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第二章 Gambling with the Devil
2-3-1 ゼンマイ仕掛けのオーケストリオン
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扉が開くのに任せて振り返ったレインが目にしたのは、ラフな格好のルーシーだった。
「早いな」
「早く来いって言われたんだよ」
「そうか」
ルーシーは適当に空いた場所へ向かい、体を解し始める。
「音、出さなくていいのか?」
「鴇田さんはこの機材はお気に召さないみたいだし、別に」
「本番はどうするんだ」
「用意してくれるんじゃないかな? 別に、俺はオーケストリオンのオートマタだから、道具に拘りなんて無いよ」
ルーシーは何も言わず、俯きがちに立ち尽くすレインを見遣る。すると、その背後の扉が開き、ルーシーとハリーが現れた。
「レイン!」
スタジオに入るなり、ケリーは振り返ったレインに抱き着いた。
思わず悲鳴を上げるレインに構わず、ケリーはレインの体を抱き寄せる。
「来てくれてよかった」
「契約書にサインしたからです」
レインはケリーの肩を掴んで緩やかに突き放しながら息を吐く。
「でも」
「今の俺はゾンビと同じ、くっつかないで下さい」
二人の様子を見て笑っていたハリーから、笑顔が消えた。
「……始めようか」
立ち上がったルーシーの呟きにハリーは自分の持ち場へと向かう。
「ちょっと音出してみようか」
ハリーに促され、レインはギターを掛けて適当なコードを鳴らす。
「え? 音それでいい?」
「機材は鴇田さんが手配してくれるそうなんで、今日はこれで勘弁して下さい」
「お、おう……」
レインのギターはハリーが思った以上に簡素な音作りで、何を弾いてもそれなりの形にはなるが、バンドの音作りにはまるでかみ合っていないものだった。
「ま、今日は肩慣らしだし、いっか」
ハリーはルーシーとケリーを見た。
「そうだね、どういう音にして欲しいかは、ちゃんと伝えてなかったし……それにしても、なんか変な感じだね」
ケリーは少し照れた様に笑った。
「十三年ぶりくらいだっけ?」
ハリーはレインを見るが、レインは俯いていた。
「なんだろ、久しぶりなのに、懐かしい感じがしない、なんか奇妙な感じだね。なんでかな、レイン、逞しくなったからかな?」
スタイリストにセットされてもなお野暮ったいウルフカットの青年は、不健康そうな青白い肌はそのままに一回り逞しい体つきになっている。
「どうする? せーのでなんかやるか?」
ルーシーは感傷に浸るケリーを呼び戻す。
「そーだね……じゃあ、当日一曲目からいっちゃう?」
ケリーはメンバーを見回し、ハリーとルーシーが頷いたのを確認する。
「それじゃあ当日一曲目! 俺達のデビューシングル、掌の上のロマンス!」
ケリーの言葉を号令にルーシーはリズムを取り、演奏が始まった。
ギターとベースの空気感は噛み合っていると言えないが、演奏そのものは正しく始まり、十三年前と変わらずレインの演奏は丁寧だった。
「……なんか、不思議な感じだね。あのツアー以来だからかな」
演奏を終えたケリーはメンバーを見回しながら言う。
「そうだな、音作りも違うし、ちょっとぎこちないかな」
ハリーは意見を求める様にルーシーを見た。
「一曲目だし、寄せ木細工がしっかり填まるにはもう少し掛かるだろうな。このまま次の曲もやってみるか?」
「そうだね。じゃ、二曲目!」
「早いな」
「早く来いって言われたんだよ」
「そうか」
ルーシーは適当に空いた場所へ向かい、体を解し始める。
「音、出さなくていいのか?」
「鴇田さんはこの機材はお気に召さないみたいだし、別に」
「本番はどうするんだ」
「用意してくれるんじゃないかな? 別に、俺はオーケストリオンのオートマタだから、道具に拘りなんて無いよ」
ルーシーは何も言わず、俯きがちに立ち尽くすレインを見遣る。すると、その背後の扉が開き、ルーシーとハリーが現れた。
「レイン!」
スタジオに入るなり、ケリーは振り返ったレインに抱き着いた。
思わず悲鳴を上げるレインに構わず、ケリーはレインの体を抱き寄せる。
「来てくれてよかった」
「契約書にサインしたからです」
レインはケリーの肩を掴んで緩やかに突き放しながら息を吐く。
「でも」
「今の俺はゾンビと同じ、くっつかないで下さい」
二人の様子を見て笑っていたハリーから、笑顔が消えた。
「……始めようか」
立ち上がったルーシーの呟きにハリーは自分の持ち場へと向かう。
「ちょっと音出してみようか」
ハリーに促され、レインはギターを掛けて適当なコードを鳴らす。
「え? 音それでいい?」
「機材は鴇田さんが手配してくれるそうなんで、今日はこれで勘弁して下さい」
「お、おう……」
レインのギターはハリーが思った以上に簡素な音作りで、何を弾いてもそれなりの形にはなるが、バンドの音作りにはまるでかみ合っていないものだった。
「ま、今日は肩慣らしだし、いっか」
ハリーはルーシーとケリーを見た。
「そうだね、どういう音にして欲しいかは、ちゃんと伝えてなかったし……それにしても、なんか変な感じだね」
ケリーは少し照れた様に笑った。
「十三年ぶりくらいだっけ?」
ハリーはレインを見るが、レインは俯いていた。
「なんだろ、久しぶりなのに、懐かしい感じがしない、なんか奇妙な感じだね。なんでかな、レイン、逞しくなったからかな?」
スタイリストにセットされてもなお野暮ったいウルフカットの青年は、不健康そうな青白い肌はそのままに一回り逞しい体つきになっている。
「どうする? せーのでなんかやるか?」
ルーシーは感傷に浸るケリーを呼び戻す。
「そーだね……じゃあ、当日一曲目からいっちゃう?」
ケリーはメンバーを見回し、ハリーとルーシーが頷いたのを確認する。
「それじゃあ当日一曲目! 俺達のデビューシングル、掌の上のロマンス!」
ケリーの言葉を号令にルーシーはリズムを取り、演奏が始まった。
ギターとベースの空気感は噛み合っていると言えないが、演奏そのものは正しく始まり、十三年前と変わらずレインの演奏は丁寧だった。
「……なんか、不思議な感じだね。あのツアー以来だからかな」
演奏を終えたケリーはメンバーを見回しながら言う。
「そうだな、音作りも違うし、ちょっとぎこちないかな」
ハリーは意見を求める様にルーシーを見た。
「一曲目だし、寄せ木細工がしっかり填まるにはもう少し掛かるだろうな。このまま次の曲もやってみるか?」
「そうだね。じゃ、二曲目!」
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