前世が官僚の俺は貴族の四男に転生する〜内政は飽きたので自由に生きたいと思います〜

ピョンきち

文字の大きさ
18 / 52

第18話ジャックの帰還

しおりを挟む
時刻は夕方、夕日が照らしている細長い雲は茜色に染まり、空は少し紫がかっている。


そんな時間帯にアルバートを含めた侯爵家一同は家の主であるジャックの帰りを待っていた。

既に屋敷には、戦闘に参加していた兵士が伝令として戦いが終わったと告げにきていた。

それを聞いた侯爵家一同は家の主であるジャックの帰りを静かに待っていた。

全員、ジャックの無事を願っているのだろう。


もちろん俺も含めて。今の家族はとても仲の良い家族だ。前世の家族も仲が良かったが、官僚になった後は仕事三昧。ろくに連絡を取れやしなかった。

今頃何してんのかな?俺が死んじゃって悲しんでくれただろうか?ごめんね、親不孝者で。


そんなことを考えていて、少し顔色が暗かったのか、母であるスーザンが俺の顔を見て口を開いた。


「大丈夫よ、アル。ジャックは元気に帰ってくるわ。だからそんな顔をせず堂々としていなさい。ジャックを勇気づけたのはあなたでしょう?」

そうだ、俺は今、こんなにも温かい家族に愛されてるんだ。今を精一杯生きてこそ、恩返しなのかもしれないな。

どんな物事でも、失敗したらそこで終わりじゃなくて、そこから何を見つけ出し、次に繋げるのか。

俺は、父さんとの約束を破って戦場に行った。でも父さんは俺にもう一度チャンスを与えてくれた。

だから俺は精一杯父さんの帰りを喜びたい。

「そうですね、母上」

「ええ、ジャックの帰りを喜びましょうね」

「はい!母上」





そうして数分後、門扉がゆっくりと開いたその先に、白馬に乗ったジャックの姿が見えた。



ゆっくりと白馬から下りて、俺たちの方に向かってくる。


「ただいま、みんな。心配かけてすまなかったな」

すると、耐えきれなくなったのか、マークとジェシカが父さんに泣きながら抱きついた。

「ち、父上~~~っ!!」

「おとうぢゃま~~!!」

するとそんな行動が場を和ませ、ジャックとスーザンはお互い笑い合う。

「ふふふっ。あなた、お帰りなさい。子供たちに好かれる事はいい事よ?」

「はははっ!そうだな。ただいま、スーザン!」

「ジャック」

「スーザン」


俺は両親のこれ以上のイチャイチャを見ていられなくなり、わざとらしく声を出した。


「ごっほーん、ごっほーん、お帰りなさい、父上」


それを聞いたジャックとスーザンは互いに目を逸らし、しかし頬は少し紅い。

まあ、夫婦円満はいい事だろう。


「あ、ああ、ただいま、アル。お前には感謝しても仕切れないくらいだ。本当にありがとうな」


まだ、家族に言ってないのに、父さんが言ってしまった。


「あら?アル。あなた何かしたの?」

スーザンは何を言っているのか分からず、俺に尋ねたが、少し戸惑っている俺を見たジャックは話を逸らそうとした。


「ま、まあ、その話は後でだ。暗くなってきたし、屋敷の中に早く入ろう。マーク、ジェシカ、そろそろ離れてくれないか?俺がお漏らししたように見えるじゃないか」

それを聞いた、マークとジェシカは、鼻をすすりながら、離れてジャックの服を見てみると見事に濡れていた。


「はははっ!」

「ふふふっ!」

さっきまで泣いていたのにこの変わり様。子供とはこんな生き物なのか?よく分からん。

そうして、俺たちは屋敷の中に入っていった。











ジャックが屋敷に着いた頃、冒険者ギルドハワード支部ギルドマスター室にて、とある会話がされていた。

執務机の様なものに座っているギルドマスター、ベッケン・ストーンの対面には、このハワード領で有名な冒険者の一人である、Aランク冒険者のジョナサン・ハンスカイがいた。

「臨時クエスト、ご苦労だった」

「ああ、そんな事は気にせんでいい。俺は街を守るために戦ったんだからな」

「少し質問がある。聞いていいか?」

「俺が知ってる事なら答えられるぞ」


ベッケンはうなづいた後、少し間を開けてから口を開いた。

「単刀直入に聞く。なんでこんなに早く終わったんだ?こんなに早く終わる臨時クエストなんて聞いたこともない。街一個なんて簡単に壊滅できる戦力が魔物にはあったはずだ」

「それは、俺たちが弱いって言いたいのか?」

少し声のトーンを低くして言うジョナサン。

「別に、そんな事を言いたいんじゃない。お前らは強い。だが魔物達も強い。負傷者がかなりいたと聞く。そんな戦いなのにこんなに早く終わったのは何故なんだ?」



それを聞いてジョナサンは思い返した。



小さな子供と女の子が力を合わせてとんでもない数の水球を操り、魔物を倒した事を。


ジョナサンはその光景に驚き、こう言った。

「英雄だ」と。


後からその光景が現実ではありえない事だと思い、動揺した。

近くにいた兵士はあの小さな子供は侯爵様の御子息のアルバート様だと言う。


そんな光景を思い返した後、ジョナサンはストーンにこう答えた。


「英雄だ。小さな英雄が現れたんだ」

そんな事を言い始めてストーンは頭がおかしくなったのかと思い、鼻であしらう。

「はっ!何を言ってるんだ?」

「だから、英雄が現れたんだよ」



ストーンとジョナサンは昔から知り合いでお互いのことを知っている。ストーンはジョナサンが冗談をいう男じゃないと知っている。


少し、真剣に話を聞いてみることにした。


「小さな英雄って誰のことだ?」

すこし言うのを迷ったが言ってみることにした。

「ハワード侯爵家の四男アルバート様だ。5歳らしい」

「は?5歳が?魔物を倒したと言うのか?」

「本当だ。俺はこの目で見た。アルバート様はとんでもない存在感の精霊と恐らく契約している」

ストーンはジョナサンが何を言っているのか分からなかった。

「もう、訳がわからん。5歳だぞ?そんな事ありえるのか?」

「俺が嘘をついて何の得になる?俺は目の前で見た。だからありえるんだよ」

「まあ、それが本当だとして、侯爵様の四男アルバート様、か。四男だったら家は継がないだろう。冒険者になってくれればいいんだがな…。この件は王都のギルド本部に連絡しておこう」

「そうか、勝手にしてくれ、じゃあな」


そう言ってジョナサンはギルドマスター室を後にした。


しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...