アラフォーおじさんの半分は良心回路で出来ています ~取れちゃったものは魔法と科学で補います~

rina103

文字の大きさ
6 / 8

第六話 情報源は俺か

しおりを挟む
「さてはお前、中身はナギだろ?」
「アラタ様はなにを仰っているのですか?」

 困惑のようなものが流れ込んでくる。認めたら負けな気がする。

「はぁ、プロトに見られるのはしょうがないか…」
「ご自分で嫌なこと思い出してしまうのと変わりません。何しろ私は『アラタ様』でもあるのですから」

 思い出す切っ掛けがプロトなのが何とも微妙なのだが… プロト、誇らしげだな。

「まぁ仕方ない。 切り替えて行こう」
「そうです、その意気ですアラタ様」
「………で、俺はこの世界で何をすればいいんだ」
「そうですね、私はナギ様から何も伺っておりませんが…」

 状況が状況だけに、転移を了承したが、俺はここで何をすればいいんだろうか。
 そう言えば、ナギは助けた理由があるとか言ってたな。イレギュラーな存在の俺がいれば良い的な。
 プロトのお陰で生きながらえたこと自体が目的なのか?

「プロト、何かあるのか?」
「では、先ずこれを…」

 ん?なんだ? プロトから何か来たぞ。

「今お伝えした感じで喋ってみてください」
『おお、言葉がなんか変だ』
「このままだとアラタ様が、“普段のトーンで独り言話すマン”として街の人気者になってしまうかと思いまして」

 “話すマン”って、また懐かしいな、オイ。 てか、なんで知ってる…って情報源は俺か。 気付かず思い出していたか…もう諦めよう。

「脳内で話すイメージで、話したい事、話さない事が分かれて私に伝わります」
『なるほどね… 街の人気者にならずに済んだよ。ありがとう』
「どういたしまして。 私はこのまま骨振動のような感じで」

 皮肉は理解できないのかな。それともスルーですかプロトさん?
 まぁ問題は色々と山積みだが、外に出てみるか。
 あれ? ここの宿代どうなってるんだ。 ナギ、大丈夫なんだよな…
 左目が僅かにチクッとした。その瞬間、左目の視野に、緑の蛍光色で背景を透過した『STAND BY』の文字が現れた。

「おいプロト! 左目が!文字が! 何だこれは!?」
「いえ、私はなにも!… 待ってください、私にも情報が…」

 プロトからの動揺が伝わってくる。左目を押さえながら蹲る。わっ左目が見えなくなった!

「アラタ様、大丈夫ですか! アラタ様!」

 急に左目の視界が明るくなる。絞りが設定されピントが合ってくるように元に戻ってきた。 かと思ったが、左視界が大変なことに。

「プロト、ヤバい。 左目に“SENSING”って文字が出た… なんか見た場所を調べてる…」

 左視界に入ったものが〇と+の図形でマーキングされている。

「…わかりました、アラタ様。 そのままサイドテーブルの方を見てください」

 俺は蹲ったまま、ベッド横のサイドテーブルを見る。椅子の背に黒い上着とバックパックが掛けてあることに気付いた。
 上着とバックパックがマーキングされ、別ウインドウが開く。ウィンドウ内には上着のポケットがクローズアップされて、

 場所:左内ポケット
 内容物:ルームキー
 組成:鉄 約83%
    クロム 約17%
    キーホルダーに不明な素材
    不明な素材の内、キーホルダー本体部分はスギに似た植物素材、
    コーティングは漆に似た樹液相当素材が使われている

 と表示された。視線を僅かにずらすと、バックパックがフォーカスされて、中にある袋がクローズアップされて、

 場所:バックパック主収納内
 内容物:当該世界貨幣
 組成:金 約78%
    銀 約22%
    エレクトロン貨に酷似
    バックパック主収納内にある、種別不明の革袋に50枚入っている
    革袋素材不明
    貨幣価値不明
    紙幣・他貨幣の存在不明

 と更に表示される。

「これは…」
「ナギ様が残したと思われる情報によると『拡張鑑定』となっています」
「拡張鑑定…」

 いくらかわからないが、とりあえずはホテルからこっそり逃げ出さなくて済みそうだ。
 そのままゆっくり立ち上がり、自分の手を見る。両手がマーキングされ、

 士丈司の指・手・手首
 一般的な、蛋白質、結合組織、生物組成
 <“一般的”に関して別ウインドウを開きますか YES/NO>

 と表示された。不思議と表示に酔わなくなり、文字もだんだん気にならなくなってきたな。

「こいつは凄いな… プロトがやってるのか?」
「私由来の能力の様ですが、先ほどまで存在すら把握できていませんでした」
「このウインドウ、プロト側でも確認できているか?」
「鑑定結果表示自体を見ることはできません。 ですが、名称や鑑定の仕様はナギ様の情報にありましたので、説明はできます」
「そうか」

 俺は、左目をメインにして部屋の内部や窓の外を見た。見ただけじゃ分からない情報が次々に表示される。どうやら、ON、OFFもできるようだ。

「しかし、鑑定か… 異世界転生らしくなってきたじゃないか」
「手放しには喜べません。 『拡張鑑定』の情報は私にも秘匿されていました。 部屋から出ようとしたのを切っ掛けに情報の開示があったことに何者かの意志を感じます。…ナギ様を疑いたくはありませんが…」
「たしかにな。 今は良い方向に働いたとしておこう。 そもそも情報が少なすぎるよ」

 椅子に掛けてあったバックパックを掴み上げ、『鑑定』に現れなかった中身を探る。 シャツや下着など着替えが3セット。俺の顔写真(いつの間に…)の付いた用途不明のIDカード的なものが2枚とパスポートのような小冊子が一つ。双方ともに顔写真がホログラムだ。 スマホのような謎デバイスが一つ。電源が入ったので後で確認だ。 あとは謎素材の革袋。マチの付いた長財布の様な四角形だ。中には500円硬貨サイズの琥珀っぽい色合いの貨幣が50枚。価値は分からないが、王様っぽいおっさんの横顔と、トカゲっぽい体にライオン風の頭が付いた謎生物の刻印がしてある。裏面にはおそらく数字だろう物が打刻されている。 あ、これは言葉を覚える必要があるな。
 俺は一緒に掛けてあった上着に袖を通す。トータルで、黒ジャケット、白シャツ、Gパン風パンツ、こげ茶ショートブーツ。 うーん、まあいいか。
 荷物を全部中に戻してバックパックを背負う。

「あー、先ずはロビーに行って、言葉が通じるかどうかだな」

 大きな溜息を吐いて扉のノブに手を掛けたところで、

「アラタ様、待ってください」
「どうしたプロト」
「今、一部機能の解放と情報の開示がありました」
「なんだ」
「私、女性格の様です」
「え それ今?」





つづく
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

処理中です...