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第23章「壊れるための夜」 (共通視点)
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七原の背中が玄関の扉の向こうに消えていくのを、佐原は黙って見送った。
鍵を閉める手が、わずかに震えていた。佐原は深く息を吐きながら、玄関の扉にもたれかかる。
やがてゆっくりと診察室へ戻り、椅子に腰を下ろす。雨音に気づいたのは、そのときだった。
いつの間に、降り出したんだ? 窓の外。街灯に照らされたアスファルトが、しっとりと黒く濡れていた。
そんな中、再び、電子音が鳴った。
インターホンのモニターに映った顔に、わずかに息をのむ。
──七原。
雨に濡れたコートを着たまま、玄関の前に立っていた。髪の先から水滴が落ちている。
扉を開けると、七原は何も言わず、ただ佐原を見た。
そして、しばらくの沈黙のあと──
「……やっぱり、お前がいないとダメなんだ」
低く、かすれた声が、空気を揺らすように落ちた。
その瞬間、佐原の胸の奥で何かが崩れる音がした。
手が、勝手に伸びた。気づけば、七原の腕をつかんでいた。
「……それ、言うか」
声が震えていた。怒りではない。たぶん、もっと深いもの。
七原は、逃げなかった。濡れた前髪の隙間から、真っ直ぐに佐原を見ていた。
「お前さえ、いなければ、俺は──きっと、まともに生きられた」
佐原は、つぶやくように続けた。七原の目が、かすかに揺れた。
「それでも……お前のそばがいい。理由なんか、もういらないんだ」
その言葉が、引き金だった。
「ふざけるな!」
佐原の叫びが、部屋に響いた。掴んだ腕を力任せに引き、七原を壁に押し付ける。
「お前はいつもそうだ!勝手に現れて、勝手にかき乱して、またいなくなるつもりか!」
「違う!」
「何が違う!お前のその目が、その声が、俺をどれだけ狂わせるか分かってるのか!」
嵐の夜、それは二人の魂の嵐でもあった。
佐原は、七原の胸ぐらを掴んだ。その瞳には、怒りと、絶望と、そして、どうしようもないほどの愛情が渦巻いていた。
「お前さえいなければ、俺はとっくに楽になれてた!」
「俺だってそうだ!お前がいない方が、よっぽどまともに生きられた!」
叫び合い、互いの本音をぶつけ合う。その瞬間、俺たちは医者と患者でも、元恋人でもなかった。ただ、互いを求めずにはいられない、二人の男だった。
気づけば、唇を奪っていた。抵抗する七原の体を、無理やりベッドに押し倒す。
これは、愛じゃない。確認だ。嵐の中で、互いの存在を確かめ合うための、原始的な行為。
鍵を閉める手が、わずかに震えていた。佐原は深く息を吐きながら、玄関の扉にもたれかかる。
やがてゆっくりと診察室へ戻り、椅子に腰を下ろす。雨音に気づいたのは、そのときだった。
いつの間に、降り出したんだ? 窓の外。街灯に照らされたアスファルトが、しっとりと黒く濡れていた。
そんな中、再び、電子音が鳴った。
インターホンのモニターに映った顔に、わずかに息をのむ。
──七原。
雨に濡れたコートを着たまま、玄関の前に立っていた。髪の先から水滴が落ちている。
扉を開けると、七原は何も言わず、ただ佐原を見た。
そして、しばらくの沈黙のあと──
「……やっぱり、お前がいないとダメなんだ」
低く、かすれた声が、空気を揺らすように落ちた。
その瞬間、佐原の胸の奥で何かが崩れる音がした。
手が、勝手に伸びた。気づけば、七原の腕をつかんでいた。
「……それ、言うか」
声が震えていた。怒りではない。たぶん、もっと深いもの。
七原は、逃げなかった。濡れた前髪の隙間から、真っ直ぐに佐原を見ていた。
「お前さえ、いなければ、俺は──きっと、まともに生きられた」
佐原は、つぶやくように続けた。七原の目が、かすかに揺れた。
「それでも……お前のそばがいい。理由なんか、もういらないんだ」
その言葉が、引き金だった。
「ふざけるな!」
佐原の叫びが、部屋に響いた。掴んだ腕を力任せに引き、七原を壁に押し付ける。
「お前はいつもそうだ!勝手に現れて、勝手にかき乱して、またいなくなるつもりか!」
「違う!」
「何が違う!お前のその目が、その声が、俺をどれだけ狂わせるか分かってるのか!」
嵐の夜、それは二人の魂の嵐でもあった。
佐原は、七原の胸ぐらを掴んだ。その瞳には、怒りと、絶望と、そして、どうしようもないほどの愛情が渦巻いていた。
「お前さえいなければ、俺はとっくに楽になれてた!」
「俺だってそうだ!お前がいない方が、よっぽどまともに生きられた!」
叫び合い、互いの本音をぶつけ合う。その瞬間、俺たちは医者と患者でも、元恋人でもなかった。ただ、互いを求めずにはいられない、二人の男だった。
気づけば、唇を奪っていた。抵抗する七原の体を、無理やりベッドに押し倒す。
これは、愛じゃない。確認だ。嵐の中で、互いの存在を確かめ合うための、原始的な行為。
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