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詩方夢那

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番外編2:ピクラーとラカノンのプリン(?)・ア・ラ・モード

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「だから、悪かったってば……」
 注文を間違えてピザを焼き、それをクラートに持って行かせてしまったラカノンは、散々引っ叩かれてなお許してはもらえなかった。
(困ったなぁ……ピザウィーク始まったばっかりでウェイトレス居ないのは……)
 閉店も近づき、最後の客がコーヒーを飲むだけとなった一階に降り、ラカノンはカウンターの奥のピクラーに話を振った。
「まぁ、そっち座りなよ」
 促されるままラカノンはカウンターの端に腰を下ろし、ピクラーはサービス用の薄いコーヒーをカップに注ぐと、ラカノンに差し出した。
「で、まだ怒ってるの?」
「お前の所為で客に怒られたのは私だーって、何を言っても聞いてくれなくて……」
 項垂れてコーヒーカップを長めたラカノンは府と呟いた。
「……せめてホイップクリームでも浮かべてよ。これ、サービス用のアメリカンだろ?」
「サービス用なんだからそんなサービスするわけ無いだろ」
「だったらせめて甘い物でもくれよ」
「湿気たクッキーならタロットルームにあるだろ」
「もー……お前も酷いなぁ……」
 冷めた薄いコーヒーを飲みながら、ふと、ラカノンはメニューを見た。
 一階は純喫茶の趣を残した設えで、一階限定のレトロなメニューも少なくは無い。
「プリンアラモード……ねぇ、ピクラー。クラートってミントゼリー好きだよね」
「あぁ、そういやそうだね。モヒート飲んで飲んだくれてたし」
「……ミントゼリーでプリンアラモードみたいな物作ったら喜んでくれるかな」
 二人は一瞬、無言で見つめあった。
 だが、最後の客が席を立った事で、その静寂は崩れてしまった。



 閉店時間を迎えた頃、三階の厨房ではミエールが使われなかったホイップクリームを絞り袋に移して後片付けをしていた。
「ん? どうしたの、浮かない顔して」
 やって来たラカノンの顔を見て、ミエールは首を傾げた。
「いや……それがさ」
 ボウルを洗うミエールに、ラカノンは昼の営業中に起こった事を語った。
「そりゃ君が悪いよね」
 何の慰めも無い言葉に、ラカノンは深い溜息を吐いた。
「それは分かってるから、こうして手伝ってって言いに来たんだよ……だからさ、ミントゼリーのアラモード作るの手伝ってよ」
「それはいいけど……」
「じゃ、器持ってくるね!」
 走っていくラカノンにミエールは溜息を吐いた。
 そんなに早くゼリーが出来るわけ無いだろう、と。
 だが、落ち込むラカノンを放っておく事も出来ず、ミエールはゼリー型とゼラチンの粉を取り出した。
 金属製のゼリー型の中にゼラチンの粉と水を入れてそのまま温め、その上に砂糖水とミントシロップを入れ、凍らない温度を保ちながら急速に冷やしていく。
 ラカノンは尻尾を振る勢いで目を輝かせながら、ミエールが作る魔法のゼリーを眺めていた。
「それで、何をトッピングする?」
「プリンアラモードと言えばアイスかな? 後、缶詰残ってるのがあったら乗せてよ」
「うん」
 ミエールは冷えたゼリーを器に落とすと、冷凍庫から大容量のバニラアイスを取り出し、ディッシャーでゼリーの隣へそれを盛りつける。そして、残っていたパイナップルの缶詰を飾り、ゼリーの上にクリームを絞り出すと、ケーキの飾り用に水耕栽培しているミントの葉を千切って、クリームとアイスクリームの上へと飾った。
「ありがとう! 早速持って行くね!」
 ラカノンは器を抱えると、足早に地下へと降りて行った。



 荷物をまとめたカリュオンとネーポスを連れ、ミエールは地下へと降りた。
「あ……」
 薄暗い廊下に放り出されたらしいラカノンを見て、ミエールは事態を察した。
「やっぱり、高速製造じゃ」
「じゃなくて……」
 ラカノンは泣きそうな表情を浮かべていた。
 頭にバニラアイスの残骸を被って。
「折角のミントゼリーの隣に、バニラアイスを置いたら、ミントが台無しだって……」
 ミエールに続いていたカリュオンとネーポスは顔を見合わせる。
「チョコミント美味しいけどね」
「たしか、ミルクとミントののど飴とかあったし」
 薄暗い廊下で、ラカノンはすすり泣く。
「どうしよう、明日、クラート出てこないかも……」
 ミエールは落ち込み切ったラカノンから、ゆっくりと視線を後ろの二人へと向ける。
「ちょっと」
「あたし達にウェイトレスさせようって」
「うん」
 ミエールは即座に肯定して矢継ぎ早に続けた。
「苺の代金払ってもらわなきゃ。場所代だって貰って無いんだし」
 カリュオンとネーポスは再び顔を見合わせた。
「だから安心して。明日は二人入ってくれるから。さ、シャワー浴びておいでよ」
 そう言って、ミエールは扉を開けた。
 夕飯はボロネーゼライス。残ったミートソースを作り足して作ったまかないの料理の定番だった。
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