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第二章 Gambling with the Devil
2-3-2 ゼンマイ仕掛けのオーケストリオン
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当日演奏する五曲の演奏を終えたところでケリーは一度スタジオを離れ、事務所の鴇田をスタジオに連れて戻った。
リハーサルの後半は当日と同じ曲を同じ順に演奏し、全体的な印象を鴇田が確認する機会となっていた。
「どうです?」
五曲目を終え、ケリーは鴇田に感想を求めた。
「そうだな、演奏は問題ない。ギターの音に関しては次回はこちらで機材を用意するので、次回は一体感の有る演奏に出来るだろう。あと、今日は合奏でいっぱいいっぱいという気分かもしれないが、次回はステージを意識したアクションを入れ、特にコールアンドレスポンス……まあ、大きな声を出して貰う事は出来ないが、身振り手振りのやりとりが出来る様に、その間の演奏、まあアドリブ的な部分なんかもきちんとして欲しい、特にレイン君、キミの事だからな」
鴇田は鋭い眼差しをレインに向けるが、レインは俯いてその視線に気付かない。
「聞いているのか、レイン君!」
「聞こえてます」
レインの態度に鴇田は歯噛みしたい感情を堪えながら話を続けた。
「あと、そのコールアンドレスポンスの部分はファンミーティング仕様でいい感じにして欲しい。後から配信で視聴するファンクラブ会員も多いから、映像にして楽しめる様にうまくやってくれ」
「はい」
「それと、次回のリハーサルにはスタイリストも合流するから、一時間前には集合する事。レイン君に関しては三十分前までにスタジオに入って機材を確認してくれ。以上、後の練習は任せた」
鴇田は連絡事項を述べ、そのままスタジオから出ていく。
「どうする、もう一度一通りやるか?」
ルーシーの提案にケリーは頷いた。
「当日仕様で動くか?」
「いや、こう、気楽に演奏してみようか。なんかまだ、レイン硬いし」
「分った」
ルーシーはハリーとレインを見る。ハリーは再び演奏の態勢に入りケリーとルーシーは顔を見合わせた。
「それじゃあもう一回、本日三度目、掌の上のロマンス!」
三度目の通し演奏を経てリハーサルを終えたレインは持ち込んだ機材をケースや鞄に詰め込んだ。
ルーシーは荷物運びを手伝うと口実を付け、エフェクターの入ったリュックサックをレインから奪って事務所を出る。
「この後予定はあるのか?」
「特にないよ」
「アマミ君やマキタ君と話したい事とか無いのか?」
「別に……俺はオーケストリオンのオートマタ、感情とか持ち込まないし」
「そうか……しかし、当日は道化になって貰わない事には、また妙な憶測を呼ぶ」
「それはそれ、これはこれ……多分、鴇田さん居なかったら、もうちょっと気分はましになるかな」
ルーシーは溜息を吐いた。
「だろうな」
十三年前、鴇田は度重なる体調不良で幾つもの仕事を潰したレインに激怒していた。一方、不本意な活動と体調不良に悩まされていたレインは鴇田が自分を人間として見ていないと感じ、鴇田に不信感を募らせていた。
とはいえ、レインの体調不良から潰れてしまった仕事に対し各方面に謝罪行脚をしたのは鴇田である。だが、鷲塚も同様に方々に頭を下げて回ったが、まだ十九歳の青年を親の反対を押し切る格好で引き入れた事の責任を感じ、レインに当たる事はしなかった。
しかし、鴇田は加入を承諾したのはレイン本人の責任で、仕事に穴を空けるのはプロ意識が欠落しているからだと考えていた。そしてハリーもまたレインを心配はしながらも、度重なる仕事のキャンセルにレインへの苛立ちを募らせていた。
だが、レインが原因不明のアナフィラキシーショックで倒れた時、ハリーは心底レインを案じ、半ば錯乱状態に陥ったケリーを宥めたが、鴇田は度重なる謝罪行脚の重圧もあり、病床のレインを責め立てた。
レインにとっては敵となった鴇田であるが、前任者のアビーが病に倒れた際にはメジャーデビューに伴うツアーの調整に奔走し、レイン脱退後にギターテックだったコリーを一流のギタリストへと押し上げた功労者である事は事実だった。
何より、ルーシーにとって鴇田は恩人である。前任者のテリーがヘルニアからバンド活動を離れた際、ルーシーは鴇田の伝からサポートメンバーとしてバンドに入り、鴇田の取り計らいによって円滑なメンバー交代による加入が叶ったのである。
「とはいえ、鴇田さんが関わらないわけにはいかない。だからこそ、道化になって欲しいんだよ」
「道化、ね。いよいよもってオートマタだ」
ギターとエフェクターの入ったリュックを車に積み込んだ。
「ま、あんまり期待はしないでよ。俺、歌いながら演奏するのは好きだけど、動き回るのは好きじゃないから」
リハーサルの後半は当日と同じ曲を同じ順に演奏し、全体的な印象を鴇田が確認する機会となっていた。
「どうです?」
五曲目を終え、ケリーは鴇田に感想を求めた。
「そうだな、演奏は問題ない。ギターの音に関しては次回はこちらで機材を用意するので、次回は一体感の有る演奏に出来るだろう。あと、今日は合奏でいっぱいいっぱいという気分かもしれないが、次回はステージを意識したアクションを入れ、特にコールアンドレスポンス……まあ、大きな声を出して貰う事は出来ないが、身振り手振りのやりとりが出来る様に、その間の演奏、まあアドリブ的な部分なんかもきちんとして欲しい、特にレイン君、キミの事だからな」
鴇田は鋭い眼差しをレインに向けるが、レインは俯いてその視線に気付かない。
「聞いているのか、レイン君!」
「聞こえてます」
レインの態度に鴇田は歯噛みしたい感情を堪えながら話を続けた。
「あと、そのコールアンドレスポンスの部分はファンミーティング仕様でいい感じにして欲しい。後から配信で視聴するファンクラブ会員も多いから、映像にして楽しめる様にうまくやってくれ」
「はい」
「それと、次回のリハーサルにはスタイリストも合流するから、一時間前には集合する事。レイン君に関しては三十分前までにスタジオに入って機材を確認してくれ。以上、後の練習は任せた」
鴇田は連絡事項を述べ、そのままスタジオから出ていく。
「どうする、もう一度一通りやるか?」
ルーシーの提案にケリーは頷いた。
「当日仕様で動くか?」
「いや、こう、気楽に演奏してみようか。なんかまだ、レイン硬いし」
「分った」
ルーシーはハリーとレインを見る。ハリーは再び演奏の態勢に入りケリーとルーシーは顔を見合わせた。
「それじゃあもう一回、本日三度目、掌の上のロマンス!」
三度目の通し演奏を経てリハーサルを終えたレインは持ち込んだ機材をケースや鞄に詰め込んだ。
ルーシーは荷物運びを手伝うと口実を付け、エフェクターの入ったリュックサックをレインから奪って事務所を出る。
「この後予定はあるのか?」
「特にないよ」
「アマミ君やマキタ君と話したい事とか無いのか?」
「別に……俺はオーケストリオンのオートマタ、感情とか持ち込まないし」
「そうか……しかし、当日は道化になって貰わない事には、また妙な憶測を呼ぶ」
「それはそれ、これはこれ……多分、鴇田さん居なかったら、もうちょっと気分はましになるかな」
ルーシーは溜息を吐いた。
「だろうな」
十三年前、鴇田は度重なる体調不良で幾つもの仕事を潰したレインに激怒していた。一方、不本意な活動と体調不良に悩まされていたレインは鴇田が自分を人間として見ていないと感じ、鴇田に不信感を募らせていた。
とはいえ、レインの体調不良から潰れてしまった仕事に対し各方面に謝罪行脚をしたのは鴇田である。だが、鷲塚も同様に方々に頭を下げて回ったが、まだ十九歳の青年を親の反対を押し切る格好で引き入れた事の責任を感じ、レインに当たる事はしなかった。
しかし、鴇田は加入を承諾したのはレイン本人の責任で、仕事に穴を空けるのはプロ意識が欠落しているからだと考えていた。そしてハリーもまたレインを心配はしながらも、度重なる仕事のキャンセルにレインへの苛立ちを募らせていた。
だが、レインが原因不明のアナフィラキシーショックで倒れた時、ハリーは心底レインを案じ、半ば錯乱状態に陥ったケリーを宥めたが、鴇田は度重なる謝罪行脚の重圧もあり、病床のレインを責め立てた。
レインにとっては敵となった鴇田であるが、前任者のアビーが病に倒れた際にはメジャーデビューに伴うツアーの調整に奔走し、レイン脱退後にギターテックだったコリーを一流のギタリストへと押し上げた功労者である事は事実だった。
何より、ルーシーにとって鴇田は恩人である。前任者のテリーがヘルニアからバンド活動を離れた際、ルーシーは鴇田の伝からサポートメンバーとしてバンドに入り、鴇田の取り計らいによって円滑なメンバー交代による加入が叶ったのである。
「とはいえ、鴇田さんが関わらないわけにはいかない。だからこそ、道化になって欲しいんだよ」
「道化、ね。いよいよもってオートマタだ」
ギターとエフェクターの入ったリュックを車に積み込んだ。
「ま、あんまり期待はしないでよ。俺、歌いながら演奏するのは好きだけど、動き回るのは好きじゃないから」
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