですね。秀吉は三木攻めなど播磨討伐に苦労したとはいえ、抵抗は散発でした。」
波子「そこへ小早川軍が居座ると、播州の旧勢力は一気に息を吹き返し毛利派に鞍替えだ。」
堂田「まあそうなりますかね。」
波子「これで小早川は、山陽道一帯を支配することになる。そして畿内ににらみの聞く播磨にいすわり、安芸の毛利本家、吉川家と共に山陽道、瀬戸内、山陰道という一大経済地帯を占めることになる。まあ将来的の三家が疎遠になる可能性はあるがね。」
堂田「中の良い一族だから疎遠とまでは。。。」
波子「隆景自身はそうだろう。でもね、隆景にも側近はいる。おそらく旧小早川三家の家臣や縁戚たちが小早川家の内部をしきっていたはずだ。吉川元春と小早川隆景が方針をめぐってよくやり合っている場面が毛利の歴史には良く出てくる。これもね、結局はどちらかが毛利家以外の立場に立って主張を代弁しているポーズを取ってるわけだ。内部崩壊の予防策としてね。自分たちの意見も取りいれて評定してくれているという事は家臣たちにも安心感を与えるはずだ。」
堂田「なるほど、播州大返しの追撃の件でも両者は対立してましたね。確か。。。」
波子「さて、架空の戦国時代に話を戻そう。秀吉が去った播州に小早川軍が背後から襲いかかり毛利圏内としてしまう。本拠を奪われた秀吉はこの時点で大名じゃなくなるわけだから、天下統一なんてとても出来なくなる。同時に播州大返しも失敗だ。単なる摂津への退却になるわけだ。この場合、最も天下に近い単独勢力は毛利家になる。」
堂田「まさか?まだ織田政権がばらばらになるとは決まってないでしょう?明智も健在、柴田も健在なのだから。」
波子「健在だからだよ。織田軍は戦に負けずに崩壊するんだ。多頭政治が過ぎてね。明智に旧織田軍の面々が従えないとしたら、織田勢力圏は分裂するしか道はないだろう?」
堂田「そう言われれば。秀吉と柴田も結局は戦ったわけだし。。。。」
波子「毛利は播磨攻略の勢いに乗じて、摂津あたりを境界に明智と和議を結ぶ。明智としては、織田家内部を纏める戦いに臨まなくてはいけないから毛利攻めなんてもっての他だ。」
堂田「そうなりますかね。でも最初、毛利内部は疲弊してるって。。。」
波子「疲弊してるよ。長期の戦や遠征しての戦争はとてもできないだろう。でも誰が、毛利と戦うって言うんだい?」
堂田「そういわわれれば・・・秀吉軍が崩壊したら毛利と戦う大名はいなくなりますね。」
波子「そうなんだ。そうすると、毛利は時間的余裕が持てる。あと一年、中央を混乱させておけば、毛利軍は簡単に上洛できるって寸法だ。足利将軍も抱えていて大内家から奪いとった独自の皇室交渉ルートももってるからね。」
堂田「そうなってくると毛利の天下が見えてきたような。。」
波子「そうだろう。毛利の天下になった場合、僕たちが歴史の時間に習う戦国時代の最も衝撃的な戦争は「信長の桶狭間の合戦」じゃあなくって、「元就の厳島の合戦」になってたはずだよ。織田家から出た秀吉、織田勢力の一部となっていた家康が天下をとったからこそ、桶狭間の合戦の歴史的意味が増大したわけだ。毛利の流れをくむ者が天下を統一したら桶狭間なんて川中島と同程度の認識だろうね。中央の歴史とは関係なくなってしまう。歴史なんてそんなものさ。」
堂田「勝者の視点からだけではだめだ、敗者の視点から。。。」
波子「勝者の視点とか敗者の視点とは違うよ。勝者の視点から敗者の視点に視点を移すだけなら右から見ていた銅像を左から見るのと同じだ。結局右から見える視点を無視することになるからね。豊臣、徳川と天下の覇権が移ったという結果から歴史を紡ぎだすと自然とそうなるっていう意味さ。ところで、話を現実の安芸の国にもどそう。」
堂田「安芸の国が疲弊していて、毛利の支配が揺らぎ下手をすれば混乱してしまうから「ぽっと出」の内部争いをほっといたという話でしたっけ?」
波子「安芸の国がそうなる可能性があった。だから当然追いかけてもいいはずの秀吉を行かせた。あっという間にケリがつくとまでは予測してなかっただろうからね。当時最強といわれた甲斐武田軍団の大将も、まさか最強の自分たちが『ぽっと出』に負けるわけないと思ってたんだろうね。だからこそ織田が勝てたという側面もあるだろう。『ぽっと出』と思われているのが織田信長にとって弱みでもありまた強みでもあったわけだ。直接に損を与えなければ大勢力は文句を言ってこない、文句を言ってきても少々の勢力増強は周辺も許してくれるだろうという段階なんだ。だけど信長が直接支配する人間たちにそう思われるのはもっての他だ。だからこそ信長は新しい支配地とその周辺では恐怖を撒き散らさなくてはいけなかった。」
堂田「やっとわかりました。まだ織田の天下という認識は地方までは普及していない。ってことですね。じゃあなんだって毛利は危険を侵して本願字や一向一揆を支援したんだろう?」
波子「ようやくそこに思いが至ったよううだね。」
堂田「で、どうしてなんです?」
波子「鶏か君は、それはもう答えているはずだ。領国安芸の安定のためだ。」
堂田「どうして一向宗を支えるのが領国安定につながるんですか?」
波子「安芸は門徒の多いところなんだよ。俗に「備前法華に安芸門徒」なんていう。」
堂田「それは知りませんでしたよ。加賀に大阪、長島は有名ですが。。。。」
浪子「それは全部、地域の支配者に反旗を翻して門徒による門徒のための政治が行われたところだ。同じように門徒の数の多い安芸ではそれは起こらなかったわけだ。どうしてか?」
堂田「毛利元就の門徒優遇の政策があったからと?」
浪子「そうだ。門徒の横の繋がりが安芸の国で爆発しなかったのは一重に元就の施策が功を奏したからだ。安定していたといっても安芸門徒も法灯を守る戦いをしたいという欲求は当然持っている。毛利家は安芸国内の門徒の意思を汲んで他地域の一向一揆支援や石山本願寺の支援に乗り出したわけだ。民主的だね。毛利家は。それに元就自身も一向宗だしね」
堂田「そうしなくてはいけないほど、中国地方の大大名の毛利の足元は不安定だった。ということなんですね。」
浪子「その通りだ。だが、本能寺の変の頃、つまり織田が毛利勢力圏内にちょっかいを出してきたとき、本願寺は織田に降伏している。降りかかる火の粉は払わねばならぬが、本願寺が降伏した今、積極的に打って出る理由もとくにない。何より打って出る損の方が大きいと毛利の首脳は判断したんだろう。秀吉は討ったが足元を安芸門徒にすくわれる、という方が毛利にとっては秀吉が織田路線に乗って天下を統一するなんてことより、中国地方にも一向一揆が起こるんじゃないか?という想像の方がリアルな想像だったんじゃないか、と思っている。」
堂田「それも一理あるかもしれませんね。実際、加賀では門徒国家が誕生してしまっているわけだし。」
浪子「そうだね。前例が既にあるわけだ。それを押して無理な兵の徴発なんてやるほど、毛利家にとって織田家は最重要事項ではなかったわけだ。秀吉との篭城戦で兵力も疲弊しているだろうしね。疲弊している『兵力』というと、何だか人間味がなくてイメージがわかないが、サービス残業と休日出勤をさせている状態が長く続いてるってことだ。こういう状況が長くつづくと、当然離反者が表れてくる。それが播磨や備前、但馬といった本拠から遠い地域ならまだいいが、安芸の周辺でそんなのが出たら一気に壊滅してしまう。」
堂田「毛利家にとっては織田軍団の脅威より、内部の人心掌握の方がまだまだ大事だった。。わけか。」
浪子「脅威は脅威だったんだろうけど、中国地方を中心とした11ヶ国に及ぶ領内安定の方が毛利家にとっては大事だったんだよ。中国地方の覇者としてみれば毛利自体大内、山名、尼子の後から急成長した『ぽっと出』」でもあるわけだしね。戦国大名の支配下を独立王国としてみると、毛利は織田家よりも古い体質つまり寄り合い所帯敵な雰囲気を持ちすぎてたわけだ。毛利だって中国地方の覇者としてもうすこし年輪を重ねていたら、織田軍に引けを取らない軍備ができたかもしれないがね。輝元の次の代くらいまで時間があればだけどね。」
堂田「支配下に対してまだ遠慮があった?」
浪子「そうだろうね。「国人」という在地勢力からのし上がったわけだし、同輩の中で頭が抜け出ているだけだ。名族とされてる小早川や吉川という看板も利用しなくてはまだまだ毛利家単独で中国地方全体を率いるっていうレベルじゃないわけだ。その点では織田勢力圏の方か国家として進み具合が早かったんだろう。実際そこで暮らしてる様々な階層の人間たちが、それぞれどう思っていたか?までは謎だけどね。」
堂田「元就は天下にかかわろうとしてはいけないとか遺言したらしいから、単に内向きで領土拡大とかに興味の無い集団だったでしょうしね。」
浪子「馬鹿か君は。そんな遺言、いつでも破棄できたはずだ。それをしなかったのはできない理由があった。それだけだよ。元就はね、良くも悪くも室町時代人なんだ。自分の政治のやり方ではこれ以上の勢力はまとめられないってことを解ってただけだよ。」
堂田「つまり、元就の考えが古いってことですか?」
浪子「古い、新しいの問題じゃないんだ。織田が新しくて毛利や武田が古いなんてのは我々が歴史の流れを知ってるからいえることだ。元就は身近で天下に乗り出そうとして元も子も無くして失敗した大内や尼子らの先達を沢山知っているから「天下に関わろうとするな」なんて事を言ったんじゃないかと思っている。つまり経験からの助言だね。」
警察官「あのう、お話が盛り上がっているところ悪いのですが。。。」
堂田「そんな馬鹿な。なんといっても天下統一の土台を固めたんですよ?」
波子「だから君はだめなんだ。それはね、豊臣秀吉が織田信長の臣下で、徳川家康が織田信長の弟分だったという認識があるからそう見えるだけなんだよ。当時の人々はね、まだ太閤検地も経験してなければ、日光東照宮も建立も見聞きしてないんだよ。」
堂田「そりゃそうですが・・・・。」
波子「ここまで言ってまだ解らないのかい?つまりだ。この後、織田政権を継ぐものが日本列島全域を支配下に治めるなんてまだこの段階じゃ夢物語なんだよ。信長の死一つで一気に瓦解する可能性もまだまだ高かったんだ。そういう認識が君の歴史認識からはひどく欠落しているよ。」
堂田「そんなモノですかね。当時の織田政権は。「ポット出の織田政権」うーんどうもイメージがわかない。」
波子「例えば、中国大返しに入った秀吉を小早川が和議の約定を反故にして追撃して、姫路あたりで合戦になり秀吉を討ち取り、姫路城に居座ったとしよう。元々播州は毛利圏内だった。秀吉が進駐してきたからこそ小勢力独立状態が顕著になっただけだ。」
堂田「はぁ。バーチャル史論ですか。いいでしょう。お付き合いしましょう。播州といえば一向宗の強いところですね。」
波子「そうだね。よく気がついた。瀬戸内の温暖な気候。収穫力の多い平地に盆地、これらは安芸の国に似ている。その播州は黒田官兵衛の手引きがあったとはいえ、毛利圏内だった播磨が秀吉軍が入った途端、散り散りバラバラの弱小勢力の集合体になってしまったわけだ。そしてあっという間に織田圏内に入ってしまう。」
波子「そういえばそうですね。秀吉は三木攻めなど播磨討伐に苦労したとはいえ、抵抗は散発でした。」
波子「そこへ小早川軍が居座ると、播州の旧勢力は一気に息を吹き返し毛利派に鞍替えだ。」
堂田「まあそうなりますかね。」
波子「これで小早川は、山陽道一帯を支配することになる。そして畿内ににらみの聞く播磨にいすわり、安芸の毛利本家、吉川家と共に山陽道、瀬戸内、山陰道という一大経済地帯を占めることになる。まあ将来的の三家が疎遠になる可能性はあるがね。」
堂田「中の良い一族だから疎遠とまでは。。。」
波子「隆景自身はそうだろう。でもね、隆景にも側近はいる。おそらく旧小早川三家の家臣や縁戚たちが小早川家の内部をしきっていたはずだ。吉川元春と小早川隆景が方針をめぐってよくやり合っている場面が毛利の歴史には良く出てくる。これもね、結局はどちらかが毛利家以外の立場に立って主張を代弁しているポーズを取ってるわけだ。内部崩壊の予防策としてね。自分たちの意見も取りいれて評定してくれているという事は家臣たちにも安心感を与えるはずだ。」
堂田「なるほど、播州大返しの追撃の件でも両者は対立してましたね。確か。。。」
波子「さて、架空の戦国時代に話を戻そう。秀吉が去った播州に小早川軍が背後から襲いかかり毛利圏内としてしまう。本拠を奪われた秀吉はこの時点で大名じゃなくなるわけだから、天下統一なんてとても出来なくなる。同時に播州大返しも失敗だ。単なる摂津への退却になるわけだ。この場合、最も天下に近い単独勢力は毛利家になる。」
堂田「まさか?まだ織田政権がばらばらになるとは決まってないでしょう?明智も健在、柴田も健在なのだから。」
波子「健在だからだよ。織田軍は戦に負けずに崩壊するんだ。多頭政治が過ぎてね。明智に旧織田軍の面々が従えないとしたら、織田勢力圏は分裂するしか道はないだろう?」
堂田「そう言われれば。秀吉と柴田も結局は戦ったわけだし。。。。」
波子「毛利は播磨攻略の勢いに乗じて、摂津あたりを境界に明智と和議を結ぶ。明智としては、織田家内部を纏める戦いに臨まなくてはいけないから毛利攻めなんてもっての他だ。」
堂田「そうなりますかね。でも最初、毛利内部は疲弊してるって。。。」
波子「疲弊してるよ。長期の戦や遠征しての戦争はとてもできないだろう。でも誰が、毛利と戦うって言うんだい?」
堂田「そういわわれれば・・・秀吉軍が崩壊したら毛利と戦う大名はいなくなりますね。」
波子「そうなんだ。そうすると、毛利は時間的余裕が持てる。あと一年、中央を混乱させておけば、毛利軍は簡単に上洛できるって寸法だ。足利将軍も抱えていて大内家から奪いとった独自の皇室交渉ルートももってるからね。」
堂田「そうなってくると毛利の天下が見えてきたような。。」
波子「そうだろう。毛利の天下になった場合、僕たちが歴史の時間に習う戦国時代の最も衝撃的な戦争は「信長の桶狭間の合戦」じゃあなくって、「元就の厳島の合戦」になってたはずだよ。織田家から出た秀吉、織田勢力の一部となっていた家康が天下をとったからこそ、桶狭間の合戦の歴史的意味が増大したわけだ。毛利の流れをくむ者が天下を統一したら桶狭間なんて川中島と同程度の認識だろうね。中央の歴史とは関係なくなってしまう。歴史なんてそんなものさ。」
堂田「勝者の視点からだけではだめだ、敗者の視点から。。。」
波子「勝者の視点とか敗者の視点とは違うよ。勝者の視点から敗者の視点に視点を移すだけなら右から見ていた銅像を左から見るのと同じだ。結局右から見える視点を無視することになるからね。豊臣、徳川と天下の覇権が移ったという結果から歴史を紡ぎだすと自然とそうなるっていう意味さ。ところで、話を現実の安芸の国にもどそう。」
堂田「安芸の国が疲弊していて、毛利の支配が揺らぎ下手をすれば混乱してしまうから「ぽっと出」の内部争いをほっといたという話でしたっけ?」
波子「安芸の国がそうなる可能性があった。だから当然追いかけてもいいはずの秀吉を行かせた。あっという間にケリがつくとまでは予測してなかっただろうからね。当時最強といわれた甲斐武田軍団の大将も、まさか最強の自分たちが『ぽっと出』に負けるわけないと思ってたんだろうね。だからこそ織田が勝てたという側面もあるだろう。『ぽっと出』と思われているのが織田信長にとって弱みでもありまた強みでもあったわけだ。直接に損を与えなければ大勢力は文句を言ってこない、文句を言ってきても少々の勢力増強は周辺も許してくれるだろうという段階なんだ。だけど信長が直接支配する人間たちにそう思われるのはもっての他だ。だからこそ信長は新しい支配地とその周辺では恐怖を撒き散らさなくてはいけなかった。」
堂田「やっとわかりました。まだ織田の天下という認識は地方までは普及していない。ってことですね。じゃあなんだって毛利は危険を侵して本願字や一向一揆を支援したんだろう?」
波子「ようやくそこに思いが至ったよううだね。」
堂田「で、どうしてなんです?」
波子「鶏か君は、それはもう答えているはずだ。領国安芸の安定のためだ。」
堂田「どうして一向宗を支えるのが領国安定につながるんですか?」
波子「安芸は門徒の多いところなんだよ。俗に「備前法華に安芸門徒」なんていう。」
堂田「それは知りませんでしたよ。加賀に大阪、長島は有名ですが。。。。」
浪子「それは全部、地域の支配者に反旗を翻して門徒による門徒のための政治が行われたところだ。同じように門徒の数の多い安芸ではそれは起こらなかったわけだ。どうしてか?」
堂田「毛利元就の門徒優遇の政策があったからと?」
浪子「そうだ。門徒の横の繋がりが安芸の国で爆発しなかったのは一重に元就の施策が功を奏したからだ。安定していたといっても安芸門徒も法灯を守る戦いをしたいという欲求は当然持っている。毛利家は安芸国内の門徒の意思を汲んで他地域の一向一揆支援や石山本願寺の支援に乗り出したわけだ。民主的だね。毛利家は。それに元就自身も一向宗だしね」
堂田「そうしなくてはいけないほど、中国地方の大大名の毛利の足元は不安定だった。ということなんですね。」
浪子「その通りだ。だが、本能寺の変の頃、つまり織田が毛利勢力圏内にちょっかいを出してきたとき、本願寺は織田に降伏している。降りかかる火の粉は払わねばならぬが、本願寺が降伏した今、積極的に打って出る理由もとくにない。何より打って出る損の方が大きいと毛利の首脳は判断したんだろう。秀吉は討ったが足元を安芸門徒にすくわれる、という方が毛利にとっては秀吉が織田路線に乗って天下を統一するなんてことより、中国地方にも一向一揆が起こるんじゃないか?という想像の方がリアルな想像だったんじゃないか、と思っている。」
堂田「それも一理あるかもしれませんね。実際、加賀では門徒国家が誕生してしまっているわけだし。」
浪子「そうだね。前例が既にあるわけだ。それを押して無理な兵の徴発なんてやるほど、毛利家にとって織田家は最重要事項ではなかったわけだ。秀吉との篭城戦で兵力も疲弊しているだろうしね。疲弊している『兵力』というと、何だか人間味がなくてイメージがわかないが、サービス残業と休日出勤をさせている状態が長く続いてるってことだ。こういう状況が長くつづくと、当然離反者が表れてくる。それが播磨や備前、但馬といった本拠から遠い地域ならまだいいが、安芸の周辺でそんなのが出たら一気に壊滅してしまう。」
堂田「毛利家にとっては織田軍団の脅威より、内部の人心掌握の方がまだまだ大事だった。。わけか。」
浪子「脅威は脅威だったんだろうけど、中国地方を中心とした11ヶ国に及ぶ領内安定の方が毛利家にとっては大事だったんだよ。中国地方の覇者としてみれば毛利自体大内、山名、尼子の後から急成長した『ぽっと出』」でもあるわけだしね。戦国大名の支配下を独立王国としてみると、毛利は織田家よりも古い体質つまり寄り合い所帯敵な雰囲気を持ちすぎてたわけだ。毛利だって中国地方の覇者としてもうすこし年輪を重ねていたら、織田軍に引けを取らない軍備ができたかもしれないがね。輝元の次の代くらいまで時間があればだけどね。」
堂田「支配下に対してまだ遠慮があった?」
浪子「そうだろうね。「国人」という在地勢力からのし上がったわけだし、同輩の中で頭が抜け出ているだけだ。名族とされてる小早川や吉川という看板も利用しなくてはまだまだ毛利家単独で中国地方全体を率いるっていうレベルじゃないわけだ。その点では織田勢力圏の方か国家として進み具合が早かったんだろう。実際そこで暮らしてる様々な階層の人間たちが、それぞれどう思っていたか?までは謎だけどね。」
堂田「元就は天下にかかわろうとしてはいけないとか遺言したらしいから、単に内向きで領土拡大とかに興味の無い集団だったでしょうしね。」
浪子「馬鹿か君は。そんな遺言、いつでも破棄できたはずだ。それをしなかったのはできない理由があった。それだけだよ。元就はね、良くも悪くも室町時代人なんだ。自分の政治のやり方ではこれ以上の勢力はまとめられないってことを解ってただけだよ。」
堂田「つまり、元就の考えが古いってことですか?」
浪子「古い、新しいの問題じゃないんだ。織田が新しくて毛利や武田が古いなんてのは我々が歴史の流れを知ってるからいえることだ。元就は身近で天下に乗り出そうとして元も子も無くして失敗した大内や尼子らの先達を沢山知っているから「天下に関わろうとするな」なんて事を言ったんじゃないかと思っている。つまり経験からの助言だね。」
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