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Interlude : Mourning and Conflict
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遺族が弦一郎を偲ぶ茶話会を開いている頃、ミュージカルの音楽制作を担うミュージシャン達と、最終責任者である座長の大石は倉庫の中に集まり、渋い表情を浮かべていた。
弦一郎はメインテーマの主旋律だけを残し、その辺曲に着手した所で突然にこの世を去った。
――返して! それはパパの楽譜よ! そんな物作っていたからパパは死んだの。返して!
弦一郎の末娘は最後まで反対していたが、大石は、最後に残された音楽をこの世に出す事が、残った人間の務めであると説得し、主旋律の楽譜を持ち出した。
「主旋律だけでも出来あがっているなら、これを基にアレンジをして、なんとかこの曲を使いたいと思っている……天津君、彼の遺志を、継いでくれるかね」
大石は天津を見つめた。
天津は目を伏せ、消え入らんばかりの声でそれを承諾する。
「弦一郎が残した最後の作品だ。今回ばかりはそのメロディーを絶対に崩すんじゃないぞ。弦一郎が望んだ形にはなりえないとしても、お前の色にしたらダメだ。分かってるな」
麻野は鋭い目で天津を見つめ、天津は上目遣いに麻野を見て、強張った声で、分かりましたと答える。
そんなやりとりを見ていた片桐は渋い表情を更に渋くし、一同の顔を見渡した。
「片桐君、どうかしたのか」
「いや……俺は……こういっちゃあ悪いけど、一度、プロジェクト自体を白紙にすべきだと思う」
その言葉に、一同は目を瞠り、彼を見つめる。
「俺にも……似た様な事が有ったんだ。もう、三十三年も前になるけど……完成しなかった曲は、永遠に未完のまま、もう、その続きを聞く事はないって、あの時、良く分かったんだよ」
「片桐君……」
大石は声を震わせる。
「だけど、メロディはもう出来上がってるんだ。それを」
「だとしても」
麻野の言葉を、片桐は声量で遮る。
「だとしても……もう、その続きを、その意思を、知る事は出来ない。彼が望んだ音楽は、もう二度と、出来あがらない」
「陽平!」
麻野は片桐の胸倉を掴んだ。
「お前、一体……一体、何年一緒にやって来たんだよ! 彼がどんな思いでこの曲を書いたのか、分からないわけがないだろうが!」
「なら隆文、お前は分かるのか。もう二度と、聞けない音楽の続きが、どれほど俺を縛り続けてきたか!」
片桐は麻野をつき飛ばして俯く。
「彼だったら、どうしただろうと考え続ける事が……どれほど虚しい事かを……」
傍観していた星野が、不意に声を漏らす。
「指輪……片桐さん、あの指輪は、まさか」
片桐は震える様に息を吐き、言葉を絞り出す。
「あれは……モーニング・ジュエリー……だった」
過去形になったその言葉に、星野は眉を顰めた。
「だった……」
「十代の頃、一緒に上京しようと言っていた親友が居た。だが、彼は死んで、俺の手元に残されたのは、一枚の楽譜だけ。それも、未完成のな……ずっと、彼は何をそこに奏でようとしていたのか、考えた。だけど……もう、彼は居ない。その楽譜を書くべき人は居なくなった。墓も分からない、葬式にも出られなかった、そんな区切りの無い別れ方をして……このままじゃあ、俺が立ち止まってしまうって、ある時思って、楽譜を焼いた、その残骸が、あの指輪だったんだよ」
「でも、もう……」
指輪の無くなった手を見つめ、星野は呟く。
「弔い上げだよ。俺が彼と生きた時代は変わってしまったからな。今は大きな街で、壊れかけのアパートに暮らしながら、夢を追う時代じゃない。ネットに動画を投稿して、自分で販路を開拓して、それをリアルに還元していく時代で……パソコンとキーボードさえあれば、思いついたその日に音楽を作る事が出来るし、その残骸が直接手に残る事はないんだから……」
片桐の言葉に、大石は渋い表情を浮かべる。
重苦しい沈黙が緞帳の様に下りて来た頃、悲痛な声が上がった。
「ちょっと……ちょっと待ってくれよ! 白紙になんてされたら……俺はどうしたらいいんだよ!」
一同はアルタイルの俳優、松島和弥を見つめた。
「やっと……やっと俳優だって言いきれると思ったのに!」
大石は深い溜息を吐き、砂を噛む様に言った。
「片桐君……申し訳ないけど、今回は外れてくれ。ベースなら、星野君も演奏出来る……それでいいか」
片桐は天津を見遣る。
天津は何も言わず、ただ俯いていた。
「……別に、俺は此処にこだわる必要なんて無い。今は……ただの時計屋の親父だからな……あまり遅くなっても家内が心配するんで、帰らせてもらうよ」
「あぁ……」
大石の虚ろな言葉に呼応する様に、片桐は倉庫を出ていった。
弦一郎の死から数日、彼亡き後に初めて全員が稽古場に集まったその日、作曲の話題を仕切ったのは麻野だった。
残された主題曲のメロディーを基に三曲分のアレンジを行い、残る楽曲は弦一郎がバンドに残した楽曲のアレンジを用いて仕上げ、使用する楽曲を全て整える。それが麻野の意見であり、大石はそれを承諾した。
伝説のロックバンドとも称される弦一郎のバンドが残した楽曲を歌う事になる松島は胸の内で、これでまたひとつ、夢への階段が踏み出せると喜んでいた。そして、出来る事なら、レース前の自分を奮い立たせてくれた楽曲からアレンジをして欲しいと言った。
明るい未来、勇気ある行動、人間の愛。弦一郎が好んで用いたテーマと松島が好んでいた楽曲のテーマは一致しており、麻野は近くのバーで実際に音楽を聞きながら選曲をしようと言った。
一方、弦一郎の楽曲を使う事になり、星野は楽曲プロデューサーの職を解かれた。
星野は、別にこだわりはないとぶっきらぼうに言い放ち、律子に駅前のショッピング・モールで待っていると耳打ちして席を立ってしまった。
「陽平、バンドの曲をやると言っても、まだ気持ちは変わらないか?」
出席こそしたが、押し黙っていた片桐を見遣り、麻野は問い掛ける。
「お前以外のベースは考えられないんだ。俺にとって、お前は人生で一番の相棒だ……アレンジ分だけでも弾いてくれないか?」
片桐は少しばかり逡巡した。そして、ひとつの結論に達し、口を開いた。
「分かった。これが最後だ」
三十三回忌を見る事はおそらくないだろう。二十三回忌もそうだ。十三回忌でさえ、その時にまだ演奏家で居る確証はない。遅い別れはその瞬間が弔い上げなのだ。彼はそう結論を出していた。
「作詞に関しては、替え歌の様な形になって申し訳ないけれど、天津君にも相談して、上手くまとめてくれ。既存楽曲の方は多少メロディーを触っても構わないし、それは天津君の仕事だからね」
律子に向けられていた視線が、念を押す様に天津へと向けられる。
「こんな事になってショックかもしれないが、弦一郎の思いを伝えるのが、俺達のするべき事だ……頼んだぞ」
天津の返答は、震える様な、そして消え入る様な物だった。
「美月先生、天津君の事、頼みますよ」
「は、はぁ……」
麻野の念押しに律子は困惑して曖昧な返答を返し、天津を見た。
そして、俯いた天津の様子に、妙な違和感を覚えた。その、悲しんでいるわけではない、しかし、酷く沈痛な様子に。
会合を終え、天津は星野が寄越したメールに従いショッピング・モールのゲームセンターに向かった。
「……ねぇ」
コインの落ちる音、ゲーム筺体から吐き出される音楽の音、騒ぐ若者の声。
ありとあらゆる雑音の中、耳栓をした状態でゲームの結果発表を待っていたのは他の誰でも無い星野だった。
「悪い、結果出るまで待ってくれ」
得点の自己ベスト更新を告げるアナウンスが流れ、ゲーム終了が訪れる。
星野は持参していたバチを手に、喧騒から遠いベンチを指差した。
「何してるのかと思えば、本職のドラマーが、太鼓ゲー……」
「別に本職じゃねぇよ。ドラムとピアノは頭使わなくていいから好きなだけだ」
耳栓とバチを鞄に押し込みながら、星野はアマツを見遣る。
「ところで、あの子は」
「選曲に付き合えって、麻野さんがバーに連れて行った」
「へー……他に行った奴は?」
「松島さん」
「ならいいだろ。松島さんは妻帯者だし、麻野さんは子供居るんだっけ?」
「らしいね」
星野は鞄をベンチに降ろし、腰掛ける天津を見下ろした。
「で……おまえ、やるつもりか?」
天津は何も答えなかった。
「決めるならさっさとした方が良いぜ。代わりのギタリストの手配くらい俺がなんとかしてやる」
「うん……だけど……君はあんな言い草で追い出されたのに、俺の代わり見つけるなんて、何で言えるの」
天津は星野を見上げる。
星野は肩を竦めて苦笑いした。
「あの人曰く、俺は絶望と暗黒と苦悩の権化だっけ? 上等だ。その通りだからな。だがな、俺に言わせりゃ、お前こそ絶望と暗黒と苦悩の権化で、死に取り憑かれたこの世の亡者で、神様にも見放された生ける屍だよ」
「星野……」
「ま、あの人からしたら、俺のアルバムなんてトチ狂った代物なんだろうし、感性のかみ合わない奴と仕事したかない。それに、おまえがやると言うなら俺は止めない。ただ……俺はブラック・メタルのスタイルでギターを弾くおまえに、本当のおまえを見た。地獄の底の血の沼に溺れながら、最後に残った蓮の花を両手に抱く様な感性が、おまえの本当の才能だと思った……どっか飲みに行くか?」
「え、ちょっと、運転」
「俺がする」
星野は鞄を抱えて背を向ける。
天津は慌てて立ち上がった。
「いや、君店の場所知らないんだから彼女迎えに行けないでしょ。麻野さんにも松島さんにも住所教えてないんだからっ」
弦一郎はメインテーマの主旋律だけを残し、その辺曲に着手した所で突然にこの世を去った。
――返して! それはパパの楽譜よ! そんな物作っていたからパパは死んだの。返して!
弦一郎の末娘は最後まで反対していたが、大石は、最後に残された音楽をこの世に出す事が、残った人間の務めであると説得し、主旋律の楽譜を持ち出した。
「主旋律だけでも出来あがっているなら、これを基にアレンジをして、なんとかこの曲を使いたいと思っている……天津君、彼の遺志を、継いでくれるかね」
大石は天津を見つめた。
天津は目を伏せ、消え入らんばかりの声でそれを承諾する。
「弦一郎が残した最後の作品だ。今回ばかりはそのメロディーを絶対に崩すんじゃないぞ。弦一郎が望んだ形にはなりえないとしても、お前の色にしたらダメだ。分かってるな」
麻野は鋭い目で天津を見つめ、天津は上目遣いに麻野を見て、強張った声で、分かりましたと答える。
そんなやりとりを見ていた片桐は渋い表情を更に渋くし、一同の顔を見渡した。
「片桐君、どうかしたのか」
「いや……俺は……こういっちゃあ悪いけど、一度、プロジェクト自体を白紙にすべきだと思う」
その言葉に、一同は目を瞠り、彼を見つめる。
「俺にも……似た様な事が有ったんだ。もう、三十三年も前になるけど……完成しなかった曲は、永遠に未完のまま、もう、その続きを聞く事はないって、あの時、良く分かったんだよ」
「片桐君……」
大石は声を震わせる。
「だけど、メロディはもう出来上がってるんだ。それを」
「だとしても」
麻野の言葉を、片桐は声量で遮る。
「だとしても……もう、その続きを、その意思を、知る事は出来ない。彼が望んだ音楽は、もう二度と、出来あがらない」
「陽平!」
麻野は片桐の胸倉を掴んだ。
「お前、一体……一体、何年一緒にやって来たんだよ! 彼がどんな思いでこの曲を書いたのか、分からないわけがないだろうが!」
「なら隆文、お前は分かるのか。もう二度と、聞けない音楽の続きが、どれほど俺を縛り続けてきたか!」
片桐は麻野をつき飛ばして俯く。
「彼だったら、どうしただろうと考え続ける事が……どれほど虚しい事かを……」
傍観していた星野が、不意に声を漏らす。
「指輪……片桐さん、あの指輪は、まさか」
片桐は震える様に息を吐き、言葉を絞り出す。
「あれは……モーニング・ジュエリー……だった」
過去形になったその言葉に、星野は眉を顰めた。
「だった……」
「十代の頃、一緒に上京しようと言っていた親友が居た。だが、彼は死んで、俺の手元に残されたのは、一枚の楽譜だけ。それも、未完成のな……ずっと、彼は何をそこに奏でようとしていたのか、考えた。だけど……もう、彼は居ない。その楽譜を書くべき人は居なくなった。墓も分からない、葬式にも出られなかった、そんな区切りの無い別れ方をして……このままじゃあ、俺が立ち止まってしまうって、ある時思って、楽譜を焼いた、その残骸が、あの指輪だったんだよ」
「でも、もう……」
指輪の無くなった手を見つめ、星野は呟く。
「弔い上げだよ。俺が彼と生きた時代は変わってしまったからな。今は大きな街で、壊れかけのアパートに暮らしながら、夢を追う時代じゃない。ネットに動画を投稿して、自分で販路を開拓して、それをリアルに還元していく時代で……パソコンとキーボードさえあれば、思いついたその日に音楽を作る事が出来るし、その残骸が直接手に残る事はないんだから……」
片桐の言葉に、大石は渋い表情を浮かべる。
重苦しい沈黙が緞帳の様に下りて来た頃、悲痛な声が上がった。
「ちょっと……ちょっと待ってくれよ! 白紙になんてされたら……俺はどうしたらいいんだよ!」
一同はアルタイルの俳優、松島和弥を見つめた。
「やっと……やっと俳優だって言いきれると思ったのに!」
大石は深い溜息を吐き、砂を噛む様に言った。
「片桐君……申し訳ないけど、今回は外れてくれ。ベースなら、星野君も演奏出来る……それでいいか」
片桐は天津を見遣る。
天津は何も言わず、ただ俯いていた。
「……別に、俺は此処にこだわる必要なんて無い。今は……ただの時計屋の親父だからな……あまり遅くなっても家内が心配するんで、帰らせてもらうよ」
「あぁ……」
大石の虚ろな言葉に呼応する様に、片桐は倉庫を出ていった。
弦一郎の死から数日、彼亡き後に初めて全員が稽古場に集まったその日、作曲の話題を仕切ったのは麻野だった。
残された主題曲のメロディーを基に三曲分のアレンジを行い、残る楽曲は弦一郎がバンドに残した楽曲のアレンジを用いて仕上げ、使用する楽曲を全て整える。それが麻野の意見であり、大石はそれを承諾した。
伝説のロックバンドとも称される弦一郎のバンドが残した楽曲を歌う事になる松島は胸の内で、これでまたひとつ、夢への階段が踏み出せると喜んでいた。そして、出来る事なら、レース前の自分を奮い立たせてくれた楽曲からアレンジをして欲しいと言った。
明るい未来、勇気ある行動、人間の愛。弦一郎が好んで用いたテーマと松島が好んでいた楽曲のテーマは一致しており、麻野は近くのバーで実際に音楽を聞きながら選曲をしようと言った。
一方、弦一郎の楽曲を使う事になり、星野は楽曲プロデューサーの職を解かれた。
星野は、別にこだわりはないとぶっきらぼうに言い放ち、律子に駅前のショッピング・モールで待っていると耳打ちして席を立ってしまった。
「陽平、バンドの曲をやると言っても、まだ気持ちは変わらないか?」
出席こそしたが、押し黙っていた片桐を見遣り、麻野は問い掛ける。
「お前以外のベースは考えられないんだ。俺にとって、お前は人生で一番の相棒だ……アレンジ分だけでも弾いてくれないか?」
片桐は少しばかり逡巡した。そして、ひとつの結論に達し、口を開いた。
「分かった。これが最後だ」
三十三回忌を見る事はおそらくないだろう。二十三回忌もそうだ。十三回忌でさえ、その時にまだ演奏家で居る確証はない。遅い別れはその瞬間が弔い上げなのだ。彼はそう結論を出していた。
「作詞に関しては、替え歌の様な形になって申し訳ないけれど、天津君にも相談して、上手くまとめてくれ。既存楽曲の方は多少メロディーを触っても構わないし、それは天津君の仕事だからね」
律子に向けられていた視線が、念を押す様に天津へと向けられる。
「こんな事になってショックかもしれないが、弦一郎の思いを伝えるのが、俺達のするべき事だ……頼んだぞ」
天津の返答は、震える様な、そして消え入る様な物だった。
「美月先生、天津君の事、頼みますよ」
「は、はぁ……」
麻野の念押しに律子は困惑して曖昧な返答を返し、天津を見た。
そして、俯いた天津の様子に、妙な違和感を覚えた。その、悲しんでいるわけではない、しかし、酷く沈痛な様子に。
会合を終え、天津は星野が寄越したメールに従いショッピング・モールのゲームセンターに向かった。
「……ねぇ」
コインの落ちる音、ゲーム筺体から吐き出される音楽の音、騒ぐ若者の声。
ありとあらゆる雑音の中、耳栓をした状態でゲームの結果発表を待っていたのは他の誰でも無い星野だった。
「悪い、結果出るまで待ってくれ」
得点の自己ベスト更新を告げるアナウンスが流れ、ゲーム終了が訪れる。
星野は持参していたバチを手に、喧騒から遠いベンチを指差した。
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「選曲に付き合えって、麻野さんがバーに連れて行った」
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「松島さん」
「ならいいだろ。松島さんは妻帯者だし、麻野さんは子供居るんだっけ?」
「らしいね」
星野は鞄をベンチに降ろし、腰掛ける天津を見下ろした。
「で……おまえ、やるつもりか?」
天津は何も答えなかった。
「決めるならさっさとした方が良いぜ。代わりのギタリストの手配くらい俺がなんとかしてやる」
「うん……だけど……君はあんな言い草で追い出されたのに、俺の代わり見つけるなんて、何で言えるの」
天津は星野を見上げる。
星野は肩を竦めて苦笑いした。
「あの人曰く、俺は絶望と暗黒と苦悩の権化だっけ? 上等だ。その通りだからな。だがな、俺に言わせりゃ、お前こそ絶望と暗黒と苦悩の権化で、死に取り憑かれたこの世の亡者で、神様にも見放された生ける屍だよ」
「星野……」
「ま、あの人からしたら、俺のアルバムなんてトチ狂った代物なんだろうし、感性のかみ合わない奴と仕事したかない。それに、おまえがやると言うなら俺は止めない。ただ……俺はブラック・メタルのスタイルでギターを弾くおまえに、本当のおまえを見た。地獄の底の血の沼に溺れながら、最後に残った蓮の花を両手に抱く様な感性が、おまえの本当の才能だと思った……どっか飲みに行くか?」
「え、ちょっと、運転」
「俺がする」
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