テツとぼく 賽銭泥棒、万引き疑惑

桜小径

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万引きに賽銭泥棒?

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ある秋の朝方、気持ちよく寝てたら西の山の神様の人麻呂さんの声がする。

「これ、坊主!今日は濡れ衣をかけられるぞ、気をつけるんじゃぞ」

ぼくは驚いて朝早く飛び起きた。烏帽子を被った古い装束の百人一首に出てくるような格好をした老人が見えた。

もう一度、人麻呂さんの方をみたらもう消えていた。

「夢か」

朝ごはんをたべ、いつものように、集団登校で学校に行く。

集合場所から2キロ以上の道を歩いていく。

これがなかなかにしんどい。

一年生は歩かないし、遅い。

ぼくは班長なので、全員を連れていかないといけないので、一年生の後を歩く。

とくに問題もなく学校に着くと、校内放送で、担任の女の先生にぼくは呼び出された。

担任の先生は谷川という。先生の席に着いた。

おはようございますの挨拶もなく捲し立てられた。

「あなた、賽銭泥棒に万引きしたんだって!学校に苦情の電話が入ってます。」

ぼくには全く記憶がない。憤懣やる方ないという事はこのことだ。ぼくは凄く腹がたった。

「そんな事してない」

と、答えるとヒステリックな谷川はキャンキャンと吠え出した。

「あなた以外に誰がこんなことするのよ!」

と、横っ面を引っ叩かれた。

その後も何やかんやと文句を言ってくるが何を言ってるかサッパリわからない。子ども一人と会話して伝える能力もないのかこの先生は、とぼくは呆れてものが言えなかった。

最後に、ここで反省して待ってなさい。というのだけが聞こえたので朝の会も出ずに谷川の帰りを待っていた。

朝の会を終えた谷川が、さっきより少し落ち着いた声で、

「朝一番から学校に二件の苦情がありました。四年生の男の子が賽銭泥棒したというのが一件、スーパーでシャープペンを万引きしたというのが一件。あなたでしょう!」

「そんなことしてへん。昨日は一日中、本を読んでた」

「嘘をつくな!今から先生と謝りに行きます!」

それを聞いていた教頭が、

「やってないと言うとる。間違いないんか?」

「この子に決まってます」

ここで、ぼくは朝の人麻呂さんの言葉を思い出す。

「濡れ衣や!」

「あなたしかいないでしょう!自習の連絡をしてくるからここでまってなさい」

と、行って谷川はまた教室に戻った。

ぼくはその隙に「やってない、言うてるやろ!」と、谷川の机の上のモノを全部下に落とした。

他の先生はポカンと見ていて止める事もしなかった。

ぼくは、腹が立って上履きのまま、自宅に帰った。もちろんカバンも教室に置いたまま、靴も靴箱に置いたままである。

戻ってきた谷川はまた叫んだらしい。

「キー!」

あとで、教頭から聞いて漫画か、と思った。

とにかく、ぼくはやってない事を謝るなんてしたくないので、家に帰った。

ボイコットである。とにかく腹が立った。こっちの話を聞かない谷川の態度についてだ。

普段からこの谷川はぼくを目の敵にしている。帰り道、腹立ちまぎれに石蹴りをしながら帰った。その時、靴くらい履き替えてきたら良かったと思ったが、後の祭りだ。

自宅について、テレビを見てると、ピンポンがなった。2階に上がり玄関を覗くと谷川だった。

後ろから人麻呂さんの声がした。

「坊主、どうするんじゃ?」

振り替えったら綺麗な和装をして烏帽子を被ったお爺さんが立っていて、びっくりしてひっくり帰った。

「まあ、居留守でも使え、あの女の先生には生霊が憑いておる。相当、恨まれてるな。」

「生徒に?」

「いや、大人じゃ。子どもにはあんな凄い生き霊はとばせない。真っ黒な空気に包まれとる。出ないほうが良いな」

「うん」

と、いったら人麻呂さんは消えてしまった。

谷川はしつこく、何十分もピンポンを鳴らしたり名前を呼んだりしていたが諦めたのか、近くの公衆電話でどこかに電話していた。

谷川が電話が終わると、村の中、東の山の方に歩いて行った。

「なんやねん、あのばばあ」

ぼくはまたテレビをみてのんびりしていたら知らない間に寝ていた。


夕方になるとテツがカバンと靴を持ってきてくれた。

「職員室でやったらしいな。」

テツは笑いながら言った。

「谷川、むちゃ怒ってたで。」

「そんな事いうたかて、泥棒なんかしてないもん」

「そら、そうや。やったんはオレや」

笑いながらテツは言った。続けて、「見つかってないと思ったんやけどな」

「おまえなあ」

ぼくは呆れて文句を言った。

「ごめん、ごめん。万引きのは今日、返しに行ってくるわ」

テツはぼくに謝ったが、悪びれてない様子で帰って行った。

そこへ、仕事から母が帰ってきた。

「あんた、学校から電話かかってきたで、とりあえず学校に電話してきた人のとこに行こ」

というので、母と一緒に近所の家に家に言った。母が出てきた偉そうな男の人に今日の説明をした。学校から電話がかかってきて慌てて帰ってきたと伝えていた。

その偉そうな男の人は村の実力者らしい。

マジマジとぼくの顔を見ると、

「この子やない!」

と、叫んだ。

「学校に電話する!」

と、かなり怒って電話していた。

電話なので相手はわからない。偉そうな男の人は怒った様子で、違う子が、泣きながら謝りにきた。どう言う事や!谷川、いう先生を出せ!」

しばらくまっていると谷川が電話に出たらしい。

「あんたは確かめもせずに、誰がやったか決めつけたんか!こっちは誰がやったかわからんけど、と伝えてたやろ!この始末どうつけるんや!すぐに来い!」

と、大きな声で電話して一方的に切った。

男の人は

「谷川、いうのが朝、謝りにきてたけど、人違いとはどういう事や。ぼくにも謝らせたるから待っとき」

と言って、家にあげてくれて紅茶を淹れてくれた。母に向かって行った。

「こんなおとなしそうな子とどうやって間違えるんやろね。早口で何をいうとるんかよくわからん女の先生やったわ」

しばらく談笑していると、校長と谷川がやってきた。

偉そうな人は、玄関から校長と谷川を家に上げず捲し立てた。

「あんたらの学校はどうなってるんや!違う子を犯人扱いして!そんな目にあった子の事を考えたことあるんか!」

校長はしどろもどろで謝っていたが谷川は不機嫌そうな顔で黙っていた。

「そこの女の先生、なんか言うことないんか?この子に」

と、ぼくを前にだした。

谷川は小さい声で謝った。それを聞いていた校長と村の人は、声がちいさい!と声を揃えて谷川を怒った。

谷川は泣き出して、返事もせずにその家を出て行った。

「なんやあの先生は?失格やな」

と、男の人は校長に言った。校長は、「再教育します」と深々と頭を下げてぼくとぼくの母と男人にそれぞれあやまって帰った。

ぼくらも、校長が帰ったあとに帰宅した。

男の人は迷惑かけたと謝ってくれた。

帰宅して部屋に入ると人麻呂さんがいた。

「濡れ衣きせられたろう」

と、にこっと笑った^ - ^

次の日から谷川は休んでいた。谷川先生の机のモノを落として途中で学校から帰ったことについては怒られなかった。

大人はおかしいなあと思った事件だった。

部屋に戻ると人麻呂さんが居た。

「濡れ衣がはれてよかったな」

それだけいうと、にっこり笑って消えてしまった。

神様だというが何者なんだろう?






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