36 / 91
第一章 The war ain't over!
14-1 封建社会も真っ青な指定制marrige
しおりを挟む
鍵を交換した翌朝、午前九時にそれはやってきた。
「では確認します、原則として売却可能な物は全て残すので、食品と、売却不可能な衣類だけは即処分という事ですね」
家屋の清掃を請け負う業者の作業員は、レインの父親に作業工程の確認をする。
「はい。こちらで大まかに指示を出したいので、作業開始を少し待って下さると幸いです」
「分かりました。では、比較的お荷物多いケースが多いので、台所から案内していただけますか?」
「はい」
レインの父親は鍵を開けて扉を開き、目を瞠った。
「なんでお前が居るんだ!」
玄関扉の向こう、上がり框に立っていたのは、この世の憾みと絶望をかき集めたかのような表情をしたレインだった。
「なんでって、俺、此処に住んでるし」
「お前に住む権利はない、さっさと出て行け!」
「持ち分の変更した覚えは無いし、固定資産税払ってるの俺なんだけど」
扉を開けるなり始まる親子間の修羅場に、清掃業者の作業員達は顔を見合わせ、困惑する。
「あと、車の車輪止めしたのもとーさんだよね」
「あれは俺が買った物だろうが!」
「借用書は作ってるし、年間の返済は間違いないよね? もう半分以上返してるよね? しかもあれは仕事用、社長から苦情が入ったらどうする? 今すぐ鍵を開けてくれないかな、一応今朝まで待ってたんだけど!」
「お前は車を持っていい人間じゃない、あれは売却先が決まってるんだ!」
「名義人は俺だよ? 勝手に委任状作ったら犯罪だ」
「お前はそんなに家も車も欲しいのか!」
「車は無いと仕事にならない、家は持ち分が有って固定資産税も負担している。適正な家賃を払う事には同意するとして、業者を呼んでまで家財を処分されるのはおかしいよ。ていうか、パソコンのモニターは弁償してもらわなきゃ、あれは俺が買った物であって、とーさんに壊していい権利はないんだよ」
「屁理屈ばっかり言いやがって!」
「屁理屈じゃない! 全部常識! 無責任に生きるっていう事は、それだけ知識が無いと生きていけないって事なんだよ!」
レインは肚の底から声を張り上げ、作業員達は身を縮ませる。
「大体、全部屁理屈だってねじ伏せられると思ったら大間違いなんだよ! 世の中知らないのはどっちだ!」
「うるせえ! あぁ、面倒だ、だったらお前が家も車も手に入れられる方法を教えてやる! 今すぐ結婚しろ! 田中さんところのお嬢さんならいいだろうが! 子供達もパパは誰だっていいと言っているんだ!」
突然の事に、レインは目を瞠った。
「この家はリナちゃんに月五万で貸す約束をした、車はお前と籍を入れたら名義をリナちゃんにする、それまでは俺のものだ!」
「ちょっと待て、結婚とか滅茶苦茶だよ! 何時の時代の条件だ!」
レインが声を上げるのにも構わず、父親は振り返って清掃業者の作業員達を見る。
「あぁ、すみません御見苦しい所を。遅くなって申し訳ないが、掃除を始めて下さい」
父親は強引に清掃を始めさせようとするが、作業員の一人が首を振った。
「す、すみません。現在住んでおられる方の同意が無いと、中には」
「こいつは居座っているだけなので気にしないで下さい」
「居座っているとしても、同意無しでは」
「あぁ、分かりました、では買取だけお願いします」
言うと父親は目を泳がせる作業員達を残し、レインを押しのけて土足のまま家に上がり込んだ。
「ちょっと、何を!」
父親はかつての応接間に入り、机の下からパソコンの筐体を引っ張り出し、キャビネットの前にあったギターケースを掴んだ。
レインは床が砂だらけになるのを眉を顰めて眺めるまま、何も言わなかった。
「そうか、諦めたか。ならいい。こんな下らん事は止めて真面目に働け。最初は工場でも漁船でも構わんぞ」
父親は勝ち誇った様に言い捨て、途方に暮れる清掃業者にそれらを押し付ける。
「作業賃の足しにして下さい」
「で、ですが」
「いいから引き取って下さい!」
「は、はぃ……」
押し付けられた物は後から返せばいい。責任者の若い男性は諦めた様にそれを受け取り、そそくさと車に積み込む。
「や、ヤマさん……」
「大丈夫、一旦、保管で……」
心配する作業員に、責任者の若い男性は冷静を装いながら言葉を返し、父親へ今日の作業は中止でよいかと尋ね、撤収の指示を出した。
「では確認します、原則として売却可能な物は全て残すので、食品と、売却不可能な衣類だけは即処分という事ですね」
家屋の清掃を請け負う業者の作業員は、レインの父親に作業工程の確認をする。
「はい。こちらで大まかに指示を出したいので、作業開始を少し待って下さると幸いです」
「分かりました。では、比較的お荷物多いケースが多いので、台所から案内していただけますか?」
「はい」
レインの父親は鍵を開けて扉を開き、目を瞠った。
「なんでお前が居るんだ!」
玄関扉の向こう、上がり框に立っていたのは、この世の憾みと絶望をかき集めたかのような表情をしたレインだった。
「なんでって、俺、此処に住んでるし」
「お前に住む権利はない、さっさと出て行け!」
「持ち分の変更した覚えは無いし、固定資産税払ってるの俺なんだけど」
扉を開けるなり始まる親子間の修羅場に、清掃業者の作業員達は顔を見合わせ、困惑する。
「あと、車の車輪止めしたのもとーさんだよね」
「あれは俺が買った物だろうが!」
「借用書は作ってるし、年間の返済は間違いないよね? もう半分以上返してるよね? しかもあれは仕事用、社長から苦情が入ったらどうする? 今すぐ鍵を開けてくれないかな、一応今朝まで待ってたんだけど!」
「お前は車を持っていい人間じゃない、あれは売却先が決まってるんだ!」
「名義人は俺だよ? 勝手に委任状作ったら犯罪だ」
「お前はそんなに家も車も欲しいのか!」
「車は無いと仕事にならない、家は持ち分が有って固定資産税も負担している。適正な家賃を払う事には同意するとして、業者を呼んでまで家財を処分されるのはおかしいよ。ていうか、パソコンのモニターは弁償してもらわなきゃ、あれは俺が買った物であって、とーさんに壊していい権利はないんだよ」
「屁理屈ばっかり言いやがって!」
「屁理屈じゃない! 全部常識! 無責任に生きるっていう事は、それだけ知識が無いと生きていけないって事なんだよ!」
レインは肚の底から声を張り上げ、作業員達は身を縮ませる。
「大体、全部屁理屈だってねじ伏せられると思ったら大間違いなんだよ! 世の中知らないのはどっちだ!」
「うるせえ! あぁ、面倒だ、だったらお前が家も車も手に入れられる方法を教えてやる! 今すぐ結婚しろ! 田中さんところのお嬢さんならいいだろうが! 子供達もパパは誰だっていいと言っているんだ!」
突然の事に、レインは目を瞠った。
「この家はリナちゃんに月五万で貸す約束をした、車はお前と籍を入れたら名義をリナちゃんにする、それまでは俺のものだ!」
「ちょっと待て、結婚とか滅茶苦茶だよ! 何時の時代の条件だ!」
レインが声を上げるのにも構わず、父親は振り返って清掃業者の作業員達を見る。
「あぁ、すみません御見苦しい所を。遅くなって申し訳ないが、掃除を始めて下さい」
父親は強引に清掃を始めさせようとするが、作業員の一人が首を振った。
「す、すみません。現在住んでおられる方の同意が無いと、中には」
「こいつは居座っているだけなので気にしないで下さい」
「居座っているとしても、同意無しでは」
「あぁ、分かりました、では買取だけお願いします」
言うと父親は目を泳がせる作業員達を残し、レインを押しのけて土足のまま家に上がり込んだ。
「ちょっと、何を!」
父親はかつての応接間に入り、机の下からパソコンの筐体を引っ張り出し、キャビネットの前にあったギターケースを掴んだ。
レインは床が砂だらけになるのを眉を顰めて眺めるまま、何も言わなかった。
「そうか、諦めたか。ならいい。こんな下らん事は止めて真面目に働け。最初は工場でも漁船でも構わんぞ」
父親は勝ち誇った様に言い捨て、途方に暮れる清掃業者にそれらを押し付ける。
「作業賃の足しにして下さい」
「で、ですが」
「いいから引き取って下さい!」
「は、はぃ……」
押し付けられた物は後から返せばいい。責任者の若い男性は諦めた様にそれを受け取り、そそくさと車に積み込む。
「や、ヤマさん……」
「大丈夫、一旦、保管で……」
心配する作業員に、責任者の若い男性は冷静を装いながら言葉を返し、父親へ今日の作業は中止でよいかと尋ね、撤収の指示を出した。
0
あなたにおすすめの小説
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日7時•19時に更新予定です。
罪悪と愛情
暦海
恋愛
地元の家電メーカー・天の香具山に勤務する20代後半の男性・古城真織は幼い頃に両親を亡くし、それ以降は父方の祖父母に預けられ日々を過ごしてきた。
だけど、祖父母は両親の残した遺産を目当てに真織を引き取ったに過ぎず、真織のことは最低限の衣食を与えるだけでそれ以外は基本的に放置。祖父母が自身を疎ましく思っていることを知っていた真織は、高校卒業と共に就職し祖父母の元を離れる。業務上などの必要なやり取り以外では基本的に人と関わらないので友人のような存在もいない真織だったが、どうしてかそんな彼に積極的に接する後輩が一人。その後輩とは、頗る優秀かつ息を呑むほどの美少女である降宮蒔乃で――
《完結》金貨5000枚で売られた王太子妃
ぜらちん黒糖
恋愛
「愛している。必ず迎えに行くから待っていてくれ」
甘い言葉を信じて、隣国へ「人質」となった王太子妃イザベラ。
旅立ちの前の晩、二人は愛し合い、イザベラのお腹には新しい命が宿った。すぐに夫に知らせた イザベラだったが、夫から届いた返信は、信じられない内容だった。
「それは本当に私の子供なのか?」
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
お嬢様の“専属”
ユウキ
恋愛
雪が静かに降りしきる寒空の中、私は天涯孤独の身となった。行く当てもなく、1人彷徨う内に何もなくなってしまった。遂に体力も尽きたときに、偶然通りかかった侯爵家のお嬢様に拾われた。
お嬢様の気まぐれから、お嬢様の“専属”となった主人公のお話。
~春の国~片足の不自由な王妃様
クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。
春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。
街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。
それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。
しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。
花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる